Kobe University Repository : Kernel Title 発生中のニワトリの中腎における酵素分布の変化 Author(s) 竹畠, 信子 / 苅田, 淳 Citation 神戸大学農学部研究報告, 14(1): 205-210 Issue date 1980 Resource Type Departmental Bulletin Paper / 紀要論文 Resource Version publisher URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81006452 Create Date: 2015-01-31 神大農研報 ( S c i .R e p t .F a c .Agr.KobeU n i v . )1 4 :205-210,1 9 8 0 発生中のニワトリの中腎における酵素分布の変化 竹畠信子・苅田 淳* (昭和 5 4 年 8月1 0日受理) LOCALIZATIONANDCONTENTOFSOMEENZYMESYSTEMS INTHEMESONEPHROSOFTHEDEVELOPINGCHICK NobukoTAKEHATAandJunKANDA Abstract H i s t o c h e m i c a li n v e s t i g a t i o n so fg l u c o s e 6 p h o s p h a t edehydrohenase (G6P-DH), s u c c i n i cdehydrogenase (SDH),a l k a l i n ep h o s p h a t a s e (ALP),anda c i dp h o s p h a t a s巴 (ACP) wereconductedon t h e mesonephros i nc h i c k sfrom3dayo fi n c u b a t i o nt o3d a y sa f t e rh a t c h i n g . On h i s t o l o g i c a l ground t h e mesonephros a r o s eduringt h e3 r d .dayo fi n c u b a t i o nandp e r s i s t e du n t i lt h etimeo fh a t c h i n g .A l lt h eenzymesi n s p e c t e dwered e m o n s t r a b l ed i f f u s e l yi nt h e mesenchymalc e l l sprecedingt h ef o r m a t i o no f mesonephric s y s・ tem,andwered e t e c t e dc l e a r l yi nt h ed i f f e r e n t i a t e dmesonephrict u b u l e,while t h e glomeru1 ie x h i b i t e d n o n e .I nt h ef u n c t i o n i n gmesonephros,ALPwasc o n c e n t r a t e da tt h el u m i n a lb o r d e ro ft h 巴p r o x i m a lt u b u l e, w h i l eACPwasshowna sac o m p o s i t eo fg r a n u l e sd i s t r i b u t e dthroughoutt h ecytoplasmo ft h esames e g m e n t .G6P-DHwasd e t e c t e di n t e n s e l yi nt h eproximalt u b u l e,b u ts l i g h t l yi nt h ed i s t a ls e g m e n t . SDH u tabundantlyi nt h ed i s t a lsegmentandc o l l e c t i n gt u b u . wass c a r e c e l yp r e s e n ti nt h ep r o x i m a lt u b u l e,b l e .Duringt h ep r o c e s so ft h edevelopmentt h e s eenzymeswereg r a d u a l l yi n c r e a s e dt o a peak about 1 3 d a y so fi n c u b a t i o nandd e c r e a s e dfromthent o3daysa f t e rh a t c h i n g .Thea c t u a lm e t a b o l i cr o l ep l a y e dby t h e s eenzymesi nt h emesonephrict u b u l ewasd i s c u s s e d . 