新興国コンサルティング室 新興国ニュースレター - Newsletter Emerging Markets - vol.26 特集「カンボジア米の輸出振興のために」 新興国ビジネス最新情報 HOT TOPIC 「カンボジア米の輸出振興のために」 • シンガポール 2015年度予算を発表 シンガポール政府は2015年4月1日 から始まる会計年度に係る2015年 度予算案を公表しました。当該予算 案には企業の人件費上昇への対応 や技術革新・国際化・M&Aの支援と 共に、公平かつ持続可能な財政シス テムの構築を目的とした多くの税制 改正が盛り込まれています。 インドシナ半島の中心に位置するカンボジアは、豊富な若年労働力を有していることから、このところ タイやベトナムに続く投資先として日本企業に注目されています。カンボジア政府も高い経済成長を 維持するために、主に製造業を積極的に誘致しようとしています。 しかし、カンボジアが全体として持続的に発展するには、製造業への投資のみに依存するのは限界が あると言えます。他の注目すべき分野としては、就労人口の7割近くを占める農業セクターが考えられ ます。カンボジアの農業は発展途上であり、生産性の改善や収入の増加を図ることが不可欠です。 農業の発展は地方・都市間の経済格差の拡大を防ぐという点から、社会の安定のために重要であり • 香港 2015/16予算案提出 香港行政特別区財政司司長は同年 4月1日以後開始する課税年度より 適 用 となる 財 政 予 算 案 を提 出 し ま した。給与所得税の相対的な減税を 通じた個人の税負担の軽減が主たる 目的の一つとされています。 新日本有限責任監査法人 新興国コンサルティング室 エグゼクティブ・ディレクター 山田 聡 • インド 2015/16予算案 インド財務相は2015年4月1日以後 開 始 する 課 税 年 度 よ り 適 用 と なる 税 制 改 正 案 を 盛 り 込 ん だ 2015 年 財政法をインド議会に提出しました。 個人所得税の観点から、10百万ル ピーを超 える高額所得者に対 する サーチャージの税率引き上げに伴い、 実効税率が33.99%から34.608%へ わずかに引き上げられる予定です。 新興国セミナー開催情報 2015年4月6日(月) 海外子会社等の監査実務 ~財務報告に係る内部統制の評価~ (EY Japan/大阪) 2015年4月7日(火) 敵対的買収リスクを考える (EY Japan/大阪) 2015年4月7日(火) 海外相続承継手続と遺産税/相続税の 概要セミナー (EY Japan/東京) ※詳細はWebsiteにてご確認下さい。 略歴 アセアン地域の市場調査、 企業進出支援に従事。 特 に 、カ ン ボジ ア お よ び ミャンマーに関する金融・ マクロ経済事情、エネ ル ギーや交通インフラの 整備動向に精通、進出 検討中の企業を中心に アドバイス提供。 カンボジア政府も注意を払っています。 こうした中、同政府は主要作物である米の輸出増加に よる外貨獲得が農業セクターの底上げに寄与すると 考え、これを促進しようとしています。あまり知られては いませんが、カンボジア米は農業関係者の間では高級 米として認識されており、国際的な米の品評会(The World Rice Conference)でも3年連続で最高評価を 獲得しています。しかし問題は、この高評価がカンボジ ア農民の収入に結びついていないことです。一体なぜ でしょうか。カンボジアでは、生産された米の大部分が 刈り取り直後に隣国のタイやベトナムの業者に籾米の まま買い上げられてしまいます。そしてその国々で精米 された後、タイ産、ベトナム産として出荷・消費され、第三国へ輸出されているとの指摘があります。 つまり、米のバリューチェーンの重要な部分に、カンボジア国内の業者が関与できていないということ です。では、カンボジア米の国内での価値を高め、「カンボジア産」として輸出するためには何が必要 でしょうか。現地の農業関係者の間では、幾つかのポイントが挙げられています。例えば、ビジネス 志向の農業組合を設立し、各農家が稲作に必要な肥料や機械を共同で購入、利用し、組合が国内 業者に精米を販売するという案です。カンボジアでは内戦下の大虐殺の記憶から、個々の家族が 互いに警戒心を捨てておらず、本格的な組合の組織化が難しいという声もありますが、一方で、既に 穀倉地帯では複数の農家が共同して精米機を導入する試みも見られます。