第 48 回地盤工学研究発表会 193 C - 05 (富山) 2013 年 7 月 バイブロドリルによる掘進が要素試験結果に及ぼす影響 ボーリング、サンプリング (株)サムシング 正会員 永井優一 正会員 金原瑞男 正会員 神村 真 概要 住宅のような小規模建築物の基礎地盤調査には、スウェーデン式サウンディング試験(以下、SWS 試験と表記)を採用 することが一般化している。しかし、この調査手法は土質評価が困難であるので、基礎地盤の評価は、周辺の地形・地 質に関する既存資料に強く依存する。別報で示したバイブロドリルによる乱れた土試料の採取装置 1) は、機動性に優れ るとともに掘削能力が高いので、この調査機で、乱れの少ない試料の採取が可能であれば、比較廉価に要素試験のため の試料採取が可能となり、住宅の基礎地盤評価精度を飛躍的に向上できる可能性がある。 著者らは、本調査手法特有のボイリングの発生を抑える簡易な手法について検討を行い 1) 、一定の成果を得ているの で、本手法により掘削をした後、乱れの少ない試料をシンウォールサンプラーによって採取し、物理試験および要素試 験結果に表れる掘削手法の影響を確認した。 たサンプルの土質を示す。なお、原則として対象土質は 1.装置の概要 図-1 に、掘削機の平面図を示す。本装置は、バイブロ ドリルによる掘進を行う軸と標準貫入試験(以下、SPT と 粘性土とし、物理試験(コンシステンシー試験)、要素試 験(一軸圧縮試験、標準圧密試験)をそれぞれ実施した。 表記)を実施するための軸を有しており、二つの軸は一つ 表-1 の回転軸を中心にして同心円状に配置されている。この 試料採取位置とその土質 現場名 ため、掘進後、速やかに SPT を実施できる。 1 埼玉県草加市瀬崎 2 千葉県浦安市高州 3 神奈川県厚木市旭町 4 5 6 7 千葉県花見川区宇那谷 千葉県野田市木間ケ瀬 神奈川県相模原市南区下溝 富山県高岡市 8 茨城県筑西市海老ケ島 9 栃木県宇都宮市板戸 10 茨城県古河市諸川 掘進軸 SPT 用の軸 二軸の回転軸 11 茨城県猿島郡境町 12 茨城県坂東市馬立 13 埼玉県比企郡川島町 14 15 茨城県潮来市上戸 長野県諏訪 土質名(深度) 砂質シルト(3-4m) 砂質シルト(5-6m) 砂質シルト(8-9m) 粘土 砂質火山灰質粘性土(1-2m) シルト(2-3m) 砂質シルト(4-5m) 砂混じり火山灰質粘性土 砂質粘土 砂混じり火山灰質粘性土 粘土(2-3m) 砂質火山灰質粘性土(2-3m) 砂混じり火山灰質粘性土(4-5m) 砂質火山灰質粘性土 砂混じり火山灰質粘性土(1-2m) 〃(3-4m) 砂混じり火山灰質粘性土(2-3m) 〃(3-4m) 砂質火山灰質粘性土(1-2m) 砂混じり火山灰質粘性土(2-3m) 火山灰質粘性土(4-5m) 粘土(1-2m) 粘土(2-3m) 砂質粘土(4-5m) 火山灰質粘性土 砂質粘土 3.試験結果の比較 図-1 掘削機の平面図 掘削手法が供試体に及ぼす影響を確認するために、間 隙比 e、含水比 w、一軸圧縮強さ qu、圧縮指数 Cc、圧密 2.試料採取 バイブロドリルによって所定深度まで掘削後、シンウ 降伏応力 pc’について、ロータリーボーリングによる採取 試料 R とバイブロドリルボーリングによる採取試料 VD ォールサンプラーを静かに圧入することで、乱れの少な での各地盤定数の比 VD/R 値を確認した。その結果を表 い試料を採取した。表-1 に、採取地点と土質試験に供し -2 および図-2 に、それぞれ示す。 The study on the influences that the Vibro-Drilling method gives to the element test results , SOMETHING Co., Ltd, Yuichi NAGAI, Mizuo KANAHARA and Makoto KAMIMURA 385 図表から、間隙比 e と含水比 w の VD/R 値は、平均値 値の変動係数は 0.4 を超えており、ばらつきが大きい。 が 1 に近く、変動係数も 0.25 未満と小さい。