発生中のニワトリ腔における中腎の発達と退行につい た。中腎の検索のためには, これらの種卵を常法で耳障卵 て.その機能的消長を組織化学的に把握する試みは早く しながら,騨卵開始後 3日 ( 7 2時間), 6, 日 1 3日 , 1 8 から行われている 1-3)。しかしそれらの研究は,大部分 日の各庄子及び賂卵化後 3日の雛から材料をとったが, が中腎に分布するホスファターゼの位置と増減を追求し 各時期でそれぞれ正常に発達しているとみられる中腎の たもので,その他の酵素と中腎機能との関係については みを観察の対称としすべて i ns i t u の状態で切片とし あまり究明されていない。 た 。 この研究では,ユワトリの中腎機能と脱水素酵素との 関係を明らかにするため、発生の進行とともに発達・退 行する中腎組織について,グルコースー 6-燐酸脱水素 酵素 (G6P-DH)及びコハク酸脱水素酵素 (SDH) 中腎の組織検査のために行った手法は次の通りであ る 。 1)組織形態の観察 採取した組織は REGAUD液で4 8 時間固定したのち 3 の変化を組織化学的に検索したが,併せて,中腎の組織 %重クロム酸カリ溶液で 5日間酸化し, 6 μ のパラフィ 形態の変化とともにアルカリ性ホスファターゼ (ALp) u c h s i n と1ig h tgreenで染色 ン切片として ponceau f や酸性ホスファターゼ (ACP) の変化についても再検 した。 討し,各酵素の意義や酵素相互の関連などを明確にせん とした。 2)酵素の組織化学的検索 採取した組織は直ちに液化炭酸ガスで凍結させたの 実験材料及び方法 1 C個を用い 実験材料として,白色レグホン種の種卵 1 *家畜繁殖学研究室 ら 一2 0 ' Cのクリオスタット内で 1 2 μ の新鮮凍結切片と なし,各酵素の基質液に浸潰した。 まず,脱水素酵素の検出にあたっては,すべての切片 をあらかじめー 2 0 ・ Cのアセトン液に 3 0分間浸潰して脱脂 竹畠{言子・苅田 2 0 6 肪した。 G 6P -DHの検出のためには RUDOLPH.KLE・ IN4)の基質液を用い, 3 7・ Cで60分間浸潰した。また, DHの検出のためには, s 淳 o n s e a uf u c h s i n に染まり, な頼粒が充満して p 核は大 型円形で細胞の基底部寄りに位置していた。この区域の NACHLAS ら5 )の基質液を用 管腔は直径1O ~15μ 程度で,腔内には内容物が存在し い , 3 7 " Cで3 0 分間浸潰した。これらの酵素の組織切片に た。それに続く移行部 ( t r a n t i t i o nsegment) では, 上 おける陽性部位は, 強活性の場合 diformazan の青紫 皮細胞は高さ 8, 1 f 幅4 μ 程度で幾分小型となり, 刺子 色,弱活性では, formazan の赤紫色を呈した。次にホ 縁を欠くとともにその遊離縁は管腔に向って個々に突出 スファターゼの検出にあたっては,凍結切片をあらかじ する傾向を示した。また,その細胞形質はやや明調で, 0分間固定した。アル め冷ホルモール・カノレ・ンウム液で 1 核は惰円形をなして細胞内の基底部寄りから中央部の問 (ALP)の検出のためには GO. MORI6)の方法を用い, i 志賀液には 3 7・ Cで 60分間浸潰し 容物はほとんどみられなかった。次に続く遠位部 ( d i s . た。その陽性部位は硫化コパノレトの沈澱として黒褐色を μ,幅 5 μ 程度の t a lsegment) では,上皮細胞は高さ 5 カリ性ホスファターゼ に位置していた。管腔の直径は 3~10μ で一定せず,内 (ACP)の検出のた 立方状で,細胞形質は陪調,核は円形で細胞の中央に位 めには GOMORI7)の方法を用 L、,基質液には 3 7・ Cで60分 置していた。管腔に向う上皮表面は平坦で,管腔の直径 間浸潰した。その陽性部位は硫化鉛の沈澱として茶褐色 は 5~15μ 程度となった。さらに続く集合管では,上皮 を呈した。 細胞は高さ 1 0 μ 程度の柱状で細胞質は暗調,核は基底部 呈した。また酸性ホスフ y ターゼ 寄りであった。その管股は終末で急に拡大し,中腎管に 観察結果 連絡した。 組織形態の観察 3)癖卵 1 3日の中腎:左右の中腎は極度に発達拡大し 中腎の外形との関連を考慮しながら, p o n c e a uf u c h . s i n . l i g h tgreen染色標本によって観察したが, . 1醐,幡 てそれぞれ直方体に近い楕同体を示し,長さ 7 中腎細 2 . 