-1- 諮問庁:国税庁長官 諮問日:平成15年3月24日(平成15年(行情

諮問庁:国税庁長官
諮問日:平成15年3月24日(平成15年(行情)諮問第148号)
答申日:平成16年2月13日(平成15年度(行情)答申第586号)
事件名:伊野税務署における所得税の還付金留保の件数が分かる文書の不開示決定(不
存在)に関する件
答申書
第1
審査会の結論
伊野税務署における平成14年7月31日(又は7月31日に最も近い日付)現
在の所得税の還付金留保の件数が分かるもの(以下「本件対象文書」という。
)につ
き,不存在を理由として不開示とした決定については,伊野税務署の平成14年4
月1日現在のKSKシステム分還付金留保一覧表及びイメージ処理分還付留保一覧
表を開示請求の対象として,改めて決定を行うべきである。
第2 審査請求人の主張の要旨
1 審査請求の趣旨
本件審査請求の趣旨は,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「 法」
という 。)3条の規定に基づく本件対象文書の開示請求に対し,平成14年9月24
日付け伊総第37号により伊野税務署長(以下「処分庁」という 。
)が行った不開示
決定(以下「原処分」という。)について,その取消しを求めるというものである。
2 審査請求の理由
開示請求書には,
「平成14年7月31日(もしくは7月31日に最も近い日付)」
と記入してあり,必ずしも7月31日に限定したものではない。7月31日に最も
近い日付で作成された文書をもって開示を行うことは可能なことである。それが例
え6月30日であれ,8月31日であれ,その日に作成された文書が最も7月31
日に近いものであれば例え7月31日現在についての文書が存在しなくても,代わ
るものとして開示ができるものと思われる。例えば,7月31日には0件であった
として文書が無くても7月30日には1件あり文書が存在したならば,7月30日
の1件に関する文書を開示するのが本来ではないか。
また,最も疑問に思うのは所得税の還付を留保しているものがないとは,何の文
書を確認した結果なのか。文書が存在しないのなら,留保されているものの確認が
とれないと回答するはずである。留保が存在しないことを確認した文書があるのは
明らかである。決裁がなされ処理済表示がされた整理票,処理年月日が記された還
付留保者名簿一覧,処理済みの記載がなされた未処理事案管理表など,すべてが処
理済であることを文書で示し留保件数が0件であることを示すことができるはずで
ある。
第3 諮問庁の説明の要旨
税務署では,所得税の不正還付等を防止するため,申告内容等から見て,不正の
疑いがあると認められる場合には,還付処理を留保して調査等を行っている。
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所得税の還付金を留保した場合,なるべく早期に調査を行い,又は必要な措置を
講じて留保を解除する必要があり,そのため,還付留保の処理事績を管理するため
の文書が作成される外,各税務署の必要に応じて還付留保の件数等についての記載
がある会議資料や国税局への報告文書が作成されている。
還付留保がある場合,具体的には,①申告内容等に問題があると認められる者で,
当該適否の確認を要する者(事後処理対象者)について,その適正な管理及び処理
のために個人別に作成される「事後処理等事績整理票兼決議書」(以下「整理票」と
いう。),②整理票とは別に留保者の処理事績を管理するため作成される「還付留保
者名簿 」,③所得税の還付金を留保している者の一覧表である「イメージ処理分及び
KSKシステム分還付留保一覧表」,
④毎月末の所得税の還付留保の件数等を把握し,
適正な管理及び処理のために,各税務署の必要に応じて作成される「未処理事案管
理表」,⑤必要に応じて臨時作成される会議資料や報告文書が作成されるものと考え
られる。
処分庁においては ,
「平成14年7月31日現在の所得税の還付留保の件数(0件)
が記載されている平成14年7月31日に最も近い日付の行政文書」であると本件
対象文書を特定し,該当する文書が存在しなかったため,「7月末現在において,所
得税の還付を留保しているものはなく,本件開示請求に係る行政文書を作成してい
ないため」,不開示決定を行ったものと認められる。
諮問庁においても,原処分の維持が妥当であるとして当審査会に諮問したところ
である。しかしながら,諮問庁においては,審査請求人の意見書等を踏まえ,再検
討を行ったところ,次のように考えるに至った。
すなわち,諮問庁は,補充理由説明書において,審査請求人は ,
「平成14年7月
31日現在の所得税の還付留保の件数(0件)が分かる平成14年7月31日に最
も近い日付の行政文書」の開示を求めているのか,「平成14年7月31日現在にお
いて,所得税の還付留保の件数が0件である場合には,平成14年7月31日に最
