技術情報 研究成果報告 焼却飛灰等に含まれる重金属の不溶化処理法の開発 産業廃棄物の重金属溶出性の評価技術(平成 年度) 環境エネルギー部 .はじめに わが国では年間 億トンの産業廃棄物が排出され 万トンが最終埋立処分されてい ており、うち ます(平成 年度)。その中には、可溶性重金属元 素を基準値以上含み周辺環境を汚染する懸念のある ものもあります。一方、産業廃棄物最終処分場の残 年とひっ迫しており、特に有害廃棄 余年数は 物から汚染物質が周辺へ拡散するのを遮へいできる 遮断型処分場の受入れ容量は 万 と極めて少ない ことから、管理型処分場に埋め立てても長期にわた り廃棄物中の有害重金属が溶出しない不溶化処理技 術の開発が望まれています。 ここでは、特別管理産業廃棄物に規定される可溶 性重金属含有焼却飛灰を対象に、酸性溶媒( 程度)での溶出試験においても不溶性を期待できる 処理技術として、チオ硫酸ナトリウムを用いた重金 属の硫化物化処理法を開発したのでご紹介します。 .焼却飛灰に含まれる重金属の不溶化処理法 試 験 に 用 い た 焼 却 灰 は、 カ ド ミ ウ ム を 含有する微粉末状の飛灰で、カドミウ と極めて高い値を示します。 ムの溶出量は 上記焼却飛灰にチオ硫酸ナトリウムと水を加えて で 時間加熱撹拌処理して、含まれる可 溶性カドミウムを難溶性の硫化カドミウムとして沈 殿 生 成 す る こ と に よ り、 カ ド ミ ウ ム 溶 出 量 が に抑制されました。なお、チオ硫酸ナト リウムは、飛灰中の重金属含有量に対してモル比で 倍以上添加する必要があります。 .チオ硫酸化合物を用いた硫化物化処理法の特徴 本不溶化処理法は、 チオ硫酸ナトリウムを添加し、 その分解生成物である硫化物イオンが可溶性カドミ ウムと反応して硫化カドミウムを析出沈殿する均一 沈殿反応であるため、硫化カドミウムは径 の粒子サイズの凝集体として生成します(図 )。 一方、硫化物化処理薬剤として広く使われている硫 化ナトリウムや水硫化ナトリウムで処理した場合、 硫化物イオンが可溶性カドミウムと直接反応して極 めて速やかに硫化カドミウムを沈殿析出するため、 程度の極めて微 生成した硫化カドミウムは 。 細な粒子形状を示します(図 ) .本法で処理した飛灰の重金属不溶化効果 チオ硫酸ナトリウム処理飛灰、硫化ナトリウム処 理飛灰および未処理飛灰の 種類の飛灰について、 、更にその残渣を で溶出試験 それぞれ 北海道立工業試験場技術情報 長 野 伸 泰 を行い両者の溶出量を合計することにより、極めて 過酷な環境下に長期間にわたり曝された際に溶出す る可能性のある重金属の最大溶出可能量を求めるア ベイラビリティ試験により不溶化処理効果を評価し ました。その結果それぞれの最大溶出可能量は、未 、硫化ナトリウム処理飛灰 処理飛灰で 、チオ硫酸ナトリウム処理飛灰で で となり、チオ硫酸ナトリウムを用いて可 溶性重金属を硫化物化処理する方法が最も高い不溶 化効果を示しました。 .おわりに 本不溶化処理法は、カドミウムの他、水銀、鉛、 ヒ素、セレン、亜鉛、銅、ニッケルなどの重金属処 理にも効果があると思われます。また、本法は硫化 物化処理時に発生する硫化水素ガス量が従来からの 硫化物化処理法に比べて極めて低く、作業環境を悪 化させない安全な処理法です。 図 チオ硫酸ナトリウム添加により沈殿 生成した硫化カドミウム粒子 図 硫化ナトリウム添加により沈殿生成 した硫化カドミウム粒子 電話 (ダイヤルイン) @
© Copyright 2024 ExpyDoc