配布資料一覧 *1 経済連携の強化に向けた緊急提言 ~経済連携協定(EPA)を戦略的に推進するための具体的方策~ *2 同 *3 「外国人受け入れ問題に関する提言」の概要 *4 AHP ネットワーク協同組合によるベトナム人看護師養成支援事業の歩み *5 浜松市の外国人市民の現状 全体概念図 6 IOM バックグラウンド・ペーパー 7 トマス・アチャコソ 8 ブランソン・マッキンレー プレゼンテーション プレゼンテーション *1、*2、*3: 資料は収録していませんが、下記の経済団体連合会ホームページにあります。 http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2004/020/index.html (経済連携の強化に向けた緊急提言~経済連携協定(EPA)を戦略的に推進するための 具体的方策~) http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2004/020/gainen.pdf (全体概念図) http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2004/029/gaiyo.pdf (「外国人受け入れ問題に関する提言」の概要) *4、*5: その他の未収載資料については、国際移住機関までお問い合わせください。 外務省・国際移住機関共催シンポジウム 国境を越えた人の移動 -経済連携協定と外国人労働者の受け入れ2004 年7月 27 日 国際的な労働移住の傾向、各国の取り組みと政策的課題 ―医療従事者を例として― IOMバックグラウンド・ペーパー抄訳 (シンポジウム参考資料) 97 序論 2000 年の全世界の推定移民総数は 1 億 7,500 万人に上った。その中に占める専門職業従事者の割合 は増加している。150 万人の発展途上国出身の専門職業従事者が先進国で就労しているとみられてお り、特に教育、医療、情報技術(IT)などの分野における外国人労働者の就労が増加傾向にある。日 本もこの傾向から無縁ではない。2000 年から 2001 年にかけて、日本で専門職業従事者としての在留 資格を持つ外国人の数は 154,700 人から 168,800 人に増加した。 多くの先進国が国民の高齢化に伴い看護師など医療従事者の深刻な不足に直面しており、医療分野 における外国人労働者の受け入れは 1990 年代後半から重要 な政策課題の一つとなっている。本稿は欧州における外国人労働者受け入れの経験を概観しつつ、 看護師を中心とする外国人医療従事者の雇用問題と、その送出国、受入国双方における主要な政策的 課題を考察する。 Ⅰ.労働力不足と外国人労働者 労働移住政策と法制度の発達 欧州連合(EU)では、加盟国市民の雇用における平等な権利が保証されている。雇用契約を持つ EU 市民には自動的に在留許可が与えられる。さらに、EU の法制度は加盟国間の教育の基準や学位の 相互承認、教育制度の段階的な標準化を通して労働移動の障壁を取り払うことを目指している。しか し、このような地域統合の進展にも関わらず、自国以外の EU 加盟国で就労する労働者の割合は EU 総人口の 1.5%に過ぎない。このことは恐らく EU 圏内の民族、文化、言語の相違によるところが大 きいであろう。実際、EU 市民に比べて各段に不利な条件にも関わらず、多くの EU 圏外出身の外国 人が就労している。EU 加盟国以外の国籍を持つ労働者が EU 圏内で就労するには、当該の職種に採 用されるべき EU 市民、または既に在留許可を持つ労働者がいないことが前提条件となる。EU 圏外 出身の外国人労働者の就労に関しては、各加盟国が独立した権限を保持しており、特定の加盟国にお ける労働許可が他の加盟国にも承認されるというこことはない。 欧州の労働市場における外国人労働者の割合 欧州の労働人口に占める外国人労働者の割合を算出することは容易ではない。各国の国籍要件が “出生地”や“血統”によるものに分かれているだけでなく、同一国においても時代とともに国籍要 件の変化が見られるからである。 例えば、英国において 1982 年 12 月までに外国人の両親のもとに生まれた者には英国籍が与えられ たが、1983 年 1 月以降は外国籍として扱われるようになった。また、人口移動の形態も国によって複 雑な性質がみられる。例えばドイツには、数百万人に上る旧ソビエト連邦から帰国したドイツ系住民 がいる。この人たちは数世代にわたってドイツ国外に定住していたためドイツ語を話すことができず、 外国人労働者と同様の言語及び文化的な障害にぶつかっている。その一方で、ドイツで生まれ育ち、 学校教育を受けた外国人労働者の第 2 世代は、実際にはドイツ人と何ら変わらないにも関わらず、法 律上は外国籍のままである。このような国籍に関するデータの曖昧さを考慮した上で、EU 加盟国の 総人口に占める外国人の割合は 1-10%の範囲内にあると言うことができる。ルクセンブルグは 30% という例外的に多い在留外国人を抱えるが、ロンドンやフランクフルトといった大都市でも同様に多 数の在留外国人がみられる。 99 表1 西欧における外国人と外国人労働者数:1998 オーストリア ベルギー デンマーク フランス ドイツ アイルランド イタリア ルクセンブルグ オランダ ノルウェー スペイン スウェーデン スイス 英国 全体平均 外国人の 対人口比 (%) 全労働人口 (千人) 外国人労働 人口 (千人) 外国人労働 人口比 (%) 737 892 256 3,597 7,320 111 1,250 153 662 165 720 500 1,348 2,207 9.1 8.7 4.8 6.3 8.9 3 2.1 35.6 4.2 3.7 1.8 5.6 19 3.8 3,303 4,261 2,938 26,016 27,714 1,500 19,529 234 7,172 2,233 15,917 4,294 3,994 26,641 327 375 94 1,587 2,522 48 332 135 208 67 191 219 691 1,039 9.9 8.8 3.2 6.1 9.1 3.2 1.7 57.7 2.9 3 1.2 5.1 17.3 3.9 19,918 5.5 145,748 7,835 5.4 人口総数 (千人) 外国人数 (千人) 8,099 10,253 5,333 57,095 82,247 3,700 59,524 430 15,762 4,459 40,000 8,929 7,095 58,079 361,005 出典 OECD. Trends in International Migration, 2000. OECD, Paris, p.41. 新たな労働力不足に対応する労働移住政策 第 2 次大戦後、欧州の雇用構造は徐々に高度な専門職へと転換してきた。1990 年代後半の IT 分野 の急速な発展はさらにこの傾向に拍車を掛けた。また、高齢化人口を抱える EU 諸国では、医療分野 を中心とするする専門職業従事者に対する高い需要が今後も持続するものとみられる。このような状 況下において、多くの EU 諸国では、外国人熟練労働者の受け入れを促進するため法令の改正が行わ れた。多くの場合、法令の改正は現行の移住政策の範囲内で行われたが、新たな移住促進事業が導入 されたケースもあった。 フランスと英国では、労働市場の需要に応じて外国人労働者の採用に関する決定が、国、または地 方レベルで行われている。外国人労働者の採用数は様々な労働市場テストの基準に基づいて調整され ている。ほとんどの先進国で採用されている最も基本的な要件は、同一職種に従事する外国人と自国 民労働者の賃金レベルに格差を設けてはならない、というものである。しかしながら、需要の高い特 定の職種に関しては「労働市場テスト」を免除する措置も取られている。このような職種の代表例は IT 専門家であるが、バイオテクノロジー、医療、教育などの分野が含まれる場合もある。さらに、フ ランスなど一部の国では、留学生が卒業後に在留資格を変更して労働市場に参加することも認められ ている。 その一方で、米国は家族ぐるみの永住移民受け入れを基本政策としているが、多数の専門職業従事 者が更新可能の 3 年間有期ビザ(H-1B)での就労を許されている。一時的移民である専門職業従事 者の総数は年間の受け入れ枠によって調整されているが、2003 年までに受け入れ枠は 115,000 人から 195,000 人に増加した。やはり永住移民を受け入れているオーストラリア、カナダ、ニュージーラン ドの場合、雇用面における移民の将来性を年齢、教育、技術、職務経験などに基づいて審査する「点 数」制度を採用しているが、最近では米国同様、熟練労働者の一時的移住も進めている。 100 Ⅱ.外国人労働者の受け入れ制度 欧州諸国の雇用に関連する移住政策は一時的な外国人労働者の受け入れを基本としており、その意 味でいわゆる「伝統的な移民国」とは異なっている。従って、欧州の移住政策は自国民によって充当 し得ない労働力需要を補うことを目的としている。外国人労働者の具体的な採用条件は各国によって 異なる。フランスは収入と教育レベルの最低基準を設けているし、英国は人手が不足している職種の リストを作成し、労働許可申請の審査手続きの迅速化を図っている。米国は外国人熟練労働者の受け 入れ枠を設定しているが、イタリアの場合は、農業、建設、公共事業といった単純労働者に対して受 け入れ枠を設けている。 柔軟な労働許可制度 英国の労働許可制度は最も有名なものであるが、自国内の労働力によって充当できない職種への外 国人労働者の受け入れを促進することを目指している。労働許可は特定の雇用契約に対して最長 5 年 間与えられる。しかしながら、一旦入国した後で別の労働許可を申請することも可能である。この場 合、人手不足リストに載っていない職種であっても労働市場テストは要求されない。労働許可を受け た外国人は家族を同伴することも許される。ただし、家族の者が就労するには別途労働許可を申請す ることが必要である。労働許可の発給数には上限は置かれておらず、その総数は年々増加している。 2000 年には英国に労働許可を受けて入国した外国人の総数は 67,100 人に上り、外国人労働者全体の 35%に及んだ。 英国の労働許可制度は大変弾力的に運用されており、特定の職種の一時的な 人手不足にも対応している。人手不足の職種リストは 1991 年以降定期的に教育技能省が改定版を 刊行しており、リストに載っている職種への労働許可申請に対しては簡略化された審査手続きが取ら れている。このリストには、数多くの医療、教育、エンジニア、バイオテクノロジー、IT 関連などの 職種が登録されている。 このリストの定期的な改定作業は、英国政府の調査、統計、関係者との協議などの情報収集に基づ いた移住政策の立案努力を示している。リストに特定の職種を掲載するかどうかの決定は、有識者と の協議や専門的調査(特に経営者へのアンケート調査)に基づいて行われる。さらに政府は産業分野 別の調査委員会を設けて労働市場の分析を行っている。 産業分野別の調査委員会は定期的に業界代表、主要な経営者、及び関係政府機関と協議し、研修、 採用、技能、賃金レベルなどの問題に対する審査を行っている。