3.05.5(03) 保有耐力条件(建物)

第 3 章 モデリングフェーズの操作
3.5.5 (3) 保有耐力条件(建物)
画面名:保有耐力プロパティ
タブ名:保有耐力
メニュー :編集-建物共通-保有耐力(ケース)
フェーズ:モデリング
分
類:プロパティシート
ボ タ ン:
HP1370
説明
・解析を行うケースをチェックすると条件が入力可能となる。
(詳細ページも同様)
・増分荷重のケースごとに、全体座標に対する耐力の集計角度の指定が可能である(デ
フォルトは±U1、±U2 について、0°、90°を設定)
。保有耐力定義用層間変形角
および解析終了層間変形角は、入力した層間変形角 R に対し、内部的に結果集計角
度θの全体座標 X,Y 成分の大きいほうの値 R’に変換する(R’=R/max(|cosθ|, |sin
θ|))
。
・保有水平耐力、安全限界耐力は層間変形角で定義する。但し、脆性破壊判定を「考
慮」
(デフォルト)とした場合は、指定した保有耐力定義用層間変形角を超えたステ
ップか RC 造部材のせん断降伏部材または S 造部材の圧縮座屈が発生する手前のス
テップの小さい方を保有水平耐力または安全限界耐力とする。
安全限界耐力については定義変形角での応力変形状態について部材の変形能力が限
界変形能力以内であることを(二次設計により)確認する必要がある。
・「崩壊形判定」
「なし」
「余耐 1」
「余耐 2」から選択できる。
なし
:解析終了時=メカニズム時として計算する。
余耐 1
:柱と梁を対象とした曲げ、せん断の余耐力比による仮想ヒンジの
計算を行う。上記以外は、
「なし」と同じ。
余耐 2
:解析終了の判定、柱梁耐力壁の曲げの余耐力比による仮想ヒンジの
計算、メカニズム時部材応力の計算、崩壊形の判定を行う。
次頁あり
C-3.5.5(3)-1
第 3 章 モデリングフェーズの操作
説明
(続き)
・「限界変形角」
保有水平耐力、安全限界耐力を定義する層間変形角で、グローバル座標系の X、Y
成分である(加力方向の変形角ではない)
。
下記の2種の定義を使いけることができる。
各層
:各層ごとの層間変形角の最大値による
作用重心 :
「地震力作用重心」の層間変形角による。
内部設定=地震荷重算定用重量の重心最近傍階と1階の層間変形角
入力=重心高さ最近傍階と基準高さ最近傍階の層間変形角
・「解析方法」は逐次法、持ち越し法、収束法、並進法より選択する。
「荷重分布」は荷重増分解析時の荷重分布を指定する。
一次設計地震力以外を指定した場合は、警告メッセージが出力される。必要保有水
平耐力分布は既に計算結果があれば自動的に設定される。
塔屋階、地下階は必要保有水平耐力が計算されないので、1次設計用層せん断力に
1次、2次の標準せん断力係数比を乗じた層せん断力とする(塔屋は特に要注意)
。
内部設定は1解析が20~30ステップ程度で終了する推定値が設定される。
逐次法では塑性化自由度数を多くすると各部材の計算上の降伏耐力と解析上の降伏
応力に若干の差が生じる。
・「持ち越し法」
、
「収束法」
持ち越し法は各ステップごとに生じる塑性化による不釣り合い力を次のステップに
持ち越し、仮想荷重として処理する方法である。収束法は各ステップごとの塑性化
による不釣合い力を収束計算により処理する方法である。収束法を選択した場合は
収束回数(打ち切り回数)を指定できる。
これらは荷重増分法と変位増分法があり、混合した解析ができる。荷重増分解析時
の荷重分布は「荷重分布」の指定による。
変位増分解析時の変位分布はここで「変位分布」を指定する。
「増分セット」は荷重増分解析と変位増分解析の全体的制御を指定する。
「増分種別」に荷重増分と変位増分の種別を指定する。
「増分倍率」は増分解析の基
準となる荷重(変位)を下の「増分荷重テーブル」で定義した荷重ケースに対する
倍率で指定する(荷重ケースが1次設計地震力であれば保有耐力解析ではそれ以上
の荷重まで加力する必要がある)
。
Q
増分倍率までの間を
N 分割する。
