GNU Radioを用いたウィンド プロファイラー用デジタル受信機の開発

GNU RADIOを用いたウィンド
プロファイラー用ディジタル受信機の開発
脇阪洋平1・橋口浩之1・山本衛1・山本真之1・妻鹿友昭1・今井克之2
( 1: 京大生存研, 2: 住友電工(株) )
発表の流れ
ウィンドプロファイラについて
 研究背景、目的

 LQ7システムについて
 ディジタル受信機の開発について
 試験観測について
 まとめ
ウィンドプロファイラーとは
高度ごとの大気から散乱された電波の周波数変化から風速を
測定するレーダー装置
 観測の仕組み


上空の乱流により温度・水蒸気が変動し、大気の屈折率擾乱が生じる
大気の屈折率擾乱によるエコーを受信し、エコーのドップラーシフトか
ら風速を求める
 風速から乱流の詳細を知ることができる

電波は屈折率の不連続面で屈折・反射しながら伝播する
ウィンドプロファイラーとは
上空からのエコー

距離測定について

対象までの距離 r

距離分解能 Δr
ドップラー効果を用いて風速を計算

最大距離 ra
t : パルスを送信してからの時間
τ : パルス幅
T : パルス繰り返し時間
c : 光速 3×108 m/s
上空からの風速
背景
大気乱流の詳細構造を把握するために、大気レーダー(ウィンドプロ
ファイラー)による3次元イメージング観測は有効である

多周波送受信 : 複数の周波数を用いた観測

多チャンネル受信 : 複数のアンテナを用いた観測
Altitude (km)
Altitude (km)

time
time
通常観測
周波数領域干渉計(FDI)観測
N-S
E-W
周波数領域干渉計(FDI)
+ 空間領域干渉計(SDI)観測
背景

高度2km以下の下層大気における乱流の3次元構造を観測可能と
することを目的として、ルネベルグレンズアンテナ7台を用いた小型
ウィンドプロファイラー(通称:LQ7)の改良により、イメージング・ウィ
ンドプロファイラーの開発を行っている

既にウィンドプロファイラーは、多周波送受信が可能である

多チャンネル受信を可能にするためには複数の受信機が必要
開発中のイメージング・ウィンドプロファイラー
目的
 ディジタル受信機の開発

受信処理をソフトウェアで変更でき、周波数領域干渉計
(FDI)観測、空間領域干渉計(SDI)観測が可能な受信機

ソフトウェア無線を利用し、ソフトウェアの書き換えのみ
で受信周波数や受信帯域を変更できる柔軟性の高い
受信機
LQ7システム(住友電工と京大RISHの共同開発)
ルネベルグ・レンズ・アンテナ
送受信周波数: 1357.5MHz
アンテナ
送受信装置
(出力: 2.8kW)
信号処理装置
2.5m
電源装置
データ処理装置
LQ7との接続
今回追加した回路
USRP2のブロック図
LNA
Down
Converter
(40dB)
(40dB)
(3MHz)
USRP2
130MHz IF
A/D
I Q
100MHz 130MHz
USRP2
Daughter
Board
USRP2
Daughter
Board
USRP2
25MHz
CIC
Filter
Range
Sampling
Pulse
Compression
・・・
デシメーション
間引き率 4
PC
USRP: Universal Software Radio Peripheral
CIC: Cascaded Integrator Comb
FIR: Finite Impulse Response
ウィンドプロファイラー用ディジタル受信機開発について

同調動作を行うためのファームウェアの変更

USRP2の内部クロックを外部入力信号(LQ7の100MHz基準信号)で
ロック
送信波との同調が可能になった
 複数のUSRP2を使用した観測を行う際に同調動作が可能になった


ウィンドプロファイラー用の受信方式の開発
PPS端子にトリガパルスを入力し観測開始のタイミングを同期
 PPS端子に定期的にトリガパルスを入力しレンジずれを補正


タイムスタンプを利用して、パケットから必要なデータを取得する
受信方法を実装
試験観測について
LQ7からのIF信号を7合成し、開発したディジタル受信機(USRP2)
に入力して観測を行った
 LQ7、USRP2の観測は同時刻(2010年05月12日 12時24分)に行った
 USRP2の受信帯域は25 MHz に設定

LQ7とUSRP2の平均ドップラー速度の比較
LQ7とUSRP2の平均ドップラー速度の散布図
観測データ4例(5方向、観測データ数 380個)
 SNRが2dB以上の120点データを用いた
 相関係数 : 0.99
 回帰直線 : y = 0.99 x – 0.017
 LQ7とUSRP2の差の標準偏差



0.20 [m/s]
インコヒーレント積分などの
処理を行い、精度の向上を
目指す
まとめ
 受信機の開発状況



LQ7の送信パルスに同期した信号を受信できた
LQ7からのリファレンス信号により同調できた
実観測データに対してパルス圧縮復号などの信号処理を行
い、LQ7の観測結果との比較から動作を確認した
 今後の予定



システムの安定度を高め長時間の連続観測
クラッター除去に必要な適応信号処理の実装
FDI、SDI による空間イメージング処理の実装
クラッタエコー
USRP2
USRP2
GNURADIOを受信機と使用した感想
サンプルであるrx_streaming_samples.ccを変更し受信ソフト
を開発
 リファレンス用端子やトリガ入力用端子も使用
 連続観測試験なども現在行っている
 ファームウェアについての資料が少なかった
 通信用受信機以外の動作にも利用が可能なことを実感
 デシメーション=4ではかなり動作はシビアになり、
ネットワークカード等により動作が異なっていた
