時 雨 影 法 師 と な り て 消 え ゆ く 時 雨 傘 先 塞 競 ぐ ふ 音 治 痴 外 同 志 法 や 権 酉 忘 の 年 市 会 冬 帽 子 鏡 に 決 め て 貰 ひ け り 道 ど つ と 翔 つ 水 鳥 ど つ と 着 水 す わ け あ り の 男 の 咳 で あ り に け り 時 雨 散 り 止 み て き ら り と 軒 雫 風 連 れ て 銀 杏 黄 葉 連 れ 入 廷 す 内 山 眠 龍 1 草 笛 集 髙 橋 純 子 二つ三つ減らす行事や年用意 紅葉狩 ひたち野の空に洽し夕蜻蛉 もみづれば水掛不動の上目かな 川 又 曙 光 落葉焚く火風あふりを宥めつつ カタコトの行き交ふ京の紅葉狩 コスモスに虚空大仏泛然と 枯れ紅葉貸し衣裳屋の舞妓かな 秋桜 それぞれの粒に陽があり実紫 清水寺奈落の底ももみづれり 新 美 久 子 絡みぐせ力の尽きて蔦枯るる 霧流れかの世この世を一つにす 霧 回廊に惹かるる一枝夕紅葉 さよならの言葉消えゆく秋の暮 村 上 博 幸 柿紅葉住んでゐたかもしれぬ家 秋 遍 路 腰 の 小 鈴 の 音 淡 く 風強き方から木々の枯れにけり つながれし舟の彩なく冬の湖 神の留守 山の家閉ぢれば秋の声ばかり フロントのストーブより立つ破顔かな かねのお 叶緒の鈴を鳴らせば神の留守 4 草 笛 集 秋の鳶 植 村 文 彦 秋 の 鳶 加 へ 借 景 整 ひ ぬ 鈴 木 良 子 城跡の紅葉明かりに人を待つ それぞれに椅子持ち寄りて村歌舞伎 渡り鳥撃ち落とすごとカメラ群 紅葉 どこまでも我影離れぬ月夜かな 詩仙堂砂紋を散らす落葉かな 透かし見るいろは紅葉の赤さかな 感動のギャラリー巡り落葉踏む 反橋の秋の湿りのきしみかな 倉 林 潮 安らいで寄り添い見上ぐ月明り 餌を給ふ孤老の人や小鳥来る 小鳥 まどろみへ誘ふ木の椅子小春風 色鳥の羽根ひとつ落つ獅子の檻 大 津 浩 離れてもまた滑らかに鴨の群 よくしやべるインコの籠や小鳥来る ページ繰る指の乾きや冬隣 石蕗の花 お日様へ満面笑みや石蕗の花 鈴なりの柿の影引く夕まぐれ 参 拝 を 促 す 掲 示 石 蕗 の 花 木 枯 や 始 末 総 出 の 町 内 会 5 草 笛 集 哀悼 鈴木康爺 岩 永 紫好女 昨日居し人無き窓や小鳥来る 井 村 美智子 唐 辛 子 矍 鑠 の 紅 色 と な る 爽 や か や 銀 白 揃 ふ 終 の 髪 霜月や文章と言ふ不得意な 君慕ふ涙なみだも爽やかに 枇杷の花 枇杷の花育てし夫は見ず終ふ 爽やかや位牌にもある爽の文字 小満ん 山 田 瑛 子 落 葉 し て 表 情 豊 か 木 の 容 かたち 爽やかや満点期せし野辺送り 柳家小満ん師匠の俳句 時雨るるや早目の帰宅子の愛車 祝 卒寿 捨て色にするには惜しき落葉掃く 薄目して 果報なりけり 海小春海音やさしく繰り返す 目白来よ好物挿して庭に待つ かまど猫 弥栄やはばたく祝ぎの鶴来たる 天 高 し 卒 寿 に 学 ぶ 事 多 き 6 新年のご挨拶 内 山 眠 龍 新年あけましておめでとうございます。 焼夷弾を浴びながら防空壕に逃げ込んだこ と、東尋坊での遊泳、妙高登山で豪雨のため 遭難仕懸かったこと、ブレーキとアクセルを 踏み違え暴走したこと、心筋梗塞と心臓バイ パス手術など幾度か九死に一生を得て七十五 回目の新年を迎えることが出来ました。 この世も俳句も言葉が全てです。何でも遊 び心がなければ長続きしません。言葉を覚え 駆使し楽しんで句作に励みたいというのが今 年の抱負です。 皆様のますますのご健勝、ご健吟を心から お祈り申し上げます。 