教育改革 中西 宏明 大西 隆

39
vol.
Quarterly Report
︻特集︼
教育改革
December
2015
[対談]
Opinion
中西 宏明
一 般 社 団 法 人 日本 経 済 団 体 連 合 会 副 会 長
株 式 会 社 日立 製 作 所 執 行 役 会 長 兼 C E O
大西 隆
国立大学協会副会長
豊橋技術科学大学長
学びを考える
Public Relations Magazine of National Universities
40 女性の活躍
Quarterly Report
Contents
vol.
教育改革
設置が計画されている国立大学の主な学部
国際教養学部
福井大学
国際地域学部
経法
データサイエンス学部
滋賀大学
2017年度
都市科学部
横浜国立大学
2016 年度
徳島大学
生物資源産業学部
愛媛大学
社会共創学部
佐賀大学
芸術地域デザイン学部
大分大学
福祉健康科学部
宮崎大学
地域資源創成学部
東京海洋大学
海洋資源環境学部
(注)ここでは、学部の改組は除く。
横浜国立大学及び東京海洋大学の学部名は仮称である。
国立大学長と有識者などが対談
全 国 大 学 の 学 長 が 身 近 な 有 識 者 な ど と の
対 談 を 行 い、そ の 様 子 を 国 立 大 学 協 会 ホ ー ム
︶に
ペー ジ︵ http://www.janu.jp/converse.html
掲 載 し て い ま す。対 談 で は、各 大 学 の 独 自 性
と と も に、社 会 か ら の 国 立 大 学 へ の 期 待 が 表
れています。
国 立 大 学 協 会 で は、 Universities Australia
と の 協 力 覚 書 に 基 づ き、日 豪 大 学 職 員 短 期 交
流 研 修 事 業 と し て、 月 日 か ら 月 4 日 に
豪 州 で の 短 期 交 流 研 修 を 実 施 し、日 本 の 国 立
大学から 名の職員が参加しました。
同 交 流 研 修 で は、オ ー ス ト ラ リ ア︵キ ャ ン
ベ ラ、シ ド ニ ー︶の 大 学 な ど を 訪 問 し、現 地
大学の国際戦略や国際関係業務に関する説明
を 受 け ま し た。各 参 加 者 が 現 地 の 職 員 と 意 見
交 換 を 行 う こ と で、現 地 大 学 の 実 情 に つ い て
の理解を深めたほか、今後の両国大学間のパー
ト ナ ー シ ッ プ の 構 築・強 化 に つ な げ る 第 一 歩
となりました。
当 協 会 で は、今 後 も 引 き 続 き 海 外 の 大 学 団
体 な ど と の 交 流 を 通 じ、国 立 大 学 の 国 際 化 支
援に努めていきます。
日豪大学職員短期交流研修事業を実施
86
前田 芳實
鹿児島大学長
例などを紹介します。
再構築を中心に、取組事
人 文 社 会 科 学 の 意 義・役 割 や 教 養 教 育 の
め ら れ る 中 で 、本 号 で は 、教 育 改 革 、特 に
理や創造性を培う土台づくりが大学に求
自 然 科 学・人 文 社 会 科 学 を 問 わ ず 、 倫
批判的思考力が求められています。
人 文 社 会 科 学 で 培 わ れ る 知 識 や 判 断 力・
日 本 の 社 会、文 化、歴 史 等 の 理 解 な ど、
に 対 し て、文 化 的 多 様 性 の 理 解、世 界 や
の実現や国土の総合的かつ均衡ある発展
イ ノ ベ ー シ ョ ン に 基 づ く 持 続 的 な 成 長
す大学へと進化しつつあります。
〝競 争 力〟と〝高 い 付 加 価 値〟を 生 み 出
構 築 、 大学間連携などの大学改革を進め、
て 、新 学 部 創 設 、学 部 改 組 、教 養 教 育 の 再
国 立 大 学 は そ れ ぞ れ の 機 能 強 化 に 向 け
姿勢を一層明確にしました。
年 9 月 ︶、 未 来 を 拓 く 国 立 大 学 と し て の
ア ク シ ョ ン プ ラ ン ﹂を 発 表 し︵ 2 0 1 5
協は、
﹁国立大学の将来ビジョンに関する
立 大 学 へ の 期 待 は ま す ま す 大 き く、国 大
展 開、地 方 創 生 へ の 取 組 な ど、国 民 の 国
ン の 創 出 、 世 界 最 高 水 準 の 教 育・研 究 の
グ ロ ー バ ル 社 会 の 中 で、イ ノ ベ ー シ ョ
12
︻特集 ︼
予定されている。
26
Episode 1
会的要請の強い教育研究を展開する学部を新たに設置することが
11
奈良女子大学
の第3期中期目標・中期計画の素案によれば、2016 年以降も社
13
教養教育に新風を吹き込む新教育プログラム
神戸大学/西田文香 さん
弘前大学/ ・
H・
O T Managers
山梨大学/齋藤浩平 さん
帯広畜産大学/あぐりとかち
地域と国の発展を支える有意な人材を育成してきた。各国立大学
国大協TOPICS
下記の内容については国大協ホームページ
(http://www.janu.jp/)
からもご覧いただけます。
﹁パサージュ﹂で教育再編へ確かな一歩を踏み出す。
Episode 2
信州大学
2016年に始動する
﹁経法学部﹂。
地域で学ぶアクティブラーニングを展開する。
[対談]
Opinion
一般社団法人日本経済団体連合会副会長
株 式 会 社 日 立 製 作 所 執 行 役 会 長 兼CEO
中西 宏明
国立大学協会副会長
豊橋技術科学大学長
大西 隆
発見 ! 国立大学
北海道大学
東北大学
東京大学
上越教育大学
富山大学
兵庫教育大学
愛媛大学
九州大学
今、
学生は !
育改革
これまで国立大学は、強み・特色を活かした教育改革を推進し、
1
December
2015
学びを考える
39
vol.
3
5
7
11
13
vol.
38 地方創生
新たな国立大学改革
︻ 特 集 ︼教
vol.
国の持続的発展に向け、
教育の見直しを図る
国立大学。
千葉大学
学部設置時期
新学部名
大学名
地域デザイン科学部
宇都宮大学
2
2
1
37 入試改革
(出所)各国立大学の HPより国立大学協会事務局作成
40 女性の活躍
Quarterly Report
Contents
vol.
教育改革
設置が計画されている国立大学の主な学部
国際教養学部
福井大学
国際地域学部
経法
データサイエンス学部
滋賀大学
2017年度
都市科学部
横浜国立大学
2016 年度
徳島大学
生物資源産業学部
愛媛大学
社会共創学部
佐賀大学
芸術地域デザイン学部
大分大学
福祉健康科学部
宮崎大学
地域資源創成学部
東京海洋大学
海洋資源環境学部
(注)ここでは、学部の改組は除く。
横浜国立大学及び東京海洋大学の学部名は仮称である。
国立大学長と有識者などが対談
全 国 大 学 の 学 長 が 身 近 な 有 識 者 な ど と の
対 談 を 行 い、そ の 様 子 を 国 立 大 学 協 会 ホ ー ム
︶に
ペー ジ︵ http://www.janu.jp/converse.html
掲 載 し て い ま す。対 談 で は、各 大 学 の 独 自 性
と と も に、社 会 か ら の 国 立 大 学 へ の 期 待 が 表
れています。
国 立 大 学 協 会 で は、 Universities Australia
と の 協 力 覚 書 に 基 づ き、日 豪 大 学 職 員 短 期 交
流 研 修 事 業 と し て、 月 日 か ら 月 4 日 に
豪 州 で の 短 期 交 流 研 修 を 実 施 し、日 本 の 国 立
大学から 名の職員が参加しました。
同 交 流 研 修 で は、オ ー ス ト ラ リ ア︵キ ャ ン
ベ ラ、シ ド ニ ー︶の 大 学 な ど を 訪 問 し、現 地
大学の国際戦略や国際関係業務に関する説明
を 受 け ま し た。各 参 加 者 が 現 地 の 職 員 と 意 見
交 換 を 行 う こ と で、現 地 大 学 の 実 情 に つ い て
の理解を深めたほか、今後の両国大学間のパー
ト ナ ー シ ッ プ の 構 築・強 化 に つ な げ る 第 一 歩
となりました。
当 協 会 で は、今 後 も 引 き 続 き 海 外 の 大 学 団
体 な ど と の 交 流 を 通 じ、国 立 大 学 の 国 際 化 支
援に努めていきます。
日豪大学職員短期交流研修事業を実施
86
前田 芳實
鹿児島大学長
例などを紹介します。
再構築を中心に、取組事
人 文 社 会 科 学 の 意 義・役 割 や 教 養 教 育 の
め ら れ る 中 で 、本 号 で は 、教 育 改 革 、特 に
理や創造性を培う土台づくりが大学に求
自 然 科 学・人 文 社 会 科 学 を 問 わ ず 、 倫
批判的思考力が求められています。
人 文 社 会 科 学 で 培 わ れ る 知 識 や 判 断 力・
日 本 の 社 会、文 化、歴 史 等 の 理 解 な ど、
に 対 し て、文 化 的 多 様 性 の 理 解、世 界 や
の実現や国土の総合的かつ均衡ある発展
イ ノ ベ ー シ ョ ン に 基 づ く 持 続 的 な 成 長
す大学へと進化しつつあります。
〝競 争 力〟と〝高 い 付 加 価 値〟を 生 み 出
構 築 、 大学間連携などの大学改革を進め、
て 、新 学 部 創 設 、学 部 改 組 、教 養 教 育 の 再
国 立 大 学 は そ れ ぞ れ の 機 能 強 化 に 向 け
姿勢を一層明確にしました。
年 9 月 ︶、 未 来 を 拓 く 国 立 大 学 と し て の
ア ク シ ョ ン プ ラ ン ﹂を 発 表 し︵ 2 0 1 5
協は、
﹁国立大学の将来ビジョンに関する
立 大 学 へ の 期 待 は ま す ま す 大 き く、国 大
展 開、地 方 創 生 へ の 取 組 な ど、国 民 の 国
ン の 創 出 、 世 界 最 高 水 準 の 教 育・研 究 の
グ ロ ー バ ル 社 会 の 中 で、イ ノ ベ ー シ ョ
12
︻特集 ︼
予定されている。
26
Episode 1
会的要請の強い教育研究を展開する学部を新たに設置することが
11
奈良女子大学
の第3期中期目標・中期計画の素案によれば、2016 年以降も社
13
教養教育に新風を吹き込む新教育プログラム
神戸大学/西田文香 さん
弘前大学/ ・
H・
O T Managers
山梨大学/齋藤浩平 さん
帯広畜産大学/あぐりとかち
地域と国の発展を支える有意な人材を育成してきた。各国立大学
国大協TOPICS
下記の内容については国大協ホームページ
(http://www.janu.jp/)
からもご覧いただけます。
﹁パサージュ﹂で教育再編へ確かな一歩を踏み出す。
Episode 2
信州大学
2016年に始動する
﹁経法学部﹂。
地域で学ぶアクティブラーニングを展開する。
[対談]
Opinion
一般社団法人日本経済団体連合会副会長
株 式 会 社 日 立 製 作 所 執 行 役 会 長 兼CEO
中西 宏明
国立大学協会副会長
豊橋技術科学大学長
大西 隆
発見 ! 国立大学
北海道大学
東北大学
東京大学
上越教育大学
富山大学
兵庫教育大学
愛媛大学
九州大学
今、
学生は !
育改革
これまで国立大学は、強み・特色を活かした教育改革を推進し、
1
December
2015
学びを考える
39
vol.
3
5
7
11
13
vol.
38 地方創生
新たな国立大学改革
︻ 特 集 ︼教
vol.
