水野学、小川進「同業他社へのノウハウ公開の効果」『組織科学』,vol.38 No.1:pp66-78 (2004) 2005.03.05 【RQ】 同業者へのノウハウ公開が持つプラスの効果でこれまでに明らかにされてないものはないか? 大久保 【目的】 企業が持つ競争優位に貢献するノウハウをあえて同業他社に公開することによって得られる効果を明らかにすること。 【先行研究】同業他社へのノウハウ公開効果 (効果1)リスク低減効果 (効果2)見返り効果 : : 高い不確実性や必要投資額の大きな産業において、ノウハウ情報を公開することによってそのリスクを低減させる効果 保有するノウハウを公開することで相手方から自分たちが必要とするノウハウ公開を引き出すことを期待するもの 【事例分析】 【調査対象の設定】 事例分析対象企業の選定の視点 ① ② ③ 選定理由 ノウハウを公開している企業であ ること ノウハウ公開関連の情報が得られ る企業であること 先行研究の以外の理論が導き だせそうな企業であること ① ② ③ 【調査方法】 企業名 関西スーパー マーケット 1970 年∼ 1985 年 頃 ま で 対象期間 [インタビュー対象者のデザイン] ①外部企業情報により真偽チェック ②外部企業情報により詳細情報の肉付け [専門企業] 店舗設備開発 マテハン機器開発 協業 中立 [関西スーパー] トップマネジメント ミドルマネジメント ライバル ] ] NOT ライバル 【調査結果】 一方的にノウハウ公開の場合の効果 A[JS加盟企業 [本調査] 期間:2003年8月 ∼2004年3月 目的:当事者の協力が 得られ公表が許 される情報の 収集 情報源:インタビュー (25 社 47 名) A[JS関係者 [予備調査] 期間:2003年 5 月 ∼8 月 目的:基礎的な情報収 集、情報交流の 全体像の把握 情報源:公開情報、 予備インタビュ(関西スーパー関係者) 調査対象企業 競争優位に貢献するようなノウハウを特 にこの期間に集中的に開発していたから 同業他社に対して積極的にノウハウを公 開してきた事実が存在するから 見返り効果を期待してのノウハウ提供でなく、 一方通行的なノウハウ公開であったから [競争優位に貢献するノウハウの特定] 店舗オペレーション上のプロセス・イノベーションに関わるノウハウ ①鮮度管理ノウハウ ②省力化ノウハウ [AJS 加盟企業] システムの模倣を積極的に促進 [ノウハウ公開の方法] ①情報公開(店舗の見学、セミナー開催) ②直接指導(無償コンサルティング、 OJT研修員の受入れ) ノウハウ公開を受けた同業者が関西スーパーの意思決定に左右されるようになった。 ライバル or NOT ライバル 水平的な関係を構築できた。 [ノウハウ公開の効果] 川上への交渉力を持つようになった。 ①価格交渉力の獲得 ②資源吸引効果 機器開発メーカーの協力意識を高めた。 【考察】 今回明らかにした範囲 [知見】 先行研究との違い 川上企業 先行研究で明らかになっている範囲 水平企業間 今回明らかにした範囲 川下企業 深さ 先行研究の範囲 広さ [ノウハウ公開の成立条件] 大項目 因果関係可能性 市場成長性 直接の競合相手が少なかった 厳しい競争状態に陥る危険性が潜在的に高い業界だから 市場の成長性が高かったから × ○ △ 競争観 (1) 商圏内の競争の基準を同じにするため ○ (2) (3) 自社のノウハウ活用水準をチェックするため 商圏内に有力な競争相手を作ることにより他の競争相手を呼び込まないようにするため ○ ○ (1) このノウハウは当時、業界のオペレーション技術のレベルを大幅に向上させる、最善かつほぼ唯一の方 法であったため 独力でノウハウを開発することが難しかったため ○ 競争関係 ② ③ ④ 小項目 (1) (2) (1) ① 企業間の能力格差 (2) しかし、厳密に検証していない 今後の課題 ○ 順一
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