マルチメディア監視制御システム - 富士通

マルチメディア監視制御システム
Multi-media Monitor Control System
*1
福田 知樹
Fukuda Tomoki
秋元 啓二* 2
Akimoto Keiji
*4
山宮 明男
Yamamiya Akio
武井 一徳* 3
Takei Kazunori
あらまし
本システムは,道路,河川,地域等の空間監視や,ビル・工場等建屋内の状
況監視および各種構造物・設備(機械・電気設備等)の状態監視の分野に適用
される。従来行っていた計測情報や状態情報に,映像情報や音声情報を加える
ことによって,現場に取り付けたカメラ映像を見ながら,遠隔においても臨場
感のある監視制御を可能とした,操作性に優れた監視制御システムである。
現場に設置されたカメラと監視局に設置されている制御装置と監視制御端末は,
SDH(Synchronous Digital Hierarchy)等のネットワークを介して接続される。
この監視制御端末上で計測・状態データと動画像や音声を連携させることによ
って,より高度なヒューマン・マシンインタフェースを実現し,容易で安全な
運用を可能としたシステムである。
Abstract
By adding video and audio information to traditionally gathered measurement
and status information in the field of space monitoring such as roads, rivers and
regions, of condition monitoring of inside structures such as buildings and
factories, and of status monitoring of a variety of constructions/equipment
(machinery/electric installations, etc), this system enables monitor and control
even from a remote place, just as if operators are at the scene, by looking at
images taken by the camera placed on site. This is an easy-to-operate monitor
and control system.
The on-site cameras are connected to control systems, and monitoring and
control terminals at Monitoring Office via networks such as SDH (Synchronous
Digital Hierarchy). Measurement/status data and motion pictures and sounds
are coordinated onto the monitor and control terminal to allow higher-grade
human-machine interface. This is an easy-to-operate and secure system.
*1 富士通 1 トランスポート事業本部 第 1 複合システム統括部
社会システム部
*2 社会システム事業部 第 2 公共システム部 *3 社会システム事業部 ハードウェア開発部 *4 社会システム事業部 ソフトウェア開発部 FUJITSU DENSO REVIEW Vol.10 No.1
43
マルチメディア監視制御システム
1.
ま
え
が
メディア化」を基本となるシステムとして開発を
き
行った。
近年,国(建設省等),自治体等による情報ハイ
これによって,水管理・道路管理などの特定の
ウェイ構想の推進によって,光ファイバ網の整備が
分野に限らず,電力設備監視や侵入監視などの多
進められ,高速・大容量情報伝送を可能とする環境
岐にわたる分野において,画像との複合システム
が整ってきた。
の構築を容易とした。
この結果,我々が携わってきた社会公共システム
2) 基本構成とオプション構成に分け,最小機能の
の監視制御の分野においても,このインフラを利用
画像連携から,オプション追加構成で画像蓄積や
した新しいアプリケーションの商談が活発になり,
IP ネットワークへの動画像配信等システム規模
顧客の導入機運も高まってきた。