現在、IT,医療、エンジニア、ホテ ル飲食業、教育、金融の各分野別に6つの委員会が活動している。IT や医療分野における人手不足リ ストは、労働許可の発給数だけでなく、地域間の需給バランスをも考慮に入れている。最近の IT 産 業における景気後退に対して、人手不足リストから関連の職種を削除する措置を講じたのは英国だけ であったという事実は注目に値する。英国の制度では労働市場の変化に対する迅速な対応が可能であ るのに対して、他の先進国では高度熟練労働者の受け入れという従来の政策が継続している。 2 国間協定 欧州諸国の一部で採用されている 2 国間協定は、特定の受入国と送出国の間の人の移動を管理する ものである。通常 2 国間協定には、協定の目的、関連する労働力の定義、受け入れ基準、移住条件、 外国人労働者の地位、平等な待遇に関する規定及び必要に応じて受け入れ枠などの項目が盛り込まれ ている。2 国間協定は中央政府または地方政府の行政当局によって管理されるが、特定の職種に従事 する外国人労働者に特化した規制を行い、そのことによって不法移民の減少にも効力を発揮する。こ 101 の協定の下では、送出国と受入国の双方が外国人労働者の適切な生活、労働条件を保証する責任や協 定の遵守、移住プロセスの管理責任を分担することになる。2003 年に行われた OECD の調査によれ ば、2 国間協定は受入国の労働市場に弾力性を与えることで全体的な経済発展に寄与している、とさ れている。 イタリアの場合、英国と同様、2 国間協定によって季節労働者の受け入れを行っている。イタリア の労働市場は地域や産業別に細分化されており、雇用に対する需要は中小企業の半熟練労働者が中心 である。 イタリアと最初に季節労働者の移住に関する 2 国間協定を結んだ国はアルバニアである(1997 年締 結)。2000 年 5 月にはチュニジアがこれに続いた。2 国間協定の締結に先立って、送出国の不法移民 の引き取りに関する協定も結ばれている。季節労働者の受け入れ枠全体の 25%を超えない範囲で、イ タリアへの不法移住対策に積極的に取り組んでいる国に対して優先的に受け入れ枠が割り振られて いる。 Ⅲ.外国人労働者の受け入れプロセスの運用上の問題点 雇用レベルの設定 外国人労働力の雇用レベルを設定するに当たって、多くの国は年間の受け入れ枠を適用している。 カナダや米国は移民の受け入れ枠全体の中で、外国人労働力の上限を設けている。イタリアの場合は、 受け入れ枠の総数をまず設定し、その後、個別の地域や産業に対する割り振りが行われる。受け入れ 枠の推定に当たっては経済見通し、雇用者報告、地域ごとの失業率などが考慮される。イタリアはま た 2 国間協定で特定の送出国に対する受け入れ枠も設けているが、英国は部分的にしか受け入れ枠を 設けていない。 受け入れ枠の決定プロセスには様々な団体や個人が介在する。イタリアでは、1 年間に受け入れる 外国人労働者の人数や職種、国籍が首相の行政命令によって公表されるが、その決定にいたるプロセ スでは厚生省が経営者連合や労働組合などの関係者と協議を行う。同時に、地方労働事務所も地方レ ベルでの外国人労働者の需要見込みに関する報告書を提出する。 米国では、「1990 年移住法」が雇用を目的とする永住移民ビザの発給数を、家族を含めて年間 14 万人に設定している。移民受け入れ枠の設定は計画的な人の移動を可能にするが、同時に移民の受け 入れ枠増減に関する国民的、政治的論争の舞台にもなる。 受け入れ枠を設定したからと言って、必ずしも上限数一杯の移民を実際に受け入れているわけでは ない。たとえば、米国では、ビザ発給上限数(14 万人分)の半数しか実際には発給されておらず、ビ ザの審査結果を待つ申請者が滞留している。この滞留の原因は、労働証明書と入国許可申請の審査手 続きの複雑さにある。外国人労働者を永住居住者として採用するには、雇用主は労働省の人材採用に 関するガイドラインに従って、同時に外国人労働者を採用する職種が自国民によっては充当不可能で あることを証明しなければならない。この申請手続きには通常弁護士の助けを借りる必要があり、し かも承認には数年を要する。このような長期の申請手続きを待ちきれない雇用主や移民は、当座の措 置として有期ビザを取得するのが一般的である。 102 優秀な労働力の選択 膨大な移民申請者の中から適切な人材を選択するには、何らかの数値的な審査基準が求められる。 移民申請者の提供する情報を審査するためのガイドラインも必要である。労働市場の長期的発展とい う政策目標に照らし合わせれば、これは容易な課題ではない。たとえば、カナダは最近「点数制度」 の一部を、労働市場とカナダ社会への長期的な定住に必要な技能・適性(語学力、年齢、職歴など) を重視したものに改正した。しかし、このような改正には、労働市場の差し迫った需要に応える人材 を提供する上で、かえってマイナスの面もある。 その上、選考基準が複雑になればなるほど、審査に伴う人的労力と経費、時間も増大することにな る。点数制度を採用している国では、申請書の審査、面接、語学テストなどに相当数の公的機関の職 員を投入しなければならない。 欧州(や日本など)の場合、雇用関連の移住政策が主に短期的な労働市場の調整を目的としている ため、しばしば外国人労働者の選考過程に困難が伴う。実際には、申請者の資格、職務経験、語学力 を検証するのに相当な時間を要するため、労働市場の実態とずれてしまうことがあるからだ。従って、 審査基準に弾力性を持たせることで労働市場の変化に対応しようとする傾向が生じるが、このことは 審査過程の効率性にとってマイナスにもなり得る。 一つの対応策として考えられるのは、選考過程の一部(技能検査一般)を雇用主に委託し、政府機 関は基本的な受け入れ基準の設定に責任を負う、というものである。このような採用方法の有利な点 は、労働市場の需要に直結している、という点にある。しかも、申請の審査期間を大幅に短縮するこ ともできる。 労働市場の変化への対応は労働移住政策の実施において極めて重要な問題であるが、実際には客観 的に労働力不足を予測するのは困難である。通常、労働力不足は事後的に認識されるもので、事前に 予測するのは極めて難しい。このことは、移住政策が最新の調査結果と労働市場の現状及び将来的な 動向に関するデータに基づいて定期的に更新される必要性を示している。政策が有効であるためには、 経済状況の変化に合わせて特定の職種に関する選考基準の迅速な見直しが行えるような体制を確立 しなければならない。最近の IT 技術者に関する労働市場の変化は、このような弾力的な採用方法の 必要性をよく示している、2001 年の第1四半期には、主要先進国は外国人 IT 技術者の採用に躍起に なったが、同年の第2四半期には逆に IT 技術者の供給過剰という状況が生じた。この時外国人労働 者の受け入れ政策を最も柔軟に運用したのが英国であった。英国は他国に先駆けて IT 技術者の受け 入れを行い、いち早く経済状況の変化に応じて受入数を制限した。 人手不足に伴う問題点は、その影響が特定の職種に限定されるだけでなく、地域間の格差も多く見 られることにある。従って、一国の移住政策には、地方レベルの調整も必要になる。例えば、フラン スでは雇用省の出先機関が地方レベルで労働市場の需要を監視している。イタリアでは、移民の受け 入れ人数が産業分野や職種ごとに地方レベルで割り当てられている。このような制度には、政策運用 の柔軟性を保持しつつ、同時に地方ごとの具体的な人手不足に対応できるという利点がある。しかし、 実際には地方レベルで一年ごとに労働力需要の予測を立てなければならない、という困難がつきまと う。 103 Ⅳ.看護師の移住傾向と政策的意義 先進国における高齢化社会の進行に伴い医療従事者の不足が顕在化したのは 1990 年代半ば以降で ある。しかしながら、多くの国々では新たな看護師の養成に充分な投資が行われなかったため、国外 からの労働力の受け入れが求められるようになった。 看護師の移住傾向 移住実態の数量的な把握には数多くの困難が伴う。例えば、送出国における熟練労働者の出国記録 が欠如していたり、また記録があったとしても国際的な標準化が確立しないため、データの有効な比 較を行うことができない場合が多い。さらに、看護師に特化したデータの収集に際しても、国によっ て医療従事者の職種分類が異なるという問題が付きまとう。 同一国内においても、雇用主から得られるデータが集計元によって整合性を欠くことがある。例え ば、英国の場合、統一的なデータの標準化が要求されないため、「外国人看護師」の定義の仕方が医 療機関によって異なることがある。即ち、「外国人看護師」の中には英国内で教育を受けており、労 働許可を必要としないケースも含まれる場合がある。 本稿のデータは、移民受入国における労働行政機関などが行う雇用関連調査に基づいており、送出 国からの移民送出しに関するデータは含まれていない。下記の表は主要受入国における外国人看護師 の割合を示している。 表2 受入国における外国人看護師の割合 受入国 米国 英国 アイルランド カナダ オーストラリア ニュージーランド 出典:Aiken et al.2004 看護師の登録数 予想される看護師 不足数(予想年) 外国人看護師の割合 2,202,000 500,000 49,400 230,300 179,200 33,100 275,000 (2010) 53,000 (2010) 10,000 (2008) 78,000 (2011) 40,000 (2010) - 4 8 8 6 23 表に示されているように、ほとんどの受入国において外国人看護師の割合はそれほど高くはないが、 労働人口の規模の大きさを考慮すれば、その絶対数の多さが推測される。例えば、米国の場合、外国 人看護師の割合は 4%に過ぎないが、その絶対数は約 9 万人に上る。 注目に値することであるが、これらの国々では向こう 10 年間に医療分野の労働需要の大幅な増加 が見込まれている。既に8%という比較的高率の外国人看護師を雇用している英国やアイルランドは、 向こう数十年間に採用数を倍増する予定であるが、それでも予想される看護師の人手不足を解消する には至らない。 看護師の対人口比で見た場合、受入国の看護師数は送出国の約 2 倍に当たる。 104 表3 主要な受入国と送出国における看護師の対人口比 受入国 人口 10 万人当たりの 看護師数 米国 英国 アイルランド カナダ オーストラリア ニュージーランド 出典:Aiken et al.2004 送出国 南アフリカ フィリピン ジンバブウェ ナイジェリア インド 782 847 804 741 941 841 - 人口 10 万人当たりの 看護師数 472 418 129 66 45 - 移住に関する個人の意思決定に関わる要因を特定することは容易ではないが、一般的に言って、国 内の雇用機会の不足によって有能な看護師の国外への流出を助長されている。さらに、低賃金、不安 定な社会経済情勢、貧弱な労働環境、AIDS 感染の危険性なども要因に挙げられる。これらの送出国 の移住要因に、先進国の高賃金、進んだ生活、労働条件、教育や専門性を向上させる機会が加わると、 人の移動が発生する。 さらに重要な点として見逃せないのが、国外から本国への送金による経済効果である。