No.45 [B-5] 泥炭の物性値が安定処理土の一軸圧縮強さに及ぼす影響について

全地連「技術フォーラム2014」秋田
【45】
泥炭の物性値が安定処理土の一軸圧縮強さに及ぼす影響について
上山試錐工業㈱
1. はじめに
○大迫
祐一
塩田
好輝
加地
眞
100
安定処理土による地盤改良のうち、セメント改良工法
90
では、固化材種および固化材添加量の決定にあたり、要
80
得るための室内配合試験が実施される。
近年、改良対象土のうち粘性土と砂質土については、
70
強熱減量Li(%)
求される性能・品質を満足するとともに良好な経済性を
R2 = 0.8645
60
50
40
30
含水比、粒度組成と固化材添加量の関係から一軸圧縮強
20
さを推定する配合特性が報告されている1)2)。
10
本報告では、北海道に多く分布する泥炭性軟弱土を改
0
0
200
400
良対象として、室内配合試験結果を集約し、泥炭の性状
に大きく関係する含水比および強熱減量をパラメータと
600
含水比W(%)
800
1000
1200
図-2 含水比と強熱減量
した一軸圧縮強さの強度発現特性を検討した。
つぎに、同一水セメント比 W/C=1.0で実施した試料の
2. 試験方法
なかで、固化材添加量ごとの強熱減量および含水比と一
対象とした泥炭性軟弱土の物性値は、含水比が w=50%
軸圧縮強さの関係を図-3、図-4に示した。
~950%、強熱減量が Li=20%~95%であった。混合方式は
強熱減量および含水比に関わらず、固化材添加量
スラリー撹拌とし、W/C(水セメント比)は0.7~3.5で実施
150kg/m3 程度までは最大500kN/m2 と強度発現は小さい
した。使用固化材は、高有機質土用のセメント系固化材
結果となった。また、固化材添加量が200 kg/m3以上とな
を用いて、固化材添加量は70kg/m3 ~450kg/m3 で実施し
ると強度発現は顕著になり、とくに強熱減量が小さく、
た。
含水比が高くなると、一軸圧縮強さの増加が大きくなる
傾向となった。
3. 試験結果と考察
セメント改良工法のなかで W/C=1.0は、一般的に多く
強熱減量および W/C が異なる試料(W/C=0.7~3.5)に
用いられており、本報告のなかでも試料数は最も多い。
ついて固化材添加量と一軸圧縮強さの関係を図-1に示し
しかしセメント改良工法によっては、水セメント比が規
た。なお、グラフ内数値は各々の強熱減量値を表す。
定されている工法もあるため、本報告では W/C=1.0以外
同一固化材添加量では強熱減量が小さいほど一軸圧縮
の水セメント比についても室内配合試験を実施した。
強さは大きくなる結果であった。また、強熱減量が小さ
W/C の異なる試料を同一に評価する方法として、トータ
くなると固化材添加量の増加に伴う強度発現が顕著にな
ル水セメント比(Wall/C)が報告されている1)2)。
った。この強度発現傾向は、試料を含水比ごとに取りま
トータル水セメント比は、W/C の様に外から加わる水
分のほかに間隙水として試料中に含まれる水量を考慮す
とめても相違がなかった。
3)
泥炭の強熱減量と含水比は高い相関性を有しており 、
ることで算出される。
使用した改良対象土も図-2に示したように、相関性を有
している。
4500
4000
24
29
3500
一軸圧縮強さqu(kN/m2)
一軸圧縮強さqu(kN/m2)
3500
4500
19
Li=0~30%
Li=30~60%
Li=60~100%
4000
18
3000
2500
47
58
2000
18
1500
2
1000
54
88
500
72
34 94
59
27
77
100
200
100kg/m3
150kg/m3
200kg/m3
300kg/m3
450kg/m3
3000
2500
2000
1500
1000
500
0
0
70kg/m3
300
400
固化材添加量(kg/cm3)
図-1 固化材添加量と一軸圧縮強さ(強熱減量)
