(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 P偏光した照明光を、試料を裁置した

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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 P偏光した照明光を、試料を裁置した基
板に対してブリュスター角を以て入射させ、その反射光
を結像レンズの中央ではなく端に入れて非軸光学系にす
ることにより、像面に垂直な軸と顕微鏡の光軸との傾斜
角度を小さくしたことを特徴とする全焦点反射型光学顕
微鏡。
【請求項2】 上記像面に合わせるようにCCDカメラ
の光電面を配置したことを特徴とする請求項1記載の全
焦点反射型光学顕微鏡。
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【請求項3】 上記顕微鏡の照明を倒立型にすることに
より、空気より屈折率の大きな基板側から照明光を入射
することによりブリュスター角を小さくし、焦点をあわ
せることを特徴とする全焦点反射型光学顕微鏡。
【請求項4】 上記照明光としてレーザー光を用いたこ
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とを特徴とする請求項1、2又は3記載の全焦点反射型
光学顕微鏡。
【請求項5】 上記照明光として、コリメートさせた白
色光を用いて、干渉縞やその他の光学ノイズを除去する
構成としたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の
全焦点反射型光学顕微鏡。
【請求項6】 上記白色光を分散プリズムを通過させ
て、波長分散を補正する構成としたことを特徴とする請
求項5記載の全焦点反射型光学顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、超薄膜や物質表面
の構造を観察するための、全面に焦点のあった反射型光
学顕微鏡装置に関するものであり、さらに詳細には、光
学ノイズの除去を可能にする白色照明反射型顕微鏡及び
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その角度分散補償装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、基板上の超薄膜試料を観察するに
は、P偏光(入射面内に偏光した光)した平行照明光
を、基板上の超薄膜試料に対して、基板のブリュスター
角で入射し、反射光を結像光学系を用いて肉眼あるいは
CCDカメラで観察するブリュースター角顕微鏡(BA
M)が用いられてきた。
【0003】ブリュスター角では、基板からのP偏光の
反射は消失する(現実には反射率は百万分の一程度に留
まる)ので、基板と異なる屈折率を持つ試料からの反射
のみが選択的に観測される。ナノメートル以下の厚さの
薄膜についても、厳密にブリュスター角を設定すること
で、高いコントラストでの薄膜構造の観察が可能であ
る。水面上の有機分子の単層膜(ラングミュア膜)やラ
ングミュア・ブロジェット膜、および、種々の超薄膜の
観察に幅広く活用されている。
【0004】BAMをさらに一般化した顕微鏡として、
エリプソメトリー顕微鏡が開発されている。歴史的には
BAMに先行する技術であり、エリプソメトリーの原理
を活かして、膜厚や屈折率の定量的計測が可能である
が、装置の構成が複雑であるために普及していない。
【0005】ところで、従来のBAMおよびエリプソメ
トリー顕微鏡では、図4に示されるように、ガラスや水
等の基体となるもの(以下、本明細書では「基板」とい
う。)面の上の観察対象試料34に対して、レーザー3
1からのP偏光された平行な照明光32が斜め方向にブ
リュスター角θをもって入射され、この照明光32の対
称な反射光35を結像させる結像レンズ33を備える通
常の顕微鏡を用いて観察する。このブリュスター角θ
は、水の場合53度、ガラスでは57度である。
【0006】このため、薄膜試料34の像面36は、光
軸35に対して垂直ではなく傾斜して形成されることに
なり、光軸35と通常垂直に設けられるCCDカメラの
光電面37の光軸との交点近辺を除いて全面的には焦点
を合わせることができない。従って、BAM像の質は、
歪みが形成され、通常の光学顕微鏡に比べて著しく劣っ
ており、分解能も像内で不均一であるという問題があっ
た。
【0007】又、ブリュースター角θでの照明を行うた
めには、入射光は十分にコリメートされた平行光でなく
てはならないので、従来のBAMでは、例外なくレーザ
ー光が照明に用いられているが、レーザー光は輝度と干
渉性が極めて高いため、光学部品や埃からの散乱が視野
にしばしば混入して、完全に除去できない干渉縞などの
ノイズを発生する。
【0008】仮に、このノイズが完全に除去されたとし