5 m m 程度となった。その組織構造は,基本的に瞬卵 6 管における区分及びその名称は ROMANOFF8)の記載に 日の場合に類似していたが,中腎小体は充実拡大して直 従った。 径 2 0 0 μ に達するものもあった。また中腎細管は,著し 1)熔卵 3自の中腎:肉眼的な中腎の確認は困難であ く発達するとともに複雑に屈曲し,各区域の特徴はさら ったが,組織学的には,左右の中腎管に接して上皮細胞 に明確に区別された。なお,近位部の延長した末端は上 の集団が認められ,初期の中腎組織として増殖しながら 皮細胞が次第に小型となり,刷子縁も低くなった。各区 体践に向って幾分せり出していた。中腎小体や細管の分 域の管腔の大きさは近位部で 5~15μ, 化はなく,中腎管は厚さ 1 0 μ 程度の単層上皮からなり, μ,遠位部で 12~20μ 程度となりいずれも拡大していた。 管腔は直径 3~5μ を示した。 2)癖卵 6日の中腎:外見では,左右の中腎は体腔の 背壁に接して正中線の両側で縦長の円柱状を塁し,長さ 7mm 程度,横径 2皿程度であった。なお組織標本の横断 面によれば,その左右径が背腹径よりも幾分まさってい た。この時期の中腎の組織構造をみると,中腎小体及び 細管がよく分化し,細管における形態的な区分も認めら れた。すなわち,中腎小体はほぼ球形で,大型のものは 2 μ に達したが,一般に結合組織成分が少なく,血 直径 1 移行部で 5-12 4)解卵 1 8日の中腎:この時期の中腎は,照卵 1 3日の . 7 n n n,掘で ものにくらべて切らかに小型となり,長さ 6 1 .5 m m程度となった。とくに外形では,頭尾両端が萎縮 するため紡錘形に近い形となった。その組織構造では, 細管遠位部の萎縮退行が著しく,細管部分の減少と結合 組織の増加が認められた。近位部でも,管腔が縮小して 直径 2~3μ となり,なかには閉鎖する部分もみられた が,上皮細胞の変化は不明瞭であった。 管分布が著切で、あった。なお, これらの小体は中腎内の 5) Y 際化後 3日の中腎:中腎はさらに小型となり,外 頭側部で正中寄りに集められる傾向があり,孤立した小 形的には尾側部が狭められてそのまま中腎管に続き, と 体はまれであった。中腎細管は複雑に屈曲し,その管E き くに雄では精巣の背側に接して精巣上体様の配置となっ は単層上皮からなっていたが,上皮の形態が部分的に異 た。なお雌でも, 中腎の外形は雄の場合と差がなかっ なるため次のような細管の区域が分別された。まず,小 た。それらの組織構造では,全般的な細管の減少,血管 p r o x i m a lsegment) 体の糸球体包から続く細管近位部 ( の萎縮,結合組織の増大などが認められ,さらに残存す では, 管Eまの上皮が高さ 15~17μ,幅 2;""7μ 程度の立 る細管では管腔が著しく狭められていた。なお残存する 方または柱状細胞からなり,細胞の遊離縁には厚さ 2 μ 細管は主として中腎の中央部に位置し,上皮細胞は高さ 程度の刷子縁がみられた。さらにそれらの細胞では微細 1l ~12μ 程度で席 1] 子縁を有し,細胞内には ponceau f u c h . 2 0 7 ニワトリの中腎の酵素分布 s i n に染まる大型額粒を含み,本来の近位部にあたるも よって細管も萎縮減少し,酵素活性は残存する細管上皮 のと思われた。なお移行部以下の区域はほとんど管構造 の遊離縁で狭い範聞にみられるのみとなった ( F i g . 9 )。 を失って結合組織に変り,中腎小体も線維塊に移行する 4) ACPの変化:騨卵 3日の場合,酵素活性は初期 状態がみられた。 の中腎組織で一様に強い活性を示した。帰卵 6日の中腎 酵素分布の検索 1) G6P-DHの変化:勝卵 3日の伍体では, で、は,酵素活性は中腎細管の細胞形質にのみ検出され, 中腎 とくに近位部の上皮で著しく高く,それに続く細管部で 形成組織において特有の酵素活性が認められ,中腎管も F i g . 1 0 )。勝卵 1 3日では,近位 は幾分低く認められた ( ~~い活性を示した。鮮卵 6 日の中腎では,分化した中腎 部の活性は一段と高まってみられたが,その他の区域 細管の細胞形質で明瞭な酵素活性が認められ, とくに近 では活性が低く,遠位部や中腎小体は無活性であった 位部の上皮で強活性となった。なお小体では,酵素活性 F i g .l1)。勝卵 1 8日では,近位部でも高活性を示す区 く はみられなかった ( F i g . 1)。勝卵 1 3日の中腎では,細 域が減少し,活性低下の傾向がうかがわれた。勝化後 3 管各部の発達とともにその酵素活性も全般的に高まり, 日の場合では,残存する一部の細管で弱い活性がみられ 細管近位部では著しく高い活性を示す細胞もみられた。 るに過ぎなかった ( F i g . 1 2 )。 