水田・湿地における水質浄化 茨城大学農学部 水環境再生工学研究室 黒田久雄 1 富栄養化,地下水の硝酸態窒素汚染など, 栄養塩類を原因とした水質問題が起こっている. 主な原因は,過剰な施肥と不適切な畜産廃棄物である. 例えば,家畜から排出される全窒素量 76万トン* 肥料にすると 160 kg/ha分の肥料になる. 水田の標準施肥量を,100 kg/haとすると, 畑地には213 kg/haの窒素肥料があることになる. *原田靖生 畜産廃棄物による環境負荷 学際シンポジウム 農業・農村と環境 農林水産省・国土庁・環境庁・日本学術会議関係研究連絡委員会監修 養賢堂出版(1998) 2 窒素の形態別変化と除去方法 有機態窒素 NH4+ NH2OH NO2- NO3- 植生・沈殿・捕食 揮散 NH3↑(アルカリ条件下) N2O↑(O2不足条件) pH低下 酸性雨 温室効果ガス オゾン層破壊物質 脱窒 N2↑ 3 植生による浄化メカニズム 植物体 窒素吸収 分 解 窒素 低濃度 高濃度 持ち出し 水田・湿地等 4 沈殿による水質浄化 懸濁態物質 懸濁態物質の浄化は, 系外への持ち出しが重要である. 溶出 循環灌漑システムの活用で,懸濁態物質を上流域 系外への持ち出し へ戻す等の対策が今後必要とされる. 5 脱窒による窒素浄化 脱窒のメカニズム N2 還元状態 酸化状態 有機物 NOO32-N O2 脱窒菌 6 脱窒能力の要因 NO3-N濃度 R0 = a × NO3-N濃度 温度 a = 0.000011×T2+0.0055 R0:窒素除去量(g・m-2・d-1) a:除去係数(m/d) 滞留時間 R0 = qX0{1-exp(-a/q)} q:流入水量(m3/d)/湿地面積(m2) 有機物? R = F・P・R0 F:流れ状態による係数(0~1) P:植生の状態係数(1~4) 7 台地上 畑地 池 無 植 生 区 * 水 稲 区 * 雑 草 区 * 1.4m NO3-N 約20mg/l 25m * *:採水地点 調査地概要 8 窒素除去速度(g・m-2・day-1) 0.6 1雑草区 2水稲区 5無植生区 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 稲作期の窒素除去量 9 藻類発生 10 降水負荷 5 892 雑草区 -822 75 1,029 水稲区 -836 198 1,013 クレソン区 -883 135 1,918 クレソン流入負荷倍区 -882 1,041 1,028 無植生区 -832 201 Kg/ha 123日間 11 窒素浄化について 脱窒では,硝酸態窒素濃度が高い方が効率が大きい 発生源に近いほど浄化効率が大きい 濃度が低くなる下流域でも浄化は非効率 脱窒は主に浄化面積に依存している 広い面積が必要である 植生による除去能力差は大きくない 湛水だけでも効果がある 12 湿地を利用した窒素浄化の限界 1~2mg/lの窒素濃度が平衡濃度らしい. これより高濃度で窒素浄化が行われる. これより低濃度では, 汚濁しないようにする必要がある. 1~2mg/lより濃度を低下させたい場合は, 大量の希釈用水を利用するべきである. 13 発生負荷を減らす努力が最も重要なことである. ・畑地への肥料削減・施肥方法の改善 ・畜産廃棄物の農地還元削減→適切な処理 ・クリーニングクロップの利用 ・有機質肥料は多肥になりやすいので使用に注意 14 水田での窒素浄化は, 面源からの排出負荷に限るという認識が必要である. 15
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