業界屈指の高リサイクル率 徹底した情報公開が付加価値を

東
京
都
スーパーエコタウン事業の事例③ 建設廃棄物処理・リサイクル
業界屈指の高リサイクル率
徹底した情報公開が付加価値を生む
◆高俊興業
産廃の2割を占める建設廃棄物。その対策が早急に求められてい
る。
リサイクル率90%を誇る高俊興業の東京臨海エコ・プラントに
ついて、同社・常務取締役の高橋潤氏に聞いた。
第二工場を作りたいという想いで、
を行ってきたこともあり、
できることなら“都
スーパーエコタウン事業へ進出
内で発生した廃棄物は他県に頼ることな
常務取締役
く、
都内で処理したい”
と考えていたので、
高橋 潤 氏
1978年に産業廃棄物の収集運搬業
これはチャンスだと思いました。
また、
当初
者として産声を上げた高俊興業は、
2004
計画の焼却施設は設置・運営に莫大な
年12月より東京臨海エコ・プラントの操業
費用がかかるため、建設系混合廃棄物
を開始し、
東京都の「スーパーエコタウン
の問題解決を目指す東京のエコタウン事
事業」参画企業として、
建築系混合廃棄
業ならば我々が培ってきたノウハウを遺憾
物のリサイクル率90%という驚異の実績
なく発揮することができる、
という思いもあ
最初の「市川エコ・プラント」の操業当時、
を上げている。
りました」。
国土交通省の試算で公表されていた全
高俊興業ではこれに先立つ1998年10
2001年の4月にエコタウン事業計画の
国の建設系廃棄物のリサイクル率はわ
月、
千葉県市川市に「市川エコ・プラント」
公募に申し込み、
同年7月には建設系混
ずか7%。
ところが既にその頃、
高俊興業
を立ち上げ、
建築系混合廃棄物のリサイ
合廃棄物の処理業者として決定された。
では40数%のリサイクル率を誇っていた。
クルに着手している。当初は集荷量も少
そして2004年12月、
「東京臨海エコ・プラ
その後、
セメント業界や鉄鋼業界が再資
なく、
年商も18億円だったが、
「実績が評
ント」の操業が開始されたのである。
源化物の受け入れ先となってからは70数
これまでに培ってきた
ノウハウを遺憾なく発揮
価されるに従い集荷量も増え、
プラントの
改善を繰り返す中で機械も3倍に増設、
稼働率も徐々にアップして2000年には年
商は31億円、
現在では38億円まで達して
いる」と語るのは、常務取締役の高橋潤
氏。
順調に稼働をはじめたプラント運営の
一方では、千葉県内で新たに焼却施設
を建造する構想があった。
ところが、
コン
サルティング会社と共同での事業計画が
できた頃、
東京都の「スーパーエコタウン
事業」の話が舞い込んできたのだという。
そこで、
「元々、
都内を中心に収集運搬業
62
2006.3
高俊興業・リサイクルビジネスのポイント
・90%という高いリサイクル率
・機器・プラントメーカーとの共同開発による高性能プラントの建設
・徹底した情報公開による付加価値
高俊興業・今後の展開
・更に高いリサイクル率の達成
・メンテナンス体制の充実
・情報公開の拡充
%に達し、機械・設備の改良を重ねた現
その一方で、再資源化物の受け入れ
かで必ずメンテナンスの必要性が生じる
在ではその率は、
市川、
東京臨海の両プ
先がなければ、
どれだけ工場が順調に稼
ため、
メンテナンス専門の自社社員4名が
ラントで90%を超える月がほとんどだという。
働しリサイクル率が向上したとしても、循
常駐し、
対処に追われている。
特に、
2004年に操業を開始した「スー
環は途絶え、
余剰となって最終的に無駄
「もちろん、機械のメーカーにお願いする
パーエコタウン事業」の東京臨海エコ・プ
ができてしまう。これではリサイクルの意
こともありますが、
メーカー頼りでは進展し