α:増分倍率
N:分割数
δ
荷重増分解析に引き続き変位増分解析を実行できるが、逆はできない。
次項あり
C-3.5.5(3)-2
第 3 章 モデリングフェーズの操作
説明
・架構の特徴による推奨する増分制御法は下表による。
(続き)
建物の特徴
一般的な建物(下記を除く)
全体曲げ降伏す 連層壁架構
柱が曲げ降伏するラーメン架構
Link
制御法の選択
逐次法
逐次法、持ち越し法
逐次法、収束法
初めての解析では荷重増分幅の見当を付けるのは難しいので、最初は逐次法を適用し
て全体の荷重変形関係をまず把握する。
靭性保証型設計検討の実行のための設定に関しては操作編3.9.5 一貫計算の2、3ペ
ージを参照されたい。
理論編:3.1.2 荷重ケースの取り扱い
7.1.1 増分解析の基本事項
7.1.2 増分解析の解析制御方法
C-3.5.5(3)-3
第 3 章 モデリングフェーズの操作
3.5.5 (3) 保有耐力
画面名:保有耐力プロパティ
タブ名:保有耐力
メニュー :編集-建物共通-保有耐力(共通)
画面イメージ
フェーズ:モデリング
分
類:プロパティシート
ボ タ ン:
HP1371
説明
部材強度
・「ウェブ強度考慮」は1次設計時の条件(応力設計条件)と独立にここで指定する。
・「S 梁ウェブ強度」は、考慮、無視、端部のみ考慮を選択できる。端部のみ考慮は、
危険断面位置がフェイスの場合にウエブ Z を無視する。
・「鉄筋強度」は耐力計算に用いる鉄筋の強度を JIS 強度(JIS 製品で公称強度を 1.1
倍する)か信頼強度(公称強度をそのまま用いる)か指定する。
「主筋のみ JIS 強度」
と指定した場合、柱・大梁のせん断補強筋、耐力壁のタテ筋・ヨコ筋は信頼強度と
なる。鉄筋強度の指定は、一次設計 NL(非線形)解析、保有水平耐力算定、せん断設
計に反映される。なお、鉄骨強度は常に JIS 強度を用いる。
・ RC 部材の Qsu 係数
RC 柱・大梁・耐力壁のせん断強度 Qsu 式(荒川式)の係数を指定する。袖壁付き柱、
腰壁・垂れ壁付き大梁の係数は常に 0.053 である。
・耐力壁またはブレースのせん断力分担率βu
せん断力分担率βu の算定方法を指定する。
Max(保有耐力時、解析終了時)指定は、保有水平耐力時における層毎のせん断力集計
により耐力壁またはブレースのせん断力分担率βu を算出して解析終了時のβu と比
較してその最大値が Ds 算定時のβu となる。
次頁あり
C-3.5.5(3)-4
第 3 章 モデリングフェーズの操作
・片側袖壁付 RC 柱のせん断耐力
長方形柱のせん断耐力式指定は、RC 袖壁付柱のせん断耐力で袖壁が片側のみの場
合、常に長方形柱のせん断耐力式を用いて算出する。
デフォルトは内部設定で壁が圧縮側の場合は壁付き柱のせん断耐力式、壁が引張
側の場合は長方形柱のせん断耐力式を用いて算出する。
ランク判定
増分解析結果に対し、必要保有水平耐力を計算するときに必要な各種崩壊モード判
定の不確定さをあらわす係数である。
・フレームメカニズム:解析終了時に未降伏の部材がフレームメカニズム判定係数
以上の裕度がなければ降伏していると見なす。梁降伏か柱降
伏かの判定にかかわる。
・D ランク判定係数 :解析終了時の部材について、部材ランク判定時に、国土交通
省告示第 594 号による部材のヒンジ状態に応じた余裕度を
存在応力に乗じた上で判定する。部材が曲げ降伏かせん断
降伏の判定にかかわる。
ここで、裕度は(耐力/(存在応力×D ランク判定係数)
)である。
要素制限塑性率
塑性率が制限値を超えた要素は、塑性率図・表に「!」マークが表示される。解析
結果には影響しない。
弾塑性解析(一次設計用非線形(NL)解析にも有効)
・「柱・大梁主筋剛性」は、RC、SRC の柱・大梁について、すべての応力解析(一次
設計用弾性・非線形(NL)解析および保有耐力計算)または保有耐力計算の初期弾性
剛性に、主筋鉄筋を考慮する指定である。
