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IBDニュース Vol.48 2011 年 1 月
IBDニュース Vol.48
クローン病と潰瘍性大腸炎に関する医療情報
特定非営利活動法人 日本炎症性腸疾患協会
Crohn's & Colitis Foundation of Japan
〒 169-0073 東京都新宿区百人町 3-22-1
社会保険中央総合病院内
TEL:03-3364-0514 FAX:03-3364-0515
http://www.ccfj.jp/ メール:[email protected]
診療におけるエビデンス(科学的根拠)とは (3)
国立病院機構東埼玉病院 内科・総合診療科 正田良介
医師はどのようにエビデンスを使っ
ているのでしょうか
エビデンスに基づいて行う医療を
EBM(Evidence-based medicine) と 呼
ん で い ま す。EBM は、 通 常 5 つ の ス
テップからなっており、第 1 ステップ
は、目の前にいる患者さんの医療上の
問題点を取り出して、回答可能な質問
に転換することになります。第 2 ステッ
プでは、取り出した問題点に対して解
決するためのエビデンスを効率よく検
索します。第 3 のステップは、そのエ
ビデンスが科学的に正しそうかを批判
的に吟味します。第 4 ステップで、そ
の吟味したエビデンスを当該の患者さ
んに適用し、第 5 ステップでは適用し
た結果を評価してフィードバックする
構造になっています。( 図 3)
ステップ3での批判的吟味は、前回
述べた科学的に正しいかの検証をしま
す。その際に、エビデンスのレベル(前
回、表1)が参考になります。最も難
しいのがステップ4で、実際の診療の
現場では診療科の中(病院内から広く
は日本国内などの場合もあり)でその
エビデンスを用いるかの議論とその結
果に基づく科の治療方針(診療科のポ
リシー)を決定がなされている状況下
で、実際に個々の患者さんにそれを用
いるかを決定する必要があります。さ
らにエビデンス的にはその患者さんに
使えるとしても、患者さんの社会背景
や権利・嗜好(ナラティブ:患者の語
るところ)を考慮して、最終的に適用
することになります。別の言葉にする
と、臨床経験に基づきエビデンスを用
いるのであって、「鬼 ( 臨床経験を持っ
た医師 ) に金棒 ( エビデンス )」の関係
のようにエビデンスは診療のための優
秀な道具とも言えます。図 4 右に示す
ように、昔の大先生は自分の経験のみ
を中心に、新人の医師は左のように知
識はあってもそれをうまくまだ扱えな
かったりする可能性があり、図中央の
ようにバランスがとれている方が良い
と例えられるかもしれません。
最も確実で手っ取り早いエビデンス
の入手方法は医学書からですが、古い
ものではエビデンス・レベル V(前回
の表1)の様な権威者の語るところが
ほとんどで、なおかつ改版に 5 年以上
間隔があるものが普通でした。最近で
は、UpToDate のように、頻回に改定さ
れ、エビデンス・レベルの高いものだ
けを集めた電子的な医学書もあり、若
手医師などは携帯端末からすぐに検索
をしてくるようになってきています。
ガイドラインもかつては権威者の意見
が書かれていました ( 金棒のない鬼だけ
がいる状態 ) が、その反動で一時エビデ
ンスのみを列挙したガイドライン ( 金棒
だけで鬼がいない状態 ) が作られたこと
がありましたが、実際の診療に使用す
ることは困難でした ( 長年安全に使用さ
れている薬で効かないというエビデン
スがあるわけではないが、効くという
エビデンスがないので使用をしてはい
けないなどとされて、診療の現場が混
乱しました )。最近のクローン病や潰瘍
性大腸炎のガイドラインは、「エビデン
スとコンセンサスを統合した」ガイド
ラインになっています。これは、単に
金棒 ( エビデンス ) のみで作られるので
はなく、鬼 ( 臨床経験 ) も加味して作ら
れています。集められたエビデンスに
対して、複数 (10 人程度 ) の専門医と一
般医が実際の診療でどれくらい使用し
ているかを無記名で採点することを数
回繰り返して、エビデンス・レベルと
診療上のコンセンサスの両者から推奨
度を決定しています。この方法は、デ
ルファイ法と呼ばれ、権威者個人の意
見に左右されない公正な方法とされて
います。このようなガイドラインは、
ステップ 4 での治療方針のポリシーも
示していることになり、日本中で比較
