1 【演習 5】 《問 1》 次の化合物の C3‒C4 を軸とする配座異性体

1
【演習 5】
《問 1》
次の化合物の C3‒C4 を軸とする配座異性体(conformer)について、最もエネルギーの
低いアンチ形(anti)、次に低いゴーシュ形(gauche)、最もエネルギーの高い重なり形
(eclipsed)立体配座(conformation)を Newman 投影式で描け。
3
H2C
4
CH2
《解説》
ま ず 、 2,5-dimethylhexane の
る。
H2C
はイソプロピル基
H3C
CH
H3C
を表してい
CH3
H3C HC
H2C CH2
CH2
CH CH3
H3C
2,5-dimethylhexane
次に、C3-C4 を軸とする配座異性体(conformer)を Newman 投影式(Newman
projection)で描くと、次のようになる。
1 2
3
H2C
4
CH2
5 6
H
H
H
H
H
H
H
H
H
H
anti
H
H
gauche
H
H
H
H
eclipsed
イソプロピル基の立体反発を考慮すると、イソプロピル基同士の二面角が 180 のねじれ
形(staggered)ときに最も立体反発が小さく、anti 形立体配座(anti conformation)と
呼ぶ。イソプロピル基同士の二面角が 60 のねじれ形のとき、次ぎに立体反発の小さいゴ
ーシュ形立体配座(gauche conformation)となる。さらに 60 回転すると、イソプロピ
ル 基 同 士 が 重 な り 合 う 最 も 立 体 反 発 の 大 き い 重 な り 形 立 体 配 座 (eclipsed
conformation)となる。
2
H3C H CH3
C
H
H
H
H
H
H
H
H
H
H
anti
(180°)
gauche
(60°)
H
H
isopropyl group
H3C H CH3
C
eclipsed
(0°)
Newman 投影式の書き方は次の如くである。
2,5-Dimethylhexane (A)を C‒3 と C‒4 炭素が重なるように見る(B)。まず、先に見える
(後ろの)炭素 C‒4を円で描く(C)。次に(手前の)C‒3 炭素を 120 の結合角で三つ葉
交点として描く(D)。この時、結合の 1 つは垂直方向に描く。C‒4炭素の 3 つの結合を、
円の内側へ、その延長線上に C‒3 炭素中心が来るように、円周より外側に向かって C‒3
炭素の結合の間に描く(E のピンク線)。最後に、結合の先にそれぞれ水素とメチル基を描
けば(F)、出来上がり。
1 2
3
H2C
4
CH2
5
A
6
H2CCH2
B
C
D
E
H
H
H
H
F
3
《問 2》
次の a, b, c について、大きく示した H­C 結合でホモリシス開裂(homolytic
cleavage)が起こり、炭素ラジカルが生成することを、片羽矢印(釣針型矢印)で示せ。
また、第 1 級炭素ラジカル(primary carbon radical; 1 )、第 2 級炭素ラジカル
(secondary carbon radical; 2 )、第 3 級炭素ラジカル(tertiary carbon radical; 3 )
の別を記せ。
a.
CH3
H
C
H2
C
H2
C
b.
H
C
H
H
CH3
H2
C
CH3
C
H2
C
c.
H
C
H
CH3
H
CH3
H2
C
C
H
H
H2
C
H
C
H
CH3
H
《解説》
H‒C 結合のホモリシス開裂の描き方は次のようにする。まず、H‒C 結合は共有結合であ
るので、Lewis の電子式を思い浮かべる(B)。次に、共有結合電子を 1 個ずつ水素側と炭素
側に分ける。この時、片羽矢印(釣針型矢印)(
)でそれぞれの電子の動きの奇跡を描
く(C)。H‒C 結合で描くと D の如くである。その結果として、水素原子(E)と炭素ラジカル
F が生じることになる。
「ラジカル」(radical)とは不対電子を持つ 2 原子以上からなる化学
種のことである。
H CH2CH2---
H CH2CH2---
A
H CH2CH2---
B
C
H
H
+
E
CH2CH2--F
CH2CH2--D
ここで、共有結合の切断に片羽矢印(
)を使うと 1 電子移動を表し、ホモリシス解
裂(homolytic cleavage, homolysis)を表す。両羽矢印(
)を使うと 2 電子移動を表す
ことになり、ヘテロリシス解裂(heterolytic cleavage, heterolysis)を表すことになるので
要注意。
H
CH2CH2---
H
+
CH2CH2---
Homolytic cleavage
H
CH2CH2---
H
+
CH2CH2---
Heterolytic cleavage
H CH2CH2---
4
問題の a, b, c で、大きく示した H-C 結合のホモリシス開裂を示すと次のようになり、
それぞれの炭素ラジカルが生成する。
a.
H
CH3
C
H2
C
H2
C
b.
H
C
H
CH3
H
H2
C
H
CH3
C
H2
C
H2C
C
C
H
CH3
H
H2
C
H2
C
CH3
H
H2
C
CH3
C
H2
C
C
H
CH3
-H•
H
C
H
H
primary carbon radical
C
H
H2
C
-H•
H
C
H
CH3
H
H
-H•
CH3
c.
H
CH3
H
H2
C
CH3
C
H2
C
CH CH3
H
tertiary carbon radical
secondary carbon radical
第 1 級炭素ラジカル、第 2 級炭素ラジカル、第 3 級炭素ラジカルとは、炭素ラジカルが
それぞれ何個の炭素と結合しているかで区別する。すなわち、a の炭素ラジカルは 1 個の
炭素としか結合していないので、第 1 級炭素ラジカル(1 炭素ラジカル)である。b の炭
素ラジカルは 3 個の炭素と結合しているので第 3 級炭素ラジカル(3 炭素ラジカル)、c
の炭素ラジカルは 2 個の炭素と結合しているので、第 2 級炭素ラジカル(2 炭素ラジカル)
ということになる。