に合わせた構築を可能とした。
この市場状況を踏まえ,従来のテレメータ等によ
るセンサベースの監視・制御データに,映像・音声
情報を加え,これらを連携させ一元的に扱うシステ
2.2
システム構成
図 1 にシステム全体のイメージを示す。
マルチメディア監視制御システムの基本は,監視
制御端末と監視制御装置によって構成される。
ムの開発が急務となった。
そこで,当社は,富士通 1 と協力し,これらに
柔軟に対応し,経済的に構築可能なマルチメディア
監視制御の基本システムを開発した。
オプションとして,画像蓄積サーバ装置等を組み
込める構成とした。
今回の開発では,標準的なネットワークとして建
注1)
設省仕様の 42 号(SDH )に適合し,ネットワーク
2.シ ス テ ム 概 要
内の映像切替制御と,ネットワークに接続される
注2)
2.1
システムの位置づけ
CCTV カメラの制御を直接行うことができるよう
1) 社会公共システムにおける監視制御の「マルチ
災害現場
NTSC 信号
事務所
(KU-SAT
キャプチャ装置
カメラ映像等)
に考慮した。
監視制御端末
SW-HUB
統合局
WEB/蓄積
サーバ
監視制御端末
監視局
映像
建設省 WAN
自治体
電力
ルータ
監視制
御装置
交換機
現場
監視制御端末
他監視局
RAS
NTT 公衆回線,
INS 回線等
内線交換網等
建設省 WAN
自治体
電力
近隣自治体
SDHRING
ネット
ワーク
事務所
監視制御端末
職員宅
ダイヤルアップによる接続
出張所
出張所
カメラ
図1 全体システムのイメージ図(大規模)
注1)Synchronous Digital Hierarchy
注2)Closed Cricuit Television
44
FUJITSU DENSO REVIEW Vol.10 No.1
事務所
マルチメディア監視制御システム
表1 マルチメディア監視制御システムの機能概要
項 目
CCTVカメラ
CCTVカメラ台数
TM/TC-IF
伝送ネットワーク
カメラ選択
関
係
の
制
御
機
能
C
C
T
V
カ
メ
ラ
T
の M
機 /
能 T
C
映
像
配
信
カメラ手動
プリセット制御
ダイレクトズーム
パトロール
静止画取込み
映像とデータの
同時表示
データ収集
制御出力
分割表示
外部配信
内 容
・建設省で推進しているCCTVカメラ制御プロトコルに適用
・制御対象となるCCTVカメラは63台/系統
(ネットワーク内で切替えられる)
1系統内のカメラ台数はネットワークに依存する。
・監視制御装置として映像16∼32入力に対応。
・RS-232C
(V24)
呼出方式または1:1サイクリック方式
・伝送ネットワークはSDH仕様に適合し,SDHのMPEG2映像の切替制御とトータルアラームの監視を行う。
・その他既存ネットワークに関しては別途検討
・地図上/リスト形式/履歴 から選択
・手動旋回(上/下/左/右),ズーム
(望遠/広角)
,焦点
(遠/近)
・カメラ照明・ワイパ電源
・プリセットリスト
(あらかじめ設定が必要)
から選択
・プリセットビューアから選択
・映像画面においてマウスでクリックした点が表示中心となるように制御し,かつズーム拡大を行う。
・各CCTVカメラの選択と位置を自動でコントロール
(あらかじめ設定が必要)
し,映像による巡回監視を行う。
・選択したカメラ映像を手動または一定間隔で静止画
(JPEG)
で取り込む。
・CCTVカメラの映像とセンサデータ
(計測値と状態監視)
を同時に表示する。
・TM/TC子局からデータ収集し,状態信号の判定や計測値の上下限判定を行う。
・異常時に警報を出力する。
・制御対象設備に合わせて,ON/OFF,全開/全閉等の制御出力を行う。
・映像合成部において4入力または9入力映像を合成し,1映像で分割出力する。
・入力映像の切替えを行う。
・映像切替部を制御し,外部表示(大型ディスプレイ装置やTV共聴装置等)
への配信を行う。
監視制御装置
子
映像切替部
(16:16)
(32:32)
映像合成部
(4:1)
(9:1)
監視制御端末装置
RS
ディスプレイ
(LCD/CRT)
S
D
H
等
RS
RS
シリアル
変換部
子
シリアル
変換部
LAN
ルータ
ス
イ
ッ
チ
ン
グ
ハ
ブ
本体
(FMV)
NTSC
ビデオ
LAN
キャプチャ
(10/100BaseT) カード
TM/TC サーバ
TM/TC IF部
データ処理部
図2 監視制御装置と監視制御端末装置の機器構成図
なお,建設省が進めている CCTV 制御の統一化
表1にマルチメディア監視制御システムの機能概
