単位量あたりの大きさ

神奈川版:「読解力」向上のためのガイドブック
小学校 算数科
6年生
単位量あたりの大きさ
算数科
6年生
単位量あたりの大きさ
1 単元・題材の目標
2 児童について
異種の2つの量の割合としてとらえられ
る数量について、その比べ方や表し方を理解
し、それを用いることができるようにする。
第2学年の乗法の導入、第3学年の除法の導入で1
台(人)当たりを基にした考えを、また第5学年の小
数のわり算でも鉄の棒1m当たりの重さを求めてい
る。そのような経験を踏まえて、この単元では、絵、
表、式等のテキストを活用しながら異種の2量の割合
としてとらえられる数量の比べ方を学習する。視
覚的にとらえにくい量であるので、イラスト等も
活用しながら、平均の考えやそろえて比べること
などの既習事項をいかせるようにする。
3 評価規準
算数への
数量や図形についての
数量や図形についての
数学的な考え方
関心・意欲・態度
表現・処理
知識・理解
単位量当たりの考えを 異種の二つの量の割合で 異種の二つの量の割合 人口密度等の大きさにつ
用いて数値化したり、そ とらえられる人口密度等の でとらえられる人口密度 いての豊かな感覚をもって
れらを進んで問題解決に 表し方を単位量当たりの考 等を求めることができ いる。
人口密度等の比べ方や表
る。
いかしたりしようとす えなどを用いて考える。
る。
し方を理解している。
4 学習指導計画
各時間
付けたい力
学習活動
対象とするテキスト
・プールの絵、駅のホームの
写真、畳の部屋の絵
・バンガローの絵、バンガロ
ーの面積と人数の表
・児童の解決方法
(東京書籍6年上の教科書
「単位量あたりの大きさ」
のページより)
単位量あた 「人口密度」の意味とそ 大阪市とニューヨーク市の「混み具 ・大阪市とニューヨーク市の
面積と人口の表
の求め方を理解させる。 合」を比べる。
りの人口
「人口密度」の意味を知り、人口密
(1時間)
度を求める。
単位量あた 面積、人数が異なる場合 混み具合は、面積と人数の2つの要
りの大きさ の混み具合の比べ方につ 素によって決まることを理解する。
面積と人数が違う3つのバンガロー
(2時間) いて理解させる。
の混み具合の比べ方を考え、単位量当
たりの考えを理解する。
【情報の取り出し】【解釈】
【熟考・評価】【表現】
単位量あた 単位量当たりの考えを じゃがいものとれ具合を、単位量当
りの大きさ 用いた集団の比較につい たりの大きさの考え方を用いて調べ
る。
て理解させる。
の用い方
(1時間) 単位量当たりの考えを用 1㎡当たり0.5kgの肥料をまく時、
いた全体量の求め方を理 1.2kgの肥料では何㎡にまくことがで
きるか考える。
解させる。
やってみよ 外的な活動を通して学 (活動例)
習内容の理解を深め、興味 身の回りから単位量当たりの考えを
う
使っている場面をさがす。
(1時間) を広げさせる。
いろいろな都道府県の人口密度を比
べる。
1
・2つの畑の収穫量と面積の
表
・畑の面積と収穫量を表す数
直線図
・単位量当たりの考えを使っ
ている生活場面の写真
・都道府県の面積と人口を示
す地図
5
授業計画【単位量あたりの大きさ】(2時間)
時間
学習内容
テキスト
1
評価
評価規準
評価方法
絵や写真を見て「混ん
でいる、すいている」と
いうことの意味が分か
る。
プールで子どもたち
が遊んでいる絵
(教科書/東京書籍6
年上「単位量あたりの
大きさ」導入の絵)
<テキスト①>
学習活動
予想される児童の反応
発問「どちらが混んでいるでしょう。」
○プールの絵や駅のホームの写真を見て、
混んで
いるとはどういうことか話し合う。
・人数が同じなら、狭い方が混んでいるこ
と、同じ広さなら、人数が多い方が混ん
でいることに気付く。
駅のホームで人が電
車を待っている写真
(教科書/東京書籍6
年上「単位量あたりの
大きさ」導入の写真)
<テキスト②>
絵を見て、左右の部屋
の混み具合が同じである
ことを理解する。
発問「左右の部屋のどちらが混んでいるでしょ
う。」
○左右の部屋の混み具合について話し合う。
・混み具合に偏りがあっても、ならして考
えると、同じ混み具合であることに気付
く。
畳の部屋の絵
<テキスト③>
面積、人数が異なる場
合の混み具合の比べ方に
ついて理解する。
バンガローの絵
<テキスト④>
