2014/12/9 ? Shinichi Kanazono, DVM, DACVIM (Neurology) Saitama Animal Medical Center Synergy Animal General Hospital 「痙攣患者がきたんだけど…」 「どんな痙攣ですか?」 「痙攣は痙攣だよ。」 「…」 埼玉動物医療セン ター 失神 急性前庭疾患 振戦 疼痛 ナルコレプシー・カタプレキシー 行動異常 睡眠中の不随意運動 その他の虚脱:重症筋無力症、運動誘発性虚 脱(ラブラドール)、paroxismal dyskinesia, etc. 不随意運動: 強直性→間代性 いつ起こる? 休息時 持続時間? < 運動性? 通常(+) 自律神経系症状? 通常(+) 2分間 自律神経性症状 意識障害 1 2014/12/9 Lewis et al._2008_Compendium;23:612 家族にとって、非常にショッキング 多くは夜間に発生 緊急扱い 安全第一! : 大脳皮質内における一時的な神経 細胞の異常かつ集合的な活動 全ての大脳疾患 › 神経伝達:興奮性>抑制性 臨床症状が決め手 痙攣 脳波に異常 てんかん: 脳原発性の反復的な痙攣発作 (原因疾患は問わず) 反応性(Reactive) – 頭蓋腔外に原因 › 毒物、代謝性、栄養性 反応性(Reactive) – 頭蓋腔外に原因 › 毒物、代謝性 器質性(Structural) 10-20% – 頭蓋腔内の疾患 › 脳炎、腫瘍、外傷、梗塞等 2 2014/12/9 反応性(Reactive) – 頭蓋腔外に原因 › 毒物、代謝性 器質性(Structural) – 頭蓋腔内の疾患 › 腫瘍、脳炎、外傷、梗塞等 全身性 局所性: › 意識状態の変化 › 全身性への波及 原因不明 (Unknown) – 遺伝性? ー 器質 機能異常? 大脳皮質全体に及ぶ オーラ(前兆) 2. けいれん発作 3. 発作後異常 1. 間代性強直性発作(grand 小発作性(petit mal) mal) › “Absent seizure” › 外界とのつながりが遮断 › 犬では報告1例 Poma_2010_Epileptic Disord 発作前の感覚異常 → 行動の異常 脳波:けいれんでは無い 数分~数時間 不安感 -異常行動 意識の消失 四肢&頭頚部の硬直 (tonic phase) phase) 自律神経系症状(排尿、排便、流涎) 通常2分以内 パドリング(clonic 3 2014/12/9 意識レベルの異常 › 数時間~数日 盲目(一時的) ふらつき、歩行異常 落ち着き無い、食欲増進 顔面、前肢 › Jacksonian march › 片側性 › 片側運動野から始まる Courtesy Dr. Dennis O’Brien 全身性へ移行? 猫に多い 稀に攻撃的に › 後肢のみ:非常に稀 局所性発作 ≠ 局所的異常 UEの42% (Podell 1995) ラブラドール:70% UE:87%が全身化 (Berendt 2004) シグナルメント ヒストリー Courtesy of Dr. Susan Cochrane フィンランドスピッツ › 局所性発作 › 36%脳全体に痙攣波形 Viitmaa_2006_JVIM › MRI異常無し › ビデオに録画! 身体検査 神経学的検査 (発作以外の時) › 通常は正常 › 非対称性 → 大脳内の器質的異常 96頭の犬 CBC、血液生化学、尿検査 回顧的研究 肝機能検査(胆汁酸/NH3)、甲状腺機能 レントゲン? 血圧測定 毒物? その他特殊検査(インスリン値、アミノ酸測定、 代謝機能検査) 毒物摂取 低血糖 Bauer_2011_Vet J 4 2014/12/9 どうやら、大脳以外は異常なし… Bauer_2011_Vet J 正常時にも神経学的検査で異常 › 非対称性:姿勢・行動、プロプリオセプション さて、どうする? 