ても、非焦点では干渉によって原理的に偽イメージが生
ずるために、像の視認性の劣化が起こる。
【0009】さらに、単色レーザー光を用いるために試
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料の光吸収特性や波長分散などのスペクトル情報が得ら
れないことも、問題点の一つである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、こ のよう
な従来の問題点を解決することを目的とするものであ
り、基板上の超薄膜の像を反射型顕微鏡で観察する際
に、全面に焦点が合うよう全焦点反射型光学顕微鏡を提
供することである。
【0011】
【0012】さらに、上記全焦点反射型光学顕微鏡に、
白色光を適用して、全面に焦点を合わせることを可能と
するとともに、干渉縞やその他の散乱光を除去するとい
う相乗的な機能を発揮する白色照明による全焦点反射型
光学顕微鏡を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決することを目的とし、P偏光した照明光を、試料を裁
置した基板に対してブリュスター角を以て入射させ、そ
の反射光を結像レンズの中央ではなく端に入れて非軸光
学系にすることにより、像面に垂直な軸と顕微鏡の光軸
との傾斜角度を小さくしたことを特徴とする全焦点反射
型光学顕微鏡を提供する。
【0014】上記像面に合わせるようにCCDカメラの
光電面を配置してもよい。
【0015】上記顕微鏡の照明を倒立型にすることによ
り、空気より屈折率の大きな基板側から照明光を入射す
ることによりブリュスター角を小さくし、焦点をあわせ
るこような構成としても良い。
【0016】上記照明光としてレーザー光を用いてもよ
い。
【0017】上記照明光として、コリメートさせた白色
光を用いて、干渉縞やその他の光学ノイズを除去できる
構成としてもよい。この場合、白色光を分散プリズムを
通過させて、波長分散を補正できるような構成としても
よい。
【0018】
【0019】
【発明の実施の形態】発明の実施の形態を実施例にもと
づき図面を参照して説明する。図1は本発明に係る全焦
点反射型光学顕微鏡の第1の実施例を示している。図1
において、全焦点反射型光学顕微鏡では、レーザー光源
1からのP偏向した平行光である照明光2が、空気から
基板3に対するブリュスター角θ1 で、基板3上の薄膜
試料4に入射され、その反射光5を、開口数(NA)の
大きい結像レンズ6で、CCDカメラの光電面7(図1
の点線で示される。)上に結像させ像面8(図中実線で
示される。)を形成するように構成されている。
【0020】この反射光5の結像にあたって、反射光5
は、結像レンズ6の中心ではなく、端を通るように、結
像レンズ6を配置し、さらに、CCDカメラの光電面7
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は、像面8に一致するように、結像レンズ6の光軸9に
対して垂直ではなく、傾斜してずらして配置している。
【0021】実施例1に係る全焦点反射型光学顕微鏡の
作用を説明する。レーザー1から照明光2が、ブリュス
ター角θ1 をもって基板3上の薄膜試料4に照射され
る。すると、基板3の面に照射されたP偏光は消去さ
れ、薄膜試料4からの反射光のみが、結像レンズ6の光
軸9上であって、CCDカメラの光電面7上に結像し像
面8を形成する。
【0022】この場合、反射光5は、結像レンズ6の中
心ではなく端を通るから、像面8の中心における像面に
垂直な軸と結像レンズ6光軸のずれを、従来の技術に比
べて小さくするとともに、像面がCCDカメラの光電面
7上に形成されるので、歪み成分が少なくなり、良好の
画像が形成される。
【0023】図2は、本発明に係る全焦点反射型光学顕
微鏡に係る実施例2を示す。この実施例2は、倒立型の
顕微鏡であり、レーザー10からのP偏向した照明光1
1を、薄膜試料12の載置された基板13側から、基板
13から空気へのブリュスター角θ2 で入射し、薄膜試
料12による反射光14を、結像レンズ15を通してC
CDカメラの光電面16上に結像する。
【0024】この配置では、像面(図2中の実線で示さ
れる。)17と、反射光14に対して垂直に置いたCC
Dカメラ光電面(図2中の点線で示される。)16との傾
斜角度の差δは、さほど大きくならないから、歪みも小
さくなる。
【0025】図3は、本発明の実施例3を示すものであ
り、白色照明反射型顕微鏡である。図3に示される実施
例3では、レーザーではなく、白色光源18を設け、照
明光20として白色光を利用する。白色光源18からP
偏光した白色光が、拡散しないように光ファイバー19
を通し、光ファイバー19から出てきた照明光20をコ
リメートレンズ21で略平行光とする。
【0026】そして、照明光20の波長分散を補正する