バンガローの面積と人
数の表
<テキスト⑤>
単位量当たりの考え 記述の分析 発問「3つの部屋の混み具合を比べよう。」
を用いて、混み具合の
○3つの部屋の混み具合を比べるために必要な
比べ方を考える。
情報を挿し絵から読み取り、表へと置き換え
【数学的な考え方】
る。
○面積と人数が違うA、B、Cのバンガローの混
み具合の比べ方を考える。
・AとBでは、Aの方が混んでいることに
気付く。
・BとCでは、Cの方が混んでいることに
気付く。
○面積も人数も違うAとCの、比べ方を考える。
2
「読解力」
スキル
指導上の留意点
情報の取り出し ○2つの絵から異同を読み取
<プールの絵2枚(プールで遊んでいる子どもの数は
解釈
ることができる。
同じで、プールの広さが異なる。) テキスト①>
(プールで子ど
もたちが遊ん
でいる絵)
情報の取り出し ○2つの写真から異同を読み <駅のホームの写真2枚(同じ駅のホームで、電車を待っ
解釈
取ることができる。
ている人の数が異なる。) テキスト②>
(駅のホームで
人が電車を待
○イラストや写真から、何が同じで何が異なるのかを読み
っている写真)
取れるようにする。
○広さ、人数のどちらかが同じであれば、混み具合が分か
ることに目を向ける。
<畳の部屋の絵 テキスト③>
熟考・評価
○視覚情報を数理的に考える
(畳の部屋の絵) ことができる。
○混んでいる場所や空いている場所がある場合は、均等に
ならして比べるという考えを理解できるようにする。
<バンガローの絵 テキスト④>
表現
○情報を整理して、表に表すこ
とができる。
情報の取り出し ○表を読み取り、情報を順次抽
解釈
出して比較することができ
熟考・評価
る。
○それまでの比べ方をいかして、混み具合を比べるように
(バンガローの
する。 (○○が同じならこちらの方が混んでいる。偏り
絵、バンガロー
がある場合は、ならして比べる等。)
の面積と人数
の表)
<バンガローの面積と人数の表 テキスト⑤>
面積(㎡)
人数
A
16
6
B
16
5
C
15
5
3
時間
学習内容
テキスト
評価
評価規準
学習活動
評価方法
予想される児童の反応
2 (前時から継続)
面積、人数が異なる場
合の混み具合の比べ方を
考える。
混み具合を単位量当 記述の分析 ○それぞれの解決方法を発表する。
たりの考え方を用い
発問「自分の考えた解決方法を発表しよう。」
て考える。
(①同じ面積240㎡にそろえて比べる)
【数学的な考え方】
A:240÷16=15
6×15=90
90人
ノート、黒板掲示用シ
C:240÷15=16
ートにかかれた児童た
5×16=80
80人
ちの解決方法
Aの方が混んでいる
<テキスト⑥>
(②同じ人数30人にそろえて比べる)
A:30÷6=5
16×5=80
80㎡
C:30÷5=6
15×6=90
90㎡
Aの方が混んでいる
(③1人当たりの面積にそろえて比べる)
A:16÷6=2.666㎡
C:15÷5=3㎡
Aの方が混んでいる
(④1㎡当たりの人数にそろえて比べる)
A:6÷16=0.375人
C:5÷15=0.333人
Aの方が混んでいる
単位量当たりの考えを
用いることのよさを考え
る。
ノート、黒板掲示用シ
ートにかかれた児童た
ちの解決方法
<テキスト⑥>
単位量当たりの考え 記述の分析 ○それぞれの解決方法を検討する。
発問
「それぞれの解決方法の共通しているところ
を用いた比べ方を理
やよいところはどこだろう。」
解している。
どの考えも「そろえている」こと、1当た
【知識・理解】
りの量で比べると一度にたくさんの混み
具合を比較できること、1㎡当たりの大き
さで比べると、混んでいる時は数が大きく
なり分かりやすいことに気付く。
4
「読解力」
熟考・評価
スキル
指導上の留意点
○根拠を明確にして考えること ○何に目を向けて解決したかを明確にさせる(何をそろ
ができる。
えようとしたか。)。
表現
(ノート、黒板掲 ○自分の考えを式で表現でき
示用シートにか
る。
かれた児童たち
の解決方法)
情報の取り出し
解釈
○式の意味を読み取ることがで ○黒板発表用シートは、式の表現だけにさせる。
きる。
<児童の解決方法 テキスト⑥>
A:240÷16=15
C:240÷15=16
熟考・評価
○式を比較して、評価すること
(ノート、黒板掲
ができる。
示用シートにか
かれた児童たち
