応用物性工学 講義ノート

応用物性工学
講義ノート
2014.12.2
第 6 回 半導体 (教科書 p. 129-153)
【目標】
① 真性半導体と不純物半導体の説明ができる
② キャリア密度の温度変化が説明できる
③ フェルミ・エネルギーの温度変化が説明できる
(ホットエレクトロンは省略)
絶縁体・半導体・金属
(c) は Na などの 1 価金属、(d) は Mg などの 2 価金属のエネルギーバンド
(教科書 p.122)
絶縁体と半導体のエネルギーバンドは、価電子で満たされた価電子帯と、空の伝導帯からなり、
その間のバンドギャップは約 2 eV 以下・・・教科書的には。ただし、バンドギャップが 3.4 eV の
GaN や 5 eV のダイヤモンドでも半導体化できるので、2 eV という数字は必ずしも厳密ではな
い。
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元素半導体 Si
バンドギャップ 1.1 eV (間接)
sp3 混成軌道
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光・熱励起を行うと、価電子帯の電子が伝導帯に励起され、価電子帯には正孔が生成する。
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真性半導体
不純物を全く含まない純粋な Si など(半導体グレードのものは)
電子密度=正孔密度
真性半導体のキャリア密度
キャリア密度
𝑛 = ∫ 𝑓(𝐸)𝐷(𝐸)𝑑𝐸
(状態密度とフェルミ分布関数の重なった部分)
フェルミ分布関数は
1
𝐸 − 𝐸𝐹
𝑒𝑥𝑝 (
)+1
𝑘𝐵 𝑇
𝑓(𝐸) =
単位体積あたりの状態密度は
𝐷(𝐸) =
1
2𝜋 2 ħ3
(2𝑚∗ )3/2 √𝐸
まずは、伝導帯側(電子キャリア)の状態密度だけ考えると、電子キャリアの有効質量を𝑚e∗ とし
て
𝐷𝑐 (𝐸) =
1
2𝜋 2 ħ3
(2𝑚e∗ )3/2 √𝐸 − 𝐸𝑔
ただし、𝐸 ≥ 𝐸𝑔
逆に価電子帯(正孔キャリア)の状態密度だけを考えると、正孔キャリアの有効質量を𝑚h∗ として
𝐷𝑣 (𝐸) =
1
2𝜋 2 ħ3
(2𝑚h∗ )3/2 √𝐸
ただし、𝐸 < 0
フェルミ分布関数は、電子のフェルミ分布関数=1-正孔のフェルミ分布関数(図を参照)
𝑓ℎ (𝐸) = 1 − 𝑓𝑒 (𝐸)
伝導帯中の電子キャリア密度は、伝導帯の底から全伝導帯分の積分なので
𝐸𝑐𝑡
𝑛𝑒 = ∫
𝐸𝑔
𝐸𝑐𝑡
=∫
𝐸𝑔
𝑓𝑒 (𝐸)𝐷𝑐 (𝐸)𝑑𝐸
1
2𝜋 2 ħ3
(2𝑚e∗ )3/2 √𝐸 − 𝐸𝑔 ∙
1
𝑑𝐸
𝐸 − 𝐸𝐹
𝑒𝑥𝑝 (
)+1
𝑘𝐵 𝑇
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真性半導体 Si の場合はバンドギャップ Eg=1.1 eV で、EF はバンドギャップの中央にあるので、
𝐸 − 𝐸𝐹 を室温のエネルギー 26 meV と比較すると
𝐸 − 𝐸𝐹 ≈ 0.55 eV ≫ 𝑘𝐵 𝑇
1
1
𝐸 − 𝐸𝐹
≒
= 𝑒𝑥𝑝 (−
)
𝐸 − 𝐸𝐹
𝐸 − 𝐸𝐹
𝑘𝐵 𝑇
𝑒𝑥𝑝 (
) + 1 𝑒𝑥𝑝 (
)
𝑘𝐵 𝑇
𝑘𝐵 𝑇
𝑓𝑒 (𝐸) =
𝑛𝑒 =
∞
𝐸 − 𝐸𝐹
∗ 3/2
(2𝑚
)
∫
𝐸
−
𝐸
𝑒𝑥𝑝
(−
) 𝑑𝐸
√
e
𝑔
3
𝑘𝐵 𝑇
2𝜋 2 ħ
𝐸𝑔
1
有効状態密度
伝導帯の状態密度がすべて伝導帯の底にあるとした有効状態密度を Nc として
2𝜋𝑚𝑒∗ 𝑘𝐵 3/2 3/2
𝑁𝑐 = 2(
) 𝑇
2
ℎ
とすると、
𝑛𝑒 = 𝑁𝑐 𝑒𝑥𝑝 (−
𝐸𝑔 − 𝐸𝐹
)
𝑘𝐵 𝑇
また、
1
𝐸𝐹 = 𝐸𝑔
2
なので、
𝑛𝑒 = 𝑁𝑐 𝑒𝑥𝑝 (−
𝐸𝑔
)
2𝑘𝐵 𝑇
と書ける。
導電率 σ の温度依存性は、
𝑛
導電率 𝜎 = 𝑞 2 𝑚 𝜏 = 𝑛𝑞𝜇
なので、緩和時間 τ の温度変化(つまり移動度の変化)を無視して、キャリア密度だけの変化と
すると、導電率のアレニウスプロットの傾きからバンドギャップ Eg を知ることができる。
(実際にはそんなに甘くない・・・)
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不純物半導体
不純物から供給された電子や正孔をキャリアとする半導体
n 型不純物半導体
Si(価電子 4 個)中に不純物として価電子が 5 個の P、As、Sb をドーピング→
P、As、Sb は結合に不要な価電子 1 個を放出して、正に帯電→
放出された価電子は自由電子として振る舞う→n 型半導体
P (45 meV)、As (49 meV)、Sb (39 meV)はドナー
伝導帯下端付近に浅いドナー準位
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p 型不純物半導体
Si(価電子 4 個)中に不純物として価電子が 3 個の B、Al、Ga、In をドーピング→
B、Al、Ga、In は結合に必要な価電子を Si から 1 個もらって、負に帯電→
価電子を奪われた Si に他の Si から価電子が移動する→p 型半導体
B (45 meV)、Al (57 meV)、Ga (65 meV)、In (160 meV)はアクセプター
価電子帯上端付近に浅いアクセプター準位
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不純物半導体のキャリア密度
フェルミ・エネルギーと絶対温度の関係(重要) 図 7.17 で説明
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n 型半導体について
ドナー濃度を Nd、ドナー準位を Ed としたとき、kBT << Ed の十分低温では、
𝑁𝑑 𝑁𝑐 1/2
−𝐸𝑑
𝑛𝑒 = (
) 𝑒𝑥𝑝
2
2𝑘𝐵 𝑇
(T を無視して)
不純物領域:kBT << Ed の低温のとき。キャリア密度の温度依存性から不純物準位がわかる
出払い領域:kBT ~ Ed の不純物準位が埋め尽くされた領域
真性領域:kBT >>Ed の高温のとき。真性半導体と同じ挙動を示す。キャリア密度の温度依存性
からバンドギャップがわかる
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フェルミ・エネルギーの温度変化
温度が上がると真性半導体に近づく
→フェルミ・エネルギーも Eg の 1/2 に近づく