【論点3及び論点4関係:精神疾患の悪化の公務起因性、治癒(症状固定)】

【論点3及び論点4関係:精神疾患の悪化の公務起因性、治癒(症状固定)】
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指針改正案
(本文)
6 既に発症している精神疾患の悪化の公務起因性
一般に、既に精神疾患を発症して治療が必要な状態にある者(過去に精神疾患を
発症したが既に症状が消失又は安定している(寛解状態にある)者を除く。)が、
当該疾患の悪化の前に大きな業務負荷が認められたことをもって、直ちにそれが悪
化の原因であるとまで判断することは困難であるが、少なくとも、既に精神疾患を
発症している職員本人の要因が公務起因性の判断に影響することが非常に少ない極
めて強い業務負荷がある場合、例えば、生死に関わる又は永久に労働不能となる後
遺障害を残す公務上の病気やケガをし、その後おおむね6か月以内に精神疾患が自
然経過を超えて著しく悪化したと医学的に認められる場合については、その業務負
荷が悪化の原因であると推認して、公務起因性を認めるものと取り扱うこと。
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治癒(症状固定)
(2) 精神疾患の治癒
精神疾患の診断は、人間の変化する精神活動が対象となるため、症状が消失又
は安定しても将来における変化の可能性は否定しきれないという特質を有する
が、災害補償制度においては、症状が消失又は安定した場合には、治癒(症状固
定)の判断を行うこととする。すなわち、災害補償制度が公務に起因する傷病に
対する補償責任を果たすものであることに鑑みれば、精神疾患の場合には、一般
的に公務災害による症状が必要な治療により軽快し通常の勤務(一般に正規の勤
務時間の勤務)が可能と判断される状態となり、その状態が安定したときには、
一般の傷病と同様に治癒(症状固定)したものと取り扱うものとする。
具体的には、精神疾患の症状が治療により消失し、その状態が医学経験則に照
らし安定したと認められる場合は勿論のこと、急性期を経て回復はしたが軽度の
残存症状を残したまま安定期に移行した場合についても、通常の勤務(一般に正
規の勤務時間の勤務)が可能と判断される状態となり、その状態が医学経験則に
照らし将来においても継続することが見込まれるときは、治癒(症状固定)した
ものと取り扱うものとする。
(4) 精神疾患を再び発症した場合における取扱い
治癒(症状固定)認定後、一定期間を経過して再び精神疾患を発症した場合に
おける公務起因性については、当初の精神疾患と再び発症した精神疾患との関連
性について専門医の所見を聴取した上で、その時点における業務負荷の過重性等
を検討すること。
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改正案の考え方
「6 既に発症している精神疾患の悪化の公務起因性」の表現振りについては、労災
の専門検討会報告書の考え方を基本的に踏襲しているが、国公災指針では、労災の「特
別な出来事」に該当する分類を設けていないため、指針本文の中に、極めて強い業務負
荷がある場合のうちのいずれかを例示することにより、精神疾患が悪化した場合に公務
が起因すると判断できる場合があると示すことが考えられる。
なお、
「生死に関わる又は永久に労働不能となる後遺障害を残す公務上の病気やケガ」
を挙げているが、これはあくまでも例示であって、これ以外の労災における特別な出来
事(業務に関連して他人を死亡させた場合、強姦を受けた場合、月160時間以上の超
過勤務等があった場合等)も、その後概ね6月以内に精神疾患が著しく増悪したときに
は同様に取り扱うことが考えられ、また、特別の出来事には至らない程度の強い業務負
荷を受けた場合(例えば、自らの死を予感させる程度の事件・事故の体験等)の公務起
因性の可能性を否定するものではない(ケースバイケースで判断)。
「7 治癒(症状固定)」については、労災の専門検討会報告書の中に、通常の就労
(一般に1日8時間の勤務)が可能な状態で、寛解(=治療により精神障害の症状が現
れなくなった状態や安定した状態)と診察されている場合には、労災保険制度における
治癒の状態にあると考えて良い旨の考え方が示された。
このことを踏まえ、国公災においても、症状が安定(寛解状態)していて補償制度上
治癒(症状固定)したものと取り扱う前提の「勤務が可能」の意味合いについては、
「通
常の勤務(一般に正規の勤務時間の勤務)が可能」と判断される状態を指すものである
ことを認定指針本文に明示することが考えられる。
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議論(確認)事項
○ 「既に発病している精神疾患の悪化の公務起因性を認める場合」については、本人
が寛解状態にある場合は除くということで差し支えないか。
○ 「生死に関わる又は永久に労働不能となる後遺障害を残す公務上の病気やケガ」が
あって、その後6月以内に精神疾患が増悪した場合には、公務に起因するものである
と整理することは適当か。また、他の出来事についても同様とすることができるか。
○
寛解状態にある者が精神疾患を発症した場合の取扱いは、引き続き、現在の認定指
針「7 治癒(症状固定)(4)精神疾患を再び発症した場合における取扱い」によ
ることが適当と考えて差し支えないか。