移住労働者 による本国への外貨の送金は、開発途上国にとって貴重な財源である。例えば、フィリピンは、長年 にわたり国内の医療機関の需要を上回る医療従事者を養成してきた。こういった国々は自国の進んだ 人材養成プログラムをテコに、人手不足を抱える先進国の労働市場に対して巧みに売り込みをかけて いる。2002 年には 1 万人のフィリピン人看護師がサウジアラビアや英国などへと出稼ぎに行っている。 2001 年には、フィリピンへの国外からの送金は GDP の9%に達した。 資格認定をめぐる諸外国の経験 開発途上国から先進国への医療従事者の労働移住は、一般的に送出国における医療従事者の不足を 助長するという負の影響に関して論議されることが多いが、実際には「医療従事者」や「技能レベル」 に関するデータが整合性を欠くため、実証的な検証を行うことが極めて困難である。 その一方で、受入国における外国人医療従事者、特に看護師の受け入れに関しては主に以下の 3 点 の政策的問題点が挙げられる。 第一に、国内における看護師養成の強化、離職率の低減措置、また休業中の看護師の職場復帰奨励 といった代替策に比べた場合の、外国人労働者採用策の比較優位という問題。第二の課題は、看護師 の国際的採用の効率性にある。迅速な資格認定と労働許可の発給は、差し迫った医療従事者の不足解 消に役立つ。外国人医療従事者の職場への配属に当たっては、語学研修、文化紹介、社会的支援など が相互に連携して実施される必要がある。 看護師の資格認定は特に重要な問題である。受入国の立場から言えば、資格認定は外国人労働者が 患者の看護に求められる最低限の国内基準を満たしていることを保証することにある。同時にまた、 国内の労働者を国際競争から保護するための方策でもある。 送出国の側から言えば、このような手続きはその煩雑さと割高な経費という点で海外雇用を阻害す る要因と見なされることが多い。外国人労働者は自国の学位や資格に対する受入国の認定を受けるこ とに苦労するが多い。このことはまた、本来の資格に見合った待遇を受けられないことをも意味する。 これらの障壁は、労働者の国外への送り出しを推進する国から見れば医療従事者がもたらすはずの外 105 貨収入に対する妨害と見なされるが、逆に国内の医療従事者不足に悩む国にとっては人材流出の防波 堤の役目を果たしている、とも言える。 国際的な医療従事者の労働移住は、高齢化社会と医療サービスにおける人手不足の解消という共通 の要因によって引き起こされているが、各国政府はそれぞれ独自の行政機構による移住政策を打ち出 してきた。欧州諸国の場合、主に公共の医療機関における看護師の採用を中心とする政府による一元 的な管理行政が行われているが、オーストラリアでは地方分権が進んでいる。また米国の場合、民間 部門による採用が行われている。以下主な受入国の資格認定制度を中心に検証してみよう。 英国 深刻な看護師不足を抱える英国は、スペイン、インド、フィリピンとの間で看護師の採用に関する 政府間協定を結んでいる。政府以外にも、民間の雇用主や職業斡旋業者が活発な活動を行っている。 英国では、ほとんどの看護師は公共医療機関で働いているが、民間の医療施設に採用される場合もあ る。 英国で就労するには、まず看護師・助産婦理事会(NMC)に登録する必要がる。EU 諸国の看護師 は、相互の資格承認制度によって英国で就労する権利を有する。EU 圏外の看護師の場合は、NMC に よる資格認定を経て登録手続きを取り、その後労働許可を取得しなければならない。労働許可の取得 者には、就労期間の制限が加えられる。 看護師登録と労働許可のデータによれば、1990 年代半ば以降、国外からの看護師の流入が著しく増 加している。1999 年から 2002 年にかけて、英国で就労する外国人看護師の人数は 42,000 人に倍増し た。2001 年と 2002 年には、新規に登録した看護師の半数以上が外国人であった(但し EU 諸国も含 む)。 近年における主な送出国はフィリピン、南アフリカ、オーストラリア、インドである。ジンバブウ ェやアフリカ諸国の出身者も急増している。2002 年と 2003 年の新規登録看護師の 4 分の 1 は、開発 途上国の出身者で占められていることは懸念される。 図 1:1989/90 年から 2002/2003 年にかけての新規登録 看護師に占める外国人の割合 106 登録データによれば、2002 年 10 月の時点で、看護師総数の 8%に当たる 42,000 人の外国人看護師 が英国で就労していた。王立看護大学によれば、外国人看護師の平均年齢は、英国人看護師よりも低 く、民間の老人ホームの専従スタッフとして働くケースが多い。 外国人看護師が英国で就労するために新たな試験を受ける必要はない。NMC は、看護師の登録申 請者の資格調査を行うが、この中には英語力の証明書も含まれる。EU 諸国間では資格の相互承認が 確立されているにも関わらず、実際には言語の壁などの影響で、国境を越えた看護師の移動は低いレ ベルに留まっている。 新たな資格試験を受ける必要がないという点においては、外国人看護師にとって米国よりも英国の ほうが恵まれた就労条件を提供していると言える。 医師と違い、看護師の場合、斡旋業者などによって集団で採用されることが多い。最近、公共医療 機関は、国外からの採用のために特別のウェブサイト(www.nursinguk.nhs.uk)を立ち上げたが、特に スペイン、インド、フィリピンの 3 カ国を対象としたページを盛り込んでいる。 アフリカ・サハラ以南地域から労働移住する看護師の人数が増加している傾向に対して、厚生省は 1999 年に倫理規定を公表し、公共医療機関によるアフリカからの看護師の採用を禁じている。しかし ながら、依然としてアフリカからの看護師の採用は民間医療施設などを通じて行われている。王立看 護大学もまた、国際的な看護師の採用に関する行動規範を定めたガイドラインを公表している。 アイルランド かつて看護師の送出国であったアイルランドも、近年の経済発展に伴い、看護師の受入国へと転じ ている。同国への主な送出国は、フィリピン、英国、オーストラリア、南アフリカ、インドである。 英国とアイルランド間における人の移動の逆転現象は興味深い。 アイルランドで就労する看護師には登録が義務付けられている。オーストラリア、カナダ、ニュー ジーランド、米国以外からの申請者の場合、一定の見習期間中に、職場での技能検定を受ける必要が ある。医療雇用局(HSEA)が、EU 圏外から移住してきた看護師の研修受け入れ先を調整する。アイ ルランド厚生・児童省は、2001 年に看護師の国際的な採用に関するガイドラインを公表した。 ノルウェー EU に未加盟のノルウェーの場合、過去 20 年間にわたって北欧諸国との間で、看護師の移住の自由 に関する協定を維持している。ノルウェー医療従事者登録局は、国外から移住して来る看護師の登録 を行っている。近年、外国人看護師の送出国は北欧圏を越えて拡大している。2002 年のデータによれ ば、主な送出国はスウェーデン、デンマーク、フィンランド、ドイツ、フィリピンの 5 カ国である。 ノルウェーは、他の受入国と比較して、送出国の選択範囲や年間の受入人数などに対して高度な一 元的管理行政を行っている。 ノルウェー公共雇用サービス(AETAT)は、1998 年以来国外からの看護師の採用を担当している。 その業務には、面接、書類審査、語学研修の実施などが含まれる。AETAT は、特定の国との間に看 護師の受け入れに関する2国間協定を結んでいる。元来はフィンランドやドイツを主な対象としてい たが、最近ではフィリピンやポーランドも含まれている。AEAT による年間の看護師受け入れ人数は、 2001 年が 228 人、2002 年には 260 人であった。 英国、米国、アイルランドと違い、ノルウェーでは外国人の看護師全員に語学研修を受けさせるこ とが義務付けられている。同国の看護連盟は、国際的な看護師の採用そのものには反対しないものの、 107 適切な看護の提供を保証するため、職業的な技能に加えて、語学研修と文化オリエンテーションの重 要性を強調している。 オーストラリア オーストラリアの連邦制は高度な自治権を持つ 6 つの州と 2 つの特別地域で構成されており、職業 資格の認定に関する法令も州・特別地域ごとに異なっている。医療従事者は各州・特別地域の関係機 関に登録しなければならない 資格の相互承認を行っていない国の看護師は、登録に先立って外国人看護師の申請を審査するオー ストラリア看護理事会(ANC)の承認を受けなければならない。 英国、アイルランド、南アフリカ、カナダ、シンガポール、米国の看護師は英語能力試験を免除さ れており、さらに資格認定そのものが免除されている国もある。 ANC は提出された申請書類の審査に基づき、オーストラリアへの移住条件に適合しているかどう かを判定する。資格要件を満たしていない看護師は、オーストラリア国内で 10-15 週間の研修を受 けなければならないが、この間にオーストラリアの基準に見合う自己の技能を証明することが出来れ ば、州看護局または ANC に登録することが許される。 ひとたび一つの州または特別地域で看護師としての登録が認められると、連邦内の相互承認制度に より他州・地域での登録も可能になる。 カナダ 米国やオーストラリア同様、カナダでも看護師の登録は地域レベルで行われる。 登録看護師としての資格を取得するには、資格認定を経てカナダの看護師登録試験を受けなければ ならない。登録の必要条件の一つは語学力である、ケベック州ではフランス語、ニュー・ブルンスウ ィック、マニトバ、オンタリオ各州ではフランス語、または英語のいずれか、またその他の州では英 語力が求められる。州・特別地域の監督機関は専門資格や実技レベルが基準を上回っている申請者を 登録する。 米国 医療制度の規模の大きさと魅力的な賃金レベルにも関わらず、米国は最大の外国人看護師の受入国 ではない。1990 年代半ば以降、国外出身者(必ずしも国外での看護師資格の取得者ではない)が新規 に採用される看護師の 3 分の 1 を占めているのは事実であるが、米国における資格の取得が義務付け られえているため、国外からの看護師の流入は全体的には低いレベルに抑えられている。 米国で就労を希望する外国人看護師は国家資格試験(NCLEX-RN)に合格しなければならない。こ の試験を受けるには、大卒相当の教育レベルが求められる。また、英語を第一言語とする教育を受け ていない場合には、TOEFL も受験しなければならない。米国在外看護学校卒業生委員会(CGFNS) は、多くの国で米国の国家資格試験の予備テストを実施している。このテストのおかげで、実際に米 国まで国家試験を受験しに来る看護師の人数は制限されている。2002 年には、19,903 人が予備テスト に応募し、そのうち 17,496 人が実際にテストを受け、5,718 人が合格した。そのうち 3,000 人が TOEFL を受け、ほぼ全員が合格点を取っている。3,482 人の外国人看護師に対してビザ申請用証明書が発行 された。米国では看護師の不足が予想されているにも関わらず、この職種の受入に対して特段優遇措 置が取られているわけでえはない。従って、仮にテストに受かってもビザの発給を受けられるとは限 らない。 