国の持続的発展に向け、
教育の見直しを図る
国立大学。
千葉大学
学部設置時期
新学部名
大学名
地域デザイン科学部
宇都宮大学
2
2
1
37 入試改革
(出所)各国立大学の HPより国立大学協会事務局作成
【特集】
教育改革
●問いをあたためる
●社会的実践に飛び込む
西村拓生
三成美保
教育システム研究開発センター長
京都大学大学院教育学研究科博士後期課
程中退。
専門は教育学、教育哲学。
京都大学
教育学部助手等を経て、2000年より奈良
女子大学文学部助教授、
教授。2012年セン
ター長に就任し、
学内の教育改革を推進。
専門教育と教養教育の両立を目指し
あえて二兎を追う
社会のあらゆる分野で加速するグローバリ
ゼ ー シ ョ ン の 波、 そ し て 秒 進 分 歩 と も 言 わ れ
る I T・科 学 テ ク ノ ロ ジ ー の 進 歩 で、 我 が 国
の 状 況 も 大 き く 変 化 し つ つ あ る。 次 代 を 担 う
リーダーの資質・能力の変革が求められる今、
各 方 面 で、 国 立 大 学 の 立 ち 位 置 や 教 育 方 針 に
つ い て の 論 議 が な さ れ る な ど、 様 々 な 教 育 改
革が進められている。
1 9 0 8 年、 女 子 教 員 の 養 成 を 目 的 に 設 置
された奈良女子高等師範学校を前身とする奈
良 女 子 大 学 は、 幼 稚 園 か ら 大 学 院 ま で 揃 っ た
教育体制を活かして次代を担う女性リーダー
の 育 成 に 尽 力 し て き た。 同 大 学 が 2 0 1 5 年
か ら 始 め た 新 し い 教 養 教 育 プ ロ グ ラ ム が 今、
注 目 さ れ て い る。 牽 引 す る の は、 同 大 学 に お
いて初等教育から高等教育まで一貫した改革
を追求するため、2004年に設立された「教
育システム研究開発センター」だ。同センター
の西村拓生センター長はこう話す。
「専門教育と教養教育の関係性を全学で議論
し ま し た。 議 論 を 始 め た 当 時、 研 究 大 学 と 教
養大学という少々乱暴な分け方がありました
が、 そ も そ も 教 養 を 欠 く 研 究 も、 逆 に 研 究 を
欠 く 教 養 も な い だ ろ う と。 我 々 に は あ え て 二
兎を追いたいという思いがありました」
研究と教育の関係を考える全学的な話し合
い は 3 年 に 渡 っ た。 そ う し て「 大 学 の 機 能 分
化状況における専門教育と教養教育の創造的
再構成」を立案。その後も議論を重ね、新しい
本 質 を 体 験 し て も ら う。 今 わ か っ て い る こ と
しれません」とも西村センター長は語る。
から好意的に受け入れられた理由の1つかも
教育カリキュラムを創造するに至ったという。
を 身 に つ け る こ と も、 未 だ わ か ら な い こ と を
ジェンダーという切り口で人間と社会を問
う 教 養 コ ア 科 目 を 担 当 す る 三 成 美 保 教 授 は、
てもらう場が「パサージュ」だ、
と西村センター
究者という「不思議な人たち」にまずは出会っ
と。 未 知 の 探 求 が お も し ろ く て 仕 方 の な い 研
ま た、 大 学 の 教 員 が 高 校 の 教 員 と 一 番 違 う
点 は、 教 育 者 で あ る と 同 時 に 研 究 者 で あ る こ
果が高いとも小路田副学長は語る。
入学1年目の一番大事な時期にゼミ体験さ
せ る こ と が、 学 生 を 伸 ば す た め に は と て も 効
スタイルを追求したいということです」
学はあくまでフンボルト型教育(*)の現代的
や す と い う の が 一 つ の 答 え だ と 思 い ま す。 本
そ の 弊 害 が 大 き い。そ れ に 対 し て、 ゼ ミ を 増
ます。日本の教育は前者が中心でしたが、今や、
ら れ な い し、 学 生 が 自 ら 議 論 し て 最 後 に 書 き
い点数を取ります。一方、ゼミは予習なしに出
生 が、 試 験 で 先 生 が 気 に 入 る 答 案 を 書 い て 高
た。 普 通 の 授 業 で は 受 動 的 に 講 義 を 聴 い た 学
ゼミを増やせば良いのではないかと考えまし
促 進 な ど、 色 々 言 わ れ て い ま す が、 要 す る に
も つ な が り ま す。 こ れ ら の 新 し い 取 組 に は、
からサテライト科目と呼ぶ関連科目の履修に
プ ロ ー チ を 通 じ て 深 め ら れ、 探 究 さ れ、 そ こ
哲 学 に も 広 が っ て い き ま す。 問 い は 7 つ の ア
すが、学生の問いは自然科学にも、歴史にも、
科学と思想』というコア科目を担当していま
私 は 理 学 部・ 文 学 部 の 教 員 と 共 に『 放 射 線 の
問 い を 立 て て 授 業 を 作 っ て い き ま す。 例 え ば
目 で す。 教 員 自 身 が 学 生 と 議 論 し な が ら 共 に
1つのテーマを多方面から深く学んでいく科
入り口。その先に、教養コア科目があります。
る と い う 発 想 で す。 パ サ ー ジ ュ は あ く ま で も
持てる知識を使いこなす能力こそが教養であ
識 の 内 容 で は な く 運 用 能 力 と し て 捉 え た い。
い う 時 代 で は あ り ま せ ん。 私 た ち は 教 養 を 知
今は一定の知識や常識を身につければ良いと
「『5つの問いと7つのアプローチ』は、
『問
い 』 の 形 で 教 養 教 育 の 理 念 を 表 現 し て い ま す。
のアプローチ』が掲げられている。(上図参照)
セ ミ ナ ー で、 理 念 と し て『 5 つ の 問 い と 7 つ
の学習といかに違うかを体験する少人数制の
注 目 さ れ る「 パ サ ー ジ ュ」 と は、 入 学 直 後
に 大 学 な ら で は の「 学 問 」 に 触 れ、 高 校 ま で
新教養教育の理念を象徴する
5つの問いと7つのアプローチ
達 な 新 風 は、 奈 良 女 子 大 学 の 歴 史 に 新 た な 伝
ろ う。 積 極 性 を 育 む「 パ サ ー ジ ュ」 の 自 由 闊
プログラムが順調に滑り出したことの証左だ
調 の 端 々 に う か が え る の は、 新 た な 教 養 教 育
学生と対話しながら教員自身もその授業を
楽 し み、 効 果 を 上 げ て い る こ と が 担 当 者 の 口
受けるよう新しい試みを拡充していきます」
ティブラーニングを重視したゼミの教育を必ず
「 や は り 自 発 性 を 尊 び た い。と 同 時 に 将 来 的
に は、 本 学 に 入 学 し た す べ て の 学 生 が、 ア ク
必修化しない理由を小路田副学長はこう語る。
履修経験者はもちろん、学内外から高く評価
さ れ て い る 教 養 教 育 プ ロ グ ラ ム だ が、 あ え て
た新しい関心につながっていくと思います」
ろ げ と い う こ と が と て も 大 事 で、 そ こ か ら ま
か が、 お ぼ ろ げ な が ら 見 え て く る。 そ の お ぼ
ン ト な の か、 何 が 学 問 の 世 界 の ト ピ ッ ク な の
段 階 で そ れ を 体 験 で き れ ば、 何 が 学 び の ポ イ
シ ョ ン し た り、 議 論 し た り …。 学 生 に と っ て
たちも確かな手応えを感じます。プレゼンテー
て 切 磋 琢 磨 す る こ と が で き る 科 目 で あ り、 私
そこには教員も含まれます。参加者が学び合っ
る。三成教授はこう語る。
に学びがあります」
長は語り、こう続ける。
参 加 す る 学 生 に と っ て も、 新 鮮 な こ と に 飛 び
「国立大学の自主的かつ自律的な改善と発展
と い う こ と で、 ア ク テ ィ ブ ラ ー ニ ン グ の 強 化
一 番 の 訓 練 は 失 敗 し つ つ 学 ぶ 経 験。 1 年 生 の
「 学 生 の 反 応 は す こ ぶ る 良 い で す。 7 つ の
アプローチに『他者から学ぶ』とありますが、
生が自ら考え発見する参加型授業を作ってい
「大学は何より未知のことを研究する場であ
り、 学 生 た ち に も そ の 過 程 を、 身 を も っ て 体
る小路田泰直副学長はこう語る。
験 し て も ら う こ と が 主 旨 な の で す。 研 究 者 の
統を築く地歩となるに違いない。
パ サ ー ジ ュ と 教 養 コ ア 科 目 を セ ッ ト に し、 学
探 究 す る た め に こ そ 必 要 な の で す。 そ の た め
大阪大学大学院法学研究科博士課程単位取
得満期退学、博士(法学)
。専門はジェンダー
法学、
ジェンダー史。2012年より奈良女子大
学研究院生活環境科学系教授。ジェンダー
法学会副理事長・日本学術会議第一部会員。
込 む『 キ ラ キ ラ 感 』 が あ り ま す。 そ れ も 学 生
ジ ュ」 と「 教 養 コ ア 科 目 」 だ。 キ ー マ ン で あ
*パサージュ:
「移行」
「街路」
を意味するフラ
ンス語。高校から大学への移
行 路 で あ り、 大 学 の 学 問 の
ショーケースという趣旨。
姿 勢 を 見 せ、 未 知 を 問 う 場 所 と し て の 大 学 の
豊かな学びを目指した「教養教育の再構築」
の結実として高く評価されているのが「パサー
教養教育再構築の模索・追究が
「パサージュ」として結実
●他者と学ぶ、
他者から学ぶ、
他者を学ぶ
京都大学大学院文学研究科博士課程単位
取得退学。専門は日本史、日本近代史。
1998年 よ り 奈 良 女 子 大 学 文 学 部 教 授。
2013年より副学長に就任し、大学教育
そのものの見直しに尽力。
●知の創造に参加する
3
4
*現代の大学教育の原型を作ったと言われる
W.v.フンボルトのゼミや実験室での研究を通じた教育。
●しっかり書く
理事・副学長
奈良で学ぶこと
を通じた世界への
貢献は?
あなたと未来の
世代にとって
学びの意味は?
女性
●本物に触れる
ならではの
知はあるか? ●背伸びする
5つの
問い
よく生きる
ために必要な
知と技とは?
小路田泰直
7 つのアプローチ
大学
ならではの
学びとは?
研究院生活環境科学系教授
Episode 1
教養教育に新風を吹き込む
新教育プログラム
「パサージュ」
で
教育再編へ確かな一歩を踏み出す。
【特集】教育改革── 奈良女子大学
【特集】
教育改革
●問いをあたためる
●社会的実践に飛び込む
西村拓生
三成美保
教育システム研究開発センター長
京都大学大学院教育学研究科博士後期課
程中退。
専門は教育学、教育哲学。
京都大学
教育学部助手等を経て、2000年より奈良
女子大学文学部助教授、
教授。2012年セン
ター長に就任し、
学内の教育改革を推進。
専門教育と教養教育の両立を目指し
あえて二兎を追う
社会のあらゆる分野で加速するグローバリ
ゼ ー シ ョ ン の 波、 そ し て 秒 進 分 歩 と も 言 わ れ
る I T・科 学 テ ク ノ ロ ジ ー の 進 歩 で、 我 が 国
の 状 況 も 大 き く 変 化 し つ つ あ る。 次 代 を 担 う
リーダーの資質・能力の変革が求められる今、
各 方 面 で、 国 立 大 学 の 立 ち 位 置 や 教 育 方 針 に
つ い て の 論 議 が な さ れ る な ど、 様 々 な 教 育 改
革が進められている。
1 9 0 8 年、 女 子 教 員 の 養 成 を 目 的 に 設 置
された奈良女子高等師範学校を前身とする奈
良 女 子 大 学 は、 幼 稚 園 か ら 大 学 院 ま で 揃 っ た
教育体制を活かして次代を担う女性リーダー
の 育 成 に 尽 力 し て き た。 同 大 学 が 2 0 1 5 年
か ら 始 め た 新 し い 教 養 教 育 プ ロ グ ラ ム が 今、
注 目 さ れ て い る。 牽 引 す る の は、 同 大 学 に お
いて初等教育から高等教育まで一貫した改革
を追求するため、2004年に設立された「教
育システム研究開発センター」だ。同センター
の西村拓生センター長はこう話す。
「専門教育と教養教育の関係性を全学で議論
し ま し た。 議 論 を 始 め た 当 時、 研 究 大 学 と 教
養大学という少々乱暴な分け方がありました
が、 そ も そ も 教 養 を 欠 く 研 究 も、 逆 に 研 究 を
欠 く 教 養 も な い だ ろ う と。 我 々 に は あ え て 二
兎を追いたいという思いがありました」
研究と教育の関係を考える全学的な話し合
い は 3 年 に 渡 っ た。 そ う し て「 大 学 の 機 能 分
化状況における専門教育と教養教育の創造的
再構成」を立案。その後も議論を重ね、新しい
本 質 を 体 験 し て も ら う。 今 わ か っ て い る こ と
しれません」とも西村センター長は語る。
から好意的に受け入れられた理由の1つかも
教育カリキュラムを創造するに至ったという。
を 身 に つ け る こ と も、 未 だ わ か ら な い こ と を
ジェンダーという切り口で人間と社会を問
う 教 養 コ ア 科 目 を 担 当 す る 三 成 美 保 教 授 は、
てもらう場が「パサージュ」だ、
と西村センター
究者という「不思議な人たち」にまずは出会っ
と。 未 知 の 探 求 が お も し ろ く て 仕 方 の な い 研
ま た、 大 学 の 教 員 が 高 校 の 教 員 と 一 番 違 う
点 は、 教 育 者 で あ る と 同 時 に 研 究 者 で あ る こ
果が高いとも小路田副学長は語る。
入学1年目の一番大事な時期にゼミ体験さ
せ る こ と が、 学 生 を 伸 ば す た め に は と て も 効
スタイルを追求したいということです」
学はあくまでフンボルト型教育(*)の現代的
や す と い う の が 一 つ の 答 え だ と 思 い ま す。 本
そ の 弊 害 が 大 き い。そ れ に 対 し て、 ゼ ミ を 増
ます。日本の教育は前者が中心でしたが、今や、
ら れ な い し、 学 生 が 自 ら 議 論 し て 最 後 に 書 き
い点数を取ります。一方、ゼミは予習なしに出
生 が、 試 験 で 先 生 が 気 に 入 る 答 案 を 書 い て 高
た。 普 通 の 授 業 で は 受 動 的 に 講 義 を 聴 い た 学
ゼミを増やせば良いのではないかと考えまし
促 進 な ど、 色 々 言 わ れ て い ま す が、 要 す る に
も つ な が り ま す。 こ れ ら の 新 し い 取 組 に は、
からサテライト科目と呼ぶ関連科目の履修に
プ ロ ー チ を 通 じ て 深 め ら れ、 探 究 さ れ、 そ こ
哲 学 に も 広 が っ て い き ま す。 問 い は 7 つ の ア
すが、学生の問いは自然科学にも、歴史にも、
科学と思想』というコア科目を担当していま
私 は 理 学 部・ 文 学 部 の 教 員 と 共 に『 放 射 線 の
問 い を 立 て て 授 業 を 作 っ て い き ま す。 例 え ば
目 で す。 教 員 自 身 が 学 生 と 議 論 し な が ら 共 に
1つのテーマを多方面から深く学んでいく科
入り口。その先に、教養コア科目があります。
る と い う 発 想 で す。 パ サ ー ジ ュ は あ く ま で も
持てる知識を使いこなす能力こそが教養であ
識 の 内 容 で は な く 運 用 能 力 と し て 捉 え た い。
い う 時 代 で は あ り ま せ ん。 私 た ち は 教 養 を 知
今は一定の知識や常識を身につければ良いと
「『5つの問いと7つのアプローチ』は、
『問
い 』 の 形 で 教 養 教 育 の 理 念 を 表 現 し て い ま す。
のアプローチ』が掲げられている。(上図参照)
セ ミ ナ ー で、 理 念 と し て『 5 つ の 問 い と 7 つ
の学習といかに違うかを体験する少人数制の
注 目 さ れ る「 パ サ ー ジ ュ」 と は、 入 学 直 後
に 大 学 な ら で は の「 学 問 」 に 触 れ、 高 校 ま で
新教養教育の理念を象徴する
5つの問いと7つのアプローチ
達 な 新 風 は、 奈 良 女 子 大 学 の 歴 史 に 新 た な 伝
ろ う。 積 極 性 を 育 む「 パ サ ー ジ ュ」 の 自 由 闊
プログラムが順調に滑り出したことの証左だ
調 の 端 々 に う か が え る の は、 新 た な 教 養 教 育
学生と対話しながら教員自身もその授業を
楽 し み、 効 果 を 上 げ て い る こ と が 担 当 者 の 口
受けるよう新しい試みを拡充していきます」
ティブラーニングを重視したゼミの教育を必ず
「 や は り 自 発 性 を 尊 び た い。と 同 時 に 将 来 的
に は、 本 学 に 入 学 し た す べ て の 学 生 が、 ア ク
必修化しない理由を小路田副学長はこう語る。
履修経験者はもちろん、学内外から高く評価
さ れ て い る 教 養 教 育 プ ロ グ ラ ム だ が、 あ え て
た新しい関心につながっていくと思います」
ろ げ と い う こ と が と て も 大 事 で、 そ こ か ら ま
か が、 お ぼ ろ げ な が ら 見 え て く る。 そ の お ぼ
ン ト な の か、 何 が 学 問 の 世 界 の ト ピ ッ ク な の
段 階 で そ れ を 体 験 で き れ ば、 何 が 学 び の ポ イ
シ ョ ン し た り、 議 論 し た り …。 学 生 に と っ て
たちも確かな手応えを感じます。プレゼンテー
て 切 磋 琢 磨 す る こ と が で き る 科 目 で あ り、 私
そこには教員も含まれます。参加者が学び合っ
る。三成教授はこう語る。
に学びがあります」
長は語り、こう続ける。
参 加 す る 学 生 に と っ て も、 新 鮮 な こ と に 飛 び
「国立大学の自主的かつ自律的な改善と発展
と い う こ と で、 ア ク テ ィ ブ ラ ー ニ ン グ の 強 化
一 番 の 訓 練 は 失 敗 し つ つ 学 ぶ 経 験。 1 年 生 の
「 学 生 の 反 応 は す こ ぶ る 良 い で す。 7 つ の
アプローチに『他者から学ぶ』とありますが、
生が自ら考え発見する参加型授業を作ってい
「大学は何より未知のことを研究する場であ
り、 学 生 た ち に も そ の 過 程 を、 身 を も っ て 体
る小路田泰直副学長はこう語る。
験 し て も ら う こ と が 主 旨 な の で す。 研 究 者 の
統を築く地歩となるに違いない。
パ サ ー ジ ュ と 教 養 コ ア 科 目 を セ ッ ト に し、 学
探 究 す る た め に こ そ 必 要 な の で す。 そ の た め
大阪大学大学院法学研究科博士課程単位取
得満期退学、博士(法学)
。専門はジェンダー
法学、
ジェンダー史。2012年より奈良女子大
学研究院生活環境科学系教授。ジェンダー
法学会副理事長・日本学術会議第一部会員。
込 む『 キ ラ キ ラ 感 』 が あ り ま す。 そ れ も 学 生
ジ ュ」 と「 教 養 コ ア 科 目 」 だ。 キ ー マ ン で あ
*パサージュ:
「移行」
「街路」
を意味するフラ
ンス語。高校から大学への移
行 路 で あ り、 大 学 の 学 問 の
ショーケースという趣旨。
姿 勢 を 見 せ、 未 知 を 問 う 場 所 と し て の 大 学 の
豊かな学びを目指した「教養教育の再構築」
の結実として高く評価されているのが「パサー
教養教育再構築の模索・追究が
「パサージュ」として結実
●他者と学ぶ、
他者から学ぶ、
他者を学ぶ
京都大学大学院文学研究科博士課程単位
取得退学。専門は日本史、日本近代史。
1998年 よ り 奈 良 女 子 大 学 文 学 部 教 授。
2013年より副学長に就任し、大学教育
そのものの見直しに尽力。
●知の創造に参加する
3
4
*現代の大学教育の原型を作ったと言われる
W.v.フンボルトのゼミや実験室での研究を通じた教育。
●しっかり書く
理事・副学長
奈良で学ぶこと
を通じた世界への
貢献は?