的均質な医療を供給する助けになると
考えられます。
EBM の 流 れ を 再 度 ま と め る と、 ①
患者さんから問題点を抽出する、②そ
の問題点を解決するためのエビデンス
を検索する、③検索したエビデンスを
批判的に吟味する、④吟味したエビデ
ンスを患者さんに適用する、⑤その結
果を評価して、フィードバックをする、
という 5 つのステップからなっていま
す。この流れをサポートする教科書や
ガイドラインも最近では数多く存在し
ており、より適切な診療が可能な環境
が作られてきています。残念ながら、
炎症性腸疾患は原因が不明で多くの因
子が関わっていることから、治療に関
してもここで書かれているようには単
純ではなく、絡み合ったエビデンスを
うまく使ったうえで、患者さん個々の
特性や社会背景も含めて治療をするこ
とが必要となります。
おわりに
ある疾患に有効である薬物 A を患者
さんに EBM に基づいて治療することを
考えた場合には、図 5 で示すように数
多くのステップを踏んでより正しいと
思われる治療法が行われるべきである
ことを理解していただき、主治医の先
生とともに EBM がきちんと行われる環
境を作り出していただければ幸いです。
IBDニュース Vol.48 2011 年 1 月
I B D N E W S ガイドラインと治療の実際
横浜市立市民病院 外科 小金井一隆
最近、高血圧、糖尿病、大腸癌など
多くの患者さんがいる疾患を中心に診
療ガイドラインが作成されています。
多くは学会やその領域を専門とする研
究会を中心に作成されており、医療従
事者を対象としたものだけでなく、患
者さん向けのものもあり、医師の日常
診療上、あるいは、患者さんが診療を
受ける際に大変役に立つものです。炎
症性腸疾患のガイドラインもアメリカ
(American Collage of Gastroenterology)
や ヨ ー ロ ッ パ(British Society of Gastroenterology、European Crohn's
Colitis Organization など)で作成され、
ご覧ください。一方、すべての診療項
目に高いエビデンスが得られているわ
けではありません。例えば、急性虫垂
炎で炎症が強い場合は手術を行います。
し か し、 そ の 経 過( 結 果 ) に つ い て、
手術を行わなかった場合と比較した研
究結果を基にした信頼度の高いエビデ
ンスがあるわけではありません。手術
を行わないと多くの患者さんに腹膜炎
をおこし、場合によっては生命の危険
があるという経験の集積を根拠にして、
手術を行っているのです。ガイドライ
ンではその点を補うため作成の際にエ
ビデンスのみを追求するのではなく、
本邦でも厚生労働省研究班から潰瘍性
大腸炎の診療ガイドラインが、また、
消化器病学会からクローン病ガイドラ
インが示され利用されるようになりま
当該疾患について経験豊富な専門家の
意見が加えられています。特に炎症性
腸疾患は疾患自体の原因が明らかでな
く、根治する治療法がないことや高血
圧、糖尿病、大腸癌などと比べ、患者
さんの数が少なく専門診療の性格が強
いことから、どの臨床状況での記述に
もエビデンスに加えて複数の専門家で
検討した意見が書かれています。この
ことは一般医が実際の診療を行う際に
専門医の意見をとりいれることができ
した。
そもそも診療ガイドラインとはどの
ようなものでしょうか? 特定の臨床
状況のもとで、適切な判断や決断を下
せるように支援する目的で系統的に作
成された文書と定義されています。あ
る条件下で、どのように診察したほう
がより良いか、どういう治療を行うと
どれくらいの結果がえられそうかとい
う大まかな方向性が示されています。
医療者にとっては、ある患者さんを診
療するときにより有用な診療ができる
よう判断の手助けをしてくれる訳です。
専門医ばかりでなく広くその疾患を診
療する一般医が利用でき、行われる医
療に施設間あるいは専門医と一般医で
差が小さくなるように考えられていて
います。ガイドラインの目的はどこで
も過不足ない診療が行われ、医療の安
全性や治療効果が向上し、結果的に医
療を受ける側の患者さんの生活の質
(QOL)が向上することです。
さて、ガイドラインはよりよい診療
の道筋を示すわけですから、行おうと
している医療の妥当性を示す科学的根
拠(エビデンス)が求められ、実際に
現時点でより信頼度の高い研究の結果
が広く集められています。エビデンス
については本紙 47 号と 48 号で正田先