・「統合部材中間を塑性化させる」を指定すると(統合部材の解析要素は統合前の部
材単位で生成され、各要素端は塑性化対象となる)
、統合前の部材端でも降伏判定を
する。指定しないと当該部材端は弾性扱いとなる。
・「層間変位計算法」は増分解析時の層間変位をどのように計算するかを指定する。
「剛心位置」は一次設計時の層間変形角と同様に部材の等価水平剛性を用いて算定
する。
「単純平均」は層内の解析節点の変位を単純平均して算定する(多段ブレース
や多層ブレースが存在する場合は「単純平均」を推奨する)
。本指定は、地震荷重の
設定(操作編 3.7.4)における、Ai,Bi 精算時の固有値解析の予備振動解析に用いる各
層のフレーム分の等価せん断ばね定数の計算に反映される。
・「免震部材変形倍率」は保有水平耐力時に想定する変形を一次設計用応力解析で想
定した水平変形に対する倍率で指定する。免震要素そのものは保有水平耐力解析時
も弾性要素として扱われる。
・「降伏後の接線剛性低下率」は支点の鉛直バネ(下項)以外の全ての弾塑性特性に
ついて降伏後の最終剛性を指定する。この指定は保有水平耐力解析だけではなく、
非線形(NL)解析全般に有効である。
・「降伏後の接線剛性低下率(支点)
」は支点の鉛直バネについて上項とは独立に降伏
後の最終剛性を指定する。浮き上がりをモデル化するときは浮き上がり量が大きい
ため剛性低下率を微小に設定しないと浮き上がり後も鉛直反力の増加が生じる。こ
の指定は保有水平耐力解析だけではなく、非線形(NL)解析全般に有効である。
次頁あり
C-3.5.5(3)-5
第 3 章 モデリングフェーズの操作
テーブル
・初期応力テーブルは初期応力となる解析ケースの係数を指定する。
・増分荷重テーブルは荷重の方向も考慮して解析ケースの係数を設定する。
・「基礎支点を拘束する」指定は、保有耐力増分解析において、基礎(独立フーチン
グ基礎、べた基礎、杭基礎)が配置された格子点(以下、基礎支点)の、解放指定
を除くZ方向支持条件に関して、強制的に拘束する(Z方向以外は個別の支持条件に
よる)。また、本指定におけるZ方向拘束の手法は、基礎支点に硬いばね(1.0×107
kN/cm)を設定する。
・
「初期応力に基礎架構応力(水圧以外)を考慮する」 ->[初期(水圧外)]
増分解析の初期応力に基礎架構解析の長期荷重に対する解析結果を考慮する。
「増分荷重に基礎架構荷重を考慮する」 ->[増分荷重]
増分解析の増分荷重に基礎架構解析で地震荷重として定義した荷重を加える。
基礎架構の荷重は、周辺部材のヒンジ状態によらず弾性解析時の比率で荷重増分
するので、注意する。
基礎梁の応力の扱いについては下表と次頁を参照のこと。
基礎形式
ベタ基礎
杭基礎
応力の種類
床荷重による初期応力
長期接地圧による初期応力
水圧による初期応力
増分支点反力による不等沈下
増分応力
地震等増分接地圧による増分
応力
床荷重による初期応力
水圧による初期応力
長期支点反力による杭の偏心
応力
増分支点反力による不等沈下
増分応力
増分軸力による杭の偏心増分
応力
杭頭増分応力による増分応力
指定
注意点
-
必ず考慮される
初期(水圧外) 指定により考慮する
HW>0
指定により考慮する(Def=0 注意)
-
増分荷重
-
HW>0
支点バネで考慮される
指定により考慮する
必ず考慮される
指定により考慮する(Def=0 注意)
初期(水圧外) 指定により考慮する
-
増分荷重
支点バネで考慮される
指定により考慮する
増分解析の軸力変動とは整合しない
指定により考慮する
杭、地盤の塑性化は考慮されない
靭性保証型設計検討の実行のための設定に関しては操作編3.9.5 一貫計算の2、3ペー
ジを参照されたい。
Link
C-3.5.5(3)-6
第 3 章 モデリングフェーズの操作
*基礎梁応力の扱いについて
基礎梁の応力は保有水平耐力の計算で下図のように扱われる。
ベタ基礎
杭基礎
指定
上部弾性解析
PG
PG
R=100
R=100
基礎梁架構水圧解析
上部非線形 解析
