アマサスピラミド類の全合成 東大院・薬 ○千代田幸治、下川 淳、福山 透 【序論】 アマサスピラミド類は、1999 年ニュージーランド沿岸に生息 Br するコケムシ Amathia wilsoni から Prinsep らによって単離、構造 Br OMe OMe 決定された海洋性アルカロイドである1。アマサスピラミド A (1)、 E (5) は弱い抗ウィルス活性と抗菌活性、細胞毒性を示すことが Br Br OH 分かっているが、本化合物群は天然よりわずかしか単離されない ため、その他の生理活性については未だ十分に調べられていない。 N R また構造的な特徴としては、スピロラクタム骨格、4 置換炭素を 含む 3 つの連続する不斉中心、そして臭素を含む芳香環を有する OH NMe O A (1, R = Me) C (3, R = H) ことが挙げられ、合成化学的にも興味深い化合物である。我々は、 O B (2, R = Me) D (4, R = H) Br 本化合物群の網羅的な全合成を目指し、その合成研究に着手した。 Br OMe 【逆合成解析】 2 級アミドは Schwartz 試薬を作用させることでイミンへと変換 NMe N R O OMe Br Br OH 2 できるため 、スピロ骨格の左部ユニットは γ ラクタムより誘導 可能であると考えられる。ヘミアミナールはイミドの立体選択的 NMe N な還元より導くものとすると、本化合物群はイミド 7 より網羅的 O に合成することができると考えた(Scheme 1)。ラクタムの窒素原 E (5) 子を Curtius 転位により導入し、イミドをラクトンから導くとす OH NMe N H O F (6) Amathaspiramides ると、カルボン酸 8 へと逆合成できる。光学活性体として大量合 成可能なブテノリド 103に対し、Rh 触媒存在下ボロン酸 9 の 1,4-付加を行うことで光学活性体の合成を行う ことができると考えた。 Scheme 1 Br Br OMe OMe OAc OMe Br O Amathaspiramides O N H NMe O 7 Br + O HO2C O CO2R 8 B(OH)2 9 O O 10 【結果・考察】 鍵中間体 7 の合成を Scheme 2 に示す。Rh 触媒存在下、ブテノリド 10 に対してボロン酸 9 を作用させたと ころ、単一のジアステレオマーとして 11 が得られた。アセトキシ基を除去して 12 とし、α 位をアシル化と Michael 付加により順次修飾することで 13 へと導いた。ベンジルエステルを接触水素化によりカルボン酸と し、Curtius 転位を用いてイソシアナートへと導いた。これに希塩酸を加えて加熱したところ、1 級アミンの 生成と引き続く環化までが一挙に進行し、ラクタム 14 が得られた。続いて、ブロモ基の導入について検討し たところ、塩化亜鉛とギ酸存在下臭素を作用させることで、ブロモ基を目的の位置で導入できることを見出 した。最後に、メチルアミンを作用させてラクトンを開環し、生じた水酸基を酸化することで鍵中間体 7 の 合成に成功した。 還元剤を種々検討した結果、イミド 7 に対し DIBAL を作用させることで、位置及び立体選択的な還元反応 が進行することを見出し、アマサスピラミド D (4)の全合成を達成することが出来た(Scheme 3)。また、これ に対して Schwartz 試薬を作用させたところ、ヘミアミナールの水酸基があるにもかかわらず、ラクタム部位 のみが選択的に反応し、アマサスピラミド E (5)へと導くことができた。5 のイミン部位を酸性条件下、シア Scheme 2 OMe OMe OAc OMe B(OH)2 OAc a O + c, d b O O O O 9 10 O 12 11 OMe Br Br OMe e-g OMe OMe Br h Br i O O BnO2C O NMe O N N N O O O O H H H O O O CO2Me 14 7 13 15 Reagents and conditions: (a) [Rh(cod)Cl]2, Et3N, dioxane-H2O, rt to 40 °C, 99%; (b) Sc(OTf)3, MeOH-H2O, rt; evap.; NaBH4, THF-H2O, 0 °C; aq. HCl, 78%; (c) LHMDS, THF, –78 °C; CbzCl, 90%; (d) methyl acrylate, K2CO3, DMF, 70 °C, 96%; (e) H2, Pd/C, MeOH, rt; (f) (COCl)2, DMF (cat.), CH2Cl2; evap.; NaN3, acetone-H2O; (g) ClCH2CH2Cl, reflux; HCl aq., reflux, 80% (3 steps); (h) Br2, ZnCl2, HCO2H, CH2Cl2, 68%; (i) MeNH2, MeOH, rt; evap.; PDC, CH2Cl2, rt, 69%. ノ水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元することにより、アマサスピラミド C (3) を合成した。これを還元 的アルキル化の条件に付すことでアマサスピラミド A (1)へと導いた。また、3 に対し、塩基を作用させたと ころ、ヘミアミナールの異性化が進行し、アマサスピラミド F (6)を得ることができた。現在、残るアマサス ピラミド B (2)の合成について検討を行っている。 Scheme 3 Br Br OMe Br O O NMe N H O 7 Br OMe Br a OH Br b OH NMe N H O OMe NMe N O Amathaspiramide D (4) O Amathaspiramide E (5) c Br Br OMe Br OH N H NMe O Amathaspiramide F(6) Br OMe e Br OH N H NMe O Amathaspiramide C (3) OMe d Br OH N Me NMe O Amathaspiramide A (1) Reagents and conditions: (a) DIBAL, CH2Cl2, –78 °C, 44%; (b) Cp2Zr(H)Cl, THF, –30 °C to rt, 60%; (c) AcOH, NaBH3CN, MeOH, 0 °C, 69%; (d) aq. HCHO, AcOH, NaBH3CN, MeOH, 0 °C, 65%; (e) DBU, THF, reflux, 71%. 【参考文献】 1) Morris, B. D.; Prinsep, M. R. J. Nat. Prod. 1999, 62, 688. 2) Schedler, D. J. A.; Godfrey, A. G.; Ganem, B. Tetrahedron Lett. 1993, 34, 5035. 3) (a) Brinksma, J.; Deen van der, H.; Oeveren van, A.; Feringa, B. L. J. Chem. Soc., Perkin Trans. 1 1998, 4159. (b) Deen van der, H.; Cuiper, A. D.; Hof, R. P.; Oeveren van, A.; Feringa, B. L.; Kellogg, R. M. J. Am. Chem. Soc. 1996, 118, 3801. (c) Morita, Y.; Tokuyama, H.; Fukuyama, T. Org. Lett. 2005, 7, 4337.
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