Kobe University Repository : Kernel Title 工業統計メッシュデータによる技術的効率性の分析 (< 特集>小地域統計による実証分析) Author(s) 萩原, 泰治 Citation 国民経済雑誌, 201(1): 85-95 Issue date 2010-01 Resource Type Departmental Bulletin Paper / 紀要論文 Resource Version publisher URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81006910 Create Date: 2014-12-25 工業統計メッシュデータによる 技術的効率性の分析 萩 原 国民経済雑誌 泰 第 201 巻 治 第1号 平 成 22 年 1 月 抜刷 85 工業統計メッシュデータによる 技術的効率性の分析 萩 原 泰 治 工業統計メッシュデータを用いて,技術的効率性を DEA により計測し,その分 布状況を把握し,技術的効率性の変化の要因を分析し,地域間格差が大きいことを 示した。推定の結果,技術的効率性の上昇率が,当該メッシュ区域の生産規模が大 きいと高く,技術的非効率性の水準が高いと低いという結果を得た。 キーワード 技術的効率性,メッシュデータ,地域格差 1 は じ め に メッシュデータは,地域内の詳細な分析を可能にするとともに,都道府県レベルや市区町 1) 村レベルよりも多くのサンプルを利用できる地域データとして活用できる。本稿では,工業 統計メッシュデータを用いて,技術的効率性を計測し,地域ごとの技術的効率性の格差の動 向を分析することを目的としている。 深尾・岳 (2000) は47都道府県の県内一人当たり県民所得の収束の分析をおこない,県民 所得の収束を生じさせる要因の一つとして生産性のキャッチアップを取り上げた。すなわち, 生産性の低い地域は技術をキャッチアップすることにより,生産性の高い地域より高い生産 性上昇率を享受できるというものである。工業統計メッシュデータを用いることにより,よ 2) り豊富なデータのもとで分析を行うことが可能である。 以下では,第 2 節で工業統計メッシュデータの概要を述べ,第 3 節で包絡線分析 (DEA) の手法を要約し,第 4 節で分析結果をまとめる。 2 工業統計メッシュデータ 工業統計メッシュデータは,工業統計調査の結果を,緯度 1 120度,経度 1 80度で囲まれ た区域を単位として集計したデータである。日本の緯度では,約 1 km 四方の正方形に近い。 工業統計調査は毎年実施されているが,メッシュデータへの集計は,現時点までに1977年, 3) 82年,90年,95年,98年,2000年,03年,05年の 8 回にわたって公表されている。本稿では, 86 第201巻 第 1 号 90年,95年,2000年,05年以降の 4 期間に関するデータを用いる。 メッシュデータは,都道府県や市区町村を単位とした集計 (それぞれ47件,2,284件) に 比べ,より詳細なデータが利用可能であり,2005年メッシュデータでは,43,534件のメッシ ュが含まれている。しかし,対象とする地域単位が小さいほど,含まれる事業所の数は減少 し, 1 ないし 2 の事業所しか含まれていない場合には,秘匿の対象となる。表 1 に示される ように,2005年メッシュデータでは,製造業全体で10人以上の事業所に基づく集計で,製造 品出荷額等や有形固定資産等の分析に必要なデータの利用できるメッシュは13,286件に減少 する。製造品出荷額等のメッシュデータにおける全国合計は,工業統計産業編の10人以上の 事業所に関する全国合計の75%である。産業別,規模別のデータではさらに減少する。秘匿 によるサンプルの減少を最小にとどめるため,全製造業の10人以上の事業所に関する集計デ ータを分析の対象にする。 1 km メッシュを越える範囲の広大な工業用地を持つ事業所が秘匿されている可能性があ ることが考えられるが,表 1 において製造品出荷額等合計のカバレッジ75%は,事業所に関 するカバレッジ69%より高く,大規模事業所の秘匿が相対的に多いのではないことが分かる。 