(様式3) 【G;P-41】 散薬経口抗がん剤調剤過程における汚染防止対策の検討(第二報) ○愛甲 佳未、永井 浩章、高本 光次郎、中山 淳司、籾井 佳奈、池田 絵里佳、三輪 祐太朗、 廣瀬 晃子、福田 朝恵、赤松 規子、合田 泰志、福井 由美子、西本 哲男(こども病院 薬剤部) 【背景・目的】 抗がん剤の調製・調剤においては、環境中への飛散や 医療従事者への被曝が問題となり、注射抗がん剤の調製 には安全キャビネット(以下 BSC)の使用が広まってい る 1)。当院では注射抗がん剤のみならず、散薬経口抗が ん剤調剤時においても BSC を使用し、汚染防止に取り組 んできた。6-メルカプトプリン水和物 10%散(以下 6-MP) の調剤過程における環境汚染状況について報告した前回 の第一報 2)では、秤量時の BSC の有用性は示すことがで きたものの、秤量後 BSC から散薬分包機に運搬する際に 6-MP が飛散していることが明らかとなり、さらなる飛散 防止対策の検討が必要と考えられた。また、散薬経口抗 がん剤の分包では、分包機に抗がん剤が残存し、他患者 の薬が汚染される危険性がある。今回はこれらの問題に 対応するため運搬時の 6-MP 飛散防止対策と散薬分包機 の清掃方法について調査・検討を行った。 【方 法】 [1]6-MP 飛散防止対策 6-MP を BSC*内で秤量後、蓋付容器に入れて取り出し散 薬分包機**で分包した。その際に飛散した 6-MP を測定す るため、10cm×10cm のサンプリングシート(シオノギ分 析センター)を業務開始前に BSC 内、BSC 外、散薬分包機 手前床面の 3 か所に設置し、業務終了後(約 8 時間後) に回収し定量した。今回と前回の蓋付容器未使用時の結 果を比較し、蓋付容器使用の効果を検討した。 [2]散薬分包機清掃方法の検討 散薬分包機で以下の条件で分包・清掃後、それぞれ乳 糖 EFC10g を 10 包に分包し、そのうちの 1 包中の 6-MP 量を定量した。清掃剤として用いた乳糖 EFC、結晶乳糖、 重曹の清掃効果の違いを比較した。 【結 果】 [1]6-MP 飛散防止対策 蓋付容器の使用により、いずれの測定箇所においても飛 散量は減少した。特に BSC 外においては約 1/4 に減らす ことができた。 測定箇所 BSC内 BSC外 分包機手前床面 6-MP飛散量(ng/100cm2) 蓋なし 蓋あり 10420 7406 1759 453 922 789 [2]散薬分包機清掃方法の検討 乳糖(EFC・結晶)を用いた清掃では、清掃なしと比較す ると、6-MP の残存を約 1/100 程度に抑えることができ、 また重曹よりも清掃効果が高かった。 サンプル 6-MP残存率(%) (6-MP 100mgに対して) 清掃なし 乳糖EFC清掃×2 乳糖EFC清掃×4 結晶乳糖清掃×2 結晶乳糖清掃×4 重曹×2 重曹×4 4.083 0.076 0.038 0.058 0.056 0.211 0.211 【考 察】 [1]6-MP 飛散防止対策 BSC 内での秤量に加えて BSC から散薬分包機への運搬 に蓋付容器を使用することで、これまでより効果的に 6-MP の飛散を抑え環境汚染を防止できることが示唆さ れた。今回の調査結果に基づき当院では蓋付容器を導入 している。 [2]散薬分包機清掃方法の検討 6-MP の清掃法として乳糖 EFC×4 回が最も優れていた。 この理由として乳糖 EFC の物性に注目し、混合性に優れ、 適度な流動性を有することから効率的な 6-MP の取り込 みができたと推測している。適切な清掃剤は抗がん剤に よって異なると考えられるが、物性的な特徴を考慮する ことで効果的な清掃剤を選択できると考えられた。当院 では今回の調査結果を踏まえ、乳糖 EFC×4 回の清掃法の 実施を検討している。 また、当院は小児専門病院であり、抗がん剤の混入に ついて今後も検討を重ね、新病院では環境の整備ととも に抗がん剤専用の散薬分包機の導入を予定している。 なお 6-MP の定量はシオノギ分析センターに依頼した。 * BSC : バ イ オ ハ ザ ー ド 対 策 用 キ ャ ビ ネ ッ ト 「VH-850BH-2A/B3」((株)日本医化器械製作所) ** 散 薬 分 包 機 : 散 薬 ・ 錠 剤 分 包 機 Duet GRAN-C 「HP-93HUT-C」((株)高園産業) 【参考文献】 1)日本病院薬剤師会:抗悪性腫瘍剤の院内取扱い指針 抗がん薬調製マニュアル,じほう(2012) 2)永井浩章ほか:散薬経口抗がん剤調剤過程における汚 染防止対策の検討(第一報),兵庫県立病院学会(2013)
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