道路横断排水施設設置に起因した斜面崩壊

【8】
全地連「技術フォーラム2010」那覇
道路横断排水施設設置に起因した斜面崩壊
株式会社
1. はじめに
宇部建設コンサルタント
○中村
康二
石本
裕己
斜面の上部には岩(CL 程度)の露頭が確認された。ま
山口県長門市深川湯本大寧寺峠地内の主要県道下関長
た、露岩端の不安定土塊(土砂)が層厚3~4m 程度が確認
門線において、平成21年7月19日~7月29日の豪雨により
された(写真-2)。
発生した災害の被災状況及び復旧工法についての紹介す
るものである。
2. 被災状況
(1)被災個所は、道路路肩側
一車線分約3m、延長30m 区
間において崩落し、谷を流れている大寧寺川支流まで
約50m の間、斜面の崩落を伴っている状況である。
(2)最も崩落の激しい位置は、BP+8付近に設置してある横
断管渠(φ600)直下であり、この位置を中心に法面下方
まで V 字型浸食を呈している(図-1
①、②)。
(3)斜面下方、支川河岸には上方からの崩落土砂がたま
写真-3
斜面上部
り、支川をせき止め、自然のダム湖ができている。
(図-1
3. 被災原因の想定
⑤、⑥、⑦)
・今回の集中豪雨に対して、BP+8.0m 付近の雨水、横断
(4)BP+8付近 直下の崩落後の表面には基盤岩が露出して
いる(図-1
管からの出水が原因の一つとして考えられる。
⑮)。
・吐口工からの流水が一気に一点に集中した事で、ブロ
河川水が越流
152.78
154.91
152.27
146.41
147.23
152.33
147.13
4
145.24
146.88
152.02
153.42
145.89
7
147.86
W
151.84
ック積擁壁の基礎部分の表土が浸食され、擁壁構造の
144.36
151.96
153.21
153.90
155.40
耐力を超えるものとなり、斜面全体の崩落を引き起こ
146.06
152.11
152.45
5
148.00
6
155.20
転石
19
146.70
150.23
153.16
153.81
したものと想定される。
24E
150.09
152.05
86
155.18
12W
CM
150.95
CM
80
156.64
県道
転石
160.00
9
159.51
159.74
157.32
165.00
CM
CM
167.67
66W
1
8
175.00
74
174.14
6
4
18
176.81
95
K-1
H=181.31
7
.
1
5
186.82
186.61
1
8
6
.
8
7
186.50
6
3NO.6
H=186.07
14
主要地方道下関長門線
184.94
至 長門
吐口からの流水による擁壁
基礎部が浸食
184.42
186.20
12.0
10.0
8.0
BP
クラック
NO.16
8
EC.4
SP.4
1
NO.1
5
.4
186.35
HPφ600
180.00
13
NO.17
BC
18
7.
56
EC
.3
SP.3
188.02
重圧管φ600
(下方へ転落)
CM ~ CH
12
82E
K-2
H=181.57
7.
NO.18
EC
.3
NO
.1
4
.
重圧管φ600
(残存)
想定 元地盤線
写真位置
173.32
174.13
8
8
湧水
169.10
20
183.14
1
CL
170.00
15
177.54
55
SP.3
BC.3
NO.13
至 下関
As
転石
CL
2
1
26E
H=188.70
H2-1
As
10
163.70
175.02
.