生が解説されていますので、そちらを
る利点でもあります。
患者さんにとってガイドラインは御
自分がおかれた状況で診断や治療を受
けようとする際にそれがどのようなエ
ビデンスや過去のデータに基づいて判
断され、どのように行われようとして
いるか、またその医療行為の良い点、
悪い点を含めた結果などの情報を医師
と共有しながら考えてゆくことができ
る長所があります。
診療ガイドラインを使うときにはい
くつかの点を理解しておく必要があり
ます。前にも述べましたが、ガイドラ
インは疾患の診療の大まかな流れをし
めしたもので、それ以外は間違ってい
るというような絶対的な方針を示した
ものではありません。最も多くの患者
さんにとってふさわしいであろうとい
う医療を示しているだけです。例えば、
ガイドラインでは重症の潰瘍性大腸炎
に対してシクロスポリンはステロイド
より効果に優れ、この臨床状況で標準
的な診療行為として強く推奨できると
されています。一方、実際の臨床上で
は副作用や血液中の薬剤濃度を厳密に
コントロールする必要があり、短期的
な効果の比較はあるものの、長期的に
は外科手術が必要となる場合も少なく
ないため、どの施設にも推奨できる治
療ではなく、すぐにシクロスポリンを
第 1 選択と決定するものではないとも
書かれています。効果があることがわ
かっていても、その患者さんの全身状
態、年齢、社会的状況によってはステ
ロイドによる治療や手術など他の選択
をする場合があるということです。ガ
イドラインに書いてある通りにするこ
とが必ずしも正しい唯一の方法とは限
らないのです。実際にどういった診療
を行うかは担当する医師に任されてお
り、医師は患者さんの状態や経験など
を考慮して総合的に最も良い診療を選
択します。ガイドラインはそこに書か
れている診療をしないと間違いである
とか、それ以外の治療法が行われたか
らおかしいといった判断の材料には使
用できません。また、その内容は研究
の進歩や新たな診断治療法の登場によ
って改変されてゆくもので、普遍的な
ものでもありません。
炎症性腸疾患の診断や治療の道筋は
1 つではありません。いろいろな道があ
ります。炎症性腸疾患のガイドライン
が正しい理解のもとに、診断、治療の
道筋を決めてゆく際に積極的に利用さ
れ、医療の質が向上し、結果として患
者さんの QOL が向上するとよいと思い
ます。
IBDニュース Vol.48 2011 年 1 月
I B D N E W S 免疫調節剤
社会保険中央総合病院 内科 吉村直樹
シクロスポリン(CsA)
はじめに
潰瘍性大腸炎 (UC) とクローン病 (CD)
CsA はまだ保険適用となっていません
は炎症性腸疾患 (IBD) と総称され、原
が、現行の厚生労働省の治療指針にも
因がいまだ不明の難治性の疾患です。
明記されており、本療法の導入により
ステロイドは以前より中等症以上の症
ステロイド抵抗性重症難治性 UC 患者
例に対し UC 治療の中心的薬剤に位置
の寛解導入率は飛躍的に向上しました。
づけられ、ステロイドの投与により寛
通常、中心静脈栄養 (IVH)) 管理下に
解導入できる症例が増加しました。し
サ ン デ ィ ミ ュ ン ® を 24 時 間 持 続 静 注
かし、ステロイド大量投与に反応しな
療法にて投与します。投与中は有効濃
い抵抗性症例や、ステロイドが有効で
度の維持および副作用発現予防のため、
与後 2 ∼ 4 週間以内に出現します。投
あっても減量により再燃を繰り返す依
CsA の血中濃度のモニタリングを行い
与開始後しばらくは頻回に血液検査を
存性症例などの難治例も少なくありま
ます。本療法は作用発現が極めて速く、
施行し白血球数が 3000 以下になった場
せん。以前より臓器移植後の拒絶反応
多くの症例で投与開始後 7 日以内には
合は薬剤の中止ないし減量の必要があ
の抑制に用いられてきた免疫抑制剤 ( 以
血便、腹痛の軽減など臨床症状の改善
ります。
下、免疫調節剤 ) の中にも免疫異常をう
を認めます。原則、2週間の持続静注
まくコントロールし IBD の治療に有効
療法を施行し、寛解導入後に食事を開
なものがあることがわかりました。最
始し CsA を経口薬に替えます。CsA の
近、難治症例に対する免疫調節剤の有
投与期間は通常2週間であり、2週間
邦で開発された薬剤で、2009 年7月に
効性が多数報告され、わが国でも使用
で治療効果が得られない場合は内科的
難治性 ( ステロイド抵抗性、依存性 )UC
例が増加しています。現行の厚生労働
治療の限界であり、外科的治療の適応