表1 10人以上の規模の事業所で利用可能なデータの状況 総数 (含秘匿) 利用可能データ (A) (B) 1990年 2005年 1990年 カバレッジ率 (B A) 2005年 1990年 2005年 メッシュ数 1 総計 44,896 43,534 18,517 13,286 41% 31% 2 10 29人 38,403 35,452 18,055 12,876 47% 36% 3 30 299人 23,974 21,805 15,272 11,290 64% 52% 4 300人超 3,100 2,738 2,642 2,037 85% 74% 事業所数 1 総計 191,992 133,621 153,804 92,657 80% 69% 2 10 29人 131,607 87,592 103,854 59,148 79% 68% 3 30 299人 56,546 42,788 46,575 30,983 82% 72% 4 300人超 3,840 3,241 3,374 2,525 88% 78% 製造品出荷額等 1 総計 307,308 286,518 266,042 214,903 87% 75% 2 10 29人 38,249 26,410 20,668 10,323 54% 39% 3 30 299人 113,096 110,640 47,488 33,326 42% 30% 4 300人超 155,962 149,468 19,517 5,923 13% 4% 製造品出荷額は,十億円単位 工業統計メッシュデータによる技術的効率性の分析 3 87 DEA による技術的効率性の分析 4) データ包絡線分析(Data Envelopment Analysis : DEA) は,コブ・ダグラス型や CES 型等 の関数型を前提にすることなく,観察された生産に関するインプットとアウトプットのデー タの一次凸結合からなるパレート的に効率的な組み合わせにより生産可能性フロンティアを 定義し,フロンティア上にないデータの効率性を計測する手法である。 まず,同じ生産量を 2 つの生産要素で生産する場合を例にとる。等産出量曲線を考えてい るのと同じ状況である。図 1 のように,観察された 2 つの生産要素の組は,A, B, C, D, E である。B, C, D, E はそれぞれに一定の範囲の生産要素の価格の組み合わせのもとで,費 用を最小にする生産の組み合わせとなることがありうる。観察されたデータの中では生産可 能性フロンティアを形成していると解釈できる。しかし,A はどのような生産要素の組み合 わせのもとでも,他の B, C, D, E あるいはそれらのミックスよりも費用が高くなってしま う。A は B, C, D, E のいずれかの技術を利用することにより,より費用の少ない効率的な 生産を行うことができたという意味で非効率的である。図 1 の場合,A は 2 つの生産要素を 比例的に縮小することにより,C と D の組み合わせである M まで生産要素を節約できる。 このとき,OM OA を技術的効率性 (以下 TE) とする。 図1 DEA の概念図− 1 イ ン プ ッ ト 2 インプット 1 次に,生産要素が 1 つで,さまざまな生産量が観察されているケースを考える。図 2 のよ うに,B, C, D, E は,与えられたデータ及びそのミックスの中でそれ以上少ない生産要素 を用いてより多くの生産量を実現できるデータはない。それに対して,A は同じ生産量をよ り少ない生産要素を用いて生産できる M が実行可能なので,非効率的であるといえる。技 術的効率性は AM AQ で定義される。 点 E は観察されたデータの中では,より少ない生産要素でより多くの生産量を実現でき 88 第201巻 図2 第 1 号 DEA の概念図− 2 ア ウ ト プ ッ ト インプット ないという意味では効率的であるが,生産をしない点 O と点 D の組み合わせよりは効率的 でない。また,点 D の生産を同一比率で拡大することができる場合,OD を延長した OF が フロンティアになる。地理上のメッシュ区域を単位とする本稿の研究では,一次同次を仮定 して無制限に規模を拡大可能であると仮定することは,適切ではない。そこで,ODCB を フロンティアとして扱う。 DEA 計測手法として Banker-Charnes-Cooper の入力指向型線形計画問題 (入力指向的 5) BCC モデル) を用いる。資本,労働,中間投入を用いて生産物を生産する Y=f(K, L, M) 型の生産関数を考える。n 組の投入・産出に関するデータが利用可能であるとする。 j 番目のデータが技術的に効率的か否かは, を制御変数とする線形計画 問題 を解くことにより判定できる。ただし, は十分に小さい正の定数,u は,正ないし負の値 をとりうる自由変数である。この問題は,すべてのデータにおいて利潤が生じない。 範囲で,j 番目のデータにおける利潤を最大にする価格 を求めている。 制約条件の第 2 式は,j 番目のデータにおいて投入コストを 1 と正規化している。したがっ て,線形計画問題の解 が 1 であれば,技術的に効率的であり,生産可能性フロンティア 工業統計メッシュデータによる技術的効率性の分析 89 にあるが, 1 未満であれば,他に観察されている投入・産出のデータを適切に組み合わせる ことに得られる産出量の 倍の生産しか実現できていないことになり,生産可能性 フロンティア上になく技術的に非効率的であるといえる。