11
CL ~ CM
170.26
175.00
8
元のブロック積
石英斑岩
(岩級区分)
165.00
170.00
180.00
8
162.62
159.89
166.52
16
転石
1
CM
+18.0
+8.0
被災延長 L=30.0m
190
擁壁基礎部の根入れ層
の流出
EP
195
擁壁を含む斜面全体
の崩壊
被災延長 L=30m
図-1
図-2
平面図
横断図
暗渠からの流水によりガリー浸食がみられる
写真-1
被災全体写真
写真-3
暗渠下の浸食状況
全地連「技術フォーラム2010」那覇
するものである。
4. 対策工法の選定
4-1. 復旧工法の選定
(1) 被災状況
【第3案
補強土壁工法(土羽)】
粘着力のない砂質土中にストリップと称する帯状
の鋼板の補強材を順次層状に埋設することによっ
災害復旧においては現況復旧が原則であるが、今回の
て、その砂の盛土をあたかも粘着力を兼備した材料
被災においては、以下に示す要点と複合的な被災となっ
からできた安定度の高い盛土として挙動させようと
ている。
するものである。
a.道台工の被災
【第4案
b.道台下方の斜面の被災
(2)選定条件
今回の復旧工法の選定にあたっては、まず上記のa.
①道路機能(道台工)の早期復旧(施工日数)
②復旧工法の安定性と経済性
【第5案
下方斜面については、安定した道台工の復旧に続いて、
今回の被災原因の一つでもある吐口工からの流水を確実
EPS
+
仮設土留】
床掘時の安定を保つため自立式親杭横矢板を設置
ある。
【第6案
アンカー付土留
+
大型土のう】
床掘時の安定を保つため大型土のうを設置し、土
留め反力をグランドアンカーにより確保するもので
ある。
【第7案
に下方河川へ導く流末水路を、被災後の安定した斜面を
利用して設置するものとした。
大型土のう】
し、E PS 使用により背面土圧の軽減をはかる工法で
③復旧工法の施工性
(3)流末水路の設置
+
使用により背面土圧の軽減をはかる工法である。
の復旧を優先するものとして、以下の条件をもとに選定
比較を行うものとした。
EPS
床掘時の安定を保つため大型土のうを設置し、EPS
アンカー付土留工
+
仮設土留】
床掘時の安定を保つため自立式親杭横矢板を設置
し、土留め反力をグランドアンカーにより確保する
ものである。
4-2. 復旧工法の工法比較
(1)道台工の復旧工法
道台工の復旧工法としては、一般的に
a.法面覆工法(法枠工 等)
以上の基に7案について、比較検討の結果、当該現場で
は、①道路機能の早期復旧(33日)、②比較的浅い位置で
所要の地耐力が期待できる事などに優れる、第1案の大型
ブロック直壁工法を採用するものとした。
b.擁壁工法
0.40
が考えられる。a.法面覆工法については、法長が長く
8.00
0.60
3.00
3.10
0.80
0.50
施工性(人力施工)に難が生じるため、復旧工法より除外
(▽ 18 7.2 5)
した。
As
As
1.60
(2) 擁壁工の工法比較
崖錐層(礫質土)
(掘削時及び分散荷重の影響)
1.0
5.00
5.15
1)山側既設擁壁の安定性を確保(2次災害防止)。
6.75
擁壁工の工法選定に当たっては、以下の条件を基に選
定を行った。
▽ 180 .5
2)支持層への根入れの確保(安定性)。
軟岩~(中硬岩)
(許容支持力 qa = 300KN/m2 を想定)
比較案を以下に示す。
【第1案
本技術は下段ブロックよりも控えの大きなブロッ
クを積み上げる事で前面が垂直な擁壁を構築し、背
面掘削土量を最小限に抑えるとともに、ブロック内
に現地発生土を使用する事が出来、現道拡幅等に適
した工法である。
【第2案
図-3
大型ブロック直壁工法】
補強土壁工法(路肩設置)】
粘着力のない砂質土中にストリップと称する帯状
の鋼板の補強材を順次層状に埋設することによっ
て、その砂の盛土をあたかも粘着力を兼備した材料
からできた安定度の高い盛土として挙動させようと
計画断面図
5. おわりに
横断排水の吐口側が自然斜面となる場合には、流末水
路を整備することで、斜面の浸食を防止する又は、横断
排水を設ける箇所の検討が必要ではなっかたのではない
かと考えられる。
《引用・参考文献》
1) 災害復旧工事の設計要領
2) 道路土工
擁壁工指針