~平成27年度社会教育主事専門講座を実施しました~ 《11 月 10 日(火)~13 日(金)》 「社会教育施策を推進する『戦略』をいかに組み立てるか」をテーマに,全国各地から 47 名の受講者が社研に集 い,講義,演習,研究協議,パネルディスカッション等を通して今後の社会教育行政の在り方等について学びま した。 講座の新たな取組 社会教育主事としての専門性の向上を目指し,これまでの講義中心の講座から演習によるグループワーク中 心に内容を変更した。また, 今後目指すべき施策展開の在り方の視点を「ネットワーク型行政」の推進に絞り, 基調講義及びパネルディスカッションを通して知識と技術の習得を目指した。それを受けて,より実践的な内容 となるよう,担当する教育分野ごとにグループを編成し,直面する課題の抽出を行うとともに,解決に向けた手 立てを「戦略マップ」の作成を通して検討を行った。最後にその解決のための具体的な方策を「新戦略」とし て作成した。 社研カフェ 講座における目標の共有と課題抽出(全体交流) 話合いの雰囲気作りのための簡単なワ ークを行った後,各都道府県等の取組状 況について情報交換を行った。そして, 提出された事前レポートのキーワードを 基に,各教育分野で直面する社会教育行 政推進上の課題を,グループごとに抽出 した。これらの課題の解決策を模索しな がら,以降のプログラムを受講していく ことを確認した。 基調講義Ⅰ マルチステークホルダーとの協働による社会教育行政の推進 IIHOE〔人と組織と地球のための国際研究所〕代表者 川北 秀人 受講者の感想から ・参加者の皆さんと課題を 話し合うことを通して,課 題を共有するとともに,自 身が進めている事業の方向 性を確かめることができ た。 ・他県からの参加者との話 し合いは刺激もあり,4日 間の研修に対する意欲が湧 いてきた。 受講者の感想から 氏 地域が直面している課題やその解決に向けた 取組について,具体的なデータや事例を基にお 話しいただくとともに,人口構造や社会構造の 変化,小規模多機能自治など“総働”の地域づ くりの新たな形,社会教育を求める対象や社会 教育に求められる機能の変化等について御指摘 いただき,今後の社会教育の進化の必要性につ いて御示唆を頂いた。 総働: 当事者のみならず,地縁団体や市民団体, 事業者,金融機関,行政,学校,など多 様な主体による協働のこと。 基調講義Ⅱ 社会教育行政推進の方向性 ・「人のまじわりを作らなけ ればまちではない」 「この地 域を残すためには何ができ るのか」等の投げかけやデー タを基にした講義は,今後の 事業の企画・立案の参考にな った。 ・世界経済や高齢化など,世 の中の大きな流れと社会教 育の在り方をこのような大 きな視点で見たことがなか ったので,目から鱗であっ た。 受講者の感想から 文部科学省生涯学習政策局社会教育課長 谷合 俊一 氏 社会教育行政の現状と今後の役割として,課 題解決・地域づくりに資するという視点から御 講義いただいた。また,現在の文部科学省の施 策について,その背景や目指す方向性等につい て詳しく解説していただいた。 さらに,学校・家庭・地域の連携に関する事 項や,地方創生の実現に向けて,社会教育行政 が他部局と連携しながらどのように関わってい くべきか御示唆を頂いた。 ・これからの地域を担う人材 育成を社会教育で行ってい く意義が良く理解できた。 ・最近の国の方向性を知るこ とができ,今後自分が進めて いく社会教育の目指すもの を再確認することができた。 ・社会教育で地域を元気にし ていくという言葉が心に響 いた。私たちが元気でなけれ ば地域も活性化しないと思 う。 パネルディスカッション ネットワーク型行政を推進する「戦略」とは 登壇者:神戸大学大学院人間発達環境学研究科教授 愛媛県新居浜市市民部長 青森県教育庁生涯学習課学校地域連携推進監・課長代理 受講者の感想から 松岡 広路 氏 関 福生 氏 渡部 靖之 氏 ・ネットワーク型行政は,今の 体制のままでは実現できない。 社会教育行政側から,いかに仕 掛けていくかが重要であるこ とを強く感じた。 ・社会教育主事の専門性が,改 めて今求められることが理解 できた。ネットワーク型行政を よりよく仕掛けていけるのは, 社会教育主事であると強く感 じた。市町村の社会教育主事を 元気づける自分でありたい! ・ネットワーク化,人とつなが ることに,じっくり時間をかけ ること,そして,自分たち社会 教育主事が,もっと力量を上げ ていく必要性を感じた。 ・これからは,目の前の事業だ けでなく幅広い視点を持って 仕事に臨みたいと感じた。 コーディネーターの松岡講師には,ネットワーク型行政を構築する必要性や,NPO等の地域活動や社会教育委 員としての経験を踏まえたネットワーク化のポイント等を御教示いただきながら事例発表者や受講者を交えて進 行していただいた。 関講師からは,愛媛県新居浜市の住民参加型のまちづくりを進める取組を基に,住民の学びを支援する社会教育 行政の在り方等について御示唆を頂いた。 渡部講師からは,青森県でのキャリア教育推進における首長部局・企業等との連携や,社会教育活性化事業によ る市町村との連携を通したネットワークの具体的な構築について御示唆を頂いた。 後半は,ネットワーク型行政を推進する社会教育主事のコーディネーターやファシリテーターとしての役割を中 心に,フロアを交えて意見交換することができた。 