研削加工における水漏れによる弊害 - DISCO Corporation

PS Company
Precision Diamond Planning Dept.
研削加工における水漏れによる弊害 ―グラィンディング加工での水漏れ―
―グラィンディング加工での水漏れ―
平面研削加工では、ホイールの性能を最大限に引き出すため、加工点への研削水の供給に
特に注意を払わなければなりません。今回は、研削水不足の要因の一つである『ホイール
マウント面とホイールの接合面からの水漏れ』をテーマとして紹介させていただきます。
水漏れとは?
ホイールマウント面とホイールの接合面に隙間があることで研
ここでは、グラインディング加工において研削水が漏れるメカ
削水が漏れてしまうことを指します。隙間ができる原因として
ニズムを説明します。
は、ホイールマウント面に乾燥したコンタミがある・ホイールマ
ウント面に傷がある等が考えられます。
グラインダーの研削水供給構造
ディスコのグラインダーにおける研削水供給構造は、研削水が
ホイールマウントの研削水供給口の直下には、ホイールの研削
スピンドル内部を経由し、ホイールマウント部よりホイールに
水取り込み溝が配置されています。(Fig.2) 研削水は、この取
供給する方式を採用しております。(Fig. 1)
り込み溝を介しホイールに形成された12カ所の供給口から放
出されます。(Fig.3)
ホイール 水
マウント
回転方向
ホイール
取り込み溝
砥石部
供給口
ウェーハ
Fig. 2 ホイールマウント・ホイール部断面図
Fig. 1 グラインダーZ軸部
Fig. 3 ホイール裏面
2001 / THE CUTTING EDGE No.4-1
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DISCO CORPORATION
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2001/ No.
Technical Newsletter
研削加工における水漏れによる弊害
水漏れのメカニズム
研削水を加工点に無駄なく供給するには、ホイールマウントと
ホイール 水
マウント
ホイールとの接合面に隙間が無いように取り付けなければな
ホイール 水
マウント
りません。仮に、接合面に隙間があると研削水が漏れてしまい、
流量不足を引き起こし、加工点に十分な研削水が供給されな
ホイール
くなります。
(Fig. 4)
水漏れ発生
ホイール
水量の低下
ウェーハ
ウェーハ
正常な状態
水漏れ状態
Fig. 4 グラインディングホイールの水漏れメカニズム
Photo. 1、2は、接合面に隙間がある状態で取り付けられたホイールが水漏れを起こしている写真です。
水漏れ
正常な状態
接合部からの
研削水漏れ
水漏れ
水漏れ状態
正常な状態
Photo. 1 ホイールマウント端面からの水漏れ
水漏れ状態
Photo. 2 スピンドル回転時の研削水拳動
機械が新品である場合、仮に隙間が存在しても研削に影響を
また、
ホイール交換する際そのような状態で無理に締め込むと、
与えるほどの流量不足には陥らないかもしれませんが、一旦
ホイールマウント面に傷を付け、拭き取るだけでは除去できな
隙間があると、そこに入り込んだコンタミが乾燥し、徐々に積
い凹凸ができてしまう場合があります。
層されていく可能性が高くなります。
研削水の重要性
ここでは、研削加工を行う上で研削水の重要性について説明します。
研削水の効果
ダイヤモンド等の超砥粒を用いる研削加工では、加工点の冷
従って、安定した加工品質を維持するために、加工時に発生す
却効率が研削性能に大きな影響を与えます。
る熱をいかに効率的に冷やすかが重要となります。
ダイヤモンドは、地球上で最も硬い物質ですが、同時に熱に弱
また、研削水は加工点の冷却と同時に、コンタミ
(研削粉)の排
いという性質も持ちあわせています。一般にダイヤモンドは、
出を促す効果もあります。研削水が充分に供給されないと目
空気中で600°