108 1997 年から 2000 年にかけて、26,506 人の外国人看護師が米国の資格試験に応募したが、そのうち 約 3 分の 1 はフィリピン人、22%はカナダ人で占められている。 英国の場合と異なり、看護師の登録と資格認定は州単位の登録委員会が管轄しているため、米国に 移住する看護師の総数を割り出すことは容易でない。一人の看護師が複数の州にまたがって登録して いる場合もある。 実際に国際的な看護師の採用を行っている主体は民間の医療機関である。このことは、72%に及ぶ 外国人看護師が民間病院で就労している事実に現れている。これに対し、米国人看護師の場合、民間 病院で働く割合は 59%ほどである。 北米自由貿易協定(NAFTA)によるメキシコからの看護師の移住に対する影響は見られない。そ の原因としては、メキシコの看護教育は高等学校レベルに留まっていること、英語力の不足などが考 えられる。 政策問題 ほとんどの先進国は労働移住を、自国の人手不足を解消する手段として活用している。このことは、 主要な労働移住の送出国である開発途上国における医療従事者の国外流出を助長しているという懸 念を与える。 従って、医療従事者の人手不足に悩む先進国では、必要とする労働力の採用を進める一方で、送出 国の人的資源への悪影響を防止するという厄介な課題に直面することになる。 国際的な人材採用に関する倫理的ガイドラインによって外国人看護師の採用に対する責任を明確 にすることができる。例えば、英国は 1999 年にそのようなガイドラインを導入したが、それ以降サ ハラ以南や西インド諸島から移住して来る看護師の人数は減少した。しかしながら、その影響は余り 長続きはしなかった。このガイドラインは民間の医療機関には適用されなかったし、その一方で送出 国の構成も他の地域に拡散したからだ。フィリピン人看護師の登録数は、1998-9 年から 2001 年にか けて、52 人から 3,396 人に急増した。国境を越えた医療従事者の移動は、先進諸国における活発な採 用活動によって引き起こされてもいるが、受入国と送出国の双方に一連の政策問題を投げかけている。 送出国の場合 まず第一に、医療従事者の国外への流出を経験している国では、人材流出の原因とその自国民への 医療サービスに対する影響を評価することが必要である。最近 OECD は南アフリカで、医療分野にお ける人材の現状と看護師を含めた医療従事者の国外への移住の影響に関する調査を実施した。しかし ながら、多くの送出国では、国外への移住の実態を把握するための基礎データが不足しているのが実 情である。移住のもたらす影響を評価することはさらに困難である。しかし、このような評価は、移 住を奨励すべきか否かという政策決定を行う上で不可欠なものである。適切な行政管理が行われない 場合、人材流出の継続によって医療制度が悪影響が受けるのは言うまでもない。 医療従事者の国外流出を防ぐための政策措置を講じた国もあるが、低賃金や悪劣な労働条件という 根本的な移民の送出し要因が改善されない限り、効果は期待できない。 カリブ諸国が採用している「管理移住」政策は、人の移動の監視と調整を目指している。カリブ地 域と英国、カナダ、米国の医療機関同士の既存の協力関係を通して、人材交流や帰還奨励措置などを 導入している。また、受入国から看護師養成の指導員も派遣されている。 109 最終的には、賃金レベルや労働条件に加えて、全般的な生活条件や政治情勢、教育の機会といった マクロ要因の移住への影響を見逃してはならない。従って、送出国では、医療従事者の移住問題に対 して、総合的な人材育成及び社会経済開発という観点から取り組んでいく必要がある。 受入国の場合 送出国と同様、移住動向の監視と評価は受入国にとっても最も基本的な政策課題である。人手不足 をもたらす経済的要因も検証する必要がある。例えば、計画的な雇用政策、魅力的な賃金及び退職制 度の改善などを通して、国内における新規採用の看護師増員や一旦職場を離れた看護師の復職を促進 することと、外国人看護師の導入という二つの選択肢の功罪を客観的に分析する必要がある。 送出国と受入国の協力関係の改善は重要であり、WHO, ILO, IOM といった国際機関との提携による 調査活動も推進するべきである。 次に重要な政策課題は、医療制度の改善に貢献する人の移動をいかにしてより有効に管理するかと いう点である。英国の場合、労働許可申請手続きの迅速化、人材の採用と配属に関する統合的政策、 見習い期間の設定や語学研修、文化紹介などの対策が講じられている。 また、開発途上国からの看護師の採用に関する倫理上の問題も重要である。個人の移動の自由に関 する権利は尊重されるべきであるが、同時に送出国の貧弱な医療制度に対する悪影響を防ぐ措置も取 られる必要がある。 このような問題に対処するため、外国人労働者の採用に関する様々な2国間又は多国間協定が結ば れており、送出国の利益を確保するための倫理条項が盛り込まれているケースもある。英国は、この ような送出国との相互利益を図る取り組みにおいて先駆的な役割を果たしている。 医療機関レベルの取り組み ● ● ● 姉妹提携-送出国と受入国双方の医療機関同士の人材交流、人材育成、及び送出国への送金の促 進など 教育補助-送出国の教育機関への指導員の派遣、財政的な支援など 2 国間協定-受入国の雇用主による送出国の医療機関に対する人材育成や一時的な人手不足を補 う臨時スタッフの人件費負担 政府レベルの取り組み ● ● ● ● 2 国間協定-受入国から送出国への人材育成などに関する政府レベルの支援 人材採用に関する倫理規定-開発途上国からの人材採用に関するルール作り 移住管理-計画的な移住政策による開発途上国からの人材流出の抑制 人材育成-外貨獲得手段としての国外送出しを目的とした医療従事者の育成 国際的な取り組み ● ● ● 上述の倫理規定に関する多国間のルール作り(前例-英連邦規約など)。 国際機関が監視役を務める多国間協定 貿易等に関する国際的な取り決めに従った移住政策 110 Whither Japan? By: Tomas Achacoso In 1989, I was invited by some Japanese journalists to share my views on the need for Japan to internationalize its manpower sector. My views were eventually published in the Japan Economic Journal on April 29 1989 in an article called “Filipino Labor can fill Japan’s manpower shortage.” Today, fifteen years later, I am privileged to once again be invited to share my views on how the movement of people can help ease the labour shortage resulting from falling birthrates and ageing populations of developed countries like Japan, Germany, Italy and the United States, among others. Demographers at the International Institute of Applied Systems Analysis have predicted that the world’s population growth will peak at nine billion by 2070 and then start to contract. But Japan’s population is expected to peak as early as next year and then to fall by as much as one-third over the next 50 years. Philip Longman, in his article “The Global Baby Bust,” further claims that Japan’s fertility rates have been below replacement levels since the mid-1950’s. But many developed countries still proceed on the premise that manpower will always be available. On the contrary, Dr. Joseph Chamie, former Director of the United Nations Population Division (UNPD) has predicted that Japan must recruit “…one million migrant workers a year for the next 50 years just to keep its dependency ratio at 3:1.” The UNPD also estimated that the Total Fertility Rate of Japan as of 2000 was at 1.43, which means that Japan has breached the Replacement Fertility Rate of 2.1 and therefore is currently unable to replace deaths with live births. Similarly, Germany is at 1.30, while the United States is at 1.99. I believe that heightened global competition has concentrated Japan’s collective mind on something that, in the past, it had hoped to avoid: change. The changes that Japan must undertake with regard to filling this gap in labor are not easy especially since they involve areas that relate to traditions and customs. These are also changes that have implications on the racial structure of its society and how it continues to perform as a nation. It is truly commendable that Japan is exerting every effort to anticipate and ensure that such changes are positive and favorable for all sectors of society not only in Japan but also for those coming to work in Japan. I would like to make my own humble contribution to the on-going discussions on labor and migration from a perspective that has hardly been touched upon in previous discussions and conferences. I would like to talk to you, albeit briefly, about the need to harmonize institutional arrangements not just between Japan and prospective laboursending countries like the Philippines and Thailand but also within Japan itself. The challenge lies in managing migration with a comprehensive set of norms and standards while maintaining a balance in the interests of all parties involved. 