あなたと未来の
世代にとって
学びの意味は?
女性
●本物に触れる
ならではの
知はあるか? ●背伸びする
5つの
問い
よく生きる
ために必要な
知と技とは?
小路田泰直
7 つのアプローチ
大学
ならではの
学びとは?
研究院生活環境科学系教授
Episode 1
教養教育に新風を吹き込む
新教育プログラム
「パサージュ」
で
教育再編へ確かな一歩を踏み出す。
【特集】教育改革── 奈良女子大学
【特集】
教育改革
徳井丞次 写真中央
武田三男 写真右
東京都立大学大学院社会科学研究
科博士課程修了。専門は刑事法学。
信州大学経済学部助手、専任講師
を経て2009年より准教授。新学
部設立を提案。
東京大学大学院経済学研究科博士
課程修了。専門はマクロ経済学、
国際金融。信州大学経済学部講師、
助教授、教授を経て2009年より
現職。経法学部設置準備委員長と
して、新学部の設立に尽力。
名古屋大学大学院工学研究科博士
課程修了。専門は物性Ⅰ、強誘電
体。信州大学教養部助教授、理学
部教授、理学部副学部長、理学部
長を経て、現職。新学部設立の全
学的な改組・再編に協力。
学際性
理学、工学、
医学など他の
学問分野のことを
概括的に学ぶ
最新のアクティブラーニングで
社会対応力に長けた人材育成を目指す
歳 人 口 の 減 少、 社 会 構 造 の 多 様 化 が 進 む
今、国立大学にも改革・発展が求められている。
各 大 学 の 強 み や 特 色 を 伸 ば し、 社 会 的 役 割 を
一層果たすべくミッションの再定義が行われ
るなど、人材の養成は喫緊の課題だ。
戦 後、 長 野 県 の 高 等 教 育 機 関 の 粋 を 集 め て
生 ま れ た 信 州 大 学 は、 豊 か な 自 然 環 境 で 醸 成
さ れ る 精 神 性 を 基 盤 に、 体 験 的 に 学 べ る 機 関
と し て 名 高 い。 同 大 学 は 新 時 代 を 見 据 え、 経
済 学 部 の 改 革 に 踏 み 切 っ た。 経 済 学 と 法 学 の
2 つ を 軸 に、 軸 足 性、 実 践 性、 学 際 性 の 3 つ
の 切 り 口 で カ リ キ ュ ラ ム を 再 構 築 し た「 経 法
学 部 」 が 2 0 1 6 年 に 始 動 す る。 専 門 教 育 に
裏打ちされた知識や分析能力をいかに社会で
活用できる応用力や実践力に融合昇華させる
の か、 新 学 部 の 設 置 準 備 委 員 長 の 徳 井 丞 次 経
済学部長に改革への背景と経緯を伺った。
「法学でも経済学でも、基礎を学び、それを
応用発展させるという接続性が弱かったこと
が、これまでの反省点です。2つの専門軸に、
軸足性、実践性、学際性を取り入れてカリキュ
ラ ム を 作 り 上 げ ま し た。 体 系 立 て て 基 礎 か
ら応用を学び、経験してもらいます。例えば、
経済学ではゲーム理論など非常に抽象的なこ
と か ら ス タ ー ト し ま す が、 多 く の 学 生 は そ こ
で つ ま ず き ま す。 統 計 学 も 教 え ま す が、 そ れ
ら の つ な が り は 教 え て い ま せ ん で し た。 学 問
の 分 野 で は、 そ れ ら を 人 間 行 動 で 試 し て 検 証
する実験経済学というものが生まれています。
複雑な課題を
読み解く
き る。 法 律 が 現 場 や 社 会 に ど う つ な が る の か
た も の が、 経 験 す る こ と で 結 び つ き を 実 感 で
ん。 条 文 な ど、 授 業 で は サ ー ッ と 流 れ て い
た り。 で も 作 る 技 術 を 学 ぶ 実 習 で は あ り ま せ
ま た、 文 系 で は 珍 し く 実 習 を し ま す。 検 察
や警察に出向いて実際に実況見分調書を作っ
向でやりとりできる仕組みを目指しています。
学 生 の 意 見 を 集 め た り、 大 人 数 を 相 手 に 双 方
ト ウ ェ ア を 作 ろ う と い う 発 想 で す。 授 業 中 に
会 科 学 に は 応 用 し に く い。 な ら ば 一 か ら ソ フ
め た い。 今 の デ ジ タ ル 教 育 は 語 学 中 心 で、 社
る べ く、 今 ま で に な い デ ジ タ ル 教 育 を 推 し 進
「これまでの講義は、大人数を相手に行うた
め、 講 義 中 に 双 方 向 の や り 取 り を 行 う こ と は
についてこう話す。
経 済 学 部 の 丸 橋 昌 太 郎 准 教 授 は、 法 学 教 育
におけるアクティブラーニングのアプローチ
での経験がきっと活きてくるでしょう」
社 会 に 出 て 違 う 形 の 経 験 に 遭 遇 し た 時、 大 学
気を配り、苦労した点は細部に宿っています。
ン グ。 法 学 に お い て も 同 様 で す。 我 々 が 最 も
取 り 入 れ て い ま す。 ま さ に ア ク テ ィ ブ ラ ー ニ
す る の が 現 実 で す。法 曹 養 成 教 育 は 法 科 大 学
生 は 法 曹 で は な く、公 務 員 や 民 間 企 業 に 就 職
「従来の法学部は、全ての学生が法曹を目指
すかのような授業が多かった。しかし多くの学
法学分野に連綿と引き継がれてきた学問体
系を大きく変えるということではないという。
をしていくことが最大の目的です」
学と法学の二本柱でしっかりとした人材育成
了 解 さ れ て ミ ッ シ ョ ン は 始 ま り ま し た。 経 済
るとの思いで、経済学の教員と意見を交わし、
という柱を立てればそれも本学の特色にな
て て 法 学 を 教 え た い 思 い が 強 か っ た。『 法 学 』
部 が 欲 し い と い う 声 が あ っ た。 我 々 も 体 系 立
ば れ て き た 面 が あ り、 高 校 の 教 員 か ら も 法 学
「法学を学びたいが県外に出られない高校生
に、 消 極 的 に 本 学 の 経 済 シ ス テ ム 法 学 科 が 選
橋准教授はこう話す。
め て 見 直 し、 考 え る 機 会 に な っ た と い う。 丸
経済学部の方向性を模索し始めた矢先、ミッ
シ ョ ン の 再 定 義 が あ っ た。 同 学 部 の 特 色 を 改
とへの対応が必要であると考えました」
けた人材へのニーズが質的に変化しているこ
割 の 高 ま り は 顕 著 で、 学 部 で の 法 学 教 育 を 受
を 増 す 社 会 で、 特 に 法 廷 外 の 法 務 が 果 た す 役
て は あ く ま で 経 済 学 で し た。 し か し、 複 雑 性
律 系 と 政 経 系 が 中 心 の 編 成 で す が、 学 位 と し
「経済学部の出発点である経済学科に加えて、
年 に 経 済 シ ス テ ム 法 学 科 を 設 け ま し た。 法
徳井学部長はこのように話す。
学 位 を 取 得 で き る 学 部 が 誕 生 す る こ と に な る。
り、 社 会 と の 結 び つ き も ま す ま す 強 固 に な る
経済学と法学が集約した経法学部の始動によ
州大学。新学位が生まれ、地域の期待も大きい。
ポ ッ ク と も い え よ う。 地 域 貢 献 で 知 ら れ る 信
学部を越えて協力し合うことで大学への貢
献 と い う ム ー ド が 生 ま れ た こ と が、 最 大 の エ
になったのではないでしょうか」
を 新 た に 立 ち 上 げ ま し た。 学 部 間 の 壁 が 低 く
「 今 回 の 改 革 で は、 教 員 の 組 織 を 学 部 / 学 科
か ら 切 り 離 し た、 教 員 が 所 属 す る 学 術 研 究 院
再編に踏み切ったと語り、こう続ける。
基づき、
「風通し」という面でも全学的な改組・
田 三 男 理 事・ 副 学 長 は ミ ッ シ ョ ン の 再 定 義 に
も の で は な い だ ろ う。 経 営 企 画 担 当 で あ る 武
し か し、 学 部 間 の 教 員 の 行 き 来 は そ う 容 易 な
学 際 性 を 伸 ば す こ と は 社 会 の 要 求 で あ り、
人 材 育 成 に 直 結 す る 施 策 の 1 つ と い え よ う。
と徳井学部長は話す。
カリキュラムに厚みを持たせることができた
経 済 学 に お い て も、 保 険 数 理 に つ い て 理 学
部 数 学 科 と の 共 同 で 教 育 プ ロ グ ラ ム を 模 索 し、
なったという。
系の学生に他分野の授業を提供できるように
る と い う 見 地 か ら、 全 学 的 な 協 力 の も と、 文
が 多 く 寄 せ ら れ た。 学 際 的 な 教 育 を 強 化 す
ル ギ ー が 目 立 ち、 概 括 的 な 理 解 を 求 め る 意 見
新学部設立に向けて行った行政や企業への
ヒ ア リ ン グ で は、 文 系 学 部 卒 業 者 の 数 字 ア レ
法学の学位誕生は
地域にとって大いなる福音
これがアクティブラーニングの狙いです」
分から勉強する姿勢につながっていくはずと。
難 し か っ た。 新 学 部 で は、 こ の 課 題 を 克 服 す
能 動 的 に 学 ぶ 仕 掛 け を 用 意 し ま し た。 今 の 勉
院 に 任 せ た 今、学 部 に 求 め ら れ る 法 学 教 育 と
新学部の柱として法学が立ち上がることで、
県 内 の 大 学 で は 初 め て の「 学 士( 法 学 )」 の
な る こ と で、 教 員 の 行 き 来 が と て も ス ム ー ズ
強 が ど う 社 会 に 活 き る の か を 体 験 す れ ば、 自
は何かというところにウェイトをおいてカリ
学んだ理論を現場に出て
実際に使いながら学ぶ
に違いない。
実践性
キュラムを構築したことが特色でもあります」
現場に
直接活かせる
18
今 回 の 改 革 で は、そ う し た 具 体 例 を 積 極 的 に
経済学と法学の
専門性を軸に体系的な
専門教育を学ぶ
教員の所属組織を立ち上げ
ボーダレスな教員の協力関係を確立
軸足性
経法
学部
体系的な
専門知識に基づく
信州大学
学術研究院准教授(社会科学系)、 副学長(広報担当)、学術研究院社 理事
(経営企画・財務・情報担当)
・
経済学部
会科学系長、経済学部長
副学長
丸橋昌太郎 写真左
5
6
95
Episode 2
2016年に始動する「経法学部」。
地域で学ぶ
アクティブラーニングを展開する。
【特集】教育改革── 信州大学
【特集】
教育改革
徳井丞次 写真中央
武田三男 写真右
東京都立大学大学院社会科学研究
科博士課程修了。専門は刑事法学。
信州大学経済学部助手、専任講師
を経て2009年より准教授。新学
部設立を提案。
東京大学大学院経済学研究科博士
課程修了。専門はマクロ経済学、
国際金融。信州大学経済学部講師、
助教授、教授を経て2009年より
現職。経法学部設置準備委員長と
して、新学部の設立に尽力。
名古屋大学大学院工学研究科博士
課程修了。専門は物性Ⅰ、強誘電
体。信州大学教養部助教授、理学
部教授、理学部副学部長、理学部
長を経て、現職。新学部設立の全
学的な改組・再編に協力。
学際性
理学、工学、
医学など他の
学問分野のことを
概括的に学ぶ
最新のアクティブラーニングで
社会対応力に長けた人材育成を目指す
歳 人 口 の 減 少、 社 会 構 造 の 多 様 化 が 進 む
今、国立大学にも改革・発展が求められている。
各 大 学 の 強 み や 特 色 を 伸 ば し、 社 会 的 役 割 を
一層果たすべくミッションの再定義が行われ
るなど、人材の養成は喫緊の課題だ。
戦 後、 長 野 県 の 高 等 教 育 機 関 の 粋 を 集 め て
生 ま れ た 信 州 大 学 は、 豊 か な 自 然 環 境 で 醸 成
さ れ る 精 神 性 を 基 盤 に、 体 験 的 に 学 べ る 機 関
と し て 名 高 い。 同 大 学 は 新 時 代 を 見 据 え、 経
済 学 部 の 改 革 に 踏 み 切 っ た。 経 済 学 と 法 学 の
2 つ を 軸 に、 軸 足 性、 実 践 性、 学 際 性 の 3 つ
の 切 り 口 で カ リ キ ュ ラ ム を 再 構 築 し た「 経 法
学 部 」 が 2 0 1 6 年 に 始 動 す る。 専 門 教 育 に
裏打ちされた知識や分析能力をいかに社会で
活用できる応用力や実践力に融合昇華させる
の か、 新 学 部 の 設 置 準 備 委 員 長 の 徳 井 丞 次 経
済学部長に改革への背景と経緯を伺った。
「法学でも経済学でも、基礎を学び、それを
応用発展させるという接続性が弱かったこと
が、これまでの反省点です。2つの専門軸に、
軸足性、実践性、学際性を取り入れてカリキュ
ラ ム を 作 り 上 げ ま し た。 体 系 立 て て 基 礎 か
ら応用を学び、経験してもらいます。例えば、
経済学ではゲーム理論など非常に抽象的なこ
と か ら ス タ ー ト し ま す が、 多 く の 学 生 は そ こ
で つ ま ず き ま す。 統 計 学 も 教 え ま す が、 そ れ
ら の つ な が り は 教 え て い ま せ ん で し た。 学 問
の 分 野 で は、 そ れ ら を 人 間 行 動 で 試 し て 検 証
する実験経済学というものが生まれています。
複雑な課題を
読み解く
き る。 法 律 が 現 場 や 社 会 に ど う つ な が る の か
た も の が、 経 験 す る こ と で 結 び つ き を 実 感 で
ん。 条 文 な ど、 授 業 で は サ ー ッ と 流 れ て い
た り。 で も 作 る 技 術 を 学 ぶ 実 習 で は あ り ま せ
ま た、 文 系 で は 珍 し く 実 習 を し ま す。 検 察
や警察に出向いて実際に実況見分調書を作っ
向でやりとりできる仕組みを目指しています。
学 生 の 意 見 を 集 め た り、 大 人 数 を 相 手 に 双 方
ト ウ ェ ア を 作 ろ う と い う 発 想 で す。 授 業 中 に
会 科 学 に は 応 用 し に く い。 な ら ば 一 か ら ソ フ
め た い。 今 の デ ジ タ ル 教 育 は 語 学 中 心 で、 社
る べ く、 今 ま で に な い デ ジ タ ル 教 育 を 推 し 進
「これまでの講義は、大人数を相手に行うた
め、 講 義 中 に 双 方 向 の や り 取 り を 行 う こ と は
についてこう話す。
経 済 学 部 の 丸 橋 昌 太 郎 准 教 授 は、 法 学 教 育
におけるアクティブラーニングのアプローチ
での経験がきっと活きてくるでしょう」
社 会 に 出 て 違 う 形 の 経 験 に 遭 遇 し た 時、 大 学
気を配り、苦労した点は細部に宿っています。
ン グ。 法 学 に お い て も 同 様 で す。 我 々 が 最 も