制約条件に入る投入・産出のデー タに j 番目のデータが含まれているので e が 1 以上であることはないが,そうでなければ 1 を越えることもありえる。この場合,対象とするデータのフロンティアより高い 倍の効率を実現していることになる。観察されたデータのみを用いると,図 2 の EDCB の ようなフロンティアになるので,生産要素投入,生産量がともにゼロであるデータを追加す る。 同じ観察単位でも,技術的効率性は時間を通じて変化する。図 3 に示されるように,基準 に対する基準年次の観察値 年次 ( 0 期) で観察されたフロンティア に関す る技術的効率性 と比較年次 ( 1 期) で観察されたフロンティア に対する比較年次の観察値 に関する技術的効率性 年次の観察値 を比較年次のフロンティア となる。比較年次の観察値 ると を比較する。基準 で評価すると,技術的効率性は を基準年次のフロンティア となる。両者の比率をとると で評価す あるいは, と書くことができる。前者の右辺第 1 項は比較年次の観察値 で評価したフロンティアのシフト,後者の右辺第 1 項は基準年次の観察値で で評 価したフロンティアのシフトであり,前者の右辺第 2 項は基準年次のフロンティア で測った観察値の効率性の変化,後者の右辺第 2 項は比較年次のフロンティア で測った効率性の変化を示している。この 2 つの式の幾何平均 図3 Malmqvist 指数の概念図 イ ン プ ッ ト 2 インプット 1 90 第201巻 第 1 号 の第 1 項でフロンティアのシフト(以下 TC),第 2 項で効率性の改善 (以下 EC) を測る。 これは,Malmqvist 指数と呼ばれる。 4 技術的効率性の分析 本節では,第 2 節で述べた工業統計メッシュデータを用いて DEA による技術的効率性の 計測結果を示す。 技術的効率性の計測においては,1990,95,2000,05年の各年について,10人以上の事業 所に関する工業統計メッシュデータから当該メッシュに含まれる製造品出荷額等をアウトプ ット,有形固定資産年末現在高,従業者数,原材料使用額等をインプットとする。なお,異 なる時点のメッシュの生産性の比較を行うため,実質化が必要である。製造品出荷額等,原 材料使用額等は国民経済計算の経済活動別の国内総生産・要素所得における平成12年基準製 造業産出デフレーターと中間投入デフレーターを用いて実質化した。有形固定資産は,工業 統計の10人以上の事業所の有形固定資産と民間企業粗資本ストックの比率をデフレーターと して用いた。 4.1 技術的効率性の分布 フロンティアを形成するメッシュの状況は,表 2 に記載されている。サンプル全体の0.2 6) %程度であり,ほとんどはフロンティア上にないことが分かる。さらに上位10都道府県の合 計はフロンティア全体の60∼70%を占めており,地理的に関東,中部,近畿地方に集中して いる。図 4 は,2005年に関する技術的効率性の関東から近畿にかけての地理的な分布をメッ 表2 技術フロンティアの状況 1990年 1995年 2000年 2005年 18,515 17,391 15,258 13,266 33 31 26 35 神奈川県 4 3 5 3 愛知県 3 2 1 5 東京都 3 3 2 1 兵庫県 4 4 1 0 静岡県 2 0 1 5 千葉県 1 1 4 0 京都府 1 1 2 2 岡山県 2 2 1 1 茨城県 1 2 0 2 熊本県 2 1 1 1 対象メッシュ総数 フロンティアのメッシュ数 うち,上位10都道府県 工業統計メッシュデータによる技術的効率性の分析 図4 91 技術的効率性の空間的分布 (2005年) シュ単位で示している。濃い点が効率性の高いメッシュを薄い点が効率性の低いメッシュ示 している。 効率的でないメッシュ区域の分布をみるために各年のヒストグラムを描くと図 5 のように なる。フロンティアを示す 1 から離れた0.2の周辺に分布している。 図5 技術的効率性のヒストグラム 18% 16% 2000年 14% 1995年 12% 1990年 10% 2005年 8% 6% 4% 2% 0% 0.0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 92 第201巻 第 1 号 効率性の対数値 (Log TE) に関する記述統計 表3 平均 分散 歪度 尖度 1990年 1.567 0.106 0.993 6.840 1995年 1.565 0.083 1.178 7.123 2000年 1.938 0.098 1.946 10.271 2005年 1.658 0.137 0.973 5.723 ヒストグラムは,対数正規分布を示している可能性があるので,効率性の対数値に関する 記述統計を表 3 に示した。