65 Discussions between Japan and the Philippine government are currently being held under the ambit of an Economic Partnership Agreement. The discussions are focused on the mechanics and anticipated problems of language proficiency and cultural gaps. The governmental institutions that deal with this migration program are simply presumed to be efficient and able to accomplish their mission and objectives. In my mind, attention needs to be placed on the institutions that will be at the forefront of the process of not only bringing in thousands of foreign workers but dealing with them on a daily basis. We must always be reminded that laws and policies are only as good as the administrative machineries’ capacity to implement them. In this regard, it is important to have an intimate understanding of the human side of change management that takes into account the alignment of the bureaucrat’s culture, values and behavior in order to encourage the desired results. Failure to plan for the human side of change often finds many bureaucrats wondering why their best-laid plans have gone awry. This implies the need for customer service training both in procedures and understanding cultural differences in the human dimension (as opposed to pure efficiency) not only for the top level bureaucrats but more importantly, for the front liners who will be implementing the rules on a daily basis. But all the talk of reform on this level will lead nowhere unless it is translated into changes in Japan’s migration structures and processes. The paradox is that for Japan to sustain itself, it is going to have to become less Japanese and more multicultural. Is Japan ready for this? One of the major concerns of ordinary Japanese people is how to live in harmony with foreigners. If my memory serves me well, a survey was conducted by a major Japanese multinational corporation several years ago to determine which nationality works well together with Japanese officials and ordinary workers. Of all the nationalities considered, the Filipino topped this survey. Similarly, a compatibility survey was done by a Norwegian firm for its nationals and the result also had Filipino workers topping the list. These are qualities that could benefit Japan by providing the manpower that it needs and the Philippines by providing the jobs that its citizens require. However, Japan must remember that it still needs to attract workers to its shores because it will be competing with Europe, the United States and Canada, among others, which also have acute needs for migrant workers. These countries offer high wages for skilled and unskilled workers, have generous social benefits and already have locally existing migrant populations. While the Philippine recruitment industry is well organized and able to service the requirements of many labour-receiving countries, the sheer number of its licensed agencies might prove to be its bane as well. Since the Philippines operates under a democratic system of governance, once the Japanese market is opened to foreigners, there will be a mad rush from agencies, legal and illegal, to participate in this opportunity. Japan’s institutions must be ready to handle this. 66 Even with the stringent requirements being planned with respect to the language proficiency and technical expertise of workers to be recruited, the mere fact that there are so many players involved will undoubtedly result in cutthroat competition that can only result in the exploitation of the workers themselves and provoke protectionist policies from Japan. However, on the part of Philippine government officials, they cannot impose any conditions that would restrict the full and active participation of these agencies lest they be charged with restriction of trade. As a labor-receiving country, Saudi Arabia’s response was to limit the number of participating health clinics that provide medical examinations on workers going to the Kingdom by qualifying only a handful of these clinics. Canada likewise accredits caregiver-training centers to ensure that the quality of training adheres to standards set down by the Canadian government. Therefore Japan must be able to implement similar safeguards