に準拠したプロトコルに適合することで,制御対象
要を示す。
の CCTV カメラのマルチベンダー化が可能となっ
2.3
機能構成
図2に,監視制御装置と監視制御端末装置の機器
た。
注3)
統合局,監視局等の多地点から,LAN / WAN
を経由して CCTV カメラ制御が行われる。
注3)Local Area Network/Wide Area Network
構成図を示す。
2.3.1
監視制御端末装置の基本性能
表2に,監視制御端末装置の機能概要を示す。
FUJITSU DENSO REVIEW Vol.10 No.1
45
マルチメディア監視制御システム
表2 監視制御端末装置の機能概要
項 目
ディスプレイ部
ハ
ー
ド
ウ
ェ
ア
本体部
ソ
フ
ト
ウ
ェ
ア
表3 監視制御装置の機能概要
内 容
CRTまたはLCD
(RGBで接続)
XGA
(1024×768フルカラー仕様)
CPU:Pentium 350MHz 相当以上
メモリ:256MB
(最低128MB)
ハードディスク:4GB以上
その他:必要に応じて外部(MO/DAT)
装置を接続。
ビデオキャプチャカード:当社指定のキャプチャカード
により,
動画入力する。
OS:WindowsNT*4.0 以上
アプリケーション:マルチメディア監視ソフトパッ
ケージを搭載し,
従来のセンサデータと動画
像や音声を連携した監視制御の操作。
CCTVカメラ制御・ゲート監視制御・監視
データ表示とこれらの連携表示。
CCTVカメラの映像を静止画に変換し,
内部
に保存。
CCTVカメラを自動でコントロールし,
パトロー
ル監視。
*米国Microsoft Corporationの登録商標。
項 目
内 容
標準:入力16×出力16のマトリックススイッチャー
映像切替部
方式による映像切替
オプション:入力32×出力32
標準:入力4映像をディジタル合成し,1映像として出力
映像合成部
オプション:入力9映像,出力1映像
LAN
(TCP/IP)
をシリアル(RS-232C)
にプロトコル
シリアル変換部 変換し,映像切替部,映像合成部ならびにネット
ワーク
(SDH)
へ出力
ルータ/スイッ ルータ:監視制御装置や端局の他工事事務所を連携。
チングハブ
スイッチングハブ:LAN
(10/100BaseT)
の接続。
TM/TC 従来のセンサを主体とした計測制御収集子局との
-IF部 接続を行い、
監視制御端末とはLANで接続。
TM/TC
データ TM/TC-IF部で収集された計測監視データの処理
サーバ
処理部 (定時/正時等)
を行う。
SDH 網内の画像(MPEG 2)のディジタル
信号を切替える。
2.3.2
表3に,監視制御装置の機能概要を示す。
1) CCTV カメラ制御操作
カメラに対して以下の制御を行う。
q
ズーム
w
焦点
e
旋回
r
ワイパー
t
1) シリアル変換(LAN ←→ RS)
LAN プロトコルと RS 手順の相互変換を行
う。
2) 画像の分配切替
画像監視制御端末からの指示によって,入
照明
力した NTSC を,画像スィッチャーを用い
また,カメラの撮像位置を登録するための
て多方向へ分配出力する。
図3に,映像とデータの同時表示の画面例
プリセット登録(プリセット)を行うことが
できる。登録項目には以下のものがある。
q
ズーム
w
焦点
e
カメラ方向
監視制御装置の基本性能
を示す。
3) TM / TC サーバ機能
TM / TC のインタフェース接続とデータ
処理を行う。
2) パトロール制御操作
4) 映像の4画面または9画面合成
あらかじめ指定された順序でカメラ画像を
スキャンして表示する。
監視制御端末で表示する画像を,4分割ま
たは9分割した端末画面のそれぞれに合成し
3) 状態表示
て表示する。
図4は,4分割表示の画面例である。
カメラおよびネットワーク稼働状態を表示
2.3.3
する。
4) 設備制御操作(ゲートの例)
オプション機能
1) 画像ゲートウェイ装置
ゲートの開閉制御は,開度・状態と画像を
見ながら操作する。
MPEG 2画像をリアルタイムに TCP / IPLAN に配信し,汎用端末 (パソコン)の Web
5) 画像配信出力設定操作
ブラウザ等で監視画像の表示ができるように
注4)
画像配信出力を設定し,NTSC の入力を多
方向へ分配出力させる。
2) 画像蓄積サーバ装置
6) ネットワーク(SDH 網)内の画像切替制御
注4)National Television System Committee
46
する。
動画像や静止画像の蓄積を行い,端末から