講義・事例研究 ネットワーク構築による効果的な取組~成功事例とそれを支えた失敗談~ 講 師:富山大学地域連携推進機構生涯学習部門教授 事例発表:浦安市中央公民館副主査 秋田県立図書館副館長 益田市真砂公民館館長 藤田講師 長島副主査 山崎副館長 藤田 公仁子 氏 長島 由美子 氏 山崎 博樹 氏 大庭 完 氏 受講者の感想から ・成功事例だけでなく,失敗事 例を知ることで,身近な自分の 周りのこととして実感するこ とができた。 ・地域住民が主体となる取組を 実施する際の社会教育主事の 役割はたくさんあるが,社会教 育主事が直接地域の現状や声 を知っているか,自分自身がビ ジョンを持っているかが重要 だと思った。 ・住民の姿,背景をイメージし ながら事業を進めていますか という問いかけにはっとさせ られた。 ・戦略を立てて長期にわたり事 業のゴールに向けて取り組ま れてきた事例に感動した。 大庭館長 藤田講師からは,冒頭に事例発表を聞く上での視点を解説いただき,3事例の発表と参加者同士のグループ協議 を踏まえて,地域で社会教育を推進していく上で,常に多様なネットワークを構築していくことや,コーディネー ターやファシリテーターを養成することの重要性について御講義いただいた。 長島講師からは,熟議の手法を用いて,子育,環境,若者支援等の様々なテーマごとに地域の団体や住民と協働 して活発な活動を行っている公民館の取組事例を発表いただいた。 山崎講師からは,県立図書館における「雑誌スポンサー制度」に登録した企業等と連携して,図書館が企業のビ ジネス支援に取り組み,具体的な事業化を図っている実践事例について発表いただいた。 大庭講師からは,公民館と学校と地域商社との協働により,地域全体で食育活動を推進し,地域特産物の開発や 一日レストランの開設等に結びつけている実践事例について発表いただいた。 講義・演習Ⅰ 社会教育行政を推進する「戦略マップ」の作成 十文字学園女子大学人間生活学部文芸文化学科准教授・図書館副館長 石川講師 石川 敬史 氏 受講者の感想から ・グループ内でそれぞれの 意見を出し合い,戦略を作 れるような時間が,職場で も必要であり大切なことだ と感じた。 ・戦略マップの作成は,事 業を企画する上で大切な作 業であると思った。これか らは活用していきたいと思 う。 ・戦略の必要性,立て方が よく分かり,自分の意欲が 向上した。 戦略マップの作成・発表 演習に先立ち石川講師からは,社会教育行政の推進を考える際,まずその地域をどうしたいのか,という「あ りたい姿」や「ビジョン」を明確化させることが大切であること,このビジョンに確実に近づくため「戦略マッ プ」を作成することを説明いただいた。そして,戦略マップとしてのバランススコアカードの作成方法を御講義 いただいた。その後,各グループごとに戦略マップの作成と成果物の発表を行った。 受講者にはこの戦略マップの作成を通して,なぜその仕事を行うのか,という点を明らかにし,多くの人とそ れを共有し得る状態へ向かうことができるプロセスを実感していただいた。 演習Ⅱ・研究発表 教育分野別「新戦略」の作成 島根県教育庁社会教育課社会教育グループグループリーダー社会教育主事 大分県教育庁社会教育課社会教育班主任社会教育主事兼主幹 山中 慎嗣 石井圭一郎 氏 氏 作成した「新戦略」 グループごとに設定した社会教育行政推進上の課題ついて,解決のための方 策を作成した「戦略マップ」を基に話し合い,都道府県・指定都市の社会教育 行政としてどのような取組を行っていくべきかをまとめる作業を行った。 初日の課題設定を受けて,各講義で学んだことを生かしながら,その解決の ために生涯学習主管課,生涯学習推進センター,教育事務所が一体となって推 進していくべき取組の方向性を「新戦略」としてまとめ上げた。 作成に当たっては,長年社会教育行政に携わられている「ベテランの社会教 育主事」に添削をお願いし,財政的,政策的な視点からアドバイスやチェックを 頂いた。 受講者の感想から ・これまでの自分の思い込 みを再認識し,新たな考え 方を知ることにより,自分 自身を変えるきっかけと なった。 ・事業の企画書の作り方の 視点,説得力のある資料の 作成,実践に役立つ内容で あった。 特別講義 これからの社会教育の推進者に求められること 認定特定非営利活動法人 日本 NPO センター常任理事 田尻 佳史 氏 地域社会や住民のニーズが変化する中,地域を 支えていくには,市民の参加・参画が必要となっ てきており,そのために行政と地域を支える取組 の担い手の連携・協働の重要性について御講義い ただいた。 そこで,社会教育推進者には,「市民の視点に よる自発的・主体的な取組」を大切にし,多様な ステークホルダーと結びつきながら地域の課題 を解決していく重要性と,具体的な連携・協働の 進め方等について御講義いただいた。 受講者の感想から ・これから社会教育を推進 するために,関係機関と協 働するため必要性を改め て感じた。 ・マルチステークホルダー との協働の重要性を再認 識することができた。 ・具体的な事例を通して, NPO の特徴,協働の考え方, 方法や姿勢についての基 本が分かった。 講座における,学びとつながりが,各地域で生かされますように
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