of its own in order to address these issues even at the pre-departure stage. Checkpoints like these need to be created within the Japanese system in close collaboration with the labor-sending countries. The responsibility is necessarily a shared one between labor sending and receiving nations. In this regard, I would like to suggest that Japan create a position within its bureaucracy to take charge of overseeing its labor-migration systems and procedures and amending them as necessary. This post can be given overall charge of the mechanics and organization of the Japanese process since many issues cut across jurisdictional lines of different government ministries. The most challenging aspect of this position is how to solve the administrative problems of implementing policies and objectives. Migration is a dynamic phenomenon and would therefore require constant fine-tuning of the interactions that it requires from numerous government agencies. For example, the Philippines is considered as the country of emigration par excellence in part because its implementing arm, the POEA or Philippine Overseas Employment Administration is the only overseas employment government agency in the world whose Quality Management System (QMS) conforms to the requirements of the International Organization for Standardization, or ISO 9001:2000. Thus its labor-receiving clients, like Japan, can work within this structure, confident in the systems that are in place. Another solution to labor shortage is for Japan to consider offshore outsourcing of some business functions to outside suppliers. Outsourcing is regarded as a new way of doing international trade and is made possible by the lower communication costs and the availability and ease of standardizing software packages. This is another way of taking advantage of the availability and lower cost of labor in other nations. Certain business functions such as document management, medical transcriptions and financial services have been determined as likely functions that can benefit from outsourcing. As a former Philippine government official, my experience in dealing with Japan is that the problem is not the absence of good policies but rather the lack of attention to the details of how the operationalization of these policies affect the manner in which labour sending countries respond. Japan needs to ensure that its domestic system is attuned not 67 just to its internal operations and requirements but also to the realities in the Philippines and other labour-sending countries that have thousands of licensed agencies eager to participate in this market. Japan is struggling to make sure that the standards of language proficiency and technical competence remain high but I don’t hear of any discussion of the kind of institutional arrangements, systems and procedures that need to be addressed. Therefore, it is in these areas—the human side of change management; stronger and more dynamic implementation of updated rules; a dedicated independent government body that can make the necessary systemic adjustments; and working with the laborsending countries even in the pre-arrival stages—that tweaking and modifications need to be made. Japan’s implementing institutions should address these because it is in these areas where the smallest changes will result in the largest net benefits for all parties involved. Accepting, streamlining and managing the process of labor migration into Japan is an opportunity for Japan not only to exercise control over what will be a vital component of its economy and society, but also to develop an even stronger working relationship with the people who can fill a gap in its requirements for growth and stability. ---0--July 2004, Tokyo 68 Statement by Mr. Brunson McKINLEY Director General of the International Organization for Migration (IOM) at Symposium on Cross-Border Movement of Natural Persons: Economic Partnership Agreement (EPA) and acceptance of foreign workers Organised by Ministry of Foreign Affairs, Government of Japan & International Organization for Migration (IOM) Tokyo, 27 July 2004 Headquarters: 17 route des Morillons • C.P. 71 • CH-1211 Geneva 19 • Switzerland Tel: +41.22.717 91 11 • Fax: +41.22.798 61 50 • E-mail: [email protected] • Internet: http://www.iom.int 59 Distinguished Guests, Ladies and Gentlemen Let me begin by expressing both my sincere appreciation to the Ministry of Foreign Affairs of Japan for hosting this symposium, and the honour and pleasure it has been for IOM to be its organizational partner. The timeliness of the symposium is, of course, underlined by the fact that it is held against a background of negotiations on Economic Partnership Agreements between Japan and its Asian neighbours. It is no surprise that the cross-border of natural persons is an important part of these negotiations. In recent years migration has