校長のつぶやき 第10号 平成28年1月4日 校 長 林 田 仁 新年あけましておめでとうございます。本年も県立岐阜商業高校の更なる成長に向けて精進します。ご指導、 ご鞭撻のほど何卒よろしくお願い申し上げます。 さて、校長のつぶやき 第10号は、年末の出来事に対する私の感動や思いをぜひ皆様にお伝えしたく、「岐阜 県商業教育」第52号に投稿予定のものをそのまま掲載させていただきますので悪しからずご了承ください。 ◇ 機 関 車 と 客 車 師走のとある日に愛知大学へ訪問する機会をいただいた。県商業教育研究会が主催する、「高大連携懇談会」の一 環として、本年度より指定校推薦や情報・簿記会計推薦で合格し、愛知大学で学ぶ本県の商業関係高校出身の学生た ちと、大学の先生を交えての懇談会に会長代理で出席したものである。県内からは各校の商業科主任の先生方に出 席いただいていた。 JR名古屋駅に少し早く着いたので、駅デパートで用事を済まそうと、あおなみ線には乗らず徒歩で愛知大学を目指 すことにした。JRの高架に添って南へ歩いていくと、大勢の若者が私と同方向に歩いている。ほどなく、全てが愛知大 学の学生で、午後3時頃に始まる講義のために大学へ急いでいることが理解できた。約30年前には怠け者の大学生 だった私には想像もできない「午後後半の講義」に溌剌とした表情でキャンパスへ向かう学生たちに先ず驚かされた。 平成24年4月に移転完了し開講したばかりの新しい講義室で、第1部のパネルディスカッションが始まった。参加学 生の数が思いの外少ない中、大垣商卒業の男子1名と本校卒業の2名の学生に1人の教授がインタビューする形式 がとられた。いずれの学生も表情豊かに「高校時代に頑張ったこと」や「大学で頑張っていること」「後輩へのアドバイ ス」など生き生きと明瞭に語ってくれた。しかも、質問が続いて話が「高校時代の性格」に及ぶと、パネラーの学生たち は高校時代みな恥ずかしがり屋で人前で話した経験がほとんどない生徒達だったと知り、更に驚きが増した。プレゼ ン力の著しい進歩はどうやら、所属するゼミや部の活動に因るものらしい。「缶コーヒーをなぜ女子は飲まないか。」な ど、学生ならでは?のテーマを設定して休日も返上して夜遅くまで激論を戦わせたり、街へ出て多くのインタビューや アンケートを行っているとのこと。また、あるパネラーは中学時代に取り組んだ陸上競技を大学で復活させ、指導者の いない大学の部活動でリーダーとして練習メニューを立案し、部員たちを導いていると言う。 第2部は、学生たちと各校商業科主任の先生方が4つに分かれてのグループ討議である。開始から程なく、続々と講 義を終えた学生たちが合流してきて、椅子が足りないほどに膨れ上がった。こんなことからも、県内商業高校出身学生 たちが真面目に学業に取り組んでいる様子を垣間見ることができた。この討論会の中では、他の学生たちと共に学ぶ 中で「英語や数学の力が足りない。」とか、 「経済、経営系の講義では高校時代に学んだ言葉が出てきて、他の学生に説明してあげた。」などの 話しが飛び出し、商業科主任の先生方も種々の質問を投げかけられていた。 あるグループで、高校時代に「簿記」を学んだことの意義や、大学生活での活用方法について話題になった。「高校 卒業時の進路に役立つ資格だから頑張って勉強した。」と答える学生が多く、また「簿記は大学の講義で役立つ場面は あっても、自ら活用することはあまりない。」との答えには商業科主任の先生方から失笑が漏れた。私も商業の素人な がら、思わず「話題の企業の財務諸表を読み取ったり、貸借対照表を作成してゼミの研究発表や論文に活用したら?」 と発言したら、なるほど顔に変わった学生が少なからず現れた。 列車に例えるなら高校時代の生徒は客車で、教えてくれる先生(機関車)と連結さえしていれば望みどおりの目的地 へ連れて行ってもらえる。しかし、大学生はそうはいかない。自ら機関車、いや、 オフロードを走破する4WD車として、道なき原野を切り開いて行かねばならないのだ。 この日出会った学生たちは、まさに「自走」に目覚め、自ら走りはじめていることを実感できる者ばかりで、彼らのキラ キラと輝く眼差しや、体中からほとばしる活力、希望に満ちた言葉の数々に触れて、私は忘れかけていたPassion(情 熱)を思い起こせた気がする。 高校における商業教育の現場においても、入学から卒業後の進学や就職に向けて、生徒を客車として牽引し続ける だけでなく、円滑に機関車へと移行させていく術を検討していかなければならないことを痛感させられた懇談会であっ た。
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