OPアンプの2大トラブル 「オフセットと発振」の 原因と対策

第3部
直伝! 残業まみれの自分に喝! トラブルシューティング
第7章
発振して
動かない
ブラックボックス・オープン! 発生 プロでも
のしくみをトランジスタ回路で解析 ハマる!
OPアンプの2 大トラブル
「オフセットと発振」の
原因と対策
佐藤 尚一
現在は,さまざまな OP アンプ IC が販売されてい
ます.負帰還をかけた OP アンプでは,下記 2 点の
いやらしいトラブルがあります.
(1)オフセット電圧
(2)発振
OP アンプ IC はブラックボックスとなっており,
外付け部品でやみくもに対策を行い,真の原因が迷
宮入りしてしまうことも,少なくないのではないで
しょうか.
ここでは,ディスクリートのトランジスタを使っ
て OP アンプを作り,オフセットと発振のメカニズ
ムを解説します.対策方法を身に付け,アナログ・
センスをアップしましょう.
〈編集部〉
ディスクリートの
OP アンプで丸見え解析
● OP アンプはブラックボックス…ディスクリート
回路で原因を徹底解明
リニア・アンプの実現には,OP アンプ IC を使うこ
とが代表的です.IC 内部の定数の誤差などは,負帰
還によって理想とみなせるレベルまで抑制されるため,
IC の外側から見た応用回路全体の特性は,ほとんど
計算通りになります.
入力オフセット電圧は負帰還によって改善不可能な
問題です.また負帰還の安定性を保ち,いかに発振さ
せないかが,理想的な動作の前提条件となります.
これら二点の大部分は,IC 内部の回路特性で決ま
ります.
適当な OP アンプ IC が存在しない場合は,ディスク
リートで同様な回路を構成することもあります.その
場合,IC と同様な設計作業が必要です.
ここでは OP アンプと同じ回路構成の簡単なディス
クリート OP アンプを例に,入力オフセット電圧と負
帰還の安定性を解析し,その原因解明と対策をしてみ
ます.
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Hisakazu Satou
VCC
電流方向の転換+増幅
OUT
+
負側電流の
供給
OPアンプIC
VEE
VEE
ディスクリート回路
図 1 OP アンプ IC 内の基本回路
OP アンプ IC をディスクリートに置き換える
● OP アンプ IC の回路をディスクリートに置き換える
電源電圧± 5 V で 50 Ωの信号ラインなど重めの負荷
に対し,1 VRMS
(≒ 1.4 VP−P)程度の信号を扱えるよう
なアンプを製作してみます.
回路設計は既存の回路例をひな形として,定数を置
き換えるところから始めると簡単です.
汎用リニア・アンプのひな形として,もっとも現実
的なのは OP アンプ IC の等価回路だと思います.半導
体のばらつきと温度特性に由来する調整要素を素子の
相対的なバランスと負帰還によって解消してくれるか
らです.
基本要素をまとめて簡素化すると図 1 のようになり
ます.これはトランジスタを 3 石使って図 2 のような
回路で実現できます.多少複雑に見えますが,都合 4
本の抵抗値を決めればとりあえず動作します.
RC 2 とRE 2 は適当な抵抗 1 kΩ,100 Ωを使い,そこか
ら決まる V B 2 を算出します.
RC 1 と IEE は,
IC 1a を 1 mA
として算出しています.トランジスタの V BE は品種に
よらず 0.7 V と仮定し,h FE を十分大きいものとして
IB を無視しています.電源電圧はレギュレータで正確
な電圧を供給することを前提としています.
2014 年 12 月号