取 り 入 れ て い ま す。 ま さ に ア ク テ ィ ブ ラ ー ニ
す る の が 現 実 で す。法 曹 養 成 教 育 は 法 科 大 学
生 は 法 曹 で は な く、公 務 員 や 民 間 企 業 に 就 職
「従来の法学部は、全ての学生が法曹を目指
すかのような授業が多かった。しかし多くの学
法学分野に連綿と引き継がれてきた学問体
系を大きく変えるということではないという。
をしていくことが最大の目的です」
学と法学の二本柱でしっかりとした人材育成
了 解 さ れ て ミ ッ シ ョ ン は 始 ま り ま し た。 経 済
るとの思いで、経済学の教員と意見を交わし、
という柱を立てればそれも本学の特色にな
て て 法 学 を 教 え た い 思 い が 強 か っ た。『 法 学 』
部 が 欲 し い と い う 声 が あ っ た。 我 々 も 体 系 立
ば れ て き た 面 が あ り、 高 校 の 教 員 か ら も 法 学
「法学を学びたいが県外に出られない高校生
に、 消 極 的 に 本 学 の 経 済 シ ス テ ム 法 学 科 が 選
橋准教授はこう話す。
め て 見 直 し、 考 え る 機 会 に な っ た と い う。 丸
経済学部の方向性を模索し始めた矢先、ミッ
シ ョ ン の 再 定 義 が あ っ た。 同 学 部 の 特 色 を 改
とへの対応が必要であると考えました」
けた人材へのニーズが質的に変化しているこ
割 の 高 ま り は 顕 著 で、 学 部 で の 法 学 教 育 を 受
を 増 す 社 会 で、 特 に 法 廷 外 の 法 務 が 果 た す 役
て は あ く ま で 経 済 学 で し た。 し か し、 複 雑 性
律 系 と 政 経 系 が 中 心 の 編 成 で す が、 学 位 と し
「経済学部の出発点である経済学科に加えて、
年 に 経 済 シ ス テ ム 法 学 科 を 設 け ま し た。 法
徳井学部長はこのように話す。
学 位 を 取 得 で き る 学 部 が 誕 生 す る こ と に な る。
り、 社 会 と の 結 び つ き も ま す ま す 強 固 に な る
経済学と法学が集約した経法学部の始動によ
州大学。新学位が生まれ、地域の期待も大きい。
ポ ッ ク と も い え よ う。 地 域 貢 献 で 知 ら れ る 信
学部を越えて協力し合うことで大学への貢
献 と い う ム ー ド が 生 ま れ た こ と が、 最 大 の エ
になったのではないでしょうか」
を 新 た に 立 ち 上 げ ま し た。 学 部 間 の 壁 が 低 く
「 今 回 の 改 革 で は、 教 員 の 組 織 を 学 部 / 学 科
か ら 切 り 離 し た、 教 員 が 所 属 す る 学 術 研 究 院
再編に踏み切ったと語り、こう続ける。
基づき、
「風通し」という面でも全学的な改組・
田 三 男 理 事・ 副 学 長 は ミ ッ シ ョ ン の 再 定 義 に
も の で は な い だ ろ う。 経 営 企 画 担 当 で あ る 武
し か し、 学 部 間 の 教 員 の 行 き 来 は そ う 容 易 な
学 際 性 を 伸 ば す こ と は 社 会 の 要 求 で あ り、
人 材 育 成 に 直 結 す る 施 策 の 1 つ と い え よ う。
と徳井学部長は話す。
カリキュラムに厚みを持たせることができた
経 済 学 に お い て も、 保 険 数 理 に つ い て 理 学
部 数 学 科 と の 共 同 で 教 育 プ ロ グ ラ ム を 模 索 し、
なったという。
系の学生に他分野の授業を提供できるように
る と い う 見 地 か ら、 全 学 的 な 協 力 の も と、 文
が 多 く 寄 せ ら れ た。 学 際 的 な 教 育 を 強 化 す
ル ギ ー が 目 立 ち、 概 括 的 な 理 解 を 求 め る 意 見
新学部設立に向けて行った行政や企業への
ヒ ア リ ン グ で は、 文 系 学 部 卒 業 者 の 数 字 ア レ
法学の学位誕生は
地域にとって大いなる福音
これがアクティブラーニングの狙いです」
分から勉強する姿勢につながっていくはずと。
難 し か っ た。 新 学 部 で は、 こ の 課 題 を 克 服 す
能 動 的 に 学 ぶ 仕 掛 け を 用 意 し ま し た。 今 の 勉
院 に 任 せ た 今、学 部 に 求 め ら れ る 法 学 教 育 と
新学部の柱として法学が立ち上がることで、
県 内 の 大 学 で は 初 め て の「 学 士( 法 学 )」 の
な る こ と で、 教 員 の 行 き 来 が と て も ス ム ー ズ
強 が ど う 社 会 に 活 き る の か を 体 験 す れ ば、 自
は何かというところにウェイトをおいてカリ
学んだ理論を現場に出て
実際に使いながら学ぶ
に違いない。
実践性
キュラムを構築したことが特色でもあります」
現場に
直接活かせる
18
今 回 の 改 革 で は、そ う し た 具 体 例 を 積 極 的 に
経済学と法学の
専門性を軸に体系的な
専門教育を学ぶ
教員の所属組織を立ち上げ
ボーダレスな教員の協力関係を確立
軸足性
経法
学部
体系的な
専門知識に基づく
信州大学
学術研究院准教授(社会科学系)、 副学長(広報担当)、学術研究院社 理事
(経営企画・財務・情報担当)
・
経済学部
会科学系長、経済学部長
副学長
丸橋昌太郎 写真左
5
6
95
Episode 2
2016年に始動する「経法学部」。
地域で学ぶ
アクティブラーニングを展開する。
【特集】教育改革── 信州大学
競争相手は内ではなく外。
大学に望まれるのは
新陳代謝と改革のスピード。
と し て 、今 の 大 学 に 対 し て 、も ち ろ ん
理学系に対する位置づけは非常に重
と し て、 単 に 幅 広 い 教 養 だ け で な く、
荒波を経ないで大学院を出てきた人
よ ね 。 そ の 意 味 で「 社 会 的 経 験 と い う
が な く 、大 学 院 へ 行 く 人 は 当 然 い ま す
るかというと、弱いです。何が弱いか
く教育された人たちと競合させて戦え
れていき、現地の大卒者、あるいはよ
中西:日本の優秀な大卒者を海外に連
い点はあるのでしょうか。
た 。 そ こ で 、や は り あ ら た め て 経 済 界
ではないかという議論にもなりまし
ま せ て い た だ く と 、曲 解 さ れ て い る の
さ れ ま し た 。文 科 省 の 実 際 の 通 知 を 読
という議論が経団連の中で真剣にな
治 、い わ ゆ る 文 系 の 学 問 が 大 切 で あ る
術立国ですが、同時に文化、経済、政
は あ り ま せ ん 。も ち ろ ん 日 本 は 科 学 技
なくとも経団連として要望した事実
報 道 に な っ て い ま し た が 、経 済 界 、少
れが経済界の要請であるような新聞
減 す る と い う 文 科 省 の 方 針 に 対 し 、そ
中 西:ま ず 、 人 文 社 会 科 系 の 学 部 を 削
その辺りの話からお伺いします。
提 言 が あ り、 感 銘 を 受 け た の で す が、
系 の 一 連 の 議 論 に 対 し て 、経 団 連 か ら
大 西:2 0 1 5 年 9 月 に 人 文 社 会 科 学
くるし、他国の大学の卒業生も就職さ
で は、 他 か ら ヘ ッ ド ハ ン テ ィ ン グ し て
し、そのような時間はないという局面
いう教育プログラムは当然作るべきだ
に よ っ て は そ れ 以 上 経 験 さ せ る。 そ う
分 の タ ー ゲ ッ ト を 1 年 か 2 年 か、 場 合
ら海外のそういう環境に送り込み、自
し ゃ っ た よ う な 、こ れ か ら 必 要 な 能 力
て も 意 味 が あ る と 思 い ま す。 今 お っ
待 さ れ る 学 生 像 が 提 示 さ れ た の は 、と
い る と 思 う の で 、今 回 、経 団 連 版 の 期
な っ て い て 、そ こ が ず っ と 尾 を 引 い て
文社会科学系全体にもかかるように
大 学 院 を 廃 止 す る と い う 言 葉 が、 人
系 と 人 文 社 会 科 学 系 に つ い て、 学 部・
大 西:あ の 文 章 か ら す る と 、 教 員 養 成
ら、あの報道は遺憾に思います。
無 関 係 だ と い う 話 は よ く し ま す 。だ か
て 、 そ れ は 理 系・文 系 と い う こ と と は
取りまとめる能力が必要なのであっ
る 能 力 と 、多 く の 意 見 を 聞 い て そ れ を
論 す る と 、 自 分 で 問 題 を 発 見・発 信 す
す 。 実 際 、経 団 連 で 教 育 の 方 向 性 を 議
う こ と で、 あ の 提 言 に な っ た わ け で
国立大学協会副会長
豊橋技術科学大学長
い け れ ど も 、一 般 教 養 は 大 変 重 要 だ と
市 場 の 把 握 、知 財 や 法 律 、マ ネ ジ メ ン
の 層 」 と い う 見 方 は あ り ま す 。 今 、理
というと、やはり典型的な優等生像み
人文社会科学系削減の報道に
経団連自らが提言した
一般教養の重要性
トなども大切だと思うのですが。
学系は大半が大学院に進学しますよ
た い な も の が 出 て き て、 問 題 を で き る
や経済的知識は入社後に身につける
く 勤 務 す る 人 が 多 い の で 、専 門 的 知 識
あ り ま し た 。日 本 で は 1 つ の 会 社 に 長
分 野 の 知 識 を 修 得 す る 」と い う 表 現 が
大 学 院 で は 、学 生 が そ れ ぞ れ 志 す 専 門
段階でしっかり身につけた上で、大学・
的に発信する力などを初等中等教育
シ ョ ン 能 力、自 ら の 考 え や 意 見 を 論 理
解 決 力、外 国 語 に よ る コ ミ ュ ニ ケ ー
徳 心 に 加 え、幅 広 い 教 養、課 題 発 見・
大 西:提 言 の 中 に 「 基 礎 的 な 体 力 、 公
論にグレ―ドアップしないとダメだと
ションをどうやって高めるかという議
だけでなく、海外のグローバルなポジ
ト大学に特権を与え、さらに強くする
特定研究大学制度
(注 )
などは、
エリー
か と い う 議 論 に な る わ け で す が、特 に
の国立大学の制度はこのままでいいの
対 優 位 に あ る わ け で す よ。そ こ で、今
算も重点的に配備されてきたので、絶
重点で大学制度が拡充してきたし、予
中西:私見を言うと、日本は国立大学
価というのは、どのような感じですか。
大西:国立大学全体に対する企業の評
中西:両方ですよ。それを全て会社で
の方が手っ取り早いと考えるのか。
か、海外の人材をその分採用して、そ
採用してから補っていこうとされるの
国際的な規格の中で足りないところを
大 西: 日 本 の 企 業 は 日 本 人 の 学 生 に、
険性があるので、これは問題ですよね。
いうと、使われる側になってしまう危
どどっちが高いポジションに就くかと
早 さ や 正 確 さ は 凄 い わ け で す よ。 だ け
特定されている時の、日本人の答える
とが比較としてあるわけです。問題が
方がチャンスをたくさん取っていくこ
カルチャーという点で見ると、彼らの
て、我々に任せてほしいと頑張る社会
中西:マーケティングの機能というの
ついてお伺いしたいのですが。
辿るべき国際化の可能性や課題などに
したご経験から日本の大学がこれから
の 国 際 化 が 早 か っ た わ け で す が、 そ う
テ ー マ だ と 思 い ま す。 企 業 は 当 然 市 場
ま す 必 要 に な る 中 で、 国 際 化 は 重 要 な
が あ る と い え る の で、 海 外 展 開 が ま す
に 留 学 生 は あ る 意 味、 無 限 に 可 能 性
学生候補者が結構いるわけですね。特
の 大 学 院 進 学 な ど、 ま だ 発 掘 し て な い
況ですが、留学生、社会人、女子大生
がっても縮小していかざるを得ない状
学全体としては、どんなに進学率が上
いるという大きな課題があります。大
大 西: 今 の 日 本 は
7
いうことを宣言する必要があるとい
中 西:ま っ た く そ の 通 り で す 。 経 団 連
ね 、特 に 大 企 業 志 望 の 人 た ち は 。 そ う
大西 隆
は 経 営 者 の 集 り で す か ら 、常 に 話 題 に
い う 人 は 、本 当 に 純 粋 培 養 的 な 人 が 多
せて、彼らに課題を与えると。両方で
と い う 考 え も あ り ま す が 、経 済 界 で は
思います。戦う相手は海外ですから。
教 育 で き る か と い う と、 難 し い と 思
18
[対談]
なるのは全体をリードしながら市場
だけ解ける範囲に設定して、しかも正
すよね。できるだけ多様性のあるカル
一 般 社 団 法 人 日本 経 済 団 体 連 合 会 副 会 長
株 式 会 社 日立 製 作 所 執 行 役 会 長 兼 C E O
を ど う 見 て い く の か 、そ の 中 で 強 み を
い 。そ れ に 対 す る 批 判 は あ り ま す 。で
解 を 求 め る。 正 解 が わ か ら な く て も
そのための投資をどう展開していく
中西 宏明
発 揮 で き る 道 筋 を ど う 立 て て い く か、
もそれは期待しないっていうことと
チ ャ ー に し て か な い と、 も う 競 争 力 を
か、そう思っていても発信しないとか、 持てないと思います。
やってみようというチャレンジ精神と
は全然違います。
そ う し た 点 で 明 ら か に 差 が あ り ま す。
そ れ は 大 学 制 度 の 問 題 か と い う と、 お
そらく日本のカルチャーとも関連しま
大 学 卒 の 若 者 に 、知 識 を 吸 収 す る 能 力
大西:その意味で、日本の大企業は日
う。ではどこで鍛えるかというと、必
国立大学に要求されるのは
グローバル人材の育成。
戦う相手は国内ではなく海外
か 、そ れ を ス テ ー ク ホ ル ダ ー に ど う 説
明 し て い く か な ど 、全 体 の 問 題 を 解 決
す る だ け で な く 、そ れ を 発 信 し て い く
と こ ろ に 、日 本 の 今 後 を 左 右 す る 要 因
が あ る の で は な い か と い う こ と を 、常
や前向きな姿勢などは期待するけれ
立も含めて海外にも企業展開されてい
国際化に向けた日本の課題は
改革のスピードアップと
共通言語の習得
ど 、知 識 そ の も の は あ ま り 期 待 し て い
て、広く人材を集めておられる。海外
は最近、相当意識されていますが、ま
すよね。人間として正しいかは別にし
な い 、と い う 感 は あ る の で し ょ う か ?