なお,移行部の活性は中等度,遠位部以下は弱活性とな 考 察 F i g . 2)。解 り,小体はほとんど活性を示さなかった ( 卵1 8日の中腎では,近位部の細管で一部に強活性を示す この研究で観察したニワトリの中腎の組織発生の経過 ものもみられたが,大部分の細管は一様に弱い活性とな はすでに報告されている ROMANOFF8)の記載にほぼ一 り,全般的な活性低下がうかがわれた。癖化後 3日の中 致する。そしてこのことは,筆者らが検索した中腎組織 管に弱い活性を認めるのみと 野では,残存する一部の紹l が正常に発生したことを示している。なおこの研究にお なり,他の区域では微弱な活性をみるのみであった ( F i g . ける酵素分布の検索では, G6P-DH. SDH. AL 3) 。 p,ACPのいずれの酵素も,勝卵 3日における初期の 2) SDHの変化:勝卵 3日の場合,中腎の初期組織 中腎組織から検出されるようになり, m 降卵 6日では分化 で一様に弱い活性がみられた。熔卵 6日の中腎では,中 した中腎細管にのみ活性を示すようになった。さらに, 腎小体を除く細管部の全域において,管壁上皮の細胞形 細管におけるそれらの酵素分布は必ずしも一様でなく, 質に明瞭な酵素活性が検出された。なお,上皮における 酵素活性の強さは細管の区域で異なり,遠位部で最も強 G6P-DH及び ACPは主として近位部上皮の細胞形 質に, ALPは同じ近位部上皮の刷子縁に,また SDH F i g . 4 )。 く,移行部から近位部の順に弱活性となった ( は主として遠位部の細胞形質に検出された。中腎組織に 師 事 卵1 3日の中腎では,酵素活性の全般的な高まりが認め おけるこのような酵素分布の遠いは,それらの酵素が互 られたが,区域による強弱の差はなかった ( F i g . 5)。勝卵 に異なった意義を有することを示すものと思われるが, 1 8日では,遠位部の酵素活性が幾分低下して近位部のそ 細管におけるそれらの意義が明確に説明されたことはな れに近づく傾向がみられた。熔化後 3日では,残存する い 。 WILMER9lは早くから, 一部の細管で中等度の活性が維持されていたが, 細管におけるホスフ その 7 機能的な成体の腎臓では尿 ターゼの活性が高まるが,機能が 他の区域では極めて弱い活性がみられるのみとなった 阻害されればその活性が低下することを指摘していた。 ( F i g . 6) 。 3) ALPの変化:瞬卵 3日の場合,中腎の初期組織 椎動物で,尿細管近位部には必ずホスファターゼが存在 で一様に弱い酵素活性が検出された。勝卵 6日の中腎で すると述べ,その腎機能との関連を示唆している。ニワ は,近位部にあたる細管の上皮において,その席J I 子縁に トリについても, MOOGll や JUNQUEIRA2)は中腎に含 沿う区域で強い活性が観察されたが,細胞の他の部分に 有されたホスファターゼの分布位置や活性の変化を追求 , また LONGLEY と FISHERIO)は いろいろな種類の脊 は活性はみられず,末尾の細管や中腎小体も全く活性を し,その結果から中腎機能の発達と退行の経過を究明せ 示さなかった ( F i g .7)。賂卵 1 3日では, 細管近位部の んとした。さらに MITRAl1)は,ニワトリの中腎におけ 増大とともにその刷子縁における昨索活性も増加した るALPの分布域を詳細に観察し,その活性は細管近{立 が , 活性の分布域はとくに変らなかった ( F i g . 8)。賂 部の刷子縁に局在すると報告しているが, この観察は筆 8日の場合,近位部の刷子縁では高い酵素活性が認め 卵1 者らの場合とよく一致する。硝乳類の場合でも, VETT- られたが,全般的には分布域が少なし近位部の減少が ER と GIBLEy12)はマウスで, LEESON と BAXTER13) うかがわれた。解化後 3日で、は,中腎の全般的な退行に はウサギで,いずれも ALPは中腎の細管近位部で刷子 淳 2 0 8 竹 島 信 子・苅田 i 縁に高活性となることを認めている。また WACHSTEIN 腎機能と関係することはほぼ確実と考えられるが,それ 1 4 )は , を確かめるためにはさらに詳細な研究が必要である。 ヒトを含む各種の日甫乳類の腎臓で, A L Pは必 ず細管の近位部に存在することを報告している。すなわ 要 約 ちA L Pは,脊椎動物を通じて中腎・後腎を間わず,必 ず細管近位部に分布するもので, このことからも, A L 発生中のニワトリの中腎における酵素分布の変化を明 Pが腎機能に直接関連する意義を有することがうかがわ らかにするため,白色レグホン種のニワトリ伍を用い, れる。 A L Pが膜の能動輸送に関係する酵素で,上皮細 癖卵 3日 , 6日 , 1 3日 , 1 8日及び帰化後 3日の中腎組織 グルコースー 6-燐酸脱水素酵素 (G6P- 胞の分必や吸収に関与することはよく知られるところで について, ある。