土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月) Ⅴ-344 道路トンネルにおける中流動コンクリートの試験施工 鉄建建設 正会員 ○西脇敬一 西日本高速道路 鉄建建設 山下密広 正会員 鉄建建設 川又 篤 唐沢智之 1.はじめに 一般に覆工コンクリートには、スランプ 15cm 程度のコンクリートが用いられている。しかしながら、締 固め作業が困難であることから、特に天端部ではジャンカなどの初期欠陥を生じる場合も見られる。このた め、軽微な締固めでも優れた充てん性を有する中流動コンクリート(スランプフロー45cm 程度)を覆工に 適用することを考え、昨年度までに基礎的な性状を確認してきた 1)。そのような中、今回、道路トンネルで 中流動コンクリートを試験的に施工する機会を得たので、その結果を報告する。なお、今回の試験施工は、 新しく発行されたトンネル施工管理要領(中流動覆工コンクリート編)2)を参考として行った。 2.施工概要 表-1 中流動コンクリートの配合 (1)コンクリートの配合および必要性能 中流動コンクリートの配合は、表-1 に 示すように繊維を混入しない配合(以下:通 常配合と称す)と繊維補強の配合(以下:繊 配合 No. 水 セメント比 W/C (%) 細骨材 率 s/a (%) 通常 繊維 46.5 44.6 50.0 50.0 単位量(kg/m3) 水 セメント 細骨材 細骨材 粗骨材 繊維 W 165 165 C 355 370 S1 260 258 S2 630 626 G 882 875 F 維配合と称する)の 2 種類とした。 セメントは、 生コン工場に一般的に既存される高炉セメント B 種とし、 繊維には PVA 繊維を使用した。その他の使用材料および緒物性は、既往 の文献 1)と同じものである。 コンクリートの必要性能は、フレッシュ時における主なものとして表 3.9 高性能 AE 減水剤 SP 2.66 2.96 表-2 コンクリートの必要性能 必要性能 評価値 流動性 スランプフロー 45±5cm 材料分離抵抗性 目視で分離がないこと 280mm以上 自己充てん性 U形充てん高さ (障害なし) 空気量 4.5±1.5% -2 のように定めた。繊維配合の必要性能は、繊維混入後の値である。 (2)施工箇所 高さ 施工箇所は、覆工厚さ 300mm で、延長は 1 スパンの 10.5m であり、表 3.10m -1 の配合毎に 1 スパンの施工とした。なお、通常配合の施工箇所は無筋 1.95m で、繊維配合の施工箇所は、D19 の鉄筋が配筋される区間であった。 0.90m 図-1 側圧の測定位置 (3)締固め方法 締固めは、中流動コンクリートの特性を最大限に引きだすため、筒先か ら排出された直後は行わず、自由流動が概ね停止した時点で、上面が水平 になる程度の振動を棒状バイブレータにより与える方法とした。また、天 端部で検査窓を閉鎖した後は、型枠バイブレータにより締固めを行ったが、 過度な締固めによる材料分離に十分に留意した。 (4)側圧測定 流動性の増大がセントルに及ぼす影響を確認するため、図-1 に示すセ ントルの位置で側圧の測定を行った。なお、比較として、他の施工スパン でスランプ 15cm の普通コンクリートも同様の測定を行った。 写真-1 スランプフローの試験結果 3.施工結果 (通常配合) (1)施工性 スランプフローの試験結果を一例として写真-1 に示す。スランプフローは、通常配合で 44.5~45.5cm、 キーワード トンネル、覆工コンクリート、中流動コンクリート 連絡先 〒286-0825 千葉県成田市新泉 9-1 鉄建建設㈱ TEL.0476-36-2355 -685- 土木学会第64回年次学術講演会(平成21年9月) Ⅴ-344 繊維配合で 46.5~48.5cm の範囲となり、 天端吹上げ部 肩部 設定した所要の流動性を全ての品質管理試 験で満足するものであった。 打設時のコンクリートの流動状況を写真 -2 と写真-3 に示す。粗骨材は、分離する ことなく流動しており、鉄筋の背面にもコ ンクリートがまわり込んでいることが確認 写真-2 コンクリートの流動状況(通常配合) できる。また、打設時には、スランプ 15cm の普通コンクリートに比べ、軽微な締固め で打込み面がほぼ水平になる状況が確認で きた。これらより、中流動コンクリートは、 適切な材料分離抵抗性を有しており、普通 コンクリートに比べ、良好な充てん性を有 すると判断された。 天端吹上げ部 側壁部 写真-3 コンクリートの流動状況(繊維配合) (2)側圧 通常配合の側圧の測定結果を図-2 に、スランプ 15cm の普 0.08 通コンクリートの側圧の測定結果を図-3 に示す。中流動コン 0.06 一方、普通コンクリートでは、同じ 0.90m の位置で、測点より 側圧(MPa) クリートの場合、例えば測定高さ 0.90m 位置において、側圧は 測点より 2.5m 程度の打設高さで増大する傾向がなくなった。 コンクリートの単位容積質量を2.3t/m3 とした場合 の液圧計算値 0.07 0.05 0.04 0.03 0.02 1.5m 程度の打設高さで側圧が増大する傾向が見られなくなっ 測定高さ0.90m 測定高さ1.95m 測定高さ3.10m 0.01 た。他の測点および繊維配合の中流動コンクリートも同様の傾 0.00 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 向を示し、今回の試験においては、中流動コンクリートは、液 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 打設高さ(m) 図-2 側圧の測定結果 圧として作用する打設高さが普通コンクリートに比べ高くなる (通常配合の中流動コンクリート) 結果となった。 (3)脱枠後の外観 0.06 0.05 されていることが確認された。また、天端部は、写真-4 に示 0.04 すように普通コンクリートの場合にまれに見られる色むらなど 側圧(MPa) 脱枠後の目視観察では、妻部もコンクリートが確実に充てん 0.03 もなく、非常に良好であった。 0.02 4.おわりに 0.01 今回の試験施工によって、中流動コンクリートは、普通コン 0.00 0.0 クリートに比べ充てん性および施工性に優れ、また、硬化後の 外観状況も良好であることが確認された。ただし、今回の試験 測定高さ0.90m 測定高さ1.95m 測定高さ3.10m コンクリートの単位容積質量を2.3t/m3 とした場合 の液圧計算値 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 5.0 5.5 6.0 6.5 7.0 打設高さ(m) 図-3 側圧の測定結果(普通コンクリート) の範囲では、セントルに作用する側圧が普通コンクリートに比べ大きく なったことより、今後さらなる検討が必要であると思われる。 参考文献 1)川又・西脇・唐沢・松岡:中流動コンクリートの基礎的研究,土木学 会年次学術講演会講演概要集,第 5 部,Vol.63,pp745-746,2008.9 2)東日本・中日本・西日本高速道路株式会社:トンネル施工管理要領(中 流動覆工コンクリート編),平成 20 年 8 月 写真-4 脱枠後の外観(通常配合) -686-
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