ラントは、
開業初年度でこの実績である。
味がない。
ていきません。自社の中で日々改善してい
背景にはやはり、市川でのノウハウが活
そこで高俊興業では、中間処理後に
くことが、機械稼動効率向上につながる
かされている、
と高橋氏は言う。
搬出するリサイクル先・処理場として、約
と考えています」
「東京臨海エコ・プラントは、
いわば市川
50社と契約を結んでいる。例えば、
廃プラ
スーパーエコタウン事業は、
「私どもの、
(エコ・プラントの)のグレードアップ版。市
スチック類の中で非塩ビ系のものは、
JFE
社会貢献としてリサイクルしていこうとい
川での経験があったからこそ、
各機械の
スチールや三菱マテリアル他で、高炉還
う取り組みの一環」と断言する高橋氏。
調整もスムーズに行うことができた。大き
元剤・セメント燃料・RPF・プラスチック製
高リサイクル率の背景には、社長以下、
なトラブルも少なかったために、稼働率も
品原料として利用。日本の建設系廃棄物
高俊興業トップの強い方針が存在する。
落とすことなく最初からフル稼働をさせる
の中で大部分を占める土砂分も、
ジャパ
その方針のもと、
社内横断的に取り組む「再
ことができたのです」
ンクリーンテックや大成ロテックといった企
資源化推進室」
を設け、
“「リサイクル市場」
業で、再生砕石・再生砂として利用され
に目を向けた取り組み”と“工場処理技
ている。
しかも、搬出先は大手企業が数
術の向上”を目的とし、決して90%という
多く名を連ねており、安定した需要を確
リサイクル率に満足せずに、
重要経営課
様々な素材が混入する建築廃棄物を
保しているのだ。
題の一つとしてリサイクル率向上に取り
リサイクルするには、
いかに精密に選別で
こうした中、
課題としては、
「設備・機械
組んでいる。
きるかがその後の再資源化物精度のカ
のメンテナンスをいかに効率的に行うか
ギを握る。この“選別”を行うのが高俊興
にかかっている」
と高橋氏は言う。
業である。リサイクル精度を高める機械
1日に2,000t以上の処理能力を保ち続
高俊興業では、
中間処理後の処分・リ
の開発・設計面では栗本鐵工所と提携を
けるには、
こまめなメンテナンスが必須だ。
サイクル先の企業名や、品目・月ごとのリ
結び、
技術の向上に向けたやりとりを行っ
選別機の詰まりやベルトコンベア、
カッター
サイクル率をホームページ上で公開し、
誰
ているという。
の刃といった消耗品の交換など、
毎日どこ
でもアクセス可能にするなど、
徹底的な情
日々の自社努力こそが、
効率向上に繋がる
徹底した情報公開でリード
報公開を行っている。また、
各社によって
算定方式の異なるリサイクル率についても、
徹底した情報公開の例:廃プラリサイクルフロー
その算出根拠を明確にするなど余念が
高炉還元剤
非塩ビ系廃プラ
セメント燃料
RPF
プラスチック製品原料
JFEスチール
三菱マテリアル
トクヤマ
エコ・マイニング
新日鐵高炉セメント
ない。
また、
GPSとマニフェストが一体とな
った一元化システムの導入も積極的に進
めている。
ちなみに現在、電子マニフェストの使
用状況は約20%程度を占めているという。
塩ビ系廃プラ
情報公開を強力に推進する理由として、
塩酸
高炉還元剤
JFEスチール
等
塩ビ管
塩ビ管
廃タイヤ
セメント燃料、
及び原料
高橋氏は、
「排出事業者、
つまり私達にと
ってのお客様や第三者の方に、廃棄物
照和樹脂
大水産業
処理の実態を認識してもらい、
その上で
付加価値をつけたサービスを提供してい
きたいため」
と言っている。
トリウミ
2006.3
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