ビッグデータとHFT データ革命と株式運用戦略 諏訪部 貴 嗣 CMA 目 1.データ革命と株式運用戦略 2.ビッグデータの特徴 3.ビッグデータ活用の課題と展望 次 4.ビッグデータの活用例 5.終わりに ビッグデータを活用することで、これまでは十分に利用されてこなかった新しいタイプの情報を投資判断に役 立てることが可能になってきている。将来的には、人間にしかできないと思われていたような判断をコンピュー ターアルゴリズムが代わりに行うようになる可能性がある。資産運用の世界において、ビッグデータを活用した 価値創造を行うにはどのような課題が存在するのか、それによって運用戦略はどのように変わっていくのかを考 察した。 1.データ革命と株式運用戦略 たものだという説もある。Webサービス事業者や eコマース企業のようにビッグデータを分析し、 データ革命の時代 事業に活用する企業も増えている。 最近、ビッグデータが話題になることが多くな もちろんビッグデータの活用は、ネット関連企 ってきた。コンピューターの進歩・インターネッ 業に限られたものではない。例えば、流通・小売 トの発展を背景に、ソーシャルネットワーク上で 企業が、オンライン購入・閲覧履歴、ソーシャル 作り出される文字・画像、スマートフォンを経由 メディアの反応、位置情報などのビッグデータを してネットワークにつながれたさまざまなセンサ 利用して、個人の嗜好を考慮した効率的なマーケ ーから得られる情報、Webの検索情報、商品の売 ティングができるようになったり、通信企業が通 買情報など、 膨大なデータが日々生成されている。 信ログを解析することで通信網の整備の最適化を 正確に計測する方法はないが、世の中に存在する 行ったりと、さまざまな産業においてビッグデー データのおよそ90 %は過去2年の間に生成され タの活用によって付加価値が創出されるようにな 諏訪部 貴嗣(すわべ たかし) ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント計量投資戦略グループ株式リサーチ共 同責任者・グローバル株式リード・ポートフォリオ・マネジャー。総合研究大学院大学博 士(学術)。東京工業大学理学部卒業、野村総合研究所、野村證券、ゴールドマン・サッ クス証券を経て現職。主な著書に『新・証券投資論II』 (共著、日経新聞出版社、2009年) がある。 6 証券アナリストジャーナル 2015. 4
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