ために、分散プリズム22又はグレーティングを通し、
組合せレンズ23、24で、それぞれの波長に対応し
た、空気から基板25へのブリュスター角で、P偏向し
た照明光20を、基板25上の薄膜試料26に照射す
る。薄膜試料26からの反射光27を、結像レンズ28
でCCDカメラの光電面29に像面30を結像させる。
【0027】この実施例3では、照明光20として白色
光を使用し、コリメートレンズ21で略平行光としたの
で、レーザー光使用時の問題である干渉縞を除去するこ
とができ、しかも、分散プリズム22又はグレーティン
グで波長分散を補正することにより、白色光に含まれる
すべての波長の光をそれぞれのブリュスター角で基板2
5上に入射させることができる。
【0028】この図3中では示さなかったが、反射光2
7を実施例1と同様に結像レンズの中央ではなく端を通
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して非軸光学系にすることにより、実施例3の作用効果
に加えて、像面に垂直な軸と顕微鏡の光軸との傾斜角度
を小さくし、全面に焦点を合わせることを可能とすると
いう相乗的な機能、作用効果を奏する白色照明による全
焦点反射型光学顕微鏡を実現することができる。
【0029】
【発明の効果】本発明は、以上に説明したように構成さ
れているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0030】試料から斜めに反射された光を、結像レン
ズの中心ではなく、端を通して結像させることにより、
結像系の反射角度をブリュスター角より小さくすること
ができる。
【0031】さらに、CCDカメラの光電面を、光軸法
線から実際の像面方向へとずらすことにより、ほぼ全面
に焦点を合わせることができる。
【0032】また、空気よりも基板の方が通常屈折率が
高いため、照明光を基板から空気側へと逆に通せば、ブ
リュスター角が小さくなるので、この配置にすること
で、像の歪みを小さくすることができる。
【0033】また、コリメートした白色光を照明に使う
ことで、レーザー光の時に現れる干渉縞を除去すること
ができる。
【0034】さらに、さまざまな波長の光が集まった白
色光を使うために、試料の反射スペクトル情報をも得る
ことができる。
【0035】ここでは、白色光の場合に問題となる波長
分散を、分散プリズム又はグレーティングで補正するこ
とにより、すべての波長の光をそれぞれのブリュスター
角で入射させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例を示す図であり、非軸光
学系と傾斜CCDによる全視野焦点ブリュスター角顕微
鏡の図である。
【図2】本発明の第2の実施例を示す図であり、倒立型
ブリュスター角顕微鏡の図である。
【図3】本発明の第3の実施例を示す図であり、角度分
散補償白色照明を用いたアクロマティック・ブリュスタ
ー角顕微鏡の図である。
【図4】従来のブリュスター角顕微鏡を示す図である。
【符号の説明】
1、10
レーザー
2、11、20
照明光
3、13、25
基板
4、12、26
薄膜試料
5、14、27
反射光
6、15、28
結像レンズ
7、16、29
観察面(CCD光電面)
8、17、30
像面
9
光軸
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白色光源
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光ファイバー
* 顕微鏡を提供する。
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コリメートレンズ
【解決手段】 P偏光した照明光2を、薄膜試料4を裁
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分散プリズム
置した基板3に対してブリュスター角θ1 を以て入射さ
23、24
レンズ25
せ、その反射光5を結像レンズ6の中央ではなく端に入
【要約】
れて非軸光学系にすることにより、像面8に垂直な軸と
【課題】
基板上の超薄膜試料を反射型顕微鏡で観
顕微鏡の光軸9との傾斜角度を小さくし、又、像面8に
察する際に、全面に焦点が合うような全焦点反射型光学*
合わせるようにCCDカメラの光電面7を配置した。
【図1】
【図2】
【図4】
【図3】
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フロントページの続き
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(58)調査した分野(Int.Cl. ,DB名)
G02B 19/00 - 21/00
G02B 21/06 - 21/36
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