ﾌﾟﾗﾝｸﾄｽﾘｯｸｽ糸状藍藻Planktothrixは暗いところがお好き？ｻｽﾍﾟﾝｻﾌﾟﾗﾝｸﾄｽﾘｯｸｽー水温・光環境に対するPlanktothrix suspensaの増殖特性ー任期付研究員博士(理学)中村剛也ﾌﾟﾗﾝｸﾄｽﾘｯｸｽ Planktothrixは、ユレモ目に属する糸状藍藻で、大量に増殖すると、CODの上昇だけではなく、水道水のカビ臭の原因になります。霞ヶ浦では、2006年以降の冬から初夏にかけて増殖しています。では、どうして増えてきたのでしょうか？ﾌﾟﾗﾝｸﾄｽﾘｯｸｽﾌﾟﾗﾝｸﾄｽﾘｯｸｽ Planktothrix は、暗所が好き？ Planktothrixってどんな生き物？ﾌﾟﾗﾝｸﾄｽﾘｯｸｽｻｽﾍﾟﾝｻﾌﾟﾗﾝｸﾄｽﾘｯｸｽ霞ヶ浦でよく出現するのは、Planktothrix suspensa と呼ばれるもので、円筒形の生物が、連結して、糸状になっています。生きたまま観察すると、ﾌﾟﾗﾝｸﾄｽﾘｯｸｽｻｽﾍﾟﾝｻ Planktothrix suspensa の光学顕微鏡写真左右に揺れるような動き • 細胞は円筒形をすることがあるため、 • 幅：2μm – 4μm • L/W比: 1以上彼らの仲間を「ユレモ • 色: 黄緑色, オリーブグリーン色、青緑色 (揺れる藻)」と呼びます。 Planktothrixは、深い所(暗い環境)が好きなのか? よく増えてくる2月にプランクトンの入った表層湖水を、ﾌﾟﾗﾝｸﾄｽﾘｯｸｽ培養すると、暗い条件ではPlanktothrixが、優占!! 透析膜で湖水を隔離 Planktothrix suspensaの蛍光顕微鏡写真アオコの原因になる藍藻との違い相対照度(%) 0.1 たる型の細胞がつながって糸状体(トリコーム)をつくっているのが良くわかる 10 100 ｻｽﾍﾟﾝｻﾌﾟﾗﾝｸﾄｽﾘｯｸｽ Planktothrix suspensa の特徴ﾌﾟﾗﾝｸﾄｽﾘｯｸｽ冬から初夏に増えること (水温４℃から25℃くらい) 深いところに分布 (深度3m以深) 90 植物プランクトン組成 (%) 1 ミクロキスティスミクロキスティス 1 緑藻など 100 0 深度 (m) 霞ヶ浦にいる藍藻は、アオコの原因となる Microcystisが挙げられます。 Microcystis は夏季に増殖し、表面に分布しますが、Planktothrixは、冬から春に増え、深い所に分布しています。弱光環境(深度3m) 光が十分な条件 2 3 その他の珪藻 80 アウラコセイラ 70 Aulacoseira (珪藻) 60 ニッチア Nitzschia (珪藻) 50 40 シネドラ 30 Synedra (珪藻) 20 その他の藍藻 10 0 PAR 培養前光が十分な光が弱い 4 ﾌﾟﾗﾝｸﾄｽﾘｯｸｽ条件条件培養7日目培養7日目 Planktothrix suspensa ｻｽﾍﾟﾝｻ水温と光環境の影響を確認するため、Planktothrix suspensa を単独で実験!! 速いﾌﾟﾗﾝｸﾄｽﾘｯｸｽ 0.8 Planktothrixが本当に低い水温が好きなら･･･ﾌﾟﾗﾝｸﾄｽﾘｯｸｽ 180 μmols m-2 sec-1 30 μmols m-2 sec-1 2 μmols m-2 sec-1 0.7 低水温に増殖速度のピーク結果は比増殖速度 (μ) 増えるスピード 0.6 Planktothrixが本当に暗いところが好きなら･･･明暗暗い環境で、最も増えるはず･･･ 0.5 比増殖速度 (μ) 0.4 0.3 結果は 0.2 0.1 実験した最大の水温に増殖速度のピーク 0 遅い 10 15 20 25 水温 (℃) まとめﾌﾟﾗﾝｸﾄｽﾘｯｸｽ Round 1 光が十分な環境 Synedra Planktothrix suspensa Synedra シネドラ和名ハリケイソウ Planktothrix suspensa ＶＳＬＯＳＥＷＩＮ Round 2 光が制限された環境霞ヶ浦にいる藍藻以外に珪藻や緑藻など、他の植物プランクトンが棲んでﾌﾟﾗﾝｸﾄｽﾘｯｸｽｻｽﾍﾟﾝｻいます。Planktothrix suspensaが増殖する時、霞ヶ浦では珪藻がいます。 Planktothrix suspensa Synedra ＷＩＮ 30 • 実験した最大の光環境に増殖速度のピーク • 20℃以下では光で変化しないＬＯＳＥｻｽﾍﾟﾝｻ Planktothrix suspensaも植物なので、増殖するには光が必要ですが、増殖速度が低いため、表層では、珪藻に負けてしまいます。一方で、光の量が少ない深い層では、珪藻の競争力が弱まります。ﾌﾟﾗﾝｸﾄｽﾘｯｸｽ増殖速度を維持できる Planktothrix ｻｽﾍﾟﾝｻ suspensaが競争に勝って、増えていることが分かりました。