の寛解導入に保険適用となりました。
省の治療指針に記載されている代表的
となります。
通常、1回 0.025mg/kg の量を1日2回
な免疫調節剤はアザチオプリン (AZA:
CsA の副作用としては、肝腎機能障
経口投与します。CsA 以上に血中濃度
イムラン ®、アザニン ®)、6- メルカプ
害、高血圧、中枢神経症状、手指振戦、
が効果発現に反映され、有効血中濃度
トプリン (6-MP: ロイケリン ®)、タクロ
多毛などが報告されています。
が維持できれば 3 ∼ 7 日で効果が発現
リムス (FK506: プログラフ )、シクロ
®
表1
タクロリムス(FK506)
FK506 は他の免疫調節剤と異なり本
します。寛解導入では 10 ∼ 15ng/ml の
( 表1)。今回は上記の免疫調節剤につ
アザチオプリン / メルカプトプリン
(AZA/6-MP)
いて UC と CD に分けて適応と有効性、
AZA/6-MP は臨床効果を発揮するの
導入できます。寛解後は 5 ∼ 10ng/ml
安全性について概説します。
に通常 2 ∼ 3 ヶ月を要するため、ステ
になるように投与量を調節しますが長
ロイドのような即効性はなく、ステロ
潰瘍性大腸炎で用いられる免疫調節剤
期投与による寛解維持の有効性、安全
イド抵抗性 UC 症例の寛解導入には適
性についてはまだ認められていません。
UC で免疫調節剤の適応となるのは
しません。CsA による寛解導入後の寛
経口剤であるため食事摂取の有無で吸
ステロイドを十分量投与しても 1 ∼
解維持療法またはステロイド依存性症
収率が変わり、また有効濃度に達する
2 週間以内に明らかな改善を認めない
例のステロイドの減量、離脱および寛
まで1週間を要するため手術回避のた
ステロイド抵抗性症例とステロイド
解維持を目的として用いられる免疫調
めに迅速な効果発現が求められる重症
を減量すると再燃を繰り返すためステ
節剤です。
∼劇症例では不向きな薬剤です。ステ
ロイドから離脱できないステロイド依
AZA/6-MP の投与は通常 AZA50mg、
ロイド抵抗性症例でも外来で観察でき
存性症例です。ステロイド抵抗性の難
6-MP30mg を初期投与量として白血球
る程度の中等症の患者が良い対象だと
治症例で手術を回避するために用いる
減少などの副作用に注意しながら AZA
考えられます。副作用には CsA 同様の
免 疫 調 節 剤 が CsA、FK506 で す。 ま
は 50 ∼ 100mg、6-MP は 30 ∼ 50mg の
腎機能障害、手指振戦の他、血糖上昇、
た、ステロイド依存性の難治症例でス
範囲で維持投与します。
血清マグネシウムの低下がありますが、
テロイドからの離脱および寛解維持
副作用としては、骨髄抑制による白
いずれも血中濃度を下げることで原則
のために用いる免疫調節剤が AZA と
血球減少、脱毛、発熱、発疹、倦怠感、
回復します。
6-MP(AZA/6-MP) です。
嘔気、下痢、膵炎などがあり、通常投
スポリン (CsA: サンディミュン ®) です
血中濃度の維持が推奨されておりこの
濃度が維持できれば、約2週間で寛解
IBDニュース Vol.48 2011 年 1 月
I B D N E W S クローン病で用いられる免疫調節剤
性痔瘻、外瘻に対する寛解導入効果、
おわりに
CD は UC と異なり、活動期の寛解導
腸管切除後の再発予防に有効です。ま
IBD の治療で用いられている代表的
入目的で用いるべき即効性のある免疫
た、IFX 投 与 例 に お い て AZA/6-MP
な免疫調節剤について概説しました。
調節剤はなく、現在その役割はレミケ
が IFX に対する抗体産生を抑制し、効
6- メルカプトプリン、シクロスポリン
ード
などの抗 TNF- α
果減弱の抑制に有用なことから以前は
はまだ保険適用外の薬剤ですが、アザ
抗体製剤に委ねられているのが現状で
AZA/6-MP の併用が推奨されていまし
チオプリン、タクロリムスは保険適用
す。CD では以前より AZA/6-MP 対す
たが、最近では若年男性において両薬
となっており免疫調節剤の IBD 治療に
る有用性が認められていますが、効果
剤併用で肝脾 T 細胞リンパ腫の発症リ
おける有用性は確立されつつあります。
発現に 2 ∼ 3 ヶ月を要するためステロ
スクが高まるという海外での報告もあ
免疫調節剤も副作用に留意し十分な説
イド抵抗性症例における早期の寛解導
り注意が必要です。
明の下に投与すれば、無意味な長期大