以上の熱が加わると酸化してしまい、硬度(切削
詰まりを起こし(Photo. 4)研削力を低下させたり、加工ワー
力)を失ってしまいます。
クの汚れなどの問題を引き起こす要因となります。
研削水
の効果
研削熱の抑制
コンタミの排出
Fig. 5 研削水の効果
Photo. 3 正常な砥石表面
Photo. 4 目詰まりを起こした砥石表面
2001 / THE CUTTING EDGE No.4-2
研削加工における水漏れによる弊害
研削水不足による影響例
使用するホイールの仕様によって若干異なりますが、研削水不
足状態のまま加工を続けると以下の現象が発生する可能性が
高くなります。
1 ホイールの異常消耗
先に述べたように、研削によって発生する熱影響で砥粒が劣化
な状態と比較したものですが、水漏れの度合いによって、倍以
し研削力を失う可能性があります。また、レジンボンドの場合
上消耗してしまいます。
は、ボンド自体が劣化し、砥粒の保持力を低下させてしまうこ
とで、ホイール摩耗が通常より多くなってしまいます。
Graph. 1は、強制的に水漏れを再現させ、その消耗率を正常
研削実験条件
3
■使用ホイール
IF-01-1-5/10-B-K01
2
■加工条件
2.065
加工ワーク
スピンドル回転数
1
研削量
1
加工速度
Siミラーウェーハ(φ6”)
5,500rpm
18-2-0(μm)
0.8→0.3→0.3(μm/s)
0
正常な状態
水漏れ再現
Graph. 1 水漏れによる消耗率比較
2 ウェーハの面焼けや破損
(Photo. 5)
1.と同様に研削熱により、研削面が焼けてしまいます。
正常な状態
ウェーハ面焼け
Photo. 5 ウェーハの面焼け
3 ウェーハ中心部くぼみ
インフィード方式のグラインダーでは、ウェーハ中心部が砥石
部と常に接触しています。従って、研削水が十分に供給されな
いと、研削熱が裏面に貼られた保護テープを溶かし、テープ厚
みが加工中に変動する場合があります。この状態で加工を行う
と、ウェーハ中心部が薄くなるいわゆるヘソ形状が発生します。
(Photo. 6)
Photo. 6 ヘソ模様
2001 / THE CUTTING EDGE No.4-3
研削加工における水漏れによる弊害
研削水を安定して供給するために
ここでは、研削水漏れを防ぐための方策、また、水漏れが確認された場合の対処方法
について説明します。
1 ホイールマウント取付面の清掃
ホイールを交換する際には、必ずホイールマウント面をアルコールを含ませた無発塵
ウエス等で拭き取ってください。
2 ホイールマウント取付面のチェック
ホイールマウントのホイール取付面をアルカンサス砥石(PARTS NO;MZ751)で
なぞり、抵抗がないかを確認してください。抵抗がある場合は、コンタミによる凹凸
や傷が存在する可能性が高いため、アルカンサス砥石で擦り落としてください。
注)
DFG-82IFはホイールマウント端面部
にホイール固定用のツメが有りますので
コンタミ取り除き時に注意を要します。
Photo. 7 アルカンサス砥石によるマウント面修正
3 ホイール取り付け状態での水漏れ確認
危険) スピンドル回転時の確認は危険ですの
冷却水のみを流し、端面からの水漏れ確認してください。
で、行わないでください。
4 使用済みホイール取付面の確認
ホイールを交換する際、使用していたホイールの取付面に水漏れ跡が無いかを確認
してください。Photo.8の水漏れ状態で使用されたホイールの取付面は、正常な状
態では見ることのできない痕跡があるのが判ります。
研削水漏れ跡
正常なホイール
水漏れを起こしたホイール
Photo. 8 水漏れを起こしたホイール接合面
次回のテーマ
「3成分動力計による切削抵抗測定」について予定しています。
発行元
株式会社ディスコ PSカンパニー 精密ダイヤ企画部
http://www.disco.co.jp
01/04/1000J/dd
※この印刷物は古紙配合100%、
白色度81%の再生紙を使用し、
大豆インキで印刷しています。
2001 / THE CUTTING EDGE No.4-4