(16) 卒業生の活躍 ア SSH卒業生の大学院進学

(16)
卒業生の活躍
ア SSH卒業生の大学院進学
平成14年度に理数科に入学したSSH第一期生は、平成21
年度には多くの者が大学院に進学した。今年度は修士課程の
修了にあたるので、その後の進路も調査中である。
また、SSH卒業生には飛び級で早期卒業し、同級生より
も早く大学院に進学した学生が多いのも特徴である。SSH
一期生以降3名の早期卒業生が出ており、平成17年度の第二
期SSHの初年度入学にあたるSSH四期生(現在の大学3
年)からは2名が早期卒業して大学院に進学することが決定
している。今後、本校の理数科がSSHの卒業生に人的資源
として大学とのパイプになってもらうことを考えたとき、大
学院進学率の高さは大きな励みとなる。また、当初の目的と
していた「理科・数学大好き人間」を育てるという課題は、
大きな成果をあげたと言えるだろう。
早期卒業して大学院に進学
したSSH二期生。愛媛大
学SSCで、後輩の研究室
体験を指導中(H22年)
イ
SSH卒業生との絆
SSHが始まってからの大きな変化に、理科で教育実習に来る卒業生の増加があげられる。
SSHが始まる前年の平成13年度は教育実習生16人中で理科は1人だった。SSH初年度の平
成14年度は18人中で理科は4人だった。SSH一期生が大学4年にあたる平成20年度は30人中
で理科は10人になっている。来年度、平成23年度の教育実習生は平成17年の第二期SSHの開
始年度に入学したSSH四期生にあたるが、教育実習生23人中で理科が12人と過半数になって
いる。これは、理科大好き人間が育ったSSH効果と言えるのではないだろうか。今後のSS
Hでは、教員志望の学生との連携も考えていく必要があるだろう。
また、今年度はSSH一期生から「メンター制度」への打診があった。これは、在校生の課
題研究をSSH卒業生の大学院生がバックアップするシステムで、卒業生たちが「お世話にな
ったSSHに自分たちも恩返しをしたい」という気持ちで、在校生へのアンケート調査や指導
体制の構築など、本校に対して積極的に関係を築こうと取り組んでいる。その中心になってい
る萬井さんはSSH一期生で、平成20年度にノーベル賞授賞式セミナー派遣の日本代表学生2
名に選考された人物である。彼は現在、テキサス大学を早期卒業して現在はペンシルバニア大
学の医学系大学院に在学しているが、課題研究の発表会に向けて、次のような助言を送ってく
れた。素晴らしい助言なので、以下に転載したい。
プレゼンでは、聴衆にメッセージを伝える内容を理解してもらうことが最も重要です。伝える
相手が誰なのかを意識してプレゼンを準備する必要があります。専門分野の人なのか、分野外の
科学者なのか、一般人なのか、プレゼンの構成や使う言葉は聴衆に合わせて変わっていきます。
陥りやすい間違いは、相手が基礎知識がないから分からないのだと考え、独りよがりな発表にな
ってしまうことです。内容が「伝わらない」時、多くの場合は発表者側に問題があります。
口頭発表(ポスターセッション時で話すときも)においては、流れが非常に重要です。研究発
表は、一つのストーリーを伝えることです。発表者は多くのデータを持っており、また、研究の
発案から実験における紆余曲折、苦労したこと等色々言いたいことがあると思います。しかし、
多くの場合、聴衆はそれらに興味はありません。さらに悪いことに、あまり関係の無い事項をプ
レゼンに入れると流れが悪く、また理解しにくくなります。現段階でのメインの研究成果・最も
伝えたいメッセージは何かを、まず明確にして、それを伝えるために必要な情報のみを入れ、プ
レゼンを組み立てます。流れに関して言えば、学生の発表で多く見うけられるのは、発表者が実
験を行った順に結果を提示することです。そうする必要は決してありません。必要な結果のみを、
聴衆が流れを理解しやすい順に掲示していきます。また、大きく話を変えなければならない時は、
それまでのまとめを提示し、更に話が変わることを聴衆に明確に伝えて下さい。
プレゼンは研究者の行った研究成果を聴衆に理解してもらう絶好の機会です。聴衆を意識して
発表を準備し、プレゼンを行うように生徒に伝えてください。
萬井知康
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