の要求により必要な場所,時刻等の画像を検
FUJITSU DENSO REVIEW Vol.10 No.1
マルチメディア監視制御システム
索配信する。
2.4
度の数値データと開度状態信号ならびに映像によ
システムの特長
る河川流状況監視やゲート動作状況監視)。
本システムには以下の特長がある。
3) 従来のカメラ自動切替えを,より高度化してプ
1) 操作端末は従来の CCTV 監視で使用していた
専用卓から,汎用パソコンを用いて省スペースと
操作性の向上を実現した。
リセット制御とカメラ切替えの連携による映像パ
トロール機能を実現した。
4) 報告書等に用いる映像を静止画で取り込み,
2) 監視画面は従来型データに加え,映像情報も同
JPEG 形式での保存/切出を可能とした。
一画面で表示し,より視覚的で容易に判断できる
5) SDH ネットワーク(SDH-RING)に接続される1
ように考慮した(ゲート監視制御の例:水位・開
台の CCTV カメラを数か所の監視局で制御した
図3 映像とデータの同時表示の画面例
図4 4 分割表示の画面例
⃝フルモーションの映像を単画面、4
分割の任意の分割数にて表示できま
す。
⃝映像上のカメラコントロー
⃝マップ形式、またはリスト形式のポップアップ
ウィンドウにより簡単にカメラ選択が行えます。
また履歴リストにより最近選択したカメラ一覧か
らの選択も可能です。
ルリモコンから、様々なカメ
ラ制御が行えます。
⃝頻繁に監視するポイントをパソコンに記憶さ
せることが可能です。
⃝記憶した監視ポイントはアイコン化され、次
回からはそのアイコンをクリックするだけで記
憶している監視ポイントまで自動的にカメラ制
御が行われます。
⃝プロジェクタやプラズマディス
プレイなどの外部表示機器に対し
て、出力する映像をコントロール
できます。
⃝各地点に設置されている現場カ
メラのリアルタイム映像をモニタ
に表示します。
⃝設定スケジュールに沿った監視
画面の自動切替により、疑似パト
ロール監視が行えます。
⃝光ファイバ網などの伝送路を介
して接続された各施設の遠隔制御
にも対応できます。
⃝メニューバーの ON/OFF、タイトルバーの
ON/OFF を自由に切替えできます。
図5 道路監視用の操作説明例
FUJITSU DENSO REVIEW Vol.10 No.1
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マルチメディア監視制御システム
り,1か所の監視局で多数のカメラ映像を集中監
の的確な把握が簡単に行えるようになり,操作員の
視できるようにした。
負荷が軽減し,より迅速な対応ができるようになっ
た。
3.適用システム事例
4.
マルチメディア監視制御システムを導入したシス
今回のマルチメディア監視制御システムは,これ
テム事例について,以下に紹介する。
図5に,道路監視用の操作説明例を示す。
3.1
む す び
ゲート監視制御システム
までに当社が開発してきた社会公共システムの各種
監視制御分野に画像・音声を付加し「マルチメディ
河川に設けられたゲートの監視制御を行うシステ
ア化」させるための基本コンポーネントとなるシス
ムであり,これまでは計測情報と状態情報をもとに
テムであり,経済的かつ高機能,高品質のシステム
ゲートの監視および制御操作等を実施していた。
を実現したと考えている。
このため,監視制御を実施するにはある程度のス
今後も,SDH から IP ネットワークへの対応など,
キル(水位から河川状況を判断等)が必要とされて
多様化する市場ニーズに対して迅速かつ低コストに
いたが,マルチメディア監視制御システムを導入し
てシステムのグレードアップを図って行く所存であ
たことによって,画像を見ながらの監視制御ができ
る。
るため,次のことが可能となった。
q
制御操作を迅速に行える。
w
基本操作を習得するだけで,操作が行える。
これまでのシステムと比較すると,より確実に監
視制御を行うことができるようになった。
3.2
道路監視システム
道路に敷設された光回線ネットワークを使用し,
道路上に一定間隔で設置されたカメラで,道路を走
行している車両の走行状態を監視するシステムであ
る。
マルチメディア監視制御システムを導入したこと
によって,複数ポイントの同時監視やプリセット制
御機能/パトロール監視機能による道路周辺あるい
[開発者]左から,武井,秋元,福田,山宮
はトンネル内の異常状態の早期発見および異常内容
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