新興国コンサルティング室 新興国ニュースレター - Newsletter Emerging Markets - vol.23 特集「アジア新興国市場 参入戦略検討時の留意点」 新興国ビジネス最新情報 • 中国 加速償却に関する公表 中国国務院は、技術革新や経済発展 促進を目的とした新たな加速償却を公 表しました。これは2014年1月以降取 得の単価100万人民元以下の研究開 発用機械装置は即時償却、単価100 万人民元以上および特定産業に従事 する企業が同年1月以降取得の固定 資産については、加速償却制度又は 200%定率法が適用されたものです。 • ベトナム 法人税および付加価値税の ガイダンスを公表 ベトナム政府は2014年10月1日と10月 10 日 付 で 、 Resolution63/NQ-CP (Resolution 63)に基づく法人税および 付加価値税に関する関係法令の修正 に関する詳細な説明とガイダンスであ るDecree91およびCircular151を公表し ました。 • メキシコ 非居住者に支払う配賦費用の 損金算入に関し新規則を公表 メキシコ税務当局は、昨今の最高裁判 決を受け、2014年10月16日付で政府 の公式な公示として、メキシコ法人が 非居住者へ支払う配賦費用の損金算 入に関する新規則を含む税制改正を 公表・施行しました。 新興国セミナー開催情報 2014年12月8日(月)浜松 9日(火)名古屋 10日(水)東京 中国自動車業界独占禁止関連調査から (EY Japan/浜松・名古屋・東京) 2015年1月19日(月)大阪 グローバル人材育成のための英文会計 ~海外子会社のガバナンス 強化のために~ (EY Japan/大阪) ※詳細はWebsiteにてご確認下さい。 HOT TOPIC 「アジア新興国市場 参入戦略検討時の留意点」 これまでも取り上げてきた通り、日本企業のASEAN地域への事業投資意欲は強く、当地シンガポー ルでも、日系、ローカル双方からM&A案件や合弁候補先の紹介を求められることが非常に増えてい ます。その中でも、特にインドネシアやミャンマー等東南アジアの新興国に対しては、一定の市場参入 や事業拡大戦略のもとに具体的な事業・企業買収機会を求めているというより、まずは「具体的な 案件ありき」というスタンスのようです。すなわち具体性あるM&A案件から自社ビジネスの拡大の可能 性を検討したいという考えが、多くの日本企業に見受けられるのが実際のところと言えます。 EYシンガポール ディレクター 武末 知之 略歴 2008年よりEYに参画し、 2013 年 よ り 現 職 。 ASEAN域内のM&Aに 関連する各種コンサル ティング業務を担当する トランザクション・アド バイザリー・サービスに て日系企業を幅広く サポート。 他方、これら新興国での事業戦略策定において、日系企業 の現地担当者、あるいは、当該地域の事業開発担当の方々 からは、戦略検討のための情報不足・情報の不正確さを嘆く 声が多く聞かれます。また、こうした現地状況を踏まえたうえ で、本社からは「第三者の予測や見解」を求められることが 他地域よりも多いようです。 こうしたケースに、私たちは、市場の魅力度や規模の予測だ けでなく、事業を取り巻く法や規制状況の整理、業界構造や 特性、競争状況の調査といった内容を踏まえ、自社進出と合 弁設立、M&Aといった市場参入方法の検討とその戦略実行 という一連のプロセスの支援を提案しています。 上述のような国々では、主に、各種統計、企業や業界団体の開示情報、経済・業界・信用調査等の 専門事業者によるレポートといった「一次情報」が不足しています。そのため、現地企業へのヒアリン グによる「二次情報」を多く集めていく方法が取られます。また、これらの国々では、依然として外資の 参入規制が残り、サプライチェーンやバリューチェーンの自社展開に制約があることから、ビジネス モデルの見極めは参入戦略策定上非常に重要な要素となります。 ここでは、対象とする事業周辺の関係者までヒアリング対象を拡げて行くことで、情報の正確さを少し でも高め、参入後の事業運営への示唆を抽出することが可能になります。外部アドバイザーを起用 する場合、ヒアリング対象を自社のネットワークよりも拡げ、実際に参入して事業を展開していく際に 想定される論点を予め整理し、ヒアリングの質を高めることにこそ利点を求めるべきともいえます。 全体需要の伸びや対象とする顧客セグメントのニーズ考察といった需要調査に止まらず、競合状況の 把握も踏まえてどのように事業を運営していくか、関連法制や規制動向の不確かさを含めて、どのよ うなリスクをどう管理・モニタリングしていくか。こうした事業環境下でどこまで自社経営資源で行い、 どのような面をM&Aや合弁によって外部調達するか。外部調達する場合、どのような候補先がいて、 どの候補先にどう持ちかけていくか。 こうした一連の論点について、調査・整理・考察を一貫して支援できるアドバイザーの存在は、情報 不足の新興国への参入戦略策定とその実行にこそ有用ではないでしょうか。 新興国コンサルティング室 新興国M&Aニュース 新興国ビジネス分析 The road to 2030: a survey of infrastructure development in Russia 買収後リスクを見据えた、M&A手法の選択 買収後マネジメントの優劣は、Day1以降の取り組み(ポストマージャー インテグレーション:PMI)によるところが大きい一方、最近は買収前、 特に選択するM&A手法による影響も課題として認識されています。 「買収(株式取得)」、「事業譲渡・資産譲渡」、「出資」、「合併」、「会社 分割」、「合弁会社設立」等がM&Aで一般的に選択されていますが、 アジアの中でもシンガポールのように、買い手の戦略や意図に合致 した手法が選択可能な国がある一方、新興国の中には法整備が不十 分で、上記のいくつかは実質的に選択できない国も多くあります。 したがって、法制度の整備状況、訴訟や労務リスク等の買収後リスク を見極め、慎重に選択することが求められます。デューデリジェンスの 結果、リスクが高いと判断し、かつ望ましい手法の選択が難しい国の 場合、企業買収に拘らず、事業譲渡や資産譲渡、あるいは株式取得 比率を下げた資本参加などの手法を考慮することが必要となります。 