応用物性工学 講義ノート 2015.1.6 第 8 回 固体の光学的性質 (教科書 p. 203-220) 【キーワード】 ① 透過率 (第 7 回) ② 反射率 (第 7 回) ③ 吸収 (第 7 回) ④ 励起子 (第 8 回) ⑤ 直接遷移 (第 8 回) ⑥ 間接遷移 (第 8 回) ⑦ 光起電力 (第 8 回) ⑧ 蛍光 (第 8 回) ⑨ りん光 (第 8 回) 10.1 光吸収 吸収率 A、反射率 R、透過率 T、試料厚さ L、吸収係数α A+R+T=1 試料内 x における光の強さ I は、dx だけ進む間に I–dI となる –dI は I と dx の積に比例する→吸収係数 –dI=αIdx x=0 で I=(1–R)I0 として積分すると I=(1–R)I0 exp (–αx) → I=(1–R)I0 exp (–αL) 試料裏面に到達した光は、さらに反射し、その反射光は R(1–R)I0 exp (–αL) となるので、結局透過する光の強さは I=(1–R)2I0 exp (–αL) 透過率 T は I / I0 なので、 T=I / I0 =(1–R)2 exp (–αL) 応用物性工学 講義ノート 10.1.2 吸収機構 基礎吸収: バンドギャップに相当する光吸収(価電子帯から伝導帯へ) 吸収端: 吸収端波長λ[nm] =hc / Eg ~1240 / Eg [eV] 励起子: 電子と正孔のペア GaN の場合、束縛エネルギーは 25 meV 伝導吸収: 金属の場合、自由電子の格子との衝突時間が熱線(赤外線)によって変えられる。 (温度が上がると金属の導電率は減少する) 応用物性工学 講義ノート 10.2 光学的格子振動による光の吸収: 省略 10.3 F 中心による光の吸収: 省略 10.4 基礎吸収と励起子による光の吸収 光導電する 光導電しない 基礎吸収端: バンドギャップに相当する(価電子帯上端→伝導帯下端)光吸収 励起子(エキシトン): 励起子準位に励起された電子と、残された正孔の対 による光吸収 ・光導電しない (中性粒子なので電場応答しない) ・直接(逆)遷移する場合→フォトルミネッセンスを示す ・モット励起子(束縛弱い)とフレンケル励起子(束縛強い) 低温になると n=1, n=2, n=3, …のような励起子吸収が観測される。(図略) 𝐸𝑛 = 𝐸𝑔 − 𝑚∗ 𝑞 2 2ℏ2 𝜀𝑓2 𝜀02 𝑛2 ここで、m*は還元有効質量であり、 1 1 1 = ∗+ ∗ ∗ 𝑚 𝑚𝑒 𝑚ℎ 励起子は m*が大きければ大きいほど強く束縛される (電子、正孔が動きにくい) ※GaN の場合 n=1 は 25 meV 応用物性工学 講義ノート 10.5 直接遷移・間接遷移による光の吸収 バンドギャップよりもエネルギーの大きな光を照射(光励起)して生成した電子-正孔対がその まま再結合発光(基底状態に戻る)する?・・・ こうなる物質と、ならない物質がある 例: GaN は光るけれど、Si は光らない GaN は直接遷移型、Si は間接遷移型半導体 【直接遷移の場合】 遷移前後で電子の波数が等しい (左図) エネルギー保存則 𝐸𝑐 − 𝐸𝑣 = ℏ𝜔 運動量保存則 ℏ𝑘𝑐 − ℏ𝑘𝑣 = ℏ𝑘′ 𝑘𝑐 − 𝑘𝑣 = 𝑘′ kc: 伝導帯の電子の波数 kv: 価電子帯の電子の波数 k’: 光子の波数 ブリュアンゾーンの大きさは 108 cm–1 程度なので、光の波数|k’|≈5×104 cm–1 は無視できるほど 小さいので 𝑘𝑐 = 𝑘𝑣 となる 応用物性工学 講義ノート なお、 𝜔 = 𝑐|𝑘 ′ | なので、仮に ℏω ≈ 𝐸g =1 eV とすると、λ=1240 nm かつ |𝑘 ′ | = 𝜔 1 2𝜋 2𝜋 = = = 𝑐 ℏ𝑐 ℎ𝑐 𝜆 ≈5×104 cm–1 これが直接遷移の場合の基礎吸収端の吸収係数であり、基礎吸収を知るためには 104 cm–1 (1 μm)よりも薄い試料(薄膜)が必要である 【間接遷移の場合】 バンドギャップが間接遷移(遷移前後で電子の波数が異なる)の場合の光吸収ではフォノン (量子化された格子振動)が関与する。 エネルギー保存則 𝐸 = 𝐸𝑐 − 𝐸𝑣 = ℏ𝜔 − ℏ𝛺 ここで Ω はフォノンの振動数である (図の間接遷移の場合) 運動量保存則 ℏ𝑘𝑐 = ℏ𝑘𝑣 + ℏ𝐾 ここで K はフォノンの波数である (図の間接遷移の場合) 10.6 光導電現象 (内部光電効果) h > Eg の光照射によってできた電子-正孔が電圧印加によってそれぞれ伝導すること。 光照射していない時の電流: 暗電流、このときの導電率をσとする 光照射時の導電率: ⊿σ+σ 応用物性工学 講義ノート 10.7 光起電力効果 ・フォトダイオード (紫外線センサーなど) ・太陽電池 10.8 蛍光・りん光 ルミネッセンス (光、放射線、電気などのエネルギーを吸収して) 励起状態から基底状態 に戻るときの光放射 ・蛍光: 物質を外部から励起している間だけ光る (※長残光もあり) ・りん光: 外部エネルギー供給をやめても光る (※第一励起三重項状態を経由して発光) 蛍光体として良く知られているのは、 Y2O3: Eu3+ → 赤色 バンドギャップ約 5 eV の Y2O3 結晶中に微量(数%)の Eu3+を添加したもの。蛍光灯に使われ ている。
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