脳内器質的異常 5ヶ月齢 雌 ロットワイラー 4ヶ月齡より痙攣発作 痙攣時以外は正常 フェノバルビタールに反応乏しい 血液・尿検査:正常 どうする?? › 経済的制約あり 5 2014/12/9 原因不明てんかん:多くは6ヶ月齢以降 6ヶ月齢未満 – 先天性異常、代謝性異常 発症年齢! › < 6ヶ月齢 › 6 ヶ月齢~5歳齢 › > 5 歳齢 ヒストリー その他の症状 原因不明: 神経学的検査 › 発作時以外の異常 › 非対称性 Syndromic › 双子の特発性てんかん:>70% 2人共発症 epilepsy Courtesy of Dr. Joan Coates 新生子大脳症(スタンダードプードル) ライソゾーム蓄積病 等 Organic aciduria 発症年齢:1-5歳齢 機能的障害 遺伝性? Kathmann_1999 Patterson_2005 発生率:0.5-1% › 糖尿病: 0.2% 変性性脊髄症 0.19% >90% 純血種 ブリーダーの関心 #2 脳内器質的病変 大脳の機能的異常 › イオンチャネルの機能異常? 徐々に頻度を増すことが多い 脳腫瘍 脳炎 脳梗塞(虚血性 80%, 出血 性 20%)、外傷 発作時以外は正常! 何故けいれん? › 詳細なメカニズムは不明(多岐に渡る) 6 2014/12/9 Daisy 13歳 大脳の機能的異常 FS ラブラドールレトリバー 1ヶ月前から痙攣が始まった。 獣医さんで癲癇の薬を頂いた “痴呆”症状も始まった。 発作時以外は正常 発症:1-5歳齢 MRI、脳脊髄髄液など:正常 画像診断の落とし穴… 獣医さんで痴呆犬用のご飯を頂いた VRU1999;40:588-595. 側頭葉、梨状葉、帯状回など 両側性>片側性 多くは一過性 T2高信号、T1低信号 › 浮腫、壊死、反応性グリオーシス グルタミン酸の蓄積:神経細胞壊死 原因疾患の特定&治療 “Epileptic encephalopathy” 治療目標 ≠ 痙攣の完全治癒 けいれん自体が大脳にダメージ 治療目標 抗けいれん薬(対症療法) › 2000年以上の歴史 「メリット & デメリット」のバランス › 理想薬は存在しない 60%の家族がストレス › 飼い主のQOL低下 7 2014/12/9 特発性てんかん 完全にけいれん消失:<30% 25-30%: 難治性てんかん 生存期間の短縮 けいれんの頻度 (>12週毎) 群発性発作 JVIM 2007;21:754-759. てんかん重積 家族の意向: 投薬続けられる?? 原因疾患 多くの紹介症例は“ネット調査”済み › その多くが不適切/根拠無し 1つの薬 が理想的 定期検診! › 用量調節は血中濃度を基に。 一度始めたら生涯続ける 治療費用、副作用の提示 特発性てんかん › 2年以上けいれん無し? 症候性てんかん › 6ヶ月以上けいれん無し??? 時間をかけて漸減 › 再発:管理がより困難になる危険性… 8 2014/12/9 フェノバルビタール 臭化カリウム ゾニサミド ケプラ フェルバメート クロナゼパム(猫) トピラメイト ガバペンチン/プレガバリン? 2.5mg/kg bidで開始 血中半減期:D 24-80hr / C 80hr 定常期:10-14日 → CBC & 血中濃度 血中濃度: 15-35μ g/mL 定期検診(6-12ヵ月毎) バルビツール系:GABAA作動薬 1日2回投薬、長い歴史 鎮静、ふらつき、多飲多尿 肝毒性 血液生化学、内分泌検査への影響 CYP P450の誘導 › 耐性獲得、他の薬剤代謝に影響 › PB自身の代謝も促進 鎮静、不全麻痺(最初の2−3週間) PU/PD/PP 肝毒性 Superficial Necrotic Dermatitis › アミノ酸代謝異常 (March_2004_JVIM) 骨髄障害 (遅延型アレルギー) T4, fT4値低下、TSH上昇 (肝代謝、5’-deiodinase 活性低下) 猫:1-3 mg/kg bid, 10-20µg/ml › 反応率93% › 肝毒性報告なし 塩素イオンと身体が勘違い… “試薬”扱い (Finnerty_2014_JAVMA) (致死性)肺炎症 (猫) › 内因性脂質性肺炎 Bertolani_2012_JFMS 人間には有害 › 経皮吸収 肝臓で代謝されない 腎排泄 “塩分”-胃腸刺激性 鎮静、多飲多尿、ふらつき(UMN&LMN)、胃 腸刺激性、膵炎 “ブロマイド中毒” JAVMA 221:1131-1135. JAVMA 234:1425-1431. › 意識低下、散瞳、不全麻痺、嚥下困難、巨大食 道症etc. 9 2014/12/9 Boothe et al. 2012 30-40mg/kg sidで開始 食餌の塩分を一定に! 