また、国内の河川物流網 を整備し、農作物の輸送コストを下げる取り組みも一部で検討されています。ある国際機関関係者は 「物流網が整備されてカンボジア国内で卸取引が活発化すれば、カンボジア米の取引価格が公開 されるはずです。それにより、国内のコメ農家は自分が生産した米の取引価格を知り、他国の業者に 言い値で米が買い上げられることはなくなるのではないでしょうか。」と期待しています。 上記以外にも、貯蔵施設の整備や高品質の農業機械の供給、国外販路の開拓等を通じ、カンボジア 国内で精米、貯蔵、輸出の割合を増やすような取り組みが考えられます。これらの中には、日本政府 や日本企業が輸出振興に貢献できる分野も少なくありません。今後の関係者の動向が注目されます。 新興国コンサルティング室 新興国M&Aニュース 新興国ビジネス分析 海外事業・グループ再編ニーズの高まり、やり直しPMI Indian steel: Strategy to ambition グループ内で競争力を失っている海外関係会社、ノンコア事業と分類 された海外事業の切り離し、スケールメリットを活かしての事業再編等、 海外事業・グループ内再編ニーズがアジア地域で高まっています。 中には、数年前に買収した先が振るわず、減損処理が発生したり、 ガバナンス上の問題が発生するなど、「やり直しPMI(Post Merger Integration)」がグループ再編の契機になることもあります。 グルーバル本社(持株会社)を設立して、事業や地域へ大幅に権限を 委譲したり、アジア地域統括会社を設立し、域内ガバナンス、リスク 管理強化を企図したりする動きが加速しています。 しかしながら、グループ再編と言っても、「組織再編スキーム」「税務面 検証」「法務手続き」「商流の見直し」「人・IT面の対応」など、いざ実行 時に検討すべき領域は多岐にわたるため、検討や決定を躊躇し、 時期を逸してしまう虞があるのも事実です。グループ再編を考えて いる企業は、「迅速な対応こそコスト最小化」という点を考慮する時期 かもしれません。 インドの鉄鋼セクターの現況と今後目指すべき戦略について 取り上げたレポートです。今後2年間で、インドの鉄鋼需要の伸 び は 約 5~6% に 達 す る と み ら れ 、 生 産 能 力 は 2013 年 か ら 2016年までの年平均成長率8.8%と予想されます。 これまでグローバルな経済要因の影響が 比較的少なかったものの、今後はその 影響が強くなると思われます。 これは、中国の需要が増え、鉄鋼の供給 増により価格圧力が発生し、安価なエネ ルギー源としてのシェールガスの普及、 最終製品の排出基準や環境規制の厳格 化で新素材開発が必要となることが要因 のひとつと考えらえます。 ここが知りたい!新興国税務会計 新興国専門家からのワンポイント 【ラオス編】 「インドネシアにおける外貨建て対外債務に関する新規制」 Q. ラオスにおける法人税の概要について教えて下さい。 銀行を除く民間企業を対象とした外貨建て対外債務に関する新規制(2015 年1月1日施行)がインドネシア中央銀行から発表され、インドネシアに進出 している日系企業の間に波紋が広がっています。本規制では、主に外貨 建て対外債務に係わる為替リスクと流動性リスク等の緩和・管理を目的と して、ヘッジ比率規制、流動性比率規制、外部格付け取得義務の3つの規制 が定められています。しかし、規制の発表から施行までの期間が短く、かつ、 内容が複雑で不明瞭な点が多く、また12月31日に発表された報告規則に は新たな罰則規定も含まれているため、本規制への対応については十分な 検討と注意が必要です。 A. 法人に課される主な税金として、我が国の法人税に 相当するプロフィット税があります。その標準税率は 24%、課税対象期間は暦年です。プロフィット税は 法人所得のみならず、個人の事業所得にも課税さ れます。また、一定の条件を満たす場合、欠損金の 3年間繰越が可能、過少資本税制がなく、移転価格 税制に関する根拠法令がない等の特徴があります。 ラオスは2014年12月現在、中国、韓国、ベトナム、 マレーシア、タイ、ミャンマーなどの限られた国々と 租税条約を締結していますが、日本との二国間条 約は締結していません。 シニアマネージャー 今野 健二 Email: [email protected] 新日本有限責任監査法人 マネージャー 笹部 健児 Email: [email protected] • 略歴 これまで寄せられた新興国の“聞けそうで聞けない”質問を 当コーナー で回答していきます。 