腎臓における A C Pの分布については明確な報告 D H) , コハク酸脱水素酵素 (SDH) ,アルカリ性ホ がない。 GIBLEyI5)は,ニワトリの中腎における A C P スファターゼ (ALp) ,及び酸性ホスファターゼ (A について,その活性は中腎機能の高まる勝卵 8日から出 Cp) の分布を検索した。 現すると述べているが,筆者らの観察では形成初期の中 腎組織から強活性がみられた。ヒトの腎臓の場合, WA' , A C Pの活性はへンレのループ以下の CHSTEINI4)は 6 )は尿細 細管にみられると報告したが, PAKDAMAN ら1 管全体でその活性をみとめている。なおラットの腎臓で は , JACOBSEN ら17)によって, A C Pは近位部の細管 にのみ検出できるといわれている。すなわち,腎におけ るA C P分布に関する報告は一様でないが, この事実 は,腎臓における A C Pの意義が多様であることを示す ものと思われる。 MAUSBACHI8)はラットの尿細管近位 各酵素は勝卵 3日における中腎形成組織でも検出さ れ,分化した中腎組織では細管部にのみ活性を示した。 G 6P-DH は細管の近位部で強活性となるほか,そ の他の細管部でも弱活性を示した。 S D Hは細管の近位部で弱活性,遠位部で強活性とな った。 A L Pは近位部上皮の刷子縁においてのみ強活性を示 した。 A C Pは主として近位部上皮の細胞形質で強活性とな ったが,細管の他の部位に弱活性を示すこともあった。 部にみられる A C Pについて,その活性は上皮細胞のリ これらの酵素活性は,中腎の発達とともにいずれも増 ソソームに在ることを認め,吸収物質の分解に関与する 3日頃で最も顕著となったが,その後は中腎 大し,癖卵 1 と考えている。なお, A C Pは細胞分裂や細胞の分化, の退行とともに減少した。 さらに分泌機能にも関係することが知られているが, 文 献 GIBLEYと CHANGI9)はニワトリの中腎を電顕的に観察 し,細管近位部の上皮細胞に分泌・吸収を示す微細構造 1)乱100G,F . :B i ol .B u l l .,86,5ト 8 0,1 9 4 4 . があることを報告している。 .C .U . : Q u a r t .J .M i c r o .8 c i .,9 3, 2)}uNQUEIRA,L G 6P-DH や S D Hの酵素分布が中腎において検索 された報告はない。成体の腎臓の場合 GOUDER と NADCARNI20) は各種の~虫類の尿細管に G 6P-DHが 高活性になると報告し, W ACHSTEINI4)や PAKDEMAN ら1 5 )はヒトの尿細管について, G6P-DHは近位部で 強活性となるほかへンレのループにも存在すること、 S D Hは細管の全域でみられるほか遠位部で強活性となる ことなどを記載している。そして,両酵素のそのような 分布様式は,筆者らがニワトリの中腎について観察した 同じ酵素の分布に一致しそれら酵素の腎臓における一 2 4 7 2 5 7,1 9 5 2 . 3)SALZGEBER,B . : J . Embryol .E xp. Morph.,1 5 , 3 9 7 4 1 9,1 9 6 6 . . KLEIN: H i s t o c h i m i e,4, 4) RUDOLPH,G. and H.J 2 3 8 2 5 1 ,1 9 6 4 . 5)NACHLAS,M.M.,K .C.Tsou,E.DESOUZA,C . .H i s t o c h e m . S .CHANGandA.M.SELIGMAN:J C y t o c h e m .,5, 420, 1 9 5 7 . 6)GOMORI,G . : P r o c .8 0 c .Exp.B i ol .M ed.,42,2 3 9 3 9 . -25,1 般的配置を示すものと思われる。この場合にみられる G 7)GOMORI,G . : A r c h .P a t h .,32,1 8 9,1 9 41 . 6P-DH の意義について, WACHSTEINI4)は , 8) ROMANOFF,A .L .:TheAvianEmbryo,792-806, 細管に おける慌の再吸収とその分解に関係すると考えている。 S D Hと腎臓との関係についてはまだほとんど知られて いない。しかし筆者らの観察によれば, S D Hは機能的 な中腎では細管遠位部にきわめて高い活性を示し,機能 の低下とともに酵素活性も退行した。従って, S D Hが MacmillanC o ., NewYork, 1 9 6 0 . r c h .P a t h .,37,227-237, 9)WILMER,H. A.:A 1 9 4 4 . 