血中半減期:20-25日 安定化:3ヶ月 (血中濃度測定) 6-12ヵ月毎に濃度測定? › 血中濃度:1-3mg/ml IE (n=46), 二重盲検、ランダマイズド 評価期間 6ヶ月間 反応率: PB (n=21) 88% vs. KBr (n=25) 49% 痙攣が消滅:PB 85% vs. KBr 52% ブロマイド中毒:生理食塩水の点滴 › けいれんの悪化に注意 サルファ系 –アレルギー反応、副作用 T-Caチャネル、Naチャネル阻害 血中半減期:15-20時間 人間: 70%肝代謝(CYP450) 5-10mg/kg q12h 安全性高い:鎮静、食欲低下、ふらつき 猫:胃腸系 副作用(50%) Hasegawa et al._2008. › 2mg/kg PO bidが良いかも 犬:群発性発作の重症例 › Clorazepate › 0.5-2mg/kg q8-12h for 3-4 days › 長期間使用しない!! 機能的耐性 › メンドン7.5mgカプセル (Frey_1984_Eur J Pharmacol) 犬:耐性獲得、短い半減期 猫:犬より長い半減期、急性肝壊死 ジアゼパム/ミダゾラム:群発性発作、重積 › IV、CRI、IR (diazepam only)、IN クロナゼパム:猫の長期的管理 0.06mg/kg q8-12hrs GABA作用薬? 失敗… 抗けいれん作用? Vet Rec 2006;159:881-4. 6/11頭の犬で反応 Aus V J_2005;83:602-8. 41%で効果 神経細胞のシナプス新形成(sprouting)を阻止 Eroglu_2009_Cell 猫:長期的管理にも使用可 › Clonazepam › ランドセン/リボトリール 鎮痛作用 プレガバリン:9/11頭で反応(3ヶ月間) Dewey_2009_JAVMA 10 2014/12/9 “ケプラ” GABA作用、Naチャネル阻害、NMDA受容体 シナプス前終末 SVA2 タンパク質に結合 神経伝達物質の放出を抑制 20-30mg/kg q8h 66%腎排泄、24%血中加水分解 他の薬剤との相互作用無し 非常に安全 阻害 肝代謝 CYP450 › 若い動物で代謝率上昇 鎮静 無し 無形成性貧血、肝毒性 25-100 mg/L (人間) (1-2週間後に測定) 新しい投薬開始 一時的に高い効果 4‐8ヵ月後(ケプラ)に痙攣悪化 › 人間:102/519が3ヶ月で悪化 その他の抗痙攣薬でも報告 The Vet J 176 (2008) 310–319 JSAP_2007_48_134-138 ハーブ療法:種類によっては有害 › エフェドリン、カフェイン › けいれんの閾値を変化 › 他の薬物代謝に影響 › けいれん誘発性物質 (エッセンシャルオイル) Epilepsy & Behavior 2:524-532 11 2014/12/9 ケトン食 2種類以上の薬剤の適切な使用に対する反 › ミトコンドリアのエネルギーバランス改善? › 子供のてんかんで効果が証明 必須脂肪酸:有意な効果認めず 応が乏しい(< 50% のけいれん軽減) 人間:22% NEJM 2011; 365:919-926 新薬で解決??? (Matthews_2011_Vet J) 非特異的なメカニズム? 様々なイオンチャネルの発現変化 › Drug Target failure Ephaptic connection, electrical coupling › 全く別の経路が形成、自己抗体 › 脳腫瘍、脳炎など 遺伝的要素 P-糖タンパク質の発現増加 › BBB; transportation failure Munana_2013_Top Comp An Med 迷走神経刺激 › シナプス伝達を変化させる:RAS? Limbic system? › 眼球圧迫法: 2/7頭 圧迫している間のみ › 人間:約1/3で>50%減少 › 反応するかしないか、予測が困難 ケトン食 › ミトコンドリアのエネルギーバランス改善? 5分以上のけいれん発作 意識が回復しないまま連続したけいれん 大脳への不可逆的ダメージ 緊急的治療 › 子供のてんかんで効果が証明 てんかん外科? 