同定お願い Memphisの部

2005 年 10 月 3 日
せるば NO.27
上 スカシマダラの蛹
右 ホオズキそっくりのナス科の食草
埋もれ木幼生期 14 シロオビカナエタテハ
Hypna clytemnestra
「シロオビカナエタテハ」というのは的確な和名だと思った。しかし「カナエ=鼎」
という言葉はいまや古語で、「鼎」って何?となるのではないだろうか。私自身も実物を
見たことがない。ところが「鼎」という文字そのものをよく見てみると実に本種の展翅標
本にそっくりなのである。
本種の幼生期についてはかなり以前にコスタリカで知られている。しかし日本ではほ
とんど知られていないように思える。成虫は普通種で、誰でも採集している。キノハタ
テハの仲間の中では大きい方で、翅型が前述のように特徴がある。黒地に太い白帯があ
る。原色で彩られることの多い南米の蝶の中では美しいというほどではなく人気もない。
幼虫がカッコよかったので、本誌ではなく、もっと正式な学術雑誌
に発表したいところだが、上記のようにすでに解明済みの種なので、本
誌に登場させてしまう。
私は今号の現地案内で紹介した Alto Capiro で幼虫を採集した。それ
は3齢幼虫で、同じ食樹よりやはりキノハタテハ Fountainea eurypyle の
幼虫も見つけた。初めのころは大したことのないへんちくりんな幼虫だ
ったが、4齢になると何となく威厳が出てきて Prepona のようなかっこ
うになってきた。そして終齢幼虫は体の突起の先端に縫い針のような鋭
い刺を生じ、体を Agrias のように屈曲させて静止している。大きさも
Memphis などに比べれば圧倒的に大きく風格があり、本種が系統的には
Memphis などよりはかなり Agrias 方向に向いていることがわかる。
蛹は大きいが逆にかなり Memphis 寄りで、明らかに Preponini では
なく Anaeini の1員であることがわかる。
食樹はトウダイグサ科の Croton 属で、Satipo 周辺には少なくとも2
種類が分布する。1つは蔓性で、林縁でよく見かける。今回幼虫を発見
したもう一つは、ハート型の葉で芳香がある(図示)。
本種の幼虫を飼育しているときは、その特異なスタイルに大きな期待をした。
もしかしたら未知のプレポナ? 果たしてそれはすでにコスタリカでわかって
いた。未知の幼生期の解明――簡単に問屋は卸さない。
同定お願い Memphis の部
した。
今回のペルー旅行で数種類のキノハタテハ Memphis の幼虫
この類は種類数が多く、60 種以上を数えるようです。しか
を見つけ、飼育羽化させたところ、次のような成虫になりま
も一見似た種が多く同定が大変困難です。図示の種もよく似
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