米国看護・現場視察研修報告 看護部 横山奈緒美 平成 24 年 7 月 9 日~7 月 15 日 アメリカ合衆国 ロサンゼルス市へミレニア社(コンサルティン グ、創傷ケア、ヘルスケア・ホームケア業務等)が企画する米国看護・現場視察研修のプログラムに 参加した。研修ではアメリカにおける医療、UCLA 勤務の日本人看護師から急性期病院における看護、 ミレニア訪問看護師からアメリカにおける訪問看護師の活動内容、看護で行われている質管理を学び、 急性期病院、小児急性期病院、シニア総合施設の 3 か所を見学した。 ロサンゼルス州は看護師不足、離職対策として十数年前看護 師の活動により、5:1 看護など看護師配置基準が唯一、法律 で決められ、人員配置されている州である。看護師は准看護師 や認定介護士とペアを組み業務に当たり、病棟間出向など院内 の人材活用の他、休憩時を補う短時間雇用、長期休暇時の雇用 など地域の看護師を活用しながら、基準が守られていた。 セント・ヴィンセント・メディカルセンター 勤務体制は 7:00、19:00 の 2 交代制で週 3~4 日の休日が ある。短い在院日数を支える在宅医療や州の大半を占める過疎 地における地域医療では訪問看護師やナース・プロテクショナ ーの役割(医師のもとマニュアル内での診断、処方、保険請求 など可能)は重要であり、ナース・プロテクショナーやクリニ カルナース・スペシャリストの資格を目指す看護師も多い。 隣接する開業医のクリニック棟 日本で取り組まれている看護師の配置基準や特定看護師、看 護の質評価など見直しや検討過程にあることの活用と今後の課題を見る機会を得た。 急性期総合病院セント・ヴィンセント・メディカルセンター(337 床、在院日数 3~5 日)では見 学に加えて、ケースマネージャー(看護師)と面談できた。ケースマネージャーはロールモデルに沿 って①入院時レビュー②24 時間レビュー(いるべき患者か否かを判断)③情報提供、ケア提供の質 管理④退院プランニングを行い、24 時間以内に患者に面会し、退院までに訪問看護の紹介、決定ま でを行っていた。入院中は徹底して患者指導が実施され、訪問看護へと移行していた。 ロサンゼルス小児病院 (マグネット病院認定)は 286 床 南カルフィルニア大学と提携している急性期小児専門病院 である。入院期間はやはり、短期で、ここで看るべき急性 期の患者でなければ転院となる。小児がん患者であっても 2~4 週間で退院し、小児専門訪問看護師や教育のサポート が整備され、在宅での療養が可能となっていた。日本の長 期入院とは大きな違いがあった。小児がんの子どもへのサポ ートとしてチャイルドライフスペシャリストや緩和ケア専門 の MSW の活動、医療者へのサポートも充実し がん血液病棟師長さん とても美人で笑顔がステキ 小児病院病室 テレビ・ゲーム・説明プログラムが選択できる 天井は雲と葉っぱ この小児病院の特徴はバーサント・RN・レジデンシーという新人が体験する課題に対処する 22 週 間の新人看護師育成プログラムによる教育である。 13 年前、現在の日本と同様の看護師不足、離職対策問題を抱えていた状況で開発され、新人の成 長、コミットメントを高めること、自信を持ってケアし、患者への安全性を高め、プロ意識を育成し、 互いにサポートしあうことを目的にしている。スキルラボ、ユニット(関連する 3 部署)研修、継続 ケア・業務の知識、他部門との交流等通して学び、プリセプター、メンターを取り入れ、フォーカス はキャリアアップと専門性の向上とし 6 セッションのメンターサークルを開催、カウンセリング・セ ルフケアセッションを 5 セッション設けている。結果、離職率の低下、他職種とのチーム連携、自己 の判断への自信、勤務部署以外とのネットワークの構築、ストレス管理など効果が認められた。リー ダー育成においても他職種合同の委員会参加やアウトカムを示すことにより、ネットワーク作りや、 キャリアアップ、時間や給与面の保証、ポジティブなメッセージ、モデルを作るなどで効果がみられ た。まさに、私たちが取り組んでいる教育プログラムと同様の課題を持ち、効果を期待しており、私 たちも今後、評価しながら改善できればよいと感じた。 ロサンゼルス小児病院 ヘリポートからの景色 ロサンゼルス中心部 最終日に訪問したヴィラ・ガーデンズは定員約 270 人 NPO 総合 シニア施設で、すべて入居費用で運営されている。自立または軽度 介助の人が入所する高齢者ホーム 168 部屋(自宅家具を持ち込み可、1500 万円から 1 億円の入居費 と 50~90 万円/月を自己負担する) 、歩行または杖歩行の人が入所するアシステッド・リビング 48 部 屋、看護ケアまたはリハビリを必要とするスキルド・ナーシングホームが 54 床(2 人部屋)あった。 スキルド・ナーシングホームには看護師 1 名とパート看護師 2 名が配置され、准看護師、認定介護士 がケアにあたっている。高齢者ホームにいても看護ケア、リハビリが必要になるとスキルド・ナーシ ングホームへ変わることに驚いた。スキルド・ナーシングホーム以外は、1 日 1 食は提供されるが自 炊、自立を基本とし、人生をそれぞれ楽しむことが大切されていた。 整備された庭園 居者用食堂 絵画や家具など落ち着いた雰囲気 1 日 1 回はここで食事をする 講義や施設見学を通して労働環境や教育体制など長年にわたり、築いてきた環境であることをあら ためて理解した。また、医療制度や人種、教育の違いから格差もあり、一概に比較はできないが看護 師が生き生きと働ける環境やキャリアアップしていくシステムは学ぶことが多かった。また、看護師 の教育、看護の質管理は、現在の日本の医療制度、在宅へと移行する過渡期であるからこそ、未来を 見据えて取り組む課題であると大いに刺激になった。この場を与えていただいた看護部、病院関係者 の皆様に感謝する。また、今回、研修でお世話になったミレニアの日本人スタッフの皆様にはサービ スや海外で働くことの多様性を学ばせて頂き、感謝している。
© Copyright 2024 ExpyDoc