鉛ガラスからの鉛分離過程のX線CT装置による観察

研究成果報告
技術情報
鉛ガラスからの鉛分離過程のX線CT装置による観察
乾式試金法を基にして鉛ガラスを媒介とした廃棄物からの各種金属の回収方法(研究年度平成24-26年度)
材料技術部
稲野浩行
取り出し反応を停止した試料についてX線CT装置
1.目的
当場では、非破壊で内部構造の3次元観察ができ
る産業用X線CT装置「マイクロフォーカスX線CTシ
により透過観察を行いました。
図1に800~1200℃で取り出した試料の横方向から
ステムinspeXio SMX-225CT((株)島津製作所製)」
見た断層画像を示します。鉛とガラスと空気とでは
を所有しています。この装置は、原理的には頭部や
X線透過率が大きく異なるので、ガラス中の鉛や気
内臓を調べる時に使う医療用のCTスキャン装置と
泡の空間分布を明確に知ることができます。断層画
同じで、試料を回転させ360°方向からX線透過観察
像の中で、特に白い部分がX線透過率の小さい鉛で
を行い、データを再構成し断層画像を得るものです。
す。
そのため、部品の内部構造、欠陥の観察や形状の計
これを見ますと800~1000℃にかけて鉛は分散し
測などに幅広く利用され、近年普及が進んできまし
て存在しガラスに気泡が含まれていることや、1050
た。
℃からガラスの底に鉛の塊が沈殿していること、11
一方、当場では、家電リサイクル法で回収されて
00、1200℃ではほとんどの気体は放出され、底部に
いるテレビのブラウン管ガラス(鉛ガラス)を還元
は大きな鉛の沈殿が見られることなどがわかりま
溶融することで、鉛を回収する技術開発に取り組ん
す。
でいます。世界的にブラウン管の生産が激減し再生
が困難になった今、資源として鉛回収が期待されて
3.成果
います。鉛分離プロセス改善のために、鉛の生成や
ガラス中の鉛の沈殿は「るつぼを切ってみるまで
沈殿挙動をX線CT装置によって調べましたので報告
わからない」「切っても必ずしもわからない」もの
します。
でしたが、X線CT装置を使うことで的確に評価する
ことができるようになりました。この結果に化学成
分分析や熱分析の結果を加えて検討することで、鉛
2.内容
酸化鉛を含む鉛ガラスを還元剤、減粘剤とともに
ガラスからの鉛の生成、凝集、沈殿挙動を把握する
るつぼに入れ1200℃で溶融すると、ガラス中の酸化
ことができ、溶融温度の低下などコスト低減に向け
鉛が還元され、生成した鉛が沈殿しガラスと分離し
たプロセス改善につなげることができます。
ます。鉛がるつぼの中央に沈殿しているとは限らず、
ガラスが不透明な場合、鉛の沈殿の様子がわからな
TEL:011-747-2935(ダイヤルイン)
いため、るつぼごと試料を切断しても鉛が見られな
E-mail:[email protected]
いことがありました。また1200℃で溶融後のガラス
のみを評価していたため、途中の過程が不明でした。
そこで、昇温途中で各温度に達した時に電気炉から
図1
溶融温度別の鉛ガラス還元溶融試料のX線CTによる断層画像