1 0 )LONGLEY, J .B .andE.R.FISHER:Anat.R e c ., 1 2 0, 1 2 2,1 9 5 4 . ニ ワトリの1 ' ' 時の醇J 草分有J 2 0 9 3 、 -r 2 1 0 竹 島 信 子 ・ 苅 田 1 1 )MITRA, S .:ActaH i s t o c h e m .,2 6,4 6 5 3,1 9 6 7 . i 事 .U r o l .,8 7,3 0 9 3 1 0,1 9 6 2 . NER:J M.R .andG.W.GIDLEY:J .Morph., 1 2 ) VETTER, ,N.0., F .JORGENSENandA.C .THO. 1 7 )JACOBSEN 1 2 0,1 3 5 1 5 6,1 9 6 6 . 1 3 )LEESON ,T.S .andJ .S .BAXTER:J .A n a t .,9 1, MSEN:J .H i s t o c h e m .C y t o c h e m .,1 5,4 5 6 4 6 0, 3 8 3 3 9 0,1 9 5 7 . 1 9 6 7 . .B . N ature,202 ,1131-1132, 1 8 )MAUSBACH,A M.:J.H i s t o c h e m .C y t o c h e m .,3 , 2 4 6 1 4 )WACHSTEIN, 1 9 6 4 . 1 9 )GIBLEY, C .W.and J .P . CHANG: J . Morph., 9 5 5 . 2 7 0,1 C .W.:TxasR e p .B i ol .M ed.,2 5, 3 8 0 1 5 )GIBLEY, 9 6 7 . 3 9 5,1 1 6 ) PAKDAMAN, P ., A .A.STEIN and W. A . MIL- 1 2 3, 4 4 1 4 6 2,1 9 6 7 . B .Y .M.and V. B . NADKARNI J . 2 0 ) GOUDER, H i s t o c h e m .C y t o c h e m .,5 0,9 1 9 7,1 9 7 4 . Explanationo fF i g u r e s Photographso fe n z y m a t i cd i s t r i b u t i o ni nt h emesonephrics e c t i o n st a k e na t1 0 0x .F i g s .1 3r e p r e s e n t s .4-6, s u c c i n i cd e h y d r o g e n a s e ; 五g s .7-9 ,alkaJ inep h o s p h a s e ;and g l u c o s e 6 p h o s p h a t ed e h y d r o g e n a s e ;五g 五g s .1 0 1 2, a c i dp h o s p h a t a s e . 1 ) Mesonephrosfromac h i c k6dayo fi n c u b a t i o n . 2 ) Mesonephrosfromac h i c k1 3dayo fi n c u b a t i o n . 3 ) Mesonephrosfromac h i c k3d a y sa f t e rh a t c h i n g . 4 ) Mesonephrosfromac h i c k6dayo fi n c u b a t i o n . 5 ) Mesonephrosfromac h i c k1 3dayo fi n c u b a t i o n . 6 ) Meconephrosfromac h i c k3d a y sa f t e rh a t c h i n g . 7 ) Mesonephrosfromac h i c k6dayo fi n c u b a t i o n . 8 ) Mesonephrosfromac h i c k1 3dayo fi n c u b a t i o n . 9 ) Mesonephrosfromac h i c k3d a y sa f t e rh a t c h i n g . 1 0 ) Mesonephrosfromac h i c k6dayo fi n c u b a t i o n . 1 1 ) Mesonephrosfromac h i c k1 3dayo fi n c u b a t i o n . 1 2 ) Mesonephrosfromac h i c k3d a y sa f t e rh a t c h i n g .
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