ずしも大学ではなく研究所でもいいか
に議論しているわけです。
中 西:そ れ は な い と 思 い ま す 。 た だ 今
と比較して日本の大学出身者に足りな
歳人口が減少して
の 日 本 の 大 学 教 育 の 中 で、 働 く 経 験
1
8
企業のトップとして辣腕を振るい、日本経済の再生に向けて、経団連
副会長・教育問題委員長として尽力する中西宏明日立製作所会長兼
CEO。
片や新時代を切り開く人材育成に向け、大学改革に挑む豊橋技
術科学大学の大西隆学長。加速するグローバル社会にいかに対応すべ
きか、
大学と企業のあり方をお二人に語っていただいた。
競争相手は内ではなく外。
大学に望まれるのは
新陳代謝と改革のスピード。
と し て 、今 の 大 学 に 対 し て 、も ち ろ ん
理学系に対する位置づけは非常に重
と し て、 単 に 幅 広 い 教 養 だ け で な く、
荒波を経ないで大学院を出てきた人
よ ね 。 そ の 意 味 で「 社 会 的 経 験 と い う
が な く 、大 学 院 へ 行 く 人 は 当 然 い ま す
るかというと、弱いです。何が弱いか
く教育された人たちと競合させて戦え
れていき、現地の大卒者、あるいはよ
中西:日本の優秀な大卒者を海外に連
い点はあるのでしょうか。
た 。 そ こ で 、や は り あ ら た め て 経 済 界
ではないかという議論にもなりまし
ま せ て い た だ く と 、曲 解 さ れ て い る の
さ れ ま し た 。文 科 省 の 実 際 の 通 知 を 読
という議論が経団連の中で真剣にな
治 、い わ ゆ る 文 系 の 学 問 が 大 切 で あ る
術立国ですが、同時に文化、経済、政
は あ り ま せ ん 。も ち ろ ん 日 本 は 科 学 技
なくとも経団連として要望した事実
報 道 に な っ て い ま し た が 、経 済 界 、少
れが経済界の要請であるような新聞
減 す る と い う 文 科 省 の 方 針 に 対 し 、そ
中 西:ま ず 、 人 文 社 会 科 系 の 学 部 を 削
その辺りの話からお伺いします。
提 言 が あ り、 感 銘 を 受 け た の で す が、
系 の 一 連 の 議 論 に 対 し て 、経 団 連 か ら
大 西:2 0 1 5 年 9 月 に 人 文 社 会 科 学
くるし、他国の大学の卒業生も就職さ
で は、 他 か ら ヘ ッ ド ハ ン テ ィ ン グ し て
し、そのような時間はないという局面
いう教育プログラムは当然作るべきだ
に よ っ て は そ れ 以 上 経 験 さ せ る。 そ う
分 の タ ー ゲ ッ ト を 1 年 か 2 年 か、 場 合
ら海外のそういう環境に送り込み、自
し ゃ っ た よ う な 、こ れ か ら 必 要 な 能 力
て も 意 味 が あ る と 思 い ま す。 今 お っ
待 さ れ る 学 生 像 が 提 示 さ れ た の は 、と
い る と 思 う の で 、今 回 、経 団 連 版 の 期
な っ て い て 、そ こ が ず っ と 尾 を 引 い て
文社会科学系全体にもかかるように
大 学 院 を 廃 止 す る と い う 言 葉 が、 人
系 と 人 文 社 会 科 学 系 に つ い て、 学 部・
大 西:あ の 文 章 か ら す る と 、 教 員 養 成
ら、あの報道は遺憾に思います。
無 関 係 だ と い う 話 は よ く し ま す 。だ か
て 、 そ れ は 理 系・文 系 と い う こ と と は
取りまとめる能力が必要なのであっ
る 能 力 と 、多 く の 意 見 を 聞 い て そ れ を
論 す る と 、 自 分 で 問 題 を 発 見・発 信 す
す 。 実 際 、経 団 連 で 教 育 の 方 向 性 を 議
う こ と で、 あ の 提 言 に な っ た わ け で
国立大学協会副会長
豊橋技術科学大学長
い け れ ど も 、一 般 教 養 は 大 変 重 要 だ と
市 場 の 把 握 、知 財 や 法 律 、マ ネ ジ メ ン
の 層 」 と い う 見 方 は あ り ま す 。 今 、理
というと、やはり典型的な優等生像み
人文社会科学系削減の報道に
経団連自らが提言した
一般教養の重要性
トなども大切だと思うのですが。
学系は大半が大学院に進学しますよ
た い な も の が 出 て き て、 問 題 を で き る
や経済的知識は入社後に身につける
く 勤 務 す る 人 が 多 い の で 、専 門 的 知 識
あ り ま し た 。日 本 で は 1 つ の 会 社 に 長
分 野 の 知 識 を 修 得 す る 」と い う 表 現 が
大 学 院 で は 、学 生 が そ れ ぞ れ 志 す 専 門
段階でしっかり身につけた上で、大学・
的に発信する力などを初等中等教育
シ ョ ン 能 力、自 ら の 考 え や 意 見 を 論 理
解 決 力、外 国 語 に よ る コ ミ ュ ニ ケ ー
徳 心 に 加 え、幅 広 い 教 養、課 題 発 見・
大 西:提 言 の 中 に 「 基 礎 的 な 体 力 、 公
論にグレ―ドアップしないとダメだと
ションをどうやって高めるかという議
だけでなく、海外のグローバルなポジ
ト大学に特権を与え、さらに強くする
特定研究大学制度
(注 )
などは、
エリー
か と い う 議 論 に な る わ け で す が、特 に
の国立大学の制度はこのままでいいの
対 優 位 に あ る わ け で す よ。そ こ で、今
算も重点的に配備されてきたので、絶
重点で大学制度が拡充してきたし、予
中西:私見を言うと、日本は国立大学
価というのは、どのような感じですか。
大西:国立大学全体に対する企業の評
中西:両方ですよ。それを全て会社で
の方が手っ取り早いと考えるのか。
か、海外の人材をその分採用して、そ
採用してから補っていこうとされるの
国際的な規格の中で足りないところを
大 西: 日 本 の 企 業 は 日 本 人 の 学 生 に、
険性があるので、これは問題ですよね。
いうと、使われる側になってしまう危
どどっちが高いポジションに就くかと
早 さ や 正 確 さ は 凄 い わ け で す よ。 だ け
特定されている時の、日本人の答える
とが比較としてあるわけです。問題が
方がチャンスをたくさん取っていくこ
カルチャーという点で見ると、彼らの
て、我々に任せてほしいと頑張る社会
中西:マーケティングの機能というの
ついてお伺いしたいのですが。
辿るべき国際化の可能性や課題などに
したご経験から日本の大学がこれから
の 国 際 化 が 早 か っ た わ け で す が、 そ う
テ ー マ だ と 思 い ま す。 企 業 は 当 然 市 場
ま す 必 要 に な る 中 で、 国 際 化 は 重 要 な
が あ る と い え る の で、 海 外 展 開 が ま す
に 留 学 生 は あ る 意 味、 無 限 に 可 能 性
学生候補者が結構いるわけですね。特
の 大 学 院 進 学 な ど、 ま だ 発 掘 し て な い
況ですが、留学生、社会人、女子大生
がっても縮小していかざるを得ない状
学全体としては、どんなに進学率が上
いるという大きな課題があります。大
大 西: 今 の 日 本 は
7
いうことを宣言する必要があるとい
中 西:ま っ た く そ の 通 り で す 。 経 団 連
ね 、特 に 大 企 業 志 望 の 人 た ち は 。 そ う
大西 隆
は 経 営 者 の 集 り で す か ら 、常 に 話 題 に
い う 人 は 、本 当 に 純 粋 培 養 的 な 人 が 多
せて、彼らに課題を与えると。両方で
と い う 考 え も あ り ま す が 、経 済 界 で は
思います。戦う相手は海外ですから。
教 育 で き る か と い う と、 難 し い と 思
18
[対談]
なるのは全体をリードしながら市場
だけ解ける範囲に設定して、しかも正
すよね。できるだけ多様性のあるカル
一 般 社 団 法 人 日本 経 済 団 体 連 合 会 副 会 長
株 式 会 社 日立 製 作 所 執 行 役 会 長 兼 C E O
を ど う 見 て い く の か 、そ の 中 で 強 み を
い 。そ れ に 対 す る 批 判 は あ り ま す 。で
解 を 求 め る。 正 解 が わ か ら な く て も
そのための投資をどう展開していく
中西 宏明
発 揮 で き る 道 筋 を ど う 立 て て い く か、
もそれは期待しないっていうことと
チ ャ ー に し て か な い と、 も う 競 争 力 を
か、そう思っていても発信しないとか、 持てないと思います。
やってみようというチャレンジ精神と
は全然違います。
そ う し た 点 で 明 ら か に 差 が あ り ま す。
そ れ は 大 学 制 度 の 問 題 か と い う と、 お
そらく日本のカルチャーとも関連しま
大 学 卒 の 若 者 に 、知 識 を 吸 収 す る 能 力
大西:その意味で、日本の大企業は日
う。ではどこで鍛えるかというと、必
国立大学に要求されるのは
グローバル人材の育成。
戦う相手は国内ではなく海外
か 、そ れ を ス テ ー ク ホ ル ダ ー に ど う 説
明 し て い く か な ど 、全 体 の 問 題 を 解 決
す る だ け で な く 、そ れ を 発 信 し て い く
と こ ろ に 、日 本 の 今 後 を 左 右 す る 要 因
が あ る の で は な い か と い う こ と を 、常
や前向きな姿勢などは期待するけれ
立も含めて海外にも企業展開されてい
国際化に向けた日本の課題は
改革のスピードアップと
共通言語の習得
ど 、知 識 そ の も の は あ ま り 期 待 し て い
て、広く人材を集めておられる。海外
は最近、相当意識されていますが、ま
すよね。人間として正しいかは別にし
な い 、と い う 感 は あ る の で し ょ う か ?
ずしも大学ではなく研究所でもいいか
に議論しているわけです。
中 西:そ れ は な い と 思 い ま す 。 た だ 今
と比較して日本の大学出身者に足りな
歳人口が減少して
の 日 本 の 大 学 教 育 の 中 で、 働 く 経 験
1
8
企業のトップとして辣腕を振るい、日本経済の再生に向けて、経団連
副会長・教育問題委員長として尽力する中西宏明日立製作所会長兼
CEO。
片や新時代を切り開く人材育成に向け、大学改革に挑む豊橋技
術科学大学の大西隆学長。加速するグローバル社会にいかに対応すべ
きか、
大学と企業のあり方をお二人に語っていただいた。
英語で単位が取得できる大学も出てき
な い と ね。 徐 々 に 英 語 で 講 義 を や り、
大西:改革も建前じゃなく本音でやら
日 本 人 は 英 語 で 講 義 が 聞 け た り、 コ
外国人には日本語を覚えてもらおうと。
バ イ リ ン ガ ル、 日 本 語 も 大 事 な の で
話できない人はもういらない」という
い 環 境 の 中 で 考 え る な ら、「 英 語 で 会
の業界の、市場で戦わなければいけな
中西:これは難しい話ですよね。我々
われますか。
どういうことを考えていくべきだと思
よね。自分と競争しているのではなく、
くなったというのでは意味がないです
中西:でも、そのスピードが前より良
少し変わっていくと思うんですよ。
きています。そういう点では大学生も
勢も含めて大学もかなり本気になって
と い う こ と を 課 し て ま す。 客 観 的 な 情
とんど意味がない。
「どれだけ良くなっ
どれだけ変わったかということは、ほ
ら見てのスピードだから、自分たちが
に矢面に立たされるんですね。周囲か
か、
「事業計画通りにいかない」と常
い話ではないと思うんです。
が起こらないと絶対ダメなんです。
ある意味で、企業でいえば、新陳代謝
いう意識が、少しあるのかなあと。
6)など国から企業や大学に大型研究
省 の プ ロ グ ラ ム が あ っ て、 少 な く と も
ル大学創設支援」
( 注 2) と い う 文 科
てトップだから、極端な言い方だけど。 大 西: 例 え ば 今、
「スーパーグローバ
中西:トップの大学は何もしなくたっ
予 算 が 付 く よ う に な っ た と。 だ か ら 企
ますね。
を 持 っ て ま す ね。 や は り ア ピ ー ル 力 み
採 ろ う と す る。 だ か ら 中 国 人 は 枠 組 み
ライだから、伸びる世界からたくさん
り ま す。 特 に ア メ リ カ の 大 学 は 結 構 ド
あり、指導する先生がいて、あちらは
営 費 を 日 立 が 出 し、 学 内 に 研 究 ラ ボ が
ブリッジ大学と我々の日立ラボは、運
いとやりにくいんですね。例えばケン
味で今後の技術開発、ビジネスモデル
大西:そういうのがきっかけで、少し
です。
作ろうと考える、そういう人の活躍が
たのですが、組織と組織でつながりを
ルすることが不得手というのが一般的
製作所の業績回復を牽引し、グローバル時代を生き抜くため辣腕を振るう。2014年より
経済団体連合会副会長・教育問題委員長として大学と企業との連携を熟慮する。
の 中 で も 海 外 に 留 学 し た 者 は、 結 構 凄
大西:最後に文科省の「トビタテ!留
いて競争しろということですね。
国立大学は内向いて競争するな、外向
中 西 さ ん か ら の メ ッ セ ー ジ は、 日 本 の
大 西: 色 々 あ り が と う ご ざ い ま し た。
学生 JAPAN」
(注7)で、企業が留
数校を公募・指定し、トップ型・
グローバル化牽引型に分けて国が支援する事業。
目指し、国公私立大学から
注2/スーパーグローバル大学創設支援:大学改革と国際化を
る制度。
テーマとして、国立大学の一部に収益事業や資金運用を認め
注1/特定研究大学(仮称)制度:国の大学改革に向けた新しい
学 の サ ポ ー ト を さ れ て い ま す よ ね。 留
学についてひと言お願いします。中西
数年前ですけ
さん自身、留学のご経験はありますか。
中西:あります。もう
ど。スタンフォード大学です。
大西:日本人にとって留学というのは
あらゆる分野の独創的・先駆的研究者TOP
名を公募・選
注3/ FIRST(最先端研究開発支援プログラム)
:国内の
出し、助成する制度。
2014年から始めた官民協働海外留学支援制度。
指 し、 大 学・ 大 学 院 な ど に 在 籍 す る 日 本 人 学 生 を 対 象 に、
注 7 / ト ビ タ テ! 留 学JAPAN: グ ロ ー バ ル 人 材 育 成 を 目
インパクトな挑戦的研究開発を推進するプログラム。
な科学技術イノベーションの創出を目指しハイリスク・ハイ
注6/ ImPACT(革命的研究開発推進プログラム)
:革新的
礎研究から事業化まで研究開発を推進するプログラム。
科学技術・イノベーション会議が府省・分野の枠を越えて基
注5/ SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)
:総合
革などの研究大学強化支援を目的に創設されたセンター。
大学の研究マネジメント人材の確保や集中的な研究環境改
注4/ RAC(研究推進アドミニストレーションセンター)
:
30
どうですか?