500
0
0
20
40
60
強熱減量Li(%)
80
100
120
図-3 強熱減量と一軸圧縮強さの関係(セメント添加量)
全地連「技術フォーラム2014」秋田
4500
600
W/C=1.0
4000
100kg/m3
150kg/m3
200kg/m3
300kg/m3
450kg/m3
C=100kg/m2
W<100
100<W<400
500
400>W
一軸圧縮強さqu(kN/m2)
一軸圧縮強さqu(kN/m2)
3500
70kg/m3
3000
2500
2000
1500
400
300
200
1000
100
500
0
0
0
100
200
300
400
含水比W(%)
500
600
0
700
20
40
60
強熱減量Li(%)
80
100
図-6 強熱減量と一軸圧縮強さの関係
図-4 含水比と一軸圧縮強さの関係(セメント添加量)
(固化材添加量100kg/m3)
トータル水セメント比は次の式で表せられる。
ばらつきはあるが、固化材添加量を一定にして取りま
Wall/C=(mw+W)/C
とめることで、強熱減量からトータル水セメント比と同
W:スラリーに含まれる水(kg/m3)
様に、目標強度を得る目安となると考えられる。
C:セメント添加量(kg/m3)
本報告では、固化材添加量100kg/m3以外は試料数が少
mw:間隙水として試料中に含まれる水(kg/m3)
ないが、目標強度得るための一軸圧縮強さをトータル水
固化材添加量ごとのトータル水セメント比(2.4~12.6)
と一軸圧縮強さの関係を図-5に示した。
トータル水セメント比が小さくなると一軸圧縮強さが
増加していく傾向となった。添加量の少ない範囲では、
一軸圧縮強さのばらつきが大きいが、この範囲の泥炭は、
分解が進みシルト質状となっているため、高い数値を示
していると考えられる。
図-5から泥炭性軟弱土のような含水比の高い試料で
は、水セメント比の設定においてあらかじめ試料中に含
まれている水を測定し、トータル水セメント比を設定す
ることにより、目標強度を得る目安となると考える。
セメント比および強熱減量からも併せておこなうこと
が、より精度のよい室内配合試験につながると考えられ
る。
4. まとめ
・同一固化材添加量では強熱減量が小さいほど一軸圧縮
強さは大きくなる。
・泥炭性軟弱土は、強熱減量および含水比にかかわらず、
固化材添加量150kg/m3 程度までは最大500kN/m2 と強
度発現は小さい。
・泥炭性軟弱土は、強熱減量と含水比の間に高い相関性
を有しているため、含水比と強熱減量をパラメータと
すると酷似する。
3500
一軸圧縮強さ(kN/m2)
3000
70kg/m3
100kg/m3
150kg/m3
200kg/m3
300kg/m3
450kg/m3
・過去に報告されている粘性土および砂質土と同様に、
泥炭性軟弱土にトータル水セメント比が適用でき、一
軸圧縮強さを得る目安となる。
2500
2000
・強熱減量は、一軸圧縮強さに影響を与えるため、トー
1500
タル水セメント比と併せて一軸圧縮強さの目安とする
1000
ことで、より精度のよい室内配合試験につながる。
500
0
0
2
4
6
8
トータル水セメント比 Wall
10
12
14
図-5 トータル水セメント比と一軸圧縮強さの関係
(固化材添加量)
つぎに、同一固化材添加量100kg/m3で実施した試料の
なかで強熱減量と一軸圧縮強さの関係を含水比ごとに図
-6に示した。
固化材添加量100kg/m3では、強熱減量が小さいほど、
一軸圧縮強さは増加する傾向であった。
《引用・参考文献》
1) 田中太一他:粘性土改良土の強度・変形特性,平成22
年度
日本大学理工学部
学術講演会論文集.
2) 米田久美子:セメント固化処理土の強度特性の検討,
全地連「技術フォーラム2011」京都
3) (独)土木研究所
寒地土木研究所:泥炭性軟弱地盤対
策マニュアル,p.50,2011.3.