【36】 全地連「技術フォーラム2014」秋田 チューブサンプラー(短尺サンプラー)を用いた原位置飽和度測定手法の開発 ㈱東京ソイルリサーチ 東京支店 技術調査部 ○ 小松 洋之 安 浩輝 乾 一幸 吉田 1. はじめに 近年,砂地盤の不飽和化による液状化対策工法が試行 正 ⑥飽和度Sr の算定 ・湿潤重量による方法:Sr = w・ρs/e・ρw される中で,簡便に飽和度を測定する方法が求められて (ここで,含水比 w は湿潤重量Wt と乾燥重量Wd よ いる。本発表は,砂地盤の飽和度の測定方法のひとつと り算定,間隙比eは体積Vによる乾燥密度 ρd と土 して開発したチューブサンプラー(以下,短尺サンプラ 粒子密度 ρs より算定) ーと呼ぶ) による採取試料を用いた測定方法を紹介する。 ・ボイルの法則による方法:Sr = 100・Vw/Vv 同法は,サンプリングから飽和度測定の過程を水中で行 (ここで,間隙体積Vv は乾燥重量Wd・土粒子の密 い,サンプリング試料からの脱水を発生させずに,採取 度 ρs より土粒子体積Vs を算定して,間隙比eよ した試料の飽和度を現地にて測定する方法である。 り算定。間隙水体積Vw はVw=Vv-Va とし,間隙 空気体積Va は段階加圧Pi による体積変化量 ΔVi 2. 飽和度測定の原理と測定方法 の関係からボイルの法則(P1V1=P2V2)により算 (1) 飽和度の測定原理 定。 ) 地盤の飽和度を実測値として求める方法の一つとし ① て,チューブサンプリングした乱れの少ない試料を用い 室内試験により算定する方法がある。但し,砂質土にお いては,ボーリング孔からサンプラーを地上に引き上げ る際に脱水が生じ, その段階で飽和度は異なってしまう。 このため,砂質土の原位置における飽和度をチューブサ ② ンプリング試料から求めることは,一般的には困難とさ れている。 一方,サンプリングから飽和度測定の過程で,採取試 料を一切水中から出さずに脱水を発生させなければ,チ ューブサンプラーで採取した砂質土試料を用いても,原 ③ 位置の飽和度が保たれた状態の試料として飽和度を求め ることができる。加えて,サンプリングした現地で直ち に測定を行うことにより,試料運搬時の乱れや温度変化 による溶存空気の気化に伴う飽和度への影響を除いた測 ④ 定が可能となる。 (2) 飽和度の測定方法 飽和度の測定方法は,安価で簡便な手法であることを 前提として考案したものであり,機械ボーリング(ロー ⑤ タリー式)および飽和度測定用のサンプリングは,通常 のボーリング調査と概ね同様な装置である。 サンプリングから飽和度測定の作業概要を以下に示 ⑥ す。 (図-1および図-2参照) ①短尺サンプラーによる乱れの少ない試料採取 ②脱水を完全に遮断した状態でのサンプラーの引上 げ・試料の取出し・整形 ③現地における採取試料の体積・湿潤重量測定 ④現地における間隙空気体積の測定(採取試料を密封 容器に入れ,加圧により体積変化量を測定) ⑤採取試料の乾燥重量・土粒子の密度の測定(室内試 験) 図-1 飽和度測定の作業フロー 全地連「技術フォーラム2014」秋田 d.ライナーチューブ内に内包された採取試料の両端面 を水槽内で整形し,試料長を測定することにより, 採取試料の体積を求める測定手法を考案した。 保水用具 e.水槽内で重量測定容器にライナーチューブごと採取 試料を収納した後,湿潤重量の測定を行う。 f.重量測定容器に加圧給水装置を取り付け,加圧量と 体積変化量の関係から採取試料内の空気量を求める 現地測定装置を作成した。 3. 原位置飽和度測定手法の検証 地下水位以深の飽和度100%と想定される土層を対象 として,同手法による飽和度測定を行った。対象深度の ① 短尺トリプル サンプラーに よる乱れの少 ない試料採取 ② サンプラー を引き上げ。 泥水は孔内 で保持。 ③ 保水用具(ビニー ル筒)をサンプラ ーに被せる。ビニ ール筒を中間部で 折り曲げ、下端部 を引き上げて、ビ ニール筒内に水を 充填、口元を締結。 ④ 保水用具に内 包したサンプ ラーをボーリ ング孔内より 取り出す。 P 波速度は,PS 検層より Vp=1590m/s を示すことから飽 和状態にあるものと判断される。 図-3に本実験における飽和度測定結果を示す。対象土 層は,深度 GL-6~-8mで N 値30~40程度の洪積砂層で あり,土質は細砂~中砂である。測定された飽和度は, ボイルの法則による方法の静水圧下としての算定で, Sr2’=99.1~100.1%であり,概ね飽和度100%の結果が得 られ た。なお, 湿潤重量による 方法では Sr1=97.7~ 102.6%であり,ややばらつきがみられたが,これは,重 ⑤ 水で満たした保水用具ごと短尺トリ プルサンプラーを水槽に入れる。 ⑦ ライナーチューブ(塩ビ管)を 円筒水槽に移し、試料の端面 を成形する。 ⑨ 電子秤により重量測定し、 湿潤重量を算定する。 ⑥ 水槽内でサンプラーを解体し、試料を 内包したライナーチューブ(塩ビ管)を 取り出す。 量測定における誤差の影響が考えられる。 ⑧ 端面を成形した試料の試料長を測定した 後、ライナーチューブごと水で充填した 重量測定容器へ入れる。 ⑩ 加圧装置を接続し、加圧による間 隙内の空気体積変化を計測する。 図-3 原位置飽和度測定の結果 (地下水位以深) 4. まとめと今後の課題 図-2 飽和度の測定方法の概要図 今回提案する手法により,砂・砂質土においても,チ ューブサンプラーで採取した試料を用いて,原位置の飽 以下に飽和度測定方法の留意点を示す。 a.通常多用されている既往のトリプルサンプラーは長 さが1.6m以上あり,水中に配置した状態での作業性 を踏まえ,採取試料長を50cm 程度に抑えた短尺のト リプルサンプラーを作成した。 b.採取した試料を内包したサンプラーをボーリング孔 和度を求めることが可能と考える。また,空気注入不飽 和化工法による不飽和地盤で,同法による飽和度測定を 行った。同測定結果は既往報告1)を参照されたい。 今後は,同手法の適用可能な土質の明確化と,測定精 度の向上が必要と考える。 なお,本飽和度測定手法は,地盤の飽和度測定方法と 内から脱水させずに地上に取り出すため,泥水下の して特許出願中である。 ボーリング孔内でサンプラーを保水用具(円筒状ビ 《引用・参考文献》 ニール袋)で覆い,泥水を満たした保水用具ごと水 1) 浅田英幸・三好朗弘・藤井直・山浦昌之・岡田克寛・ 槽内に納める方法を考案した。 c.水槽内に配置した状態でのサンプラーの解体と試料 ライナーチューブを抜き出す作業を修練した。 岡村未対・吉田正:空気注入不飽和工法の開発その5: 事後調査結果, 土木学会第67回年次学術講演会概要集, pp.499~500,2012.9.
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