年以
中西:するべきだと思いますよ。我が
社では、社費留学という制度を
人
大学の受け入れ体制は考える必要があ
りに社会観が変わりますから。ただし、
年ですけど、留学した人たちはそれな
と を 組 み 立 て ま す。 今 は 標 準 と し て 2
と、自分で大学を探して、やりたいこ
程 度 募 集 し て ま す。 社 内 の 試 験 を 通 る
上前からやっていて、今でも年間
40
30
30
30
9
ていますが、言葉の問題という点では、 ミュニケーションできるようにしよう
感じですね。英語は世界の共通言語で
どこと競争しているのかを考えないと。
す。マーケットが生んだトラブルなど
すから、その意味では少なくとも大学
は、そう受け止められるわけです。い
最近中国の大学のトップクラスの卒業
ても、相手がもっと良くなったらダメ
か に グ ロ ー バ ル に や っ て い け る か。 そ
生 の 英 語 っ て 結 構 上 手 い で す よ。 色 々
なんだから」と私も社内で言うんです。
れは必然的に文化と価値の問題になっ
院の講義の半分位は英語でやってはど
ず、言語の問題、プログラムの面白さ
大西:アメリカでは、結構評判が高い
会話できることが重要なのかというと、 大西:人材育成の話とともに、大学改
て、外国語がネイティブと同じように
革のもう1つの切り口が研究成果です
なことに取り組んでいるのは理解して
や 学 生 か ら 見 た 時 の 魅 力 の 問 題 な ど、
海外の大学が新しく出てきますが、日
ね。大学の研究成果を形にする意味で、
うかと思います。だけどそれが世の中
課題はたくさんあると思います。経団
本の大学はわりと固定していて、偏差
あ る 程 度 の 理 解 力、 ス ピ ー ク ア ウ ト す
で ど う 受 け 止 め ら れ る の か、 我 々 だ っ
連の教育問題委員長をやっている今の
値が変わらないんですね。
る力は要求されますが、そこから先は
ますが、残念ながらそのスピードが十
立場で、各大学の学長や教授などにお
中西:そこが問題なんです。最初から
ていかにグローバル時代になったとし
尋ねすると、学内の取組に対する全体
平均値で競っているから。
もう少し組織的に産学連携してもいい
分ではないんですよね。
意識や競争意識などに関して少し疑問
言語の巧拙ではなくて、中身になるわ
ても、企業の国籍ってやはりあるんで
に思うところがあります。
大西:そういう点では大学に無力感と
かと思うのですが、どう思われますか。
大学院生を送り込み、こちらも社員を
大西:今まで組織としてきちんとやる
業と大学の関係を太くしていく余地は
国の支援で進む共同研究。
企業との連携強化で、
大学は変わる
大西:耳が痛いです。
けですよ。だからその水準やターゲッ
送り込むという風に。向こうは最初か
十分あるのではないかと思います。
が ど こ ま で オ ー プ ン な の か。 オ ー プ ン
内向きといわれる今の学生が外向きに
だったという面はありますよね。最近
どういう“種”があるかを企業に紹介
それが追いついているかどうかですね。 対外関係の共同研究を専門に、大学に
イノベーションという言葉がこれから
大 西: 日 本 に も 制 度 は あ る ん で す が、
中西:他にも北大では、陽子線治療の
す る 職 種 の 人 が 7、8 人 い ま す。 今 ま
変わっていければいいですよね。
たいなものが本当に強烈にないとダメ
分野で動くターゲットにもプロトンを
の大学にも重要な意味を持ってくると
うちの大学でも RAC
(注4)ができて、 中西:まったくそう思います。その意
照射できる仕掛けを共同開発しようと、 で 防 衛 的 観 点 で の 知 財 の 専 門 家 は い
中西:今の若い人たちは、自分をアピー
うちの研究所の人間が
て、2010年から執行役社長。2014年執行役会長に就任。豊富な海外経験を活かし、日立
傾 向 だ と 思 う ん で す が、 日 立 グ ル ー プ
います。こういう実績が FIRST
(注
リング学修士課程修了。日立製作所欧州総代表、執行役常務、専務、米国総代表、副社長を経
に 選 ば れて、 研 究 費 も
科卒業後、日立製作所入社。1970年スタンフォード大学大学院コンピュータエンジニア
3)の TOP
いですよ、逞しいし。
日立製作所執行役会長兼CEO。1946年神奈川県横浜市生まれ。東京大学工学部電気工学
最近は SIP(注5)、ImPACT(注
進めば、大学は変わると思っています。 留学で大きく変わる社会観。
大学も企業も、
もっと外に向かうべき
人近く行って
思います。
共 同 研 究 を 発 展 的 に や っ て い く の に、
らプログラムとして持ってるんですね。 ような仕組みが少なくて、先生ベース
「社長が言っても全然変化がない」と
いうか、何をやってもそう変わらない
より国立大学協会副会長として大学改革に尽力する。
中 西: 企 業 は そ れ で 苦 労 し て い ま す。
2011年日本学術会議会長、2014年豊橋技術科学大学長に就任。2015年
中 西: 我 々 が 最 初 に あ る 地 域 で 事 業 を
工学部助教授・教授を経て、1996年から国連大学高等研究所教授を兼任。
す る 時 に、 大 学 と の コ ネ ク シ ョ ン が な
サチューセッツ工科大学客員研究員、アジア工科大学院助教授、東京大学
トをどこに置くのかということのコン
大学大学院工学系研究科博士課程修了。長岡技術科学大学助手・助教授、マ
センサスを作っていくしかないと思い
豊橋技術科学大学長。1948年愛媛県松山市生まれ。専門は都市工学。東京
と。自分のところはこの位だと。そう
大西 隆(Takashi Onishi)
(Hiroaki Nakanishi)
中西宏明
10
10
いただいています。だから全くできな
30
英語で単位が取得できる大学も出てき
な い と ね。 徐 々 に 英 語 で 講 義 を や り、
大西:改革も建前じゃなく本音でやら
日 本 人 は 英 語 で 講 義 が 聞 け た り、 コ
外国人には日本語を覚えてもらおうと。
バ イ リ ン ガ ル、 日 本 語 も 大 事 な の で
話できない人はもういらない」という
い 環 境 の 中 で 考 え る な ら、「 英 語 で 会
の業界の、市場で戦わなければいけな
中西:これは難しい話ですよね。我々
われますか。
どういうことを考えていくべきだと思
よね。自分と競争しているのではなく、
くなったというのでは意味がないです
中西:でも、そのスピードが前より良
少し変わっていくと思うんですよ。
きています。そういう点では大学生も
勢も含めて大学もかなり本気になって
と い う こ と を 課 し て ま す。 客 観 的 な 情
とんど意味がない。
「どれだけ良くなっ
どれだけ変わったかということは、ほ
ら見てのスピードだから、自分たちが
に矢面に立たされるんですね。周囲か
か、
「事業計画通りにいかない」と常
い話ではないと思うんです。
が起こらないと絶対ダメなんです。
ある意味で、企業でいえば、新陳代謝
いう意識が、少しあるのかなあと。
6)など国から企業や大学に大型研究
省 の プ ロ グ ラ ム が あ っ て、 少 な く と も
ル大学創設支援」
( 注 2) と い う 文 科
てトップだから、極端な言い方だけど。 大 西: 例 え ば 今、
「スーパーグローバ
中西:トップの大学は何もしなくたっ
予 算 が 付 く よ う に な っ た と。 だ か ら 企
ますね。
を 持 っ て ま す ね。 や は り ア ピ ー ル 力 み
採 ろ う と す る。 だ か ら 中 国 人 は 枠 組 み
ライだから、伸びる世界からたくさん
り ま す。 特 に ア メ リ カ の 大 学 は 結 構 ド
あり、指導する先生がいて、あちらは
営 費 を 日 立 が 出 し、 学 内 に 研 究 ラ ボ が
ブリッジ大学と我々の日立ラボは、運
いとやりにくいんですね。例えばケン
味で今後の技術開発、ビジネスモデル
大西:そういうのがきっかけで、少し
です。
作ろうと考える、そういう人の活躍が
たのですが、組織と組織でつながりを
ルすることが不得手というのが一般的
製作所の業績回復を牽引し、グローバル時代を生き抜くため辣腕を振るう。2014年より
経済団体連合会副会長・教育問題委員長として大学と企業との連携を熟慮する。
の 中 で も 海 外 に 留 学 し た 者 は、 結 構 凄
大西:最後に文科省の「トビタテ!留
いて競争しろということですね。
国立大学は内向いて競争するな、外向
中 西 さ ん か ら の メ ッ セ ー ジ は、 日 本 の
大 西: 色 々 あ り が と う ご ざ い ま し た。
学生 JAPAN」
(注7)で、企業が留
数校を公募・指定し、トップ型・
グローバル化牽引型に分けて国が支援する事業。
目指し、国公私立大学から
注2/スーパーグローバル大学創設支援:大学改革と国際化を
る制度。
テーマとして、国立大学の一部に収益事業や資金運用を認め
注1/特定研究大学(仮称)制度:国の大学改革に向けた新しい
学 の サ ポ ー ト を さ れ て い ま す よ ね。 留
学についてひと言お願いします。中西
数年前ですけ
さん自身、留学のご経験はありますか。
中西:あります。もう
ど。スタンフォード大学です。
大西:日本人にとって留学というのは
あらゆる分野の独創的・先駆的研究者TOP
名を公募・選
注3/ FIRST(最先端研究開発支援プログラム)
:国内の
出し、助成する制度。
2014年から始めた官民協働海外留学支援制度。
指 し、 大 学・ 大 学 院 な ど に 在 籍 す る 日 本 人 学 生 を 対 象 に、
注 7 / ト ビ タ テ! 留 学JAPAN: グ ロ ー バ ル 人 材 育 成 を 目
インパクトな挑戦的研究開発を推進するプログラム。
な科学技術イノベーションの創出を目指しハイリスク・ハイ
注6/ ImPACT(革命的研究開発推進プログラム)
:革新的
礎研究から事業化まで研究開発を推進するプログラム。
科学技術・イノベーション会議が府省・分野の枠を越えて基
注5/ SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)
:総合
革などの研究大学強化支援を目的に創設されたセンター。
大学の研究マネジメント人材の確保や集中的な研究環境改
注4/ RAC(研究推進アドミニストレーションセンター)
:
30
どうですか?
年以
中西:するべきだと思いますよ。我が
社では、社費留学という制度を
人
大学の受け入れ体制は考える必要があ
りに社会観が変わりますから。ただし、
年ですけど、留学した人たちはそれな
と を 組 み 立 て ま す。 今 は 標 準 と し て 2
と、自分で大学を探して、やりたいこ
程 度 募 集 し て ま す。 社 内 の 試 験 を 通 る
上前からやっていて、今でも年間
40
30
30
30
9
ていますが、言葉の問題という点では、 ミュニケーションできるようにしよう
感じですね。英語は世界の共通言語で
どこと競争しているのかを考えないと。
す。マーケットが生んだトラブルなど
すから、その意味では少なくとも大学
は、そう受け止められるわけです。い
最近中国の大学のトップクラスの卒業
ても、相手がもっと良くなったらダメ
か に グ ロ ー バ ル に や っ て い け る か。 そ
生 の 英 語 っ て 結 構 上 手 い で す よ。 色 々
なんだから」と私も社内で言うんです。
れは必然的に文化と価値の問題になっ
院の講義の半分位は英語でやってはど
ず、言語の問題、プログラムの面白さ
大西:アメリカでは、結構評判が高い
会話できることが重要なのかというと、 大西:人材育成の話とともに、大学改
て、外国語がネイティブと同じように
革のもう1つの切り口が研究成果です
なことに取り組んでいるのは理解して
や 学 生 か ら 見 た 時 の 魅 力 の 問 題 な ど、
海外の大学が新しく出てきますが、日
ね。大学の研究成果を形にする意味で、
うかと思います。だけどそれが世の中
課題はたくさんあると思います。経団
本の大学はわりと固定していて、偏差
あ る 程 度 の 理 解 力、 ス ピ ー ク ア ウ ト す
で ど う 受 け 止 め ら れ る の か、 我 々 だ っ
連の教育問題委員長をやっている今の
値が変わらないんですね。
る力は要求されますが、そこから先は
ますが、残念ながらそのスピードが十
立場で、各大学の学長や教授などにお
中西:そこが問題なんです。最初から
ていかにグローバル時代になったとし
尋ねすると、学内の取組に対する全体
平均値で競っているから。
もう少し組織的に産学連携してもいい
分ではないんですよね。
意識や競争意識などに関して少し疑問
言語の巧拙ではなくて、中身になるわ
ても、企業の国籍ってやはりあるんで
に思うところがあります。
大西:そういう点では大学に無力感と
かと思うのですが、どう思われますか。
大学院生を送り込み、こちらも社員を
大西:今まで組織としてきちんとやる
業と大学の関係を太くしていく余地は
国の支援で進む共同研究。
企業との連携強化で、
大学は変わる
大西:耳が痛いです。
けですよ。だからその水準やターゲッ
送り込むという風に。向こうは最初か
十分あるのではないかと思います。
が ど こ ま で オ ー プ ン な の か。 オ ー プ ン
内向きといわれる今の学生が外向きに
だったという面はありますよね。最近
どういう“種”があるかを企業に紹介
それが追いついているかどうかですね。 対外関係の共同研究を専門に、大学に
イノベーションという言葉がこれから
大 西: 日 本 に も 制 度 は あ る ん で す が、
中西:他にも北大では、陽子線治療の
す る 職 種 の 人 が 7、8 人 い ま す。 今 ま
変わっていければいいですよね。
たいなものが本当に強烈にないとダメ
分野で動くターゲットにもプロトンを
の大学にも重要な意味を持ってくると
うちの大学でも RAC
(注4)ができて、 中西:まったくそう思います。その意
照射できる仕掛けを共同開発しようと、 で 防 衛 的 観 点 で の 知 財 の 専 門 家 は い
中西:今の若い人たちは、自分をアピー
うちの研究所の人間が
て、2010年から執行役社長。2014年執行役会長に就任。豊富な海外経験を活かし、日立
傾 向 だ と 思 う ん で す が、 日 立 グ ル ー プ
います。こういう実績が FIRST
(注
リング学修士課程修了。日立製作所欧州総代表、執行役常務、専務、米国総代表、副社長を経
に 選 ば れて、 研 究 費 も
科卒業後、日立製作所入社。1970年スタンフォード大学大学院コンピュータエンジニア
3)の TOP
いですよ、逞しいし。
日立製作所執行役会長兼CEO。1946年神奈川県横浜市生まれ。東京大学工学部電気工学
最近は SIP(注5)、ImPACT(注
進めば、大学は変わると思っています。 留学で大きく変わる社会観。
大学も企業も、
もっと外に向かうべき
人近く行って
思います。
共 同 研 究 を 発 展 的 に や っ て い く の に、
らプログラムとして持ってるんですね。 ような仕組みが少なくて、先生ベース
「社長が言っても全然変化がない」と
いうか、何をやってもそう変わらない
より国立大学協会副会長として大学改革に尽力する。
中 西: 企 業 は そ れ で 苦 労 し て い ま す。
2011年日本学術会議会長、2014年豊橋技術科学大学長に就任。2015年
中 西: 我 々 が 最 初 に あ る 地 域 で 事 業 を
工学部助教授・教授を経て、1996年から国連大学高等研究所教授を兼任。
す る 時 に、 大 学 と の コ ネ ク シ ョ ン が な
サチューセッツ工科大学客員研究員、アジア工科大学院助教授、東京大学
トをどこに置くのかということのコン
大学大学院工学系研究科博士課程修了。長岡技術科学大学助手・助教授、マ
センサスを作っていくしかないと思い
豊橋技術科学大学長。1948年愛媛県松山市生まれ。専門は都市工学。東京
と。自分のところはこの位だと。そう
大西 隆(Takashi Onishi)
(Hiroaki Nakanishi)
中西宏明
10
10
いただいています。だから全くできな
30
明し、サンティアゴ巡礼やメッカ巡礼など世界に数多くあ
る巡礼との国際比較を行うことを研究目的とする。
観光学など多様な分野の教員からなり、学際的研究が特
色。四国遍路や巡礼に関する講演会の開催や研究成果を
教育に活かした
「歩き遍路」授業を開講するほか、世界遺産
登録に向けて自治体と連携しながら札所寺院の文化財調
査を行うなど、地域貢献活動も積極的に進めている。
1階には「多目的ホール」、
「フューチャールーム」、
2~5階
には参画企業と大学の研究室や実験室、さらに「オープンカ
フェ」
「ディスカッションプラザ」
「展示スペース」、隠れ家を意
味する「DEN」を設け、多様な交流創出のための工夫を凝ら
している。
「食と健康の達人」拠点として機能する同拠点には、企業
提供と、地域における「健康コミュニティ」の実現を目指す。
ピュータがピーク性能の1〜4%程度であるの
から命名されたもので、スタッフは幼年教育コー
省電力で達成できることを明らかにした。
スの教員と、実習を兼ねた学生ボランティア。同
このシステムは数値 流体工学、電 波工学、
大学の「理論と実践の融合」
のミッションに基づき、
大気海洋・地球科学など最先端の学術研究に
大学院での子育て支援コーディネーターの養成
活用されるだけでなく、国産近距離ジェット開
や保育教諭の理論を実践できる場としての機能
発などの産業応用や、防災・減災にも活用され、
も果たす。
地震の発生から20分以内に、沿岸地域の津波
同ルームには木製の玩具や砂場、楽器、お絵
浸水被害を6時間分予測できる。センターでは
かきコーナーなど子どもの感覚を重視した細かな
SX-ACEを単なる研究インフラとしてだけでな
ンフラとして活用し、積極的に社会に還元して
界最新型の大型燃料電池の試験的な運用も開始。
水素カー「MIRAI」
を公用車として導入。水素ス
テーションを設置し、大学を水素社会実証の場と
しても活用している。中核となる「水素エネルギー
国際研究センター」には企業関係者、研究者のほ
エネルギーに関する情報や技術を解説するショー
ルームも開設し、社会へ情報を発信し続けている。
本一の生薬資料館として、教育研究に活用されて
いる。
年数回の一般公開には国内外から見学者が訪
れるほか、生薬博物館設立を目指し、研 修を希
望する外国人学者もいる。伝統医薬が再認識さ
東京大学は2015年、全学的な研究倫理意識の醸
れている今日、模範的な生薬博物館として世界か
成を目的とした「研究倫理ウィーク」の特別企画として、
ら注目されている。民族薬物データベースも作成
し、インターネット上で閲覧できる。現在、和漢
「研究倫理教材コンテスト」を開催。学生が作成した
薬は430種類の生薬4,800点を収録。中国薬草
教材のアイデアと出来栄えを競い、優秀作品には総
長から賞状と副賞が授与された。
コンテストでは、各研究分野の特色を具体的に取
り入れ、研究倫理を楽しく学ぶことができる教材を
募集。
1チーム3~5名で1つの教材を作成し、教職員
や上級生にヒアリングする。これはヒアリングを受
ける者にも研究倫理意識を高める効果を狙ったもの。
各グループとも工夫を凝らしたハイレベルな作品に
仕上げていて、プレゼンテーションでは審査委員と
の熱い質疑応答も見られた。同大学では、今後も各
研究分野の実態に即して、研究倫理について考える
機会を積極的に提供していきたいと考えている。
11
上越教育大学
1998年度に上越教育大学フレンドシップ事業
の一環として始まった「学びのひろば」。学生が子
どもたちと触れ合い、子どもの気持ちや行動を
理解し、教員としての実践的指導力の基礎を身に
つけることを目的に、現在まで継続されている。
活動の企画・運営は、
すべて学生主体。
「 子ども
たちの笑 顔のため」に徹 底的な議論を重ね、年
7回の活動日に、近隣の小学校に通う子どもた
ち(2014年度参加児童数延べ1,452人)を招き、
同大学学生が所属する9つのクラブ(2014年度
参加学生数延べ1,501人)が企画したレクリエー
ションや野外活動、工作、運動、2泊3日の宿泊
活動などを行う。参加する子どもたちにとっても、
学校とは違う環境での活動や、他校の子どもたち
との触れ合いは貴重な体験の場となっている。
子どもたちへの説明の様子。
12
食 堂には燃料電池「エネファーム」を設 置し、世
コミュニティの場としての機能も期待されている。
術的・博物学的価値の高い資料で、質・量ともに日
民族薬物データベース:http://ethmed.u-toyama.ac.jp/Search_jp/
証類本草データベース:http://ethmed.u-toyama.ac.jp/honzou/
キャンパス内のエネルギーのスマート化も推進。
がちな親や祖父母との交流など多世代間の地域
示。約50年にわたる国内外の調査で蒐集した学
「民族薬物資料館」一般公開の様子。
未来的外観のフード&メディカルイノベーション国際拠点。
設立し、人材育成にも力を注いでいる。
「視て、聴いて、体験する」をコンセプトに、水素
で用いられる約28,000点の生薬標本を保存・展
て、
「証類本草データベース」
で公表している。
水素プロジェクトを立ち上げ、2010年には世界初
登録者数は増加の一途をたどる。今後は孤立し
学生が教職員にヒアリングしてつくる
「研究倫理教材コンテスト」
古典『経史証類大観本草』
の日本語訳も行なってい
ルギー。九州大学では2003年、世界に先駆けて
か、子どもから大人まで、年間6千人以上が来訪。
工夫がされ、学生が作成した玩具も好評を博し、
く、安全・安心な社会づくりに貢献する社会イ
次世代のエネルギーとして期待される水素エネ
の水素エネルギーシステム専攻を大学院工学府に
育)
、Nursery(保育)
、Kids(子ども)の頭文字
に対し、SX-ACEは10%を超える実効性能を
東京大学
ケア」に基づく、
「美味しい食、楽しい運動」の商品・サービス
「GENKi」
はGeneration(世代)
、
Education(教
ユルヴェーダ)やユナニー(ギリシャ-アラブ医学)
貴重な生薬資料で
世界的に注目される
「民族薬物資料館」
をはじめ38の機関が参画。
「健康ものさし」と「セルフヘルス
評価に取り組み、日本や欧米のスーパーコン
料館」
では、漢方医学や中国医学、インド医学
(アー
富山大学
融合を図るべく、
産学官連携の革新的な研究開発を展開する。
経費により子育て支援ルーム「GENKi」を設置。
五神総長から
表彰される最優秀チーム。
いてきた「食」にまつわる研究、医療分野の先進的な研究の
究の場として、2014年に文部科学省からの特別
ACE」を導入。導入に先立ち、システムの性能
富山大学和漢医薬学総合研究所の「民族薬物資
北大の新たな強みを創出!