編集後記 新日本有限責任監査法人 インドネシア駐在15年。大手商社在勤中に設立した合弁会社、及び 消費財メーカーの現地法人責任者を務める。入所後は、主にインド ネシアを中心に新興国に進出する企業の支援業務に従事。 ※本ニュースレターは2015年3月時点の情報を基に作成しております。 【BEPS行動13へ対応と本社主導型税務マネジメント】 2015年2月にOECDより公表された「BEPS 行動13:移転価格文書と国別報告書の実施ガイダンス」は、納税者には 待望のガイダンスです。すなわち、2014年9月に公表された行動13に関するOECD報告書で策定された3層構造の移転 価格文書化アプローチの一つである①国別報告書(CbCR)の実施要項(提出対象企業、作成・提出時期、政府間の 情報交換メカニズム等)及び②マスターファイル③ローカルファイルの実施概要等を定めたものです。日本の国内法への 反映は最短で平成28年度税制改正時が見込まれ、企業では、BEPS行動13への対応に向けて、これからロードマップ の策定が始まる時期です。現状の移転価格リスク分析や移転価格ポリシーの策定・運用、そして実際の移転価格コンプ ライアンス対応のためのプロセス・管理体制の構築など、様々な課題が山積みかと思いますが、一方でこの機会を本社 主導型税務マネジメントの導入のいいきっかけとして、前向きにとらえてもらえればと期待しています。 EY税理士法人 エグゼクティブ・ディレクター 阿久津 隆一 *詳細は www.shinnihon.or.jp/services/emerging-markets/index.html にてご覧いただけます。 **メールマガジンのご登録はこちら。 www.shinnihon.or.jp/shinnihon-library/mail-magazine/index.html EY | Assurance | Tax | Transactions | Advisory EYについて EYは、アシュアランス、税務、トランザクションおよびアドバイザリーなどの分野における世界的なリーダーです。私たちの深い洞察と高品質なサービスは、世界中の資本市場や 経済活動に信頼をもたらします。私たちはさまざまなステークホルダーの期待に応えるチームを率いるリーダーを生み出していきます。そうすることで、構成員、クライアント、そし て地域社会のために、より良い社会の構築に貢献します。 EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドのグローバル・ネットワークであり、単体、もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバーファームは法的に独立した 組織です。アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していません。詳しくは、ey.com をご覧ください。 EY Japanについて EY Japanは、EYの日本におけるメンバーファームの総称です。新日本有限責任監査法人、EY税理士法人、EYトランザクション・アドバイザリー・サービス㈱、EYアドバイ ザリー㈱などの13法人から構成されており、各メンバーファームは法的に独立した法人です。詳しくはeyjapan.jpをご覧ください。 © 2015 Ernst & Young ShinNihon LLC. All Rights Reserved. 本書又は本書に含まれる資料は、一定の編集を経た要約形式の情報を掲載するものです。したがって、本書又は本書に含まれる資料のご利用は一般的な参考目的の利用に 限られるものとし、特定の目的を前提とした利用、詳細な調査への代用、専門的な判断の材料としてのご利用等はしないでください。本書又は本書に含まれる資料について、新 日本有限責任監査法人を含むEYの他のいかなるグローバル・ネットワークのメンバーも、その内容の正確性、完全性、目的適合性その他いかなる点についてもこれを保証する ものではなく、本書又は本書に含まれる資料に基づいた行動又は行動をしないことにより発生したいかなる損害についても一切の責任を負いません。
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