平成二十八年元旦 大 和 尋 人 ぞんざいな言葉も親し敬老日 ◆この一句(十二月号より) 敬 老 日 の 御 祝 い の 席 で の 事 で し ょ う か? 和やかな集いの様子が見えるようです。 掲 句 に は、 人 情 が 希 薄 に な り つ つ あ る、 世相にあって、作者と縁ある方との間には、 気 恥 か し さ? 故 の ぞ ん ざ い な 言 葉 で も、 お互いに思い遣る優しい気持を感じとる事 が出来ます。 ど う ぞ、 こ れ か ら も、 い つ ま で も、 良 好 な間柄であります様に。 水上通子 選評 一月号担当 大和尋人 7 春 雷 集 札 幌 諸 中 一 光 朱の橋に水尾重なりし秋の池 横須賀 渡 辺 伊世子 木の葉散る苑に朱の橋石の橋 預かりて稚児に手をやく湯ざめかな あやふやな筧の流れ藪柑子 根菜の目立つ店先冬に入る 狂ひなき電波時計や日の短 東 京 水 上 通 子 老夫婦暮らす潜り戸石蕗の花 座禅組む僧にも似たり枯蟷螂 綿入れや子に叱られるしあわせも 制服の紺のセーター出番来る 冬はじめ木々の梢はより高く 茨 城 上 野 明 子 転んでも氷面の独楽なれフィギュア 手柄杓を槌に代へたる凍て手水 厚着して自惚鏡着痩せして ときに無為ときに忙しきちやんちやんこ みちのくの遮光土偶や雪眼鏡 東 京 佐 藤 恵美子 社会鍋善意ちひさき音たてて 冬 紅 葉 遠 流 の 島 に 能 囃 子 今の内たんと合はねば薬喰 塗り椀の褪せも親しや根深汁 懸想文売りに転じてしまひけり ホノルル 松 岡 喜 美 独り居になれた様でも年の暮 年惜む志野の湯呑を愛おしむ 赤まといポインセチアと競う老 屠蘇気分卒寿の道のり聞かせましょ 在ハワイ五十年 心 だ け 故 郷 に 遊 ぶ お 正 月 旭 川 福 士 あき子 折鶴の仕上げの息や園小春 悴みて囚はれしごと橋半ば 防風林干物の町を閉ぢ込める 子の雪を払ひてよりのバスの客 夫と観る脱獄映画吹雪の夜 8 銀杏をおどかさぬやう踏まぬやう 人影のすれて行きかふ秋時雨 初恋のはるばる遠くなりぬ秋 銀杏のかをり踊るや浄土池 文化祭年に一度の筆を持つ 菊 花 賞 動 脈 通 う 手 綱 か な 東 京 山 﨑 カツ子 胃もたれに山芋漬けが食抑え 此処かしこ覆ひ被せて冬仕度 爽やかな群青の空に包まれん 北目指す秋刀魚に見ゆる海の変 爽やかに手を振り逝きし恩師かな 常に前向きて逝きたる人さやか 三 鷹 松 井 も う 牡蠣の殻バケツ満杯腹一杯 トンネルを吹き出す落葉中央道 短日や買い出し行かず有り合わせ 東 京 亀 田 浩 代 切りすぎた前髪ばれぬ二学期へ 過疎の村秋風用水路を抜ける 初冠雪富士真向かひに露天風呂 姫 武 将 自 在 菊 師 の 腕 か な 夕まぐれ稜線迫る甲斐の秋 秋 天 に 人 掬 ひ 上 げ 観 覧 車 旭 川 髙 取 杜 月 山栗のこの世を覗く裂目かな 栗落ちて夜の帷を揺らす音 身にしむやビルランダムに灯く明り 秋雨やドライブスルーに腕の伸ぶ 秋深し釈迦手枕にくせのあり 横 浜 本 間 辰 也 寄 道 も 近 道 も 我 が 露 の 道 坂をゆき坂をかへりて星月夜 道 渡 る 枯 蟷 螂 を 励 ま し ぬ いろは坂ほへとの辺り紅葉晴 山茶花や日毎に未知の老いありて 川 崎 春 浪 士 別 啄木鳥の脳の仕組を計り兼ね やん衆の網引く如くとろろ蔓 忙しさに負われ昼餉の擂りとろろ 9
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