の解決方法)
A:30÷6=5
C:30÷5=6
6×15=90(人)
5×16=80(人)
A の方が 混んでいる
16×5=80(㎡)
15×6=90(㎡)
A の方が混んでいる
A:16÷6=2.67 (㎡)
C:15÷5=3
(㎡)
A の方が混んでいる
A:6÷16=0.375(人)
C:5÷15=0.333(人)
A の方が混んでいる
○よりよい方法や考えを練り上げるだけでなく、共通し
ている「そろえる」というアイデアに気付くことがで
きるようにする。
5
6 本単元・題材の学習と「読解力」
本単元で扱う異種の2量の割合としてとらえられる数量には、混み具合や速さ等がある。しかし、それらは、
児童にとっては、それまでに学習した、長さ、かさ、面積などの量と比べ、とらえにくい面がある。そこで、絵
や写真、表などの非連続型テキストを用いながら、学習を進めることが必要になる。使用する非連続型テキスト
については、児童の興味・関心に応じて準備することも考えられるが、東京書籍「新しい算数」に掲載されてい
るものを使い、展開もほぼ同様にした。その中で、非連続型テキストの扱い方をはじめ、「読解力」という視点
で授業を再構成することに取り組んだ。
①非連続型テキストを比較して根拠をもつ
2つの挿絵を見せて、プールや駅のホームの混み具合を比べる際に、なぜそう考えたかという根拠をしっかり
と一人ひとりにもたせたい。そのために、2つの挿絵から、共通するもの、異なるものを読み取ること、そして、
広さ(面積)と人数の二量によって、混み具合が決まることをつかませていくようにする。
また、畳の部屋の挿絵については、面積も人数も異なるが、集まっている児童を動かして均等にならすこと、
畳を手掛かりにして、自然に単位量当たりの大きさで比べるなどの考えが期待できる。
気付いた児童が発表し、それを聞いて納得するのではなく、一人ひとりが挿絵から丁寧に情報を読み取り、根
拠をもつということを今まで以上に大切にしたい。
②挿し絵の状況を非連続型テキスト(表)に置き換え、問題を明確化する
右の挿し絵を見て「一番混んでいるのは
どこか?」と考える際、まず挿絵から解決
<バンガローの絵 テキスト④>
に必要な情報を読み取るようにする。その
中で「人数は分かるが、部屋の面積が分か
っていない」という条件不足を指摘するこ
とも、読解力として大事にしたいことの一
つである。
その後、教科書では、3つの部屋の面積
と人数が表として分かりやすく示される
が、読解力を考えると、示された情報を整
理して表で表現するという活動も取り入れ
てみたい。それによって、混み具合が、面積と人数の2量によって決まるということを更に意識できるようにな
る。
「AとBは面積が同じで人数が違う、BとCは人数が同じで面積が違う、そのため、すぐ比較できる。しかし
AとCは、面積も人数も違い、そろっていない。」ということが表からは読み取れる。ここで、「そろっていな
いので比べられない。」→「面積、または人数をそろえて比べよう。」という問題を共有したうえで、一人ひと
りの学習活動を展開するようにする。そうすることで、「よく分からないが、わり算した。」ではなく、「○○
をそろえるために、こうした。」という目的のはっきりした活動ができる。また、「そろえる」ために、公倍数
を用いるものなど、単位量当たりの考えを用いたものだけでなく、児童の多様な解決も期待できる。
③自分の解決方法を分かりやすくテキスト(式)に表す、また、表されたテキストを読む
各自の解決方法を出し合って話し合う、いわゆる練り上げの場面では、時間がかかり、要領を得なくなること
もある。②でふれたように、「そろえる」という目的を意識して、一人ひとりが自分の解決方法を式に簡潔に表
して発表すること、そして、表された式から、相手が何を「そろえる」ようにしたのかを読むことは、互いに視
点がはっきりした活動になる。同じ視点をもってテキストに表す、読むと言う活動を通して、いろいろな解決方
法の中から、単位量当たりの考えを用いるよさやその場面に、児童が気付いていくことができる。
算数科の授業の中で、読解力の向上を目指すというと、新たに意識する目標が増えるように感じる場合がある
が、そうではなく、授業者が読解力を意識し、授業の中での資料の扱いを丁寧にしたり、問題把握や共同解決の
場面をより重視したりすることによって、読解力は向上していくのである。
6