歪度が正,尖度が大きいことから,対数正規分布とはいえない。 分散は,1990年から95年に減少し,2005年まで増加している。90年代の不況により効率の悪 い地域の事業縮小が進み,平均的な地域の周辺での分散が縮小したものと考えられる。 図 5 からもわかるように,平均値でみると1990年,95年は比較的安定しているが,2000年 に平均値は低下し,2005年にもとの水準に戻している。効率性の変化をフロンティアのシフ トと効率性の改善に分解した表 4 から,効率性の改善は期間中大きな変化を示しておらず, フロンティアのシフトが図 5 にみられるヒストグラムの変化を説明していることが分かる。 したがって,多くの地域で生産性の変化があったのではなく,一部のフロンティアを形成す る地域の生産性が上昇したことによると考えられる。 表4 効率性変化に関する記述統計 Log TE Log EC Log TC 平均 標準偏差 平均 標準偏差 平均 標準偏差 0.0003 0.0613 0.0076 0.0516 0.0079 0.0312 1995 00年の変化 0.0752 0.0649 0.0045 0.0605 0.0799 0.0206 2000 05年の変化 0.0565 0.0632 0.0048 0.0572 0.0517 0.0273 1990 95年の変化 4.2 技術的効率性の変化の要因 技術的効率性の変化の要因として,製造品出荷額で測った規模と効率性の水準を取り上げ る。これらの変数 (対数値) の相関係数マトリックスを表 5 に示す。規模及び技術的効率性 と技術的効率性の諸変化率は負の相関を持ち,技術的効率性の変化はフロンティアのシフト と技術的効率性それぞれと正の相関をもつが,後二者の相関は高くない。 図 6 は,2000年の技術的効率性と2005年にかけての変化を都道府県別平均でプロットした ものである。技術的効率性が高い神奈川県,東京都,大阪府等が低下し,比較的低い沖縄県, 青森県,愛媛県で上昇している。 これらの関係をパネル推定した結果を表 7 に示している。推定式はハウスマン検定により, ランダム効果モデルが棄却された。推定式 1 , 2 は F 検定で OLS が棄却され固定効果モデ 工業統計メッシュデータによる技術的効率性の分析 表5 Log TEd Log TE Log EC Log TC 93 相関係数 Log Size Log TE 1990年 0.502 1.000 1995年 0.145 1.000 2000年 0.426 1.000 1990年 0.426 0.596 1.000 1995年 0.083 0.515 1.000 2000年 0.016 0.311 1.000 1990年 0.076 0.385 0.860 1.000 1995年 0.088 0.498 0.947 1.000 2000年 0.023 0.341 0.902 1.000 1990年 0.709 0.531 0.537 0.032 1.000 1995年 0.516 0.141 0.332 0.011 1.000 2000年 0.086 0.005 0.424 0.010 1.000 図6 Log TE Log EC Log TC 技術的効率性とその変化 0.03 0.02 愛媛県 青森県 0.01 大分県 沖縄県 0.00 0.15 0.17 0.19 0.21 0.23 0.25 0.27 0.29 高知県 0.01 愛知県 0.02 兵庫県 0.03 北海道 京都府 神奈川県 大阪府 0.04 奈良県 0.05 東京都 0.06 ルを採用した。推定式 3 では F 検定で帰無仮説が棄却されなかったので OLS を採択した。 推定式 1 は2005年のサンプルを含み,推定式 2 , 3 は次期のデータが利用できなければなら ないという制約があるので,サンプル数に差が存在する。 推定式 1 では,技術的効率性は規模の拡大したメッシュ区域で高くなることを示している。 推定式 2 では,技術的効率性の上昇率は,規模が拡大した場合より高くなるが,技術的効率 94 第201巻 第 表6 1 号 推定結果 被説明変数 説明変数 Log TE 推定式 1 推定式 2 推定式 3 Log TE Log TE Log EC ― 0.23668 0.05732 ― Log Size ( 152.91) ( 68.59) 0.14721 0.01103 0.00171 (68.18) (14.75) (8.31) 3.57509 0.54739 0.11308 ( 127.72) ( 50.04) ( 33.05) サンプル数 63,171 37,303 37,248 R2 (within) 0.107 0.569 2.03 1.29 ― 1304.05 7438.04 ― 固定効果 固定効果 定数項 F 検定量 Hausman 検定量 推定方法 注 0.116 OLS カッコ内は t 値 性が高くなった地域では上昇率は低下する。