も近い日付において所得税の還付留保がある場合の当該件数の分かる文書」の開示
を求めているのか不明であるが,後者の趣旨であれば,当該開示請求日以前におい
て,処分庁において,KSKシステム分還付金留保一覧表及びイメージ処理分還付
留保一覧表を保有しており,個人情報等の不開示情報を不開示とした上で,一部開
示が可能である。
第4 調査審議の経過
当審査会は,本件諮問事件について,以下のとおり,調査審議を行った。
① 平成15年3月24日 諮問の受理
② 同日 諮問庁から理由説明書を収受
③ 同年4月17日 審査請求人から意見書を収受
④ 同年5月7日 審議
⑤ 同年9月4日 諮問庁から補充理由説明書を収受
⑥ 同年10月21日 審議
⑦ 同年11月4日 審査請求人から意見書を収受
⑧ 平成16年1月27日 審議
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⑨
同年2月9日 審議
第5 審査会の判断の理由
1 本件開示請求の対象文書について
本件開示請求は,「伊野税務署における平成14年7月31日(又は7月31日に
最も近い日付)現在の所得税の還付金留保の件数が分かるもの」を対象文書として
行われ ,処分庁は,7月末現在において,所得税の還付を留保しているものはなく,
請求に係る行政文書は保有していないことを理由に不開示決定を行った。諮問庁に
おいても,当審査会への諮問当初は,原処分を維持することが妥当であるとしてい
た。
これに対し,審査請求人は,当審査会あてに提出した意見書において,「開示請求
書には,平成14年7月31日(もしくは7月31日に最も近い日付)と記入して
あり,必ずしも7月31日に限定したものではない。7月31日に最も近い日付で
作成された文書をもって開示を行うことは可能なことである。」と主張した。
この点について,諮問庁は,当初 ,
「平成14年7月31日現在の所得税の還付留
保の件数(0件)が分かる平成14年7月31日に最も近い日付の行政文書」と理
解し,そのような文書は保有していないため不開示としたとしている。しかしなが
ら,諮問庁は,補充理由説明書において,審査請求人が意見書で述べた「平成14
年7月31日に最も近い日付において所得税の還付留保がある場合の当該件数の分
かる文書」であれば処分庁において保有しているKSKシステム分還付金留保一覧
表及びイメージ処理分還付留保一覧表のうち平成14年7月31日に最も近い日付
のものを本件対象文書として特定することが可能であるとしている。
そこで,本件開示請求の対象文書は何かについて,本件開示請求の文言を一般的
に解釈すれば,本件対象文書は7月31日又は7月31日に最も近い日現在におけ
る伊野税務署における所得税の還付金留保の件数が分かるものと解するのが相当で
ある。したがって,7月31日現在の所得税の還付金留保の件数が0件で本件開示
請求の対象文書を保有していないときには,7月31日に最も近い日現在における
所得税の還付金留保の件数が分かるものを本件開示請求の対象文書として決定すべ
きであったと認められる。
2 本件対象文書の存否について
諮問庁を通じ,処分庁が保有する平成14年4月1日現在のKSKシステム分還
付金留保一覧表及びイメージ処理分還付留保一覧表の一部の提示を受け,当審査会
において見分したところ,KSKシステム分還付金留保一覧表には,還付留保対象
者ごとに,留保金額,留保事由,留保開始年月日,留保解除年月日等が記載されて
おり,また,イメージ処理分還付留保一覧表には,還付留保対象者ごとに,還付さ
れる税金,異動年月日,還付留保事由等が記載されており,それぞれ,その出力年
月日から,その日現在の還付金留保の件数を把握することができ,平成14年4月
1日現在の所得税の還付金留保の件数が記載されているものと認められる。そして,
諮問庁は当該文書が平成14年7月31日に最も近いものであると説明することか
ら判断すると,当該文書は本件対象文書である「伊野税務署における平成14年7
月31日に最も近い日付現在の所得税の還付金留保の件数が分かるもの」と認めら
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れる。
したがって,伊野税務署における平成14年4月1日現在のKSKシステム分還
付金留保一覧表及びイメージ処理分還付留保一覧表を本件対象文書として改めて決
定を行うべきである。
3 本件不開示決定の妥当性について
以上のことから,本件対象文書について,伊野税務署の平成14年4月1日現在
のKSKシステム分還付金留保一覧表及びイメージ処理分還付留保一覧表を開示請
求の対象として,改めて決定を行うべきである。
第6 答申に関与した委員
藤井龍子,秋山幹男,松井茂記
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