2006 年 6 月 22 日 集合と論理演習(担当:嘉田)第 10 回 ■ 全射・単射 ■ 正の整数全体の集合を N で表す.すなわち N = {1, 2, 3, . . .} である. 整数全体の集合を Z で表す. 実数全体の集合を R で表す. 【定義】 f を集合 A から集合 B への写像とする. (1) f が全射であるとは, 「すべての b ∈ B について『ある a ∈ A について f (a) = b』 」 が成り立つことである. (2) f が単射であるとは,「a1 = a2 を満たすすべての a1 , a2 ∈ A について f (a1 ) = f (a2 )」が成り立つことである. 10.1 以下の写像は全射であるか否か,また,単射であるか否か,答えよ(証明不要) . (1) f1 : R → R, f1 (x) = sin x (2) f2 : R → R, f2 (x) = x3 + 1 (3) f3 : [0, 2π) → [−1, 1], 10.2 f3 (x) = sin x Z から N への写像 g を,g(n) = |n| + 1 で定める. (1) g は全射であるか否か,理由とともに述べよ. (2) g は単射であるか否か,理由とともに述べよ. 10.3 A = {1, 2, 3, 4, 5} とし,A から A への写像 f を f (1) = 3, f (2) = 5, f (3) = 5, f (4) = 2, f (5) = 3, と定めることによって定義する. (1) f は全射であるか否か,理由とともに述べよ. (2) f は単射であるか否か,理由とともに述べよ. (3) A の f による像 f (A) を求めよ. (4) {3} の f による逆像 f −1 ({3}) を求めよ. (5) 次の主張は正しいか正しくないか,論じよ. (a)すべての A の部分集合 S について,f −1 (f (S)) = S が成り立つ. (b)すべての A の部分集合 T について,f (f −1 (T )) = T が成り立つ. 10.4 A から B への写像 f と,A の部分集合 A1 に対し,A1 から B への写像 g を, A1 の各々の要素 x に対して g(x) = f (x) と定めることによって定義することができる. こうして定義される写像 g を,f の A1 への制限と呼び,f |A1 で表す. 一般に,f が A から B への全射であれば,A の部分集合 A1 を適切に選んで,f |A1 が A1 から B への全単射になるようにできる.たとえば,f : R → [0, ∞), f (x) = x2 は 全射であって単射でないが,f の [0, ∞) への制限 f |[0, ∞) は全単射である. 次のそれぞれの写像について,始域の部分集合を,その写像のその集合への制限が全単 射になるように,適切に選べ. (1) f1 : R → [−1, 1], f1 (x) = sin x (2) f2 : R → [−1, 1], f2 (x) = cos x (3) f3 : N ∪ {0} → {0, 1, 2}, f3 (n) は n を 3 で割った余り (4) f4 : N → N, f4 (n) = [log2 n] + 1 ([r] は実数 r を超えない最大の整数を表す) (5) f5 : Z → N, f5 (n) = |n| + 1 (10.2 に示した写像 g と同じ) 10.5 f を A から B への写像,g を B から C への写像とする.次の問いに答えよ. (1) f と g がともに単射ならば,g ◦ f は単射であることを証明せよ. (2) f と g がともに全射ならば,g ◦ f は全射であることを証明せよ. (3) g ◦ f が全射ならば,g は全射であることを証明せよ. (4) g ◦ f が単射ならば,f は単射であることを証明せよ. (5) g ◦ f が全射であって f が全射でない f, g の例を挙げよ. (6) g ◦ f が単射であって g が単射でない f, g の例を挙げよ.
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