推定式 2 と同様の結果が,効率性の改善に関す る推定式 3 でも成り立っている。表 6 のクロスセクションデータの相関係数でも同じ傾向が 示されている。 5 結 論 規模の大きなメッシュ区域で効率性の上昇が観察されることは,本稿では実証していない が,効率性の高いメッシュ区域での投資が集中的に行われる場合,集中化が進み,技術的効 率性の格差が拡大する可能性があることを意味する。一方,より技術的効率性の高いメッシ ュ区域で技術的効率性の上昇が低下することは,技術のキャッチアップが生じていることを 示している。この 2 つの反対方向への作用のどちらかが強いかにより,地域間の技術的効率 性の格差の拡大・縮小の傾向が左右されると考えられる。 本稿では,空間的統計学の手法を適用せずに分析を行っていること,製造業内の産業間の 関係を分析していないこと等,様々な点で不十分な分析にとどまっている。今後の課題とし たい。 注 1)工業統計メッシュデータは全国を対象として提供されているので,都道府県を単位として提供 されている国勢調査や企業・事業所調査のメッシュデータと比べて,広範な地域の分析が可能で ある。 工業統計メッシュデータによる技術的効率性の分析 95 2)筆者は,上場企業財務データを用いて,同様の分析を行った (萩原,1992)。上場企業のデー タは,相対的に効率的な企業を取り出している可能性があるので,技術的効率性の分布全体をと らえることはできない。企業活動基本調査の個票データを用いることにより同様の分析は可能で あると思われる。 3)工業統計メッシュデータの詳細については,経済産業調査会経済統計情報センター (2006) を 参照。2001年に調査対象が変更され,分析に用いる有形固定資産がそれ以前は10人以上の事業所 をカバーしていたのに対して,00年,05年を除き,30人以上の事業所を対象とすることになった。 したがって,2003年のデータは,他の期間と比較できない。 4)DEA は,線形計画法を用いて生産可能性フロンティアに関する分析をする手法として Koopmans, Farrell らにより創始された。のちに,Charnes-Cooper-Rhodes らによりオペレーショ ンズ・リサーチの手法として発展した。手法の詳細は,Charnes 他 (1995) を参照。 DEA は,異常値がフロンティアに及ぼす影響が大きいため,生産関数を特定化して非対称な 誤差項を仮定することにより推定を行う確率的フロンティア分析 (Stochastic Frontier Analysis : SFA) を併用することが望ましいといわれるが,本稿では,DEA を用いる。 5) 「入力指向的」とは,非効率なデータを,どれだけ生産要素を比例的に縮小できるかにより, 技術的効率性を測るものであり,それに対してどれだけ生産物を増大できるかにより技術的効率 性を測るものを「出力指向的」という。 6)第 3 節の図 2 においてフロンティアが一次同次である区間 CD に対応する生産規模は,2005年 のデータでは 1 km メッシュにおける製造品出荷額合計が10億円から2,000億円の範囲であった。 参 考 文 献 Charnes, A., W. W. Cooper, A. Y. Lewin and L. M. Seiford, Data Envelopment Analysis : Theory, Methodology and Applications, Kluwer Academic Publishers, 1995.(刀根薫,上田徹監訳『経営効率評価ハ ンドブック ,朝倉書店,2000年。) 経済産業調査会経済統計情報センター「磁気テープ利用のしおりシリーズ17 (06改訂版) 工業統計 メッシュデータ(平成15年,12年,10年, 7 年, 2 年,昭和57年,55年,52年)ファイル利用の しおり」,2006年。(経済産業調査会ホームページ http: // chosakai.or.jp よりダウンロード可能) 萩原泰治,「技術的非効率性と普及モデル」,『国民経済雑誌 ,第165巻第 2 号,1992年,pp. 69 80。 深尾京司,岳希明,「戦後日本国内における経済収束と生産要素投入 できるか」,『経済研究 ,第51巻第 2 号,2000年,pp. 137 151。 ソロー成長モデルは適用
© Copyright 2024 ExpyDoc