スが変わる ─ ITが促進する働き方とコミュニケーションの変革 社内連携を促すフリーアドレス席やチームワークに適した 社内会議室、リフレッシュコーナーを配置したオフィスゾーン。 チームの強いつながりを生み、経営と現場、社員同士の 積極的な対話を促す レセプションや来客用会議室から構成される コミュニティゾーン。 香りや音、光などを演出し、ステークホルダーに 企業イメージを伝える 少子化の進展に伴う生産年齢人口の減少や市場のグ ローバル化などを背景として、今、日本企業では女性 や高齢者、外国人など多様な人材の活用が求められて いる。さまざまな属性をもつ社員が能力を発揮して活 躍できる環境を整えるためには、柔軟性のある多様な 働き方を認め、推進していくことが重要となる。従来 のように﹁働く場所﹂と﹁働く時間﹂を画一的にした り、業務にフルコミットする正社員と部分的に関わる 非正規社員に二分して考えるのではなく、場所や時間 にとらわれないさまざまな働き方を可能とする制度や 仕組みが必要だ。 政府も雇用形態の多様化とワークライフバランスの 実現に本腰を入れて取り組んでおり、2020年まで にテレワーク導入企業数を2012年度の3倍にする な ど の 目 標 を 掲 げ て い る。 テ レ ワ ー ク は 就 業 形 態 に よって、企業に勤務する被雇用者が行う雇用型、個人 事業者が行う自営型︵SOHOなど︶に大きく分かれ、 働く場所によって、在宅勤務、モバイルワーク、施設 利用型ワーク︵サテライトオフィス勤務やコワーキン グスペース利用など︶に分類される。また、労働時間 の柔軟性を高めたフレックスタイム制や裁量労働制の 導入も拡大しつつある。こうした動きに合わせて、こ れまでオフィスに集約されていた機能を整理したり、 業務に応じて自宅や外部オフィスに分散するなどの動 きが見られる。 ICT こうした新しい働き方の実現を支えているのが の進展やスマートデバイスの登場だ。在宅勤務やモバ イルワークなどの働く場所にとらわれない勤務形態は、 データを端末に残さず高い機密性を保つ仮想デスクトッ プなどのセキュアなシステムが確立したことで導入しや すくなった。また、スマートフォンなどの私有デバイ おり、移動時間を有効活用するなど時間や場所にとら スを業務に利用するBYODを採用する企業も増えて われない、効率的な働き方が可能となりつつある。 一方、働き方が多様になることで、これまで同じ場 取材・文/梅田正隆、編集部 写真/栗原 剛 撮影協力/コクヨファニチャー 霞が関ライブオフィス 2 所に集まることで保たれていた社員同士のコミュニ ケ ー シ ョ ン が 希 薄 に な る 可 能 性 が あ る。 先 進 企 業 で は、社内コミュニケーションを維持し、より密なもの へと発展させるようなさまざまな取り組みが行われ ている。社内SNSやチャットなど、複数の社員がカ ジュアルに対話できるツールの導入はその一例だ。ま た、遠隔地の事業所や社外で業務を行う社員とスムー ズなコミュニケーションを行うために、インターネッ トやメール、電話、テレビ会議システムなどさまざま な通信サービスを統合的かつ効率的に運用するユニ ファイドコミュニケーション基盤の整備に関心が高 まっている。さらに、高画質・高音質なテレビ会議シ ステムや、ドキュメントやアプリケーションの共有が 可能なWeb会議システムの導入など、多拠点を接続 した双方向コミュニケーションが拡大しつつある。こ れには、大容量のデータを高速で送受信できるブロー ドバンドが普及拡大し、日本のどこにいても高速通信 が可能な環境が整ったという背景もある。 このように、さまざまなツールを利用してコミュニ ケーションの活性化を促進することができれば、さら なる働き方の変革や、それを促すオフィスの新しいあ り方が追求できるだろう。たとえば、社内の交流を促 しイノベーションを生む土壌を作るために多数の企業 で実施されているフリーアドレス制は、社員の在席状 況や座席位置を管理・共有できるシステムや座席を抽 選で決めるツールを導入することで、制度の円滑な運 用 が 可 能 と な っ て い る。 ま た、 テ レ ビ 会 議 の 普 及 に よって、遠隔地の人と映像・音声を通じたリアルタイ ムのコミュニケーションが可能となったことで、サテ ライトオフィスの開設や、業務に応じたオフィス機能 の再構成を積極的に進める企業も現れている。 今回の特集では、働き方の多様化と、それに伴う社 内コミュニケーションの変化を概観し、これらの動き を支援し促進するIT利活用の現状を、先行企業の事 例を通して紹介する。 N av i s 0 2 5 – D e c 2 0 1 4 3 オフィスが変わる、ビジネスが 特集 ワークライフバランスの実現やダイバーシティの推進に向けて、柔軟な働き方の導入が進みつつある。 多様な人材の活躍を促し、イノベーション創出につなげるには、コミュニケーションのあり方や オフィスにも変化が求められる。 進化するITが支え促進する、働き方と社内コミュニケーションの変化を考察する。 プロジェクト内外の人が集まり、新しいアイデアを 具体的な形にするコワーキングゾーン
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