「フード&メディカルイノベーション国際拠点」
設が竣工した。同大学の前身である札幌農学校時代から続
兵庫教育大学では、就学前の子育て支援の研
ンター」では最新のスーパーコンピュータ「SX-
理想の教師を目指して、学生自らがつくる
「学びのひろば」
北海道大学
市民が集う「フード&メディカルイノベーション国際拠点」施
2015年、東北大学「サイバーサイエンスセ
いきたいと考えている。
学生によるお遍路さんへの「お接待」。
北海道大学に、
“ ひとつ屋根の下”をコンセプトに産学官と
学生スタッフとおもちゃで遊ぶ幼児たち。
兵庫教育大学
愛媛大学
最先端スーパーコンピュータ
「SX A-CE」導入で社会に貢献する
「サイバーサイエンスセンター」
構成員は歴史学、文学、社会学、哲学、法律学、経済学、
Discovery National University
ら今に至る四国遍路の歴史や現代遍路の多様な実態を解
2030年の水素エネルギー社会へタイムスリップ!
「水素エネルギー 国 際 研 究 セ ン タ ー 」
社会の関心は極めて高い。発足した同センターは、古代か
九州大学
キャンパス内の水素カー
「MIRAI」
と水素ステーション。
制定の「日本遺産」に認定されるなど、四国遍路に対する
東北大学
四国遍路の「世界遺産」登録への取組を推進。2015年新
-
子育て支援ルーム「GENKi」
就学前教育の理論 と 実 践 の
融合の場
界の巡礼研究センター」を設立した。四国では官民あげて
東北大学のスーパーコンピュータ
。
「SX ACE」
「世界遺産」登録に向け、積極的活動を展開する
「四国遍路・世界の巡礼研究センター」
2015年4月、愛媛大学では法文学部附属「四国遍路・世
明し、サンティアゴ巡礼やメッカ巡礼など世界に数多くあ
る巡礼との国際比較を行うことを研究目的とする。
観光学など多様な分野の教員からなり、学際的研究が特
色。四国遍路や巡礼に関する講演会の開催や研究成果を
教育に活かした
「歩き遍路」授業を開講するほか、世界遺産
登録に向けて自治体と連携しながら札所寺院の文化財調
査を行うなど、地域貢献活動も積極的に進めている。
1階には「多目的ホール」、
「フューチャールーム」、
2~5階
には参画企業と大学の研究室や実験室、さらに「オープンカ
フェ」
「ディスカッションプラザ」
「展示スペース」、隠れ家を意
味する「DEN」を設け、多様な交流創出のための工夫を凝ら
している。
「食と健康の達人」拠点として機能する同拠点には、企業
提供と、地域における「健康コミュニティ」の実現を目指す。
ピュータがピーク性能の1〜4%程度であるの
から命名されたもので、スタッフは幼年教育コー
省電力で達成できることを明らかにした。
スの教員と、実習を兼ねた学生ボランティア。同
このシステムは数値 流体工学、電 波工学、
大学の「理論と実践の融合」
のミッションに基づき、
大気海洋・地球科学など最先端の学術研究に
大学院での子育て支援コーディネーターの養成
活用されるだけでなく、国産近距離ジェット開
や保育教諭の理論を実践できる場としての機能
発などの産業応用や、防災・減災にも活用され、
も果たす。
地震の発生から20分以内に、沿岸地域の津波
同ルームには木製の玩具や砂場、楽器、お絵
浸水被害を6時間分予測できる。センターでは
かきコーナーなど子どもの感覚を重視した細かな
SX-ACEを単なる研究インフラとしてだけでな
ンフラとして活用し、積極的に社会に還元して
界最新型の大型燃料電池の試験的な運用も開始。
水素カー「MIRAI」
を公用車として導入。水素ス
テーションを設置し、大学を水素社会実証の場と
しても活用している。中核となる「水素エネルギー
国際研究センター」には企業関係者、研究者のほ
エネルギーに関する情報や技術を解説するショー
ルームも開設し、社会へ情報を発信し続けている。
本一の生薬資料館として、教育研究に活用されて
いる。
年数回の一般公開には国内外から見学者が訪
れるほか、生薬博物館設立を目指し、研 修を希
望する外国人学者もいる。伝統医薬が再認識さ
東京大学は2015年、全学的な研究倫理意識の醸
れている今日、模範的な生薬博物館として世界か
成を目的とした「研究倫理ウィーク」の特別企画として、
ら注目されている。民族薬物データベースも作成
し、インターネット上で閲覧できる。現在、和漢
「研究倫理教材コンテスト」を開催。学生が作成した
薬は430種類の生薬4,800点を収録。中国薬草
教材のアイデアと出来栄えを競い、優秀作品には総
長から賞状と副賞が授与された。
コンテストでは、各研究分野の特色を具体的に取
り入れ、研究倫理を楽しく学ぶことができる教材を
募集。
1チーム3~5名で1つの教材を作成し、教職員
や上級生にヒアリングする。これはヒアリングを受
ける者にも研究倫理意識を高める効果を狙ったもの。
各グループとも工夫を凝らしたハイレベルな作品に
仕上げていて、プレゼンテーションでは審査委員と
の熱い質疑応答も見られた。同大学では、今後も各
研究分野の実態に即して、研究倫理について考える
機会を積極的に提供していきたいと考えている。
11
上越教育大学
1998年度に上越教育大学フレンドシップ事業
の一環として始まった「学びのひろば」。学生が子
どもたちと触れ合い、子どもの気持ちや行動を
理解し、教員としての実践的指導力の基礎を身に
つけることを目的に、現在まで継続されている。
活動の企画・運営は、
すべて学生主体。
「 子ども
たちの笑 顔のため」に徹 底的な議論を重ね、年
7回の活動日に、近隣の小学校に通う子どもた
ち(2014年度参加児童数延べ1,452人)を招き、
同大学学生が所属する9つのクラブ(2014年度
参加学生数延べ1,501人)が企画したレクリエー
ションや野外活動、工作、運動、2泊3日の宿泊
活動などを行う。参加する子どもたちにとっても、
学校とは違う環境での活動や、他校の子どもたち
との触れ合いは貴重な体験の場となっている。
子どもたちへの説明の様子。
12
食 堂には燃料電池「エネファーム」を設 置し、世
コミュニティの場としての機能も期待されている。
術的・博物学的価値の高い資料で、質・量ともに日
民族薬物データベース:http://ethmed.u-toyama.ac.jp/Search_jp/
証類本草データベース:http://ethmed.u-toyama.ac.jp/honzou/
キャンパス内のエネルギーのスマート化も推進。
がちな親や祖父母との交流など多世代間の地域
示。約50年にわたる国内外の調査で蒐集した学
「民族薬物資料館」一般公開の様子。
未来的外観のフード&メディカルイノベーション国際拠点。
設立し、人材育成にも力を注いでいる。
「視て、聴いて、体験する」をコンセプトに、水素
で用いられる約28,000点の生薬標本を保存・展
て、
「証類本草データベース」
で公表している。
水素プロジェクトを立ち上げ、2010年には世界初
登録者数は増加の一途をたどる。今後は孤立し
学生が教職員にヒアリングしてつくる
「研究倫理教材コンテスト」
古典『経史証類大観本草』
の日本語訳も行なってい
ルギー。九州大学では2003年、世界に先駆けて
か、子どもから大人まで、年間6千人以上が来訪。
工夫がされ、学生が作成した玩具も好評を博し、
く、安全・安心な社会づくりに貢献する社会イ
次世代のエネルギーとして期待される水素エネ
の水素エネルギーシステム専攻を大学院工学府に
育)
、Nursery(保育)
、Kids(子ども)の頭文字
に対し、SX-ACEは10%を超える実効性能を
東京大学
ケア」に基づく、
「美味しい食、楽しい運動」の商品・サービス
「GENKi」
はGeneration(世代)
、
Education(教
ユルヴェーダ)やユナニー(ギリシャ-アラブ医学)
貴重な生薬資料で
世界的に注目される
「民族薬物資料館」
をはじめ38の機関が参画。
「健康ものさし」と「セルフヘルス
評価に取り組み、日本や欧米のスーパーコン
料館」
では、漢方医学や中国医学、インド医学
(アー
富山大学
融合を図るべく、
産学官連携の革新的な研究開発を展開する。
経費により子育て支援ルーム「GENKi」を設置。
五神総長から
表彰される最優秀チーム。
いてきた「食」にまつわる研究、医療分野の先進的な研究の
究の場として、2014年に文部科学省からの特別
ACE」を導入。導入に先立ち、システムの性能
富山大学和漢医薬学総合研究所の「民族薬物資
北大の新たな強みを創出!
「フード&メディカルイノベーション国際拠点」
設が竣工した。同大学の前身である札幌農学校時代から続
兵庫教育大学では、就学前の子育て支援の研
ンター」では最新のスーパーコンピュータ「SX-
理想の教師を目指して、学生自らがつくる
「学びのひろば」
北海道大学
市民が集う「フード&メディカルイノベーション国際拠点」施
2015年、東北大学「サイバーサイエンスセ
いきたいと考えている。
学生によるお遍路さんへの「お接待」。
北海道大学に、
“ ひとつ屋根の下”をコンセプトに産学官と
学生スタッフとおもちゃで遊ぶ幼児たち。
兵庫教育大学
愛媛大学
最先端スーパーコンピュータ
「SX A-CE」導入で社会に貢献する
「サイバーサイエンスセンター」
構成員は歴史学、文学、社会学、哲学、法律学、経済学、
Discovery National University
ら今に至る四国遍路の歴史や現代遍路の多様な実態を解
2030年の水素エネルギー社会へタイムスリップ!
