システム情報工学研究科修士論文概要

システム情報工学研究科修士論文概要
年 度
平成 25 年度
専 攻
コンピュータサイエンス
指導教員氏名
学位名
専攻
著者氏名
修士(工学)
中田 悠介
酒井 宏
論文題目
自然画像における図方向の集団符号化 ~計算論と生理実験~
論文概要
輪郭上の点で Border-Ownership(図方向:BO)を決定することは、図地分離において重要なステッ
プである。近年、BO 選択性を持つ細胞がサルの視覚皮質(V2, V4)において報告されており[1]、その
メカニズムとして周辺変調が提案されている[2][3]。また、周辺変調に基づいた BO 選択性細胞の計算
論的モデルが提案された[2][4]。しかし,自然画像のように複雑で多様な形状に対して、単一の細胞が
正確で冗長な BO 判断をすることは困難である。そこで本研究では、BO 選択性細胞集団により、局所
的 BO が表現されている、という仮説を提案し、モデルシミュレーションと生理実験の 2 つのアプローチ
を用いて検討した。
モデルシミュレーションの結果、10 個程度の BO 選択性細胞モデルを統合することにより自然画像の
局所的 BO を 82%の精度で識別できた。この結果は提案仮説を支持する。また、ヒト知覚により一貫性
がある刺激を用いたときほど、SVM の識別率がより高くなった。この結果は、BO 選択性細胞モデル集
団による BO 表現がヒト知覚特性を再現していることを示す。次に、BO 決定に有用な周辺変調構造に
ついて検討した。実験の結果、周辺変調の空間的な偏りが大きい細胞を用いたときほど、識別率が上
昇した。この偏在は、BO 決定に重要な周辺変調構造の特性の一つであることを示す。生理実験で
は、サルの視覚皮質から複数の細胞の反応を同時に記録し、細胞の BO 選択性の解析を試みた。実
験の結果、記録が取れた 6 つの細胞の内 2 つが BO 選択性を示すことを確認し、実験系の構築に成
功した。しかし、十分な数の細胞から記録が取れなかったため、反応を統合して提案仮説を検討するこ
とはできなかった。
審査日
平成 26 年
1 月
28 日
審査員
(大学名 職名)
(学位)
(氏名)
主査
筑波大学 教授
Ph.D.(生体工学)
酒井 宏
副査
筑波大学 准教授
博士(工学)
亀山 啓輔
副査
筑波大学 准教授
博士(工学)
佐久間 淳