修 士 論 文 の 和 文 要 旨 高向 啓治 イミダゾピラジノン誘導体の

修 士 論 文 の 和 文 要 旨
大学院
電気通信学研究科
氏
高向
名
論
文
題
博士前期課程
啓治
量子・物質工学専攻
学籍番号
0333021
イミダゾピラジノン誘導体のソルバトクロミズム制御
及び色素センサー応用に関する研究
目
【序論】ウミホタルやホタルイカなどの生物発光に関与するイミダゾピラジノン
誘導体は 、生物・化学発光性と共に長波長吸収性とソルバトクロミズム特性を持
ち、優れた分子環境場応答性の色 素センサー分子である。本研究では、イミダゾ
ピラジノン誘導体をバイオイメージング用の色素プローブ分子として応用するた
めの基礎研究を行った。まず、水溶性の向上と構造の安定性のためにN7位 を ア ル
キル化した誘導体1~3を合成し、これらの分光学的性質と生体分子認識性について
検討した。次に、2位のアリール基を系統的に置換基変換した誘導体4a-d及び5a-d
を合成し、ソルバトクロミズムの制御を行った。これらの分光学的性質とπ電子
構造との相関を確立した上で生体分子認識性について検討した。さらに、DNAと
の 相 互 作 用 性 と 水 溶 性 の 向 上 を 期 待 し 、N1位 を メ チ ル 化 し た カ チ オ ン 性 誘 導 体
6a-e 及び7を合成し、これらの色素センサー機能について検討した。
【結果と考察】7位 のN上にメチル基と水溶性アルキル基を導入した誘導体1~ 3は、
水溶性と構造の安定化を示し、イミダゾピラジノン環自身が水和によって安定化
されることを確立した。次に2-アリール誘導体4~ 5は、水 素 結 合 形 成 に 起 因 す る 特
異なソルバトクロミズムを維持し、置換基に依存した吸収スペクトル変化を示し
た。この特徴的な置換基効果の要因は分子軌道計算により証明することができた。
生体分子認識性とし ては、ナフチル誘導体5aと5bが BSAと の 相 互 作 用 に よ る ス ペ
ク ト ル の 赤 方 シ フ ト とICDを 示 す こ と を 見 出 し た 。 こ の 結 果 は 、5aと5bが 水 中 か
らBSAの 疎 水 環 境 場 内 に 包 接 さ れ る こ と で 水 分 子 と の 水 素 結 合 が 弱 ま り 、 赤 方 シ
フ ト し た も の と 説 明 で き る 。 さ ら に1 位 のN上 を メ チ ル 化 し た カ チ オ ン 性 誘 導 体
6~ 7は、中性分子に比べて吸収波長領域の長波長化を示し、分子軌道計算からもそ
の構造を支持する結果を得た。溶媒による吸収波長シフトは溶媒の水素供与性パ
ラメータと良い相関を示さず、カチオン性を持つことによる水素結合ドナー性を
反 映 し ていることが示唆された。生体分子認識性としては、6c-e がDNAと の 相 互
作用による分光学的性質の変化を示すことを見出した(Figure 1)。以上より、イミ
ダゾピラジノン誘導体を色素プローブ分子として応用する際の生体分子認識セン
サー機能の基礎を確立することができた。
10
R
N
-1
N
2c
OH
NMe2
2d
R
3 a:R=CH 3
3 b:R=Ph
3
OMe
NMe2
N
4a
4b
Cl
N
C H3
CN
5a
4c
5b
5c
N
515 nm
-5
530 nm
CH 3
6b
6c
6d
6e
300
CH3
N
0.0
-10
N+
+
6a
0.5
0
+DNA
DNA
Ph
N
N -OSO CF
2
3
CH3
+DNA
+DNA
526 nm
4d
R
N
5
5d
O
O
free
DNA
A
2
1.0
6d
N
N
N
1 a:R=CH 3
1 b:R=Ph
1
N
2b:R=Ph
-1
N
C H3
O
N
N
R
O
2a:R=CH 3
3
N
R
O
∆ε/dm mol cm
O
-OSO 2CF3
Ph
400
500
600
700
Wavelength/nm
Figure 1. UV-vis absorption spectra and CD
spectra of 6 d (20 µM) in the absence and the
presence of DNA (1.09 mM).
7
-1-