been making its way steadily to the top of the international affairs agenda and now calls insistently and urgently for the attention of all governments, whatever the nature of their involvement or interest in the management of migratory processes. There is an obvious reason for this. Throughout the world, people are increasingly mobile – either through choice or necessity. The key is not to prevent mobility, but to manage it to the best advantage of all the parties concerned, the countries of origin, the countries of destination and - most of all – to the migrants themselves. One of the obstacles hindering the development of effective approaches to migration management in general and labour migration in particular, however, is differences in outlook between countries of origin and countries of destination. - Typically countries of origin wish to secure migration opportunities for their workforce, and to ensure that the human rights of their workers abroad are respected; - On the other hand, countries of destination wish to safeguard the integrity of their entry control systems and are concerned with the promotion of social cohesion and seek to protect their workers from unfair competition. In the absence of cooperation, patterns of irregular migration take root, and migrant smugglers and traffickers move in swiftly to take advantage of the situation. This is to the obvious detriment of the migrants themselves, but also of great cost to governments. Cooperative approaches, on the other hand, hold promise of positive outcomes. IOM’s experience over the last 50 years has richly demonstrated that managed, cooperative approaches to labour migration can: - Promote use of regular channels of migration; - Help deter irregular migration, especially smuggling and trafficking of human beings; - Facilitate acceptance and participation of migrants in the host society, and - Contribute, in the longer term, to the reduction of migratory pressures, so that migration might be a matter of choice rather than of compulsion to leave. In specific terms, for countries of destination, labour migration - Provides a pool of human resources in labour market areas that cannot be met locally; 61 - Increases workforce diversity and versatility in a more and more competitive market; and, - Contributes to the rejuvenation of the workforce. For countries of origin, labour migration - Provides employment opportunities abroad for nationals whose skills are surplus to demand; - Is a valuable and reliable source of remittances. It is estimated that a total amount in excess of US Dollars 100 billion is remitted annually worldwide, through official channels alone. This is substantially more than total ODA to developing countries; - Contributes through return migration to the enhancement of the local skills base. In all regions of the world, therefore, governments are giving increasing attention to the search for effective managed and cooperative approaches, and nowhere is this more evident than in Europe. By way of background it may be useful to remember that labour migration in Europe has had a rather uneven history. 1) European Background The post-war European reconstruction and related economic growth generated important labour shortages. This led to the active recruitment of migrant workers, from both within and outside Europe. By early 1970s, over 30 million foreign workers had entered the EEC, including temporary workers and multiple entries. Labour migration was enshrined in the Treaty of Rome (1957) with free movement of persons between the six founding states. It was also specifically managed by bilateral agreements between non-EEC labour sending countries and destination countries. This was followed by a period of Economic downturn, calling for adjustments to labour migration practices (1973-1989). Indeed, with the 1973 oil crisis and the consequence on economic growth and employment opportunities, European governments introduced measures (such as quotas and increased recruitment costs) to discourage labour migration and encourage return migration. This led to a substantial reduction in employment-related immigration. 2) Current Trends In the past decade, however, Europe has witnessed a return to employment–related migration. Demographic trends including population aging and low fertility rates, as well as skills shortages characteristic of knowledge-based economies have made labour recruitment, both skilled and unskilled, a critically important policy priority for European countries. In 2003 the European Commission officially recognized -- in a Communication of that year -- that immigration would be increasingly necessary in the coming years to meet the needs of the EU labour market. 