バーゼル委員会が証券化商品資本賦課の枠組み最終 - 新生証券

新生ストラテジーノート 第 175 号
2014 年 12 月 12 日
調査部長 江川 由紀雄
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(03) 6880-6035
バーゼル委員会が証券化商品資本賦課の枠組み最終テキスト公表
2018 年 1 月から導入、同時に「シンプル、透明、比較可能」な要件案の意見募集
バーゼル銀行監督委員会は、12 月 11 日、バーゼル3文書の一部を成すものとして、「証券化
の枠組みの改訂」と対する文書 1を発表した。この文書には、バーゼル合意のテキストの改訂も含
まれている。同文書の導入部分に 2018 年 1 月から新基準を適用することが明記されている。大
枠は昨年 12 月に公表された第二次市中協議文書に盛り込まれていた案からは変更はない。証
券化エクスポージャーに適用するリスクウェイト決定方式とヒエラルキーは、第二次案と同じく、内
部 格 付 準 拠 方 式 ( SEC-IRBA ) 、 外 部 格 付 準 拠 方 式 ( SEC-ERBA ) 、 標 準 的 手 法 準 拠 方 式
(SEC-SA)の優先順位となっている。また、再証券化には、SEC-IRBA および SEC-ERBA の適用
は認めず、SEC-SA のみを認めるとしている点も、第二次案からは変わっていない。ただ、リスク
ウェイトの水準調整が加えられたようであり、たとえば、SEC-ERBA を適用した場合の格付けとリ
スクウェイトの対比テーブルに掲載されている数値が大きく変わっている。
現行の枠組みでは、内部格付手法採用行(IRB 行)と標準的手法採用行(SA 行)とでは、証券
化エクスポージャーの資本賦課の方式が大きく異なっているが、その差異を無くす。ただし、SA 行
は SEC-IRBA は利用できないという差異は残る。(そもそも、SA 行は、裏付資産に IRB を適用で
きる余地がないのであるから、当然であろう。)
たとえば SEC-ERBA を用いてリスクウェイトを決定する方式を用いるならば、IRB 行、SA 行とも
に、AAA 格の最優先トランシェのリスクウェイトは、マチュリティが 1 年以下であれば 15%、5 年
以上であれば 20%になる。現行の扱い(分散が効いていることを前提に、IRB 行ならリスクウェイ
ト 7%、SA 行であれば 20%)に比べ、IRB 行にとっては大幅な資本賦課の引き上げになるが、SA
行にとっては自己資本比率への影響という点では負担が増加するものにはならない。
また、同文書の導入部分の 3 つ目の段落では、バーゼル委と証券監督者国際機構(IOSCO)
が 共 同 で 発 表 し た 市 中 協 議 文 書 “Criteria for identifying simple, transparent and
comparable securitisations” (「シンプルで透明で比較可能な証券化商品と特定するための
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BCBS, Revisions to the securitisation framework, December 2014
http://www.bis.org/bcbs/publ/d303.htm
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要件案」) 2についてバーゼル委が 2015 年中に検討を加え、それを元に、証券化の資本賦課ル
ールを更に見直す可能性を示唆している。すなわち、今回、バーゼル委から発表された文書は、
2018 年 1 月に導入予定の最終テキストの形だが、 “simple, transparent and comparable”
(「シンプルで透明で比較可能な」証券化商品の要件が固まったところで、それを別扱いとする修
正を行う可能性を示唆しているのである。
IOSCO との共同提案、「シンプルで透明で比較可能(STC)な証券化商品」の要件
バーゼル合意に基づき新基準に基づく証券化商品の資本賦課が開始されるのが 2018 年 1
月となることが明らかになった。まだ約 3 年先ではあるが、これに先立って、IOSCO との共同提案
で「シンプルで透明で比較可能」(simple, transparent and comparable, 略して STC)な証券
化商品の要件が固まることになる。なお、STC 案は、繰り返しになるが、バーゼル委員会単独で
はなく、IOSCO との共同提案の形で市中協議文書が発表され、意見募集が行われているもので
ある。
STC 案の市中協議は、2015 年 2 月 13 日を締切日として意見募集が行われている。これを踏
まえて、来年中に、バーゼル合意における証券化の枠組みの再見直しが行われることが予想さ
れるが、 “STC” の要件に合致するものについて、リスクウェイトを軽減する等の措置が取られる
方向で検討が進む可能性が高いと思われる。というのも、今般のバーゼル委における証券化の
枠組みの見直しは、リーマンショック前後の主にアメリカの証券化商品のパフォーマンスを教訓と
したものであり、全般的には、やや資本賦課を引き上げる方向での見直しになったからである。こ
の新基準を、欧州諸国や日本で典型的に見られる格下げも少なくほとんどデフォルト事例が生じ
ないような証券化商品にも一律に適用すると、やや保守的な扱いになってしまう懸念がある。
今後、STC の要件についての議論が進むことになろう。日本の証券化市場関係者および自己
資本比率規制の対象となる金融機関は、日本の「まっとうな」証券化商品が STC の要件から外
れてしまうことをできるだけ回避する方向性で、市中協議文書を検討するべきであろう。
(調査部長 江川 由紀雄)
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BCBS and IOSCO, Criteria for identifying simple, transparent and comparable
securitisations, 11 Debember 2014 http://www.bis.org/bcbs/publ/d304.htm
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