「水素エネルギー 国 際 研 究 セ ン タ ー 」
社会の関心は極めて高い。発足した同センターは、古代か
九州大学
キャンパス内の水素カー
「MIRAI」
と水素ステーション。
制定の「日本遺産」に認定されるなど、四国遍路に対する
東北大学
四国遍路の「世界遺産」登録への取組を推進。2015年新
-
子育て支援ルーム「GENKi」
就学前教育の理論 と 実 践 の
融合の場
界の巡礼研究センター」を設立した。四国では官民あげて
東北大学のスーパーコンピュータ
。
「SX ACE」
「世界遺産」登録に向け、積極的活動を展開する
「四国遍路・世界の巡礼研究センター」
2015年4月、愛媛大学では法文学部附属「四国遍路・世
す る。 中 学 ま で は な か っ た 女 子
ン グ を 重 ね てき た。この4 年 間 で
日本学生陸上個人選手権大会」女
着実に力をつけ、
6月の「2015
となり、「選手人口が少なく、狙い
400m、400m
が競技種目
回日本陸上競技選手権大会」で銅メダル受賞
神戸大学発達科学部4年の西田
文香さんは、2015年6月に開
催された「第 回日本陸上競技選
で優勝、7月の「第
日本一を決める大会で、神戸大学
上 競 技 選 手 権 大 会 」は 陸 上 競 技 の
ル)
決勝で、3位入賞した。
「日本陸
なった。それが功を奏し、タイム
を着用し、体の管理もするように
考慮したセパレートのユニホーム
た。また、この頃から空気抵抗を
の指導顧問の言葉が後押しとなっ
輝かしい成績を残した。
決勝で3位入賞と、数々の大会で
技対校選手権大会」
女子400m
勝、
9月の「第 回日本学生陸上競
400m、4 0 0m
回 兵 庫 陸 上 競 技 選 手 権 大 会 」女 子
子400m
の学生として決勝に進出し、上位
もどんどん伸び、高校3年でイン
目 だ か ら や っ て み ろ 」と い う 当 時
入賞したのは戦後初という快挙。
ターハイに出場。女子400m
2016年4月からは高校の体
育教員になる予定の西田さん。「今
手権大会」女子400m(ハード
父親が元陸上選手で、兄弟4人
とも陸上選手という陸上一家の
で2位という結果を残した。
大 き な 大 会 に 連 れ て 行 き た い 」と
H
H
後は指導者として、生徒を国体や
「日本陸上競技選手権大会」のメダルを手にする西田さん。
H
84
で ダブル優
西 田 さ ん。 中 学 か ら 陸 上 を 始 め、
高校時代の先輩の勧めもあって
入 学 し た 神 戸 大 学 では、週 5 日 の
が専門だっ
目を輝かせて話してくれた。
400m
100mや100m
た が、 高 校 2 年 の 時、 4 0 0 m、
練 習 に 積 極 的 に 参 加 し、ト レ ーニ
83
に転向して急激に開花
H
H
山梨大学大学院教育学研究科修
士課程1年の齋藤浩平さんは、大
「学都」と呼ばれる青森県弘前市
には複数の大学があり、県外出身
者も多い。札幌市出身で、弘前大
学大学院地域社会研究科博士課程
1年の大野悠貴さんは、乗用車に
依存する地方都市での交通機関に
不便を感じ、電車やバスなどの公
共交通がもっと使えるようになれ
ば、よ り 行 動 範 囲 が 広 が り、学 生
生活がより豊かになるのではない
かと考え、2010年、学生サー
クル「 ・
」を立ち
H・
O T Managers
上げた。
などでバスの乗り方を教える「乗
の開催、小学校や保育園・幼稚園
を持ってもらうためのイベント
と 」の 発 行、 電 車 や バ ス に 親 し み
見どころを紹介する情報誌「ほっ
しに目を向けることが大事だと
だ け で は な く、 地 域 の 人 や 暮 ら
思 い ま す。 単 に 公 共 交 通 の た め
活動の幅がより広がっていると
域の方々と協力・連携することで、
一 緒 に 地 域 調 査 を 行 う な ど、 地
ん だ と 実 感 し ま し た。 交 通 事 業
でも地域を変えることができる
こ と が で き た だ け で な く、 学 生
通して地域の良さや魅力を知る
か に な る よ う、 公 共 交 通 と い う
が ら、 学 生 生 活 が よ り 楽 し く 豊
賞。「 ・
」は、今後
H・
O T Managers
も地域との関わりを大切にしな
「
2014年には日本モビ
リ テ ィ・ マ ネ ジ メ ン ト 会 議 の
感じています」と語る。
り方教室」の実施など。
者 や 行 政、 商 店 街 の 方 た ち の 意
アプローチから活動を続ける。
賛同する学生の参加が徐々に
増え、代表の大野さんは「活動を
識 変 化 が 感 じ ら れ、 地 元 の 町 内
で「社会や政治との関わり」の大切
週に1度の大学内の学生食堂で
学 生 が 在 籍 す る。 定 期 的 活 動 は
で実行委員長を務めるなど、その
ワーク主催の「若者シンポジウム」
全国組織である若者選挙ネット
「 社 会 に つ い て 気 軽 に 楽 し く 考
え、話す場を作ることが、若者と
んだ食とアートを楽しむ収穫感謝
町)で毎年開催され、小麦にちな
主 な 活 動 と し て は、 小 麦 生 産
量日本一を誇る音更町(帯広市隣
行っている。
め、地域と協力して様々な活動を
をより多くの人に知ってもらうた
は、十勝の農業と食の素晴らしさ
帯広畜産大学の学生約 人から
なる農業サークル「あぐりとかち」
活動賞や第9回マニフェスト大賞
2014年度明るい選挙推進優良
い 」と い う 道 外 大 学 の 農 業 サ ー ク
さらに、地元企業、農家からの
協力を得て、「十勝の農業を知りた
営に当たった。
設営や炭おこし、司会進行など運
なって出店の協力依頼から当日の
全国にアピールしようと、主体と
まれているジンギスカンの魅力を
ギ ス カ ン 会 議 」で は、 市 民 に 親 し
2015年初開催した「十勝ジン
レッジSILO(サイロ)」主催で、
が連携して開始した事業「十勝カ
たり、早稲田大学マニフェスト研
齋藤さんは団体の活動以外にも、
学内に期日前投票所の設置を促し
加している。
動が評価され、農林水産省主催の
全国に拡大している。こうした活
その活動範囲は帯広市に留まるこ
機会を作り出す様々な活動を展開。
を通じて広く地場の産業に触れる
境を活かし、他にも農・酪・畜産業
る
「あぐりとかち」は、
大学という環
“十勝の農業の魅力発信”を掲げ
アーを開催した。
など、3泊4日の十勝合宿農業ツ
ガイモ収穫体験、農家との交流会
取り組んで行く。
梨県内の学生ネットワ―ク構築に
で
「ジャパンハーヴェスト2015」
と な く、 多 く の 大 学 と も 連 携 し、
中学・高校生への主権者教育や山
18
プ ロ ジ ェ ク ト 賞 」を 受
JCOMM
会の方々と情報誌づくりのため
究所と共同で候補者のマニフェス
主 な 活 動 は、 電 車 や バ ス の 基
本的な情報提供と地域のお店や
優秀賞などを受賞。
トスイッチ甲府」を企画するほか、
さに気づき、「同世代の若者たちが
時事ニュースについて話し合う
トをネット公開する「マニフェス
2015年 月時点でメンバー
は 名。山梨県内の4つの大学の
あまりにも社会の諸課題に関心が
度、社会問題のテーマを1つ選び、
「昼飯
ディスカッションする「みんなの
祭「麦感祭(ばっかんさい)」の運
社 会 の 距 離 を 近 づ け る 方 法 」と 語
任 を 持 た な け れ ば、 日 本 の 未 来
る齋藤さん。残り1年の学生生活
営や、日本ハム株式会社と地元の
ル所属の大学生
で農林水産大臣賞を受賞。今後も、
の製粉工場や豆の調整工場の見学、 の「食と農林漁業大学生アワード」
歳選挙権の実現を背景にした
パン屋の協力による「華麗にハム
石窯を使ったピザづくり体験や近
時 に「 Create Future
山 梨 」を 設
立。共感する仲間が少しずつ増え、
勝 サ ン ド 」の 商 品 企 画 と 札 幌 ド ー
人を招き、小麦
ムでの販売。また地域活性化を目
さらなる活動が期待されている。
と い う 危 機 感 か ら、 学 部 3 年 の
に希望が持てなくなってしまう」
N
E
W
S
」で、 設 立 以 来 2 年 間
Kataruba
で延べ1000人以上の学生が参
活動は多岐にわたる。
薄 い の で は な い か 」と い う 問 題 意
トーク」と、月に1
識を持った。「自分たちが将来に責
学入学直前に起きた東日本大震災
弘前大学/
H・O・T Managers
11
上:地域の子どもたちにバスの乗り方を指導する。
下:電車とバスの情報誌「ほっと」。
40
13
14
11
16
2015年10月に主催した山梨学生交流会での様子。
(中央が齋藤さん)
H
郊農家での大型機械を使ったジャ
帯広畜産大学/
あぐりとかち
H
「第
同世代の政治離れへの
危機感から、
社会課題を
気軽に話し合う学生団体を発足
開かれた地域の足へ、公共交通活性化を目指す学生サークル
「十勝合宿農業ツアー」参加者と「あぐりとかち」のメンバー。
真剣に取り組む学生、
グループの活動を紹介します。
今、
学生は!
99
指し、同大学と地域の企業・住民
十勝の農業と食を全国へ発信!
地域貢献に尽力する
農業サークル
H
99
神戸大学/
西 田 文 香 さん
山梨大学/
齋 藤 浩 平 さん
ここでは学業や課外活動に
es
front of Student Initiativ
Fore
す る。 中 学 ま で は な か っ た 女 子
ン グ を 重 ね てき た。この4 年 間 で
日本学生陸上個人選手権大会」女
着実に力をつけ、
6月の「2015
となり、「選手人口が少なく、狙い
400m、400m
が競技種目
回日本陸上競技選手権大会」で銅メダル受賞
神戸大学発達科学部4年の西田
文香さんは、2015年6月に開
催された「第 回日本陸上競技選
で優勝、7月の「第
日本一を決める大会で、神戸大学
上 競 技 選 手 権 大 会 」は 陸 上 競 技 の
ル)
決勝で、3位入賞した。
「日本陸
なった。それが功を奏し、タイム
を着用し、体の管理もするように
考慮したセパレートのユニホーム
た。また、この頃から空気抵抗を
の指導顧問の言葉が後押しとなっ
輝かしい成績を残した。
決勝で3位入賞と、数々の大会で
技対校選手権大会」
女子400m
勝、
9月の「第 回日本学生陸上競
400m、4 0 0m
回 兵 庫 陸 上 競 技 選 手 権 大 会 」女 子
子400m
の学生として決勝に進出し、上位
もどんどん伸び、高校3年でイン
目 だ か ら や っ て み ろ 」と い う 当 時
入賞したのは戦後初という快挙。
ターハイに出場。女子400m
2016年4月からは高校の体
育教員になる予定の西田さん。「今
手権大会」女子400m(ハード
父親が元陸上選手で、兄弟4人
とも陸上選手という陸上一家の
で2位という結果を残した。
大 き な 大 会 に 連 れ て 行 き た い 」と
H
H
後は指導者として、生徒を国体や
「日本陸上競技選手権大会」のメダルを手にする西田さん。
H
84
で ダブル優
西 田 さ ん。 中 学 か ら 陸 上 を 始 め、
高校時代の先輩の勧めもあって
入 学 し た 神 戸 大 学 では、週 5 日 の
が専門だっ
目を輝かせて話してくれた。
400m
100mや100m
た が、 高 校 2 年 の 時、 4 0 0 m、
練 習 に 積 極 的 に 参 加 し、ト レ ーニ
83
に転向して急激に開花
H
H
山梨大学大学院教育学研究科修
士課程1年の齋藤浩平さんは、大
「学都」と呼ばれる青森県弘前市
には複数の大学があり、県外出身
者も多い。札幌市出身で、弘前大
学大学院地域社会研究科博士課程
1年の大野悠貴さんは、乗用車に
依存する地方都市での交通機関に
不便を感じ、電車やバスなどの公
共交通がもっと使えるようになれ
ば、よ り 行 動 範 囲 が 広 が り、学 生
生活がより豊かになるのではない
かと考え、2010年、学生サー
クル「 ・
」を立ち
H・
O T Managers
上げた。
などでバスの乗り方を教える「乗
の開催、小学校や保育園・幼稚園
を持ってもらうためのイベント
と 」の 発 行、 電 車 や バ ス に 親 し み
見どころを紹介する情報誌「ほっ
しに目を向けることが大事だと
だ け で は な く、 地 域 の 人 や 暮 ら
思 い ま す。 単 に 公 共 交 通 の た め
活動の幅がより広がっていると
域の方々と協力・連携することで、
一 緒 に 地 域 調 査 を 行 う な ど、 地
ん だ と 実 感 し ま し た。 交 通 事 業
でも地域を変えることができる
こ と が で き た だ け で な く、 学 生
通して地域の良さや魅力を知る
か に な る よ う、 公 共 交 通 と い う
が ら、 学 生 生 活 が よ り 楽 し く 豊
賞。「 ・
」は、今後
H・
O T Managers
も地域との関わりを大切にしな
「
2014年には日本モビ
リ テ ィ・ マ ネ ジ メ ン ト 会 議 の
感じています」と語る。
り方教室」の実施など。
者 や 行 政、 商 店 街 の 方 た ち の 意
アプローチから活動を続ける。
賛同する学生の参加が徐々に
増え、代表の大野さんは「活動を
識 変 化 が 感 じ ら れ、 地 元 の 町 内
で「社会や政治との関わり」の大切
週に1度の大学内の学生食堂で
学 生 が 在 籍 す る。 定 期 的 活 動 は
で実行委員長を務めるなど、その
ワーク主催の「若者シンポジウム」
全国組織である若者選挙ネット
「 社 会 に つ い て 気 軽 に 楽 し く 考
え、話す場を作ることが、若者と
んだ食とアートを楽しむ収穫感謝
町)で毎年開催され、小麦にちな
主 な 活 動 と し て は、 小 麦 生 産
量日本一を誇る音更町(帯広市隣
行っている。
め、地域と協力して様々な活動を
をより多くの人に知ってもらうた
は、十勝の農業と食の素晴らしさ
帯広畜産大学の学生約 人から
なる農業サークル「あぐりとかち」
活動賞や第9回マニフェスト大賞
2014年度明るい選挙推進優良
い 」と い う 道 外 大 学 の 農 業 サ ー ク
さらに、地元企業、農家からの
協力を得て、「十勝の農業を知りた
営に当たった。
設営や炭おこし、司会進行など運
なって出店の協力依頼から当日の
全国にアピールしようと、主体と
まれているジンギスカンの魅力を
ギ ス カ ン 会 議 」で は、 市 民 に 親 し
2015年初開催した「十勝ジン
レッジSILO(サイロ)」主催で、
が連携して開始した事業「十勝カ
たり、早稲田大学マニフェスト研
齋藤さんは団体の活動以外にも、
学内に期日前投票所の設置を促し
加している。
動が評価され、農林水産省主催の
全国に拡大している。こうした活
その活動範囲は帯広市に留まるこ
機会を作り出す様々な活動を展開。
を通じて広く地場の産業に触れる
境を活かし、他にも農・酪・畜産業
る
「あぐりとかち」は、
大学という環
“十勝の農業の魅力発信”を掲げ
アーを開催した。
など、3泊4日の十勝合宿農業ツ
ガイモ収穫体験、農家との交流会
取り組んで行く。
梨県内の学生ネットワ―ク構築に
で
「ジャパンハーヴェスト2015」
と な く、 多 く の 大 学 と も 連 携 し、
中学・高校生への主権者教育や山
18
プ ロ ジ ェ ク ト 賞 」を 受
JCOMM
会の方々と情報誌づくりのため
究所と共同で候補者のマニフェス
主 な 活 動 は、 電 車 や バ ス の 基
本的な情報提供と地域のお店や
優秀賞などを受賞。
トスイッチ甲府」を企画するほか、
さに気づき、「同世代の若者たちが
時事ニュースについて話し合う
トをネット公開する「マニフェス
2015年 月時点でメンバー
は 名。山梨県内の4つの大学の
あまりにも社会の諸課題に関心が
度、社会問題のテーマを1つ選び、
「昼飯
ディスカッションする「みんなの
祭「麦感祭(ばっかんさい)」の運
社 会 の 距 離 を 近 づ け る 方 法 」と 語
任 を 持 た な け れ ば、 日 本 の 未 来
る齋藤さん。残り1年の学生生活
営や、日本ハム株式会社と地元の
ル所属の大学生
で農林水産大臣賞を受賞。今後も、
の製粉工場や豆の調整工場の見学、 の「食と農林漁業大学生アワード」
歳選挙権の実現を背景にした
パン屋の協力による「華麗にハム
石窯を使ったピザづくり体験や近
時 に「 Create Future
山 梨 」を 設
立。共感する仲間が少しずつ増え、
勝 サ ン ド 」の 商 品 企 画 と 札 幌 ド ー
人を招き、小麦
ムでの販売。また地域活性化を目
さらなる活動が期待されている。
と い う 危 機 感 か ら、 学 部 3 年 の
に希望が持てなくなってしまう」
N
E
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S
」で、 設 立 以 来 2 年 間
Kataruba
で延べ1000人以上の学生が参
活動は多岐にわたる。
薄 い の で は な い か 」と い う 問 題 意
トーク」と、月に1
識を持った。「自分たちが将来に責
学入学直前に起きた東日本大震災
弘前大学/
H・O・T Managers
11
上:地域の子どもたちにバスの乗り方を指導する。
下:電車とバスの情報誌「ほっと」。
40
13
14
11
16
2015年10月に主催した山梨学生交流会での様子。
(中央が齋藤さん)
H
郊農家での大型機械を使ったジャ
帯広畜産大学/
あぐりとかち
H
「第
同世代の政治離れへの
危機感から、
社会課題を
気軽に話し合う学生団体を発足
開かれた地域の足へ、公共交通活性化を目指す学生サークル
「十勝合宿農業ツアー」参加者と「あぐりとかち」のメンバー。
真剣に取り組む学生、
グループの活動を紹介します。
今、
学生は!
99
指し、同大学と地域の企業・住民
十勝の農業と食を全国へ発信!
地域貢献に尽力する
農業サークル
H
99
神戸大学/
西 田 文 香 さん
山梨大学/
齋 藤 浩 平 さん
ここでは学業や課外活動に
es
front of Student Initiativ
Fore
国立大学 vol.39 December 2015
編集・発行/一般社団法人 国立大学協会
〒101-0003 東京都千代田区一ツ橋2-1-2
TEL:03-4212-3506
表紙:一般社団法人日本経済団体連合会副会長
株式会社日立製作所執行役会長兼CEO
中西宏明
撮影:東京藝術大学 美術学部准教授
鈴木理策
http://www.janu.jp