62 Also, there has been an acknowledgement on the part of many European countries that labour migration is an essential component in any comprehensive approach to migration management. A recent case in point is the German migration law passed on the 1st of July this year which integrates foreign labour recruitment within a broader migration management framework. While the focus of labour recruitment in Europe remains on temporary schemes, in the past decade there has been a dramatic diversification in the types of schemes used to recruit foreign workers. This development reflects the willingness of European countries to adapt their approaches to fit specific labour market and policy outcomes. It also reflects the need of the European countries to experiment and test a variety of approaches in an increasingly competitive and globalized labour market. Especially in the area of skilled migration – and not least with respect to nurses and other skilled health professionals – the European experience shows that it is not easy to attract sufficient numbers of skilled migrants to satisfy domestic labour needs. Approaches taken by European countries in recent years have therefore diversified to include multilateral and bilateral agreements, unilateral measures, regularization schemes, and initiatives taken at EU level to facilitate movement within the EU. Bilateral labour agreements are by far the most common type of agreement with third countries. Although their purpose is to respond to labour shortages in European destination countries, bilateral labour agreements are also increasingly used as a migration management tool, that is, to combat irregular migration by strengthening the overall framework of cooperation with third countries while opening legal channels for migration. Examples of this include agreements recently signed by Spain with Colombia, Dominican Republic, Ecuador, Morocco, Poland and Rumania; Italy with Albania & Tunisia; Portugal with Bulgaria & Rumania. The sheer scale of labour shortages in critical occupations such as health, IT, domestic workers, and others, has led to the development of multilateral schemes which target large numbers of sending countries. An example is the United Kingdom’s Working Holidaymakers Scheme which allows nationals of 53 other Commonwealth countries to take up limited employment in the UK for a period of two years. Some countries have simply opened up their labour markets in order to take advantage of global demand for migration, without targeting any specific countries of origin, for instance by creating routes for individual entry of the highly skilled in specific sectors. One example is the German “Green Card” scheme for recruitment of IT specialists. About half of the 20,000 Green Card permits have been issued to date. The UK launched a similar programme in January 2002 called the “Highly Skilled Migrant Programme” based on a point system for educational qualifications and experience. It has made separate provision for migrant worker entry to the low skilled sector through quota systems. Several southern European countries have also used “amnesty” programmes to regularize temporarily or permanently the status of migrants living and working illegally in their countries. Most migrants benefiting from these programmes are unskilled or semi-skilled. With respect to the EU, and as I mentioned previously, the Rome Treaty allows for free movement of persons for work and residence. However, intra-European movement remains remarkably low, involving less than 0.2 per cent of the total population of the 63 European Union according to the OECD. In 2002 the European Commission initiated an action plan for mobility including measures to facilitate skills recognition in regulated professions and the transferability of pension rights across member countries. 3) Closing Remarks Let me conclude this statement with the following Closing Remarks. Europe has adapted to changing demands for labour by developing proactive and diversified labour migration policies and programmes. Although Japan differs from Europe in regards to its social, economic and cultural background (let alone its geographical environment), it will be subject in the end to the same economic and demographic pressures that have prompted Europe to reform their approaches to migration management. Ultimately, the identification of a suitable labour migration framework in cooperation with sending countries will ensure that labour migration benefits Japan and the sending countries, as well as the individual migrants. Such a successful labour migration framework can be developed only through a dialogue among all stakeholders, including sending countries. This symposium provides a useful platform for such a dialogue. I must once more thank the Ministry of Foreign Affairs of Japan for their initiative and the opportunity to explore this issue further in the course of this symposium. Thank you very much. 64
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