パニック障害 - ハートクリニック

パニック障害
ハートクリニック 医師
坂本将俊
パニック障害とは??
突然、激しい不安に襲われ、
動悸、息切れ、めまいなどの発作が出現する疾患。
・「不安」の病気であり、人口の1-3%に見られる。
(男女差は1:3で女性に多い)
・20-30歳前後に多く、遺伝性も認める。
・発作は30分ほどで治まり、検査をしても異常が認められ
ない
なんで起こるの?
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過労やストレスで不安が増強され、発症する事が多い。
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脳内のノルアドレナリンが過剰になるためと考えられている。
ストレスに対し、ノルアドレナリン神経が異常興奮する事で、
防衛反応が過剰に働き、動悸や息切れなどが生じる。
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ノルアドレナリンの作用を抑えるセロトニンが不足する事も
関係していると言われている。
疲労などによって脳内に生じた乳酸が、セロトニンを
回収してしまうため、という見解もある。
診断
強い恐怖または不快を感じるはっきりと他と区別できる期間で、その時、
以下の症状のうち四つ以上が突然に発現し、10分以内にその頂点に達する。
1. 動悸、心悸亢進、または心拍数の増加
2. 発汗
3. 身震いまたは震え
4. 息切れ感または息苦しさ
5. 窒息感
6. 胸痛または胸部不快感
7. 嘔気または腹部の不快感
8. めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ
9. 現実感消失(現実でない感じ)、または離人症状(自分自身から離れている)
10.コントロールを失うことに対する、または気が狂うことに対する恐怖
11.死ぬことに対する恐怖
12.異常感覚
13.冷感または熱感
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電車やバス、車、エレベーター、人ごみなどの「すぐに逃げら
れない場所」で生じるもの(広場恐怖を伴うパニック障害)と
そうでないものがあります。
未治療の場合の経過
発作に恐怖、不安を感じながら生活を続ける。
次第に、「また発作が起こったらどうしよう」という、
発作が起こる事への恐怖(予期不安)が強くなっていき、
それが更に発作を誘発する。
↓↓
次第に発作を起こす場面を避けるようになり(回避行動)、
「電車に乗れない」「会社にいけない」「会議に出れない」
などの社会性の低下を生じる。
↓↓
不安が様々な事に波及していき、全般性不安障害や
うつ病を合併する事もある。
治療
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パニック障害は治ります!
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お薬と精神療法が治療の柱になります。
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治療後、3-6ヶ月で症状は落ち着きます。
その後は再発予防のため、1-2年内服を続け、
慎重に減量中止していく事が推奨されています。
薬物療法
SSRI(選択的セロトニン再取込阻害剤)が第一選択となります。
脳内のセロトニン濃度を増やし、不安を和らげます。
SSRIは効果が出るまで約2週間前後かかるため、即効性のある
抗不安薬(ベンゾジアゼピン系など)を併用する事もあります。
ベンゾジアゼピンはGABA受容体に作用する事で、不安、興奮を抑えてくれます。
即効性があり、すぐに不安を取ってくれるので患者さんには喜ばれますが、
長期の内服は依存につながるため、あくまでも急性期の一時的な使用に留めるのが理想です。
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取込阻害薬)や
NaSSA(ノルアドレナリン・セロトニン作動性抗うつ薬)、
3環系抗うつ薬も使われます。
薬物療法で知っておいてほしい事
パニック障害は「不安」から生じる疾患ですから、特に治療初期は
「不安を出来る限り消す事」が大切になります。
不安を完全に消すためには、
一時的に多くのお薬を使う事もあります。
薬がどんどん増える事で心配になるかもしれませんが、
しっかりと発作を予防し、不安を取り去る事で、早くお薬を
止める事が可能になります。
ですから、必要なお薬はしっかり飲みましょう。
反対に中途半端な量しか飲まないと、かえって
病気を長引かせます。
お薬以外の治療法 -認知行動療法(CBT)-
私達は、ある出来事があった時に瞬間的にうかぶ考えやイメージ
(自動思考)があり、それによって「感情」が生じ、「行動」します。
この「自動思考」をパニック発作や不安が起こらないように改善して
いくのがCBTです。
即効性はありませんが、再発を抑えるのに非常に有効な治療法です。
お薬以外の治療法
-暴露反応妨害法-
敢えて不安場面に入り、それに耐える事で改善をはかる治療法。
しかし、無理をすると不安・恐怖がより悪化するため、
症状がある程度改善してからが望ましく、
無理をせず徐々に負荷を上げていく事が大切である。
1.不安場面を挙げ、それぞれ不安の程度を数値化(1~10)、
数字の高いものから順に並べた一覧表を作る(不安階層表)。
2.表の不安の程度の軽いものから始め、成功したらその上へと、
少しずつ程度を上げていく。
例)通勤電車に恐怖を感じている場合
まずは空いている時間帯の各駅停車から始め、1駅先を目標にする。
それでも不安なら、最初は抗不安薬も飲みながら始める
慣れてきたら、駅の間隔を延ばしていき、徐々に抗不安薬の量も
少なくする。更に慣れてきたら、快速、特急にもチャレンジ!
家族の接し方
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「理解しよう」という姿勢が大切
「そんなのは甘えだ」「気の持ちようだ」という言葉はNGです。
パニック障害が「気持ちの問題」ではなく、
脳内物質(セロトニン等)のバランスの異常なのです。
否定せず、「それはつらいよね」と共感してあげる
事が大切です。
「分かってもらえた!」と感じると不安は和らぎます。
あなたにも経験はありませんか?
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無理に活動させる必要はありませんが、規則正しい
生活だけは維持させましょう。
睡眠不足や二日酔い、風邪などの身体疾患は
発作を誘発します
家族の接し方2
○不安をなるべく軽くしてあげる事が大切。
特に、家庭内環境を穏やかにする事は精神疾患の患者様の
予後を良くすると言われています。
○発作が起こった時は冷静に。安心させてあげる事。
・発作は10分ほどでピークに達し、30分ほどで治まります。
パニック発作で死んだ人は今までいません。
・発作が起こっても慌ててはいけません。
ご家族が一緒に慌ててしまうと患者さんは更に不安になります。
「発作は必ず落ち着くから大丈夫だよ」
と伝え、そばに寄り添い、安心させてあげましょう。
○パニック障害が遷延すると二次的に「うつ」を合併します。
「うつ」の徴候があれば、すぐに主治医に伝えて下さい。
○お薬を本人、家族の判断で中止しないで下さい。
よくある疑問
診察を受けるたびに薬が増えていくんだけど・・・??
よくある疑問
発作や症状は落ち着いたのに薬は一向に終わらない。
どれくらいの期間、治療は続けないといけないの??
よくある疑問
長くお薬を飲んだら、依存になりませんか?
よくある疑問
お薬を始めてから、一日中眠ってばかりいるんですが・・・
よくある疑問
・風邪薬や、他の病院で処方されている薬なんかと
一緒に飲んでも大丈夫ですか??
よくある疑問
妊娠、授乳中に内服しても問題ないでしょうか?
発作を誘発しやすいもの
・不安を感じやすい環境
(いつもゴミゴミ、ザワザワしている家やケンカの絶えない家
はダメ!)
・コーヒーに含まれるカフェインは発作を誘発しやすいと言わ
れています。
・体がストレスを受けている時は、発作が起きやすいです。
(疲れている時、風邪をひいている時など)
・お酒やアルコールも発作を起こしやすくすると言われています。
・炭酸ガスの吸入は発作を誘発すると言われています
(炭酸飲料はあまり良くないかも??)
ご清聴ありがとうございました。