一方、一軸 また、これらの地盤定数の VD/R 値の平均値は、常に 1 圧縮強さ qu、圧縮指数 Cc、圧密降伏応力 pc’の VD/R 値 を上回っており、掘削時の影響がわずかながら存在する は、平均値が 1.05∼1.12 程度とほぼ 1 に近い値となるも 可能性が危惧される。ただし、 その差異はわずかであり、 のの、変動係数が 0.38∼0.48 とやや大きい。 設計上の利用に際しては、地盤のばらつきを考慮して地 コーンプーリー法により計測された N 値と自動落下法 盤定数の低減を行うことで、この影響を回避することは により計測された N 値の変動係数は、それぞれ 0.345、 可能であると考えられる。このことから、今回対象とし 0.184 であることから 2)、物理定数(e,w)の VD/R 値は 0.2 た地盤(N=1∼5 程度の粘性土)では、間隙比、含水比は、 ∼0.25 程度と小さく、掘削手法の影響は小さいものと推 掘削時の振動の影響は、著しいものではないと評価でき 測できる。一方、一軸圧縮強さなど要素試験結果の VD/R る。 平均 値 標準 偏差 変動 係数 間隙比 e 21 0.999 0.196 0.196 含水比 w 22 1.022 0.252 0.246 一軸圧縮強さ qu 19 1.123 0.435 0.387 圧縮指数 Cc 18 1.045 0.497 0.476 圧密降伏応力 pc’ 18 1.098 0.487 0.443 4.0 150 含水比(VD式)(%) 検体 数 項目 200 5.0 掘削手法が供試体に与える影響(VD/R 値の比較) 間隙比e(VD式) 表-2 3.0 2.0 100 50 1.0 0 0.0 0.0 1.0 2.0 3.0 4.0 0 5.0 50 (i)間隙比 e 200 100 2.5 1000 2.0 800 1.5 1.0 0.5 0 100 200 300 400 0.0 0.5 1.0 一軸圧縮強度qu(従来式)(kN/m2) 1.5 2.0 2.5 圧縮指数Cc(従来式) (iii)一軸圧縮強さ qu (iv)圧縮指数 Cc 図-2 200 600 400 200 0 0.0 0 150 (ii)含水比 圧密降伏応力(VD式)(kN/m2) 300 圧縮指数(VD式) 一軸圧縮強度qu(VD式)(kN/m2) 400 100 含水比(従来式)(%) 間隙比e(従来式) 0 200 400 600 800 1000 圧密降伏応力pc(従来式)(kN/m2) (v)圧密降伏応力 pc’ 掘削手法が地盤定数に及ぼす影響 (実線:平均値;破線:平均値±標準偏差) 4.まとめ 【謝辞】 バイブロドリルによる掘削は、ボイリング等によって 周辺地盤を乱すため 3) 本手法の開発にあたり、兼松日産農林㈱水谷羊介博士、 、乱れの少ない試料を採取するこ ジオテック㈱曽根圭一様から、丁寧かつ熱心なご指導を とは困難と考えられた。しかし、以上の結果から、掘削 賜りました。ここに感謝の意を表します。 時の地盤の乱れを抑制する掘削手法を用いることで、バ イブロドリルにより掘削した場合でも乱れの少ない試料 【参考文献】 の採取とその利用は、十分可能であることが確認できた。 1) ただし、今回対象とした地盤定数には、軟弱な粘性土 試験結果に及ぼす影響, 第 48 回地盤工学研究発表会 地盤のデータが少ない。軟弱な地盤の場合、掘削時の振 動によって地盤の密度が変化するなど、要素試験結果に 概要集,2013(投稿中) 2) 大きな影響を及ぼす状態変化が発生することも危惧され る。このため、今後は、さらに幅広くデータを収集し、 金原瑞男他:バイブロドリルによる掘進が標準貫入 地盤工学会:地盤調 査の方 法と解説, pp.259-261, 2004. 3) 例えば、渡辺一夫、中島誠:無水式土壌・地下水調 バイブロドリルによる掘削手法が供試体に与える影響を 査機を用いた N 値の測定に関する考察, (社)全国地 明らかにしていきたい。 質調査業協会連合会 e-Forum 論文集, No.108, 2006. 386
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