犬のQOL ≠ 人間のQOL › 脳梁切断 Sunaga_2009_Seizure 12 2014/12/9 損傷を受けやすい部位 海馬、扁桃体、視床、 小脳、大脳基底核 てんかん重積の初期 交感神経系の亢進 › 高血圧 › 頻脈 可逆的/不可逆的損傷 › 不整脈 › 高血糖 交感神経系の亢進:30分で終了 呼吸機能不全 低血圧 › 換気不全 自動調節能の破綻 › 肺水腫 › 誤嚥 大脳虚血状態 › 更なる大脳損傷 高体温 脳浮腫 アシドーシス ミオブロビン血尿 人間 難治性てんかん重積 = ベンゾジアゼピンと1つ の抗痙攣薬でも反応が無いもの 薬物学的昏睡で治療 心室性不整脈 呼吸機能不全 腎不全 死亡率 25-38% 人間:22% (3-40%) Hardy_2012_JVIM SEのうち23-44% 死亡率16-39% Rossetti_2011_Neurocrit Care 13 2014/12/9 てんかん患者:(3-)29%が重積を起こす 30分以内に大脳損傷 › そのうち59%は重積として発症 特発性(37%), 症候性 (40%), 反応性 (23%) 今すぐに治療開始! Zimmermann_2009_JVIM 原因疾患の治療+抗けいれん治療 0.1-0.5mg/kg/hr CRI 「痙攣無し」を6-12時間作り出す その後、同程度の時間をかけて漸減 第一選択薬!! 高い脂溶性 高い効果 比較的安全 › 溶剤 – プロピレングリコール 短時間作用(<60分) IV, 他の輸液と混ぜない! PR, IN, CRI その他の長時間作用型AEDも併用 Schwartz et al. 2012 0.2mg/kg IV, IM, PR 3-way クロスオーバー研究 IM: bioavailability 50±16% Tmax – 7.8±2.4分 PR: 検出されず 正常な犬で痙攣? › 非常に稀な副作用 呼吸補助の用意 IV: 0.25-1.0mg/kg bolus, CRI: 0.1-0.6mg/kg/min 痙攣が見えなくなるだけ? 14 2014/12/9 BBB通過が遅い:20-30分 狭い安全域 長時間作用 3mg/kg IV q1h PRN (合計16mg/kgまで) 既にPB内服:2-4mg/kg IV (↑ 2-4ug/ml) 猫:1-2mg/kg IV (4mg/kg) 鎮静、運動失調、不全麻痺 q8hに分割投与 二重盲検 Hardy_2012_JVIM ジアゼパム iv + ケプラ(2時間以内) 30-60 mg/kg iv 反応率 56% (vs. プラセボ10%) 脳波 › non-convulsive SE › 予後に違い? 総合的判断が必要(費用、予後) 効果:検証されていない… 2作動薬:エビデンスに乏しい NMDA受容体阻害薬(ケタミン) 19頭 非常に手間がかかる NaBr:静脈内投与可能 α › 脳内濃度は約1.5-2倍維持? 臨床症状に頼ることが多い Loading Dose:400-600mg/kg › 3-5日間かけて投与 胃粘膜刺激による嘔吐: 血中半減期:3-4時間 Smith_2011_Epilepsia › GABAA受容体の喪失 & NMDA受容体増加 › NMDA受容体:Caチャネル Excitotoxicity 緊急時用ジアゼパム Wagner_1998_J Vet Pharmacol Ther 1-2 mg/kg PR Papich_1995_AJVR 門脈を避け、直接体循環へ プラスチックに付着 明所を避ける › 臨床データに乏しい 家族の安全第一 › 過剰投与: NMDA阻害薬中毒 › 1頭のGME犬で報告 Serrano_2006_JVIM 救急病院へ $334 15 2014/12/9 坐薬 vs. iv Probst_2013_AJVR 長期間の飼い主との信頼関係 緊急時の指示 基本原則を守る! 血中濃度測定 坐薬: 120分後にようやく99ng/mL (治療域:150-300 ng/mL) › Diazepam, nordiazepam 坐薬は推奨できない 長期間投薬:費用、メリット vs. デメリット › 使い慣れた薬を第一選択に! › 薬理学を理解 定期的モニタリング! 16
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