引き抜き
抵抗
HW
R=-20
R=100-20=80
+
R=100
HW
R=-20
接地圧計算*
杭偏心曲げ計算*
基礎梁架構解析*
PG
R=20
PG
+
MAX
一次設計
HW
引き抜き
抵抗
PG
+
R=100
HW
R=-20
F=R=100
接
R=100-20=80
R=100
偏心
PG
+
HW
保有水平耐力計算
PG
R=100
接
F=100
+
偏心
+
HW
増分荷重
R=100
増接
偏心考慮
R=100
R=100
R=-20
R=100-20=80
R=100
+
P,G=1
HW=1
F=R=100
偏心
接
PG
初期応力
R=20
R=100-20=80
PG
初期応力
HW
HW=1
HW=0
R=100
R=100
水圧以外
HW=1
R=-20
杭頭
基礎荷重
* 接地圧計算、杭の(長期)偏心曲げ応力計算及びそれらを使った基礎梁架構解析では、上部非
線形(NL)解析を実行していても、常に上部弾性解析結果がベースになる。
C-3.5.5(3)-7
第 3 章 モデリングフェーズの操作
3.5.5 (3) 保有耐力
画面名:保有耐力プロパティ
タブ名:詳細(U1・U2)
メニュー :編集-建物共通-保有耐力
画面イメージ
フェーズ:モデリング
分
類:プロパティシート
ボ タ ン:
HP508
説明
Link
・U1、U2 ケースが対象となる。
・荷重増分、変位増分の列は増分解析のためのデータである。
Fe、Fs、Ds の列は必要保有水平耐力の計算時に、これらに直接入力値を用いるとき
に指定する。
・保有耐力ページでチェックされたケースのみ入力可となる。
・保有耐力ページで荷重分布形が「一次設計地震力」
「必要保有耐力」の場合は、荷重
増分の列は「補正係数」が入力可となる。
「直接入力」の場合は「直接入力」が入力
可となる。直接入力する場合は層せん断力を入力する。
・保有耐力ページで精算法の変位分布形が「一次設計地震時変位」の場合は、変位増
分の列は「補正係数」が入力可となる。
「直接入力」の場合は「直接入力」が入力可となる。絶対変位を指定する。
・Fe、Fs、Ds を直接入力する場合はチェックして入力する。
・解析結果は第1ステップ、保有水平耐力ステップの周辺、解析終了ステップが保存
される。それ以外に保存したいとき、保存したいステップ番号を指定する。
データベースが大きくなるので必要最小限とすること。
理論編:3.1.2 荷重ケースの取り扱い
7.1.1 増分解析の基本事項
7.1.2 増分解析の解析制御方法
C-3.5.5(3)-8
第 3 章 モデリングフェーズの操作
3.5.5 (3) 保有耐力
画面名:保有耐力プロパティ
タブ名:詳細(U3・U4)
メニュー :編集-建物共通-保有耐力
画面イメージ
フェーズ:モデリング
分
類:プロパティシート
ボ タ ン:
HP507
説明
Link
・U3、U4 ケースが対象となる。
・荷重増分、変位増分の列は増分解析のためのデータである。
Fe、Fs、Ds の列は必要保有水平耐力の計算時に、これらに直接入力値を用いるとき
に指定する。
・保有耐力ページでチェックされたケースのみ入力可となる。
・保有耐力ページで荷重分布形が「一次設計地震力」
「必要保有耐力」の場合は、荷重
増分の列は「補正係数」が入力可となる。
「直接入力」の場合は「直接入力」が入力
可となる。直接入力する場合は層せん断力を入力する。
・保有耐力ページで精算法の変位分布形が「一次設計地震時変位」の場合は、変位増
分の列は「補正係数」が入力可となる。
「直接入力」の場合は「直接入力」が入力可となる。絶対変位を指定する。
・Fe、Fs、Ds を直接入力する場合はチェックして入力する。
・解析結果は第1ステップ、保有水平耐力ステップの周辺、解析終了ステップが保存
される。それ以外に保存したいとき、保存したいステップ番号を指定する。
データベースが大きくなるので必要最小限とすること。
理論編:7.4.7 Fes・Ds値
C-3.5.5(3)-9