入効果は期待できません。AZA/6-MP
上記の免疫調節剤は妊娠、授乳に関
量ステロイド投与により生じる合併症
は主としてステロイド依存性難治性 CD
しては問題ないという報告もあります
を回避でき、患者の QOL 向上に寄与す
のステロイドの減量と中止、寛解維持、
が、現時点では妊娠適齢期の女性患者
る薬剤に成り得ることを最後に強調し
及び難治性瘻孔に対して用いられます。
は他の治療を選択するのが望ましいで
たいと思います。
特に肛門病変、腸管皮膚瘻などの難治
しょう。
®
やヒュミラ
®
診療の場から
消化器科医、小児科医、小児消化器病医
埼玉県立小児医療センター 総合診療科 鍵本 聖一
お子さんがお腹を痛がったら、また、
対する一般診療や全身管理、心のケア、
す。
下痢をしたら、血便が出たらどうしま
食事、成長や発達の評価、学校生活の
今年もまた、受験シーズンがやって
すか。子どものお医者さん、小児科に
アドバイス、予防接種、服薬の指導な
きました。IBD のお子さんにとって受
連れてゆきますね。内科の先生が診て
どは小児科の先生の得意なところです。
験は大きなストレスで、たとえば中学
くれるかもしれませんが、病気が本物
IBD のお子さんこそ、消化器の主治医
3 年生の女の子は大抵再燃や再発を起こ
であればやはり大きな病院や大学の小
と小児科の先生が連携してゆくことが
して、病状が悪化します。高校入試当
児科へ紹介されるでしょう。その子が
必要なのです。
日にひどい再燃を起こしたお子さんも
IBD だったら?小児科には内科のよう
一方、小児消化器病の専門医とはど
いました。受験は一方では人生の大き
な消化器科というのが原則的にはあり
んな人でしょうか。アメリカで認定さ
なイベントでもありますから、担当医
ません。もともと小児科というのは子
れる小児消化器専門医は、消化管疾患、
としても緊張しますし、なんとかよい
どもを全般的にみる専門家なのです。
栄養障害、肝臓病、膵臓疾患を担当し、
アドバイスをして、一緒に乗り越えた
赤ちゃんから中学生くらいまで、場合
内視鏡検査、消化管内圧検査、透視検
いと思うのです。勉強の仕方、食事や
によってはお母さんのお腹の中にいる
査、肝生検などの検査を行います。消
睡眠のとり方、服薬、心の持ち方など、
ときから社会人として自立するまで、
化管出血、乳糖不耐症、食物アレルギ
それは多岐にわたります。そして入学
小児のあらゆる問題が守備範囲です。
ー、重症の便秘、胃食道逆流症、IBD、
する学校が決まると尋ねることにして
IBD に詳しい、専門の小児科の先生は
短腸症候群、肝疾患、急性、慢性の腹痛、
います。“あなたは子ども?それとも大
残念ながら多くはないのですが、小児
嘔吐症、慢性の下痢症、膵機能不全と
人?”お子さんが“もう大人”と自分
科医の世界は狭いので、誰が何を得意
膵炎、栄養の問題、発育障害などを担
で答えたら?そう、その時は内科の消
にしているかを小児科医は知っており、
当するので随分守備範囲は広いのです
化器の先生に担当をバトンタッチする
適切な先生を紹介してくださるでしょ
ね。内科の消化器病の専門の先生、外科、
タイミングです。付き添いのお母さん
う。子どもも診てくださる大人の消化
小児外科の先生などとも協力して診療
が答えたり、自分で“まだ子ども”と
器の先生にお願いするかもしれません。
を進めてゆくのです。日本でも世界に
言った時は、“もう少し小児科に通って
しかし、お子さんは IBD を抱えていて
通用する小児消化器病の専門医を育成
ね”と申し上げることにしています。
もやはり”子ども”なのです。急病に
しようと、現在整備が進められていま
−事務局だより− 早いもので 2011 年も、年明けからすでに 1 ヶ月が過ぎようとしています。CCFJは昨年、
「ウォーク&ランフェスタ」、
「難
病・慢性疾患全国フォーラム」、他疾患との協働による「就労シンポジウム」開催など、IBDを含めた様々な疾患との共通の問題点について
も解決の糸口を模索した活動を行ってきました。また、翻訳本出版準備も進めております。今春には、みなさまのお手元にお届けできると思
います。このほかにも今年も、みなさまにお役に立つ情報を発信できる活動を行ってゆきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
発行 NPO 法人 日本炎症性腸疾患協会 編集 IBD ニュース編集委員会
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