EYはロシアのインフラセクターの現状を明らかにし、制度や環境 改善を目的として、ロシアのインフラプロジェクト参加経験者150人 を対象に調査を実施しました。 この調査によれば、入札の透明性と競争力 を高め、投資に対する利益の十分な保証、 地方プロジェクトへのロシア連邦政府による 積極的な融資といった要望が上げられ ました。また、ロシアのインフラ投資について の調査・分析に関連し、世界各地の投資プロ ジェクトのケーススタディを紹介しています。 これらはロシアでのインフラ投資に十分な 示唆を与えるものとなっています。 ここが知りたい!新興国税務会計 新興国専門家からのワンポイント 【フィリピン編】 インドネシアの社会保障制度 Q. 選択性定率控除(Optional Standard Deduction) とは何でしょうか? A. フィリピンでは、法人所得税(通常法人税)の所得 計算の際、原則的な項目別所得控除の代わりに 総所得に対し40%の定率控除(OSD)を選択する ことが可能です。個別の損金算入項目を特定する 必要はなく、証票類がなくても定率控除の損金性 は不問となります。ただし、「RR No.2-2014」の 適用により、PEZA企業等で5 %総所得税等の 税制インセンティブを受けている企業は、2013年 度 よ り 通 常 法 人 税 の か か る雑 所 得 に 関 し OSD 申告ができなくなったという点に注意が必要です。 これまで寄せられた新興国の“聞けそうで聞けない”質問を 当コーナー で回答していきます。 新日本有限責任監査法人 広報室 室長 佐藤 宏之 EYインドネシア シニア 内藤玄太郎 Email: [email protected] EYフィリピン/SGV マニラ事務所 マネージャー 飯田 亮也 Email: [email protected] 編集後記 渋滞で悪名高いインドネシアでは、各種インフラの整備が遅れており、社会 福祉制度も発展途上です。健康保険制度も未整備でしたが、2014年1月 よりすべての国民を対象とした皆保険制度が始まりました。これまでは企業 がより優れた制度を有している場合、公的制度への加入は不要でしたが、 皆保険制度開始に伴い公的制度への加入と保険料の支払が義務付けられ ました。このため、従来からの制度と合わせて二重の健康保険制度を有する ことになり、その費用負担は大きく、今後の制度設計の継続的な検討が必要 になっています。また、これまでは対象外であった外国人も保険料徴収の 対象になった点に留意が必要です。 • 略歴 2006年より新日本有限責任監査法人東京事務所で監査業務に 従事。2014年5月よりEYジャカルタオフィスにおいて現地日系企業 をサポート。日本国公認会計士。 ※本ニュースレターは2014年11月時点の情報を基に作成しております。 【アスリートたちからの刺激】 テニスプレーヤーの錦織圭選手やプロゴルファーの松山英樹選手、フィギュアスケートの羽生結弦選手など、 少し前まで日本人には夢の世界であり、足を踏み入れることができなかった世界の大舞台で活躍するアスリートが このところ一気に増えてきました。 アスリートたちのグローバルステージでの活躍は、自ら臨んで挑戦という勇ましさを感じますが、企業のグローバル 化は、必要性に迫られてという趣が強いようです。 若い彼らからの刺激を受け、仕方なくではなく挑戦する気持ちが大事だと心を改め、減量くらいから始めようと 心に誓いました。 *詳細は www.shinnihon.or.jp/services/emerging-markets/index.html にてご覧いただけます。 **メールマガジンのご登録はこちら。 www.shinnihon.or.jp/shinnihon-library/mail-magazine/index.html EY | Assurance | Tax | Transactions | Advisory EYについて EYは、アシュアランス、税務、トランザクションおよびアドバイザリーなどの分野における世界的なリーダーです。私たちの深い洞察と高品質なサービスは、世界中の資本市場や 経済活動に信頼をもたらします。私たちはさまざまなステークホルダーの期待に応えるチームを率いるリーダーを生み出していきます。そうすることで、構成員、クライアント、そし て地域社会のために、より良い社会の構築に貢献します。 EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバル・ネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した 組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。詳しくは、ey.com をご覧ください。 EY Japanについて EY Japanは、EYの日本におけるメンバーファームの総称です。新日本有限責任監査法人、EY税理士法人、EYトランザクション・アドバイザリー・サービス㈱、EYアドバイ ザリー㈱などの13法人から構成されており、各メンバーファームは法的に独立した法人です。詳しくはeyjapan.jpをご覧ください。 © 2014 Ernst & Young ShinNihon LLC. All Rights Reserved. 本書又は本書に含まれる資料は、一定の編集を経た要約形式の情報を掲載するものです。したがって、本書又は本書に含まれる資料のご利用は一般的な参考目的の利用に 限られるものとし、特定の目的を前提とした利用、詳細な調査への代用、専門的な判断の材料としてのご利用等はしないでください。本書又は本書に含まれる資料について、新 日本有限責任監査法人を含むEYの他のいかなるグローバル・ネットワークのメンバーも、その内容の正確性、完全性、目的適合性その他いかなる点についてもこれを保証する ものではなく、本書又は本書に含まれる資料に基づいた行動又は行動をしないことにより発生したいかなる損害についても一切の責任を負いません。
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