労災保険における傷病が「治ったとき」(症状固定)とは?

労災保険における傷病が「治ったとき」
(症状固定)とは?
刈谷労働基準監督署
【質 問】
私は、業務中に負傷し、労災保険で治療を継続していますが、症状固定では
ないかという話が出ています。症状固定とは何ですか?
【回 答】
労災保険における傷病が「治ったとき」とは、身体の諸器官・組織が健康時
(負傷前)の状態に完全に回復した状態のみをいうものではなく、傷病の症状
が安定し、医学上一般に認められた医療を行っても、その医療効果が期待でき
なった状態をいい、この状態を労災保険では「症状固定」
(治ゆ)といいます。
したがって、症状固定(治ゆ)とは、被災された方の身体の状態が必ずしも
被災前の状態にまで完全に回復した状態を指すとは、限りません。
なお、医学上一般に認められた医療とは、労災保険の療養の範囲(基本的に
は、健康保険に準拠しています)として認められたものをいい、実験段階又は
研究的過程にあるような治療方法は含まれません。
また、医療効果が期待できなくなった状態とは、その傷病の症状の回復・改
善が期待できなくなった状態をいいます。
「痛い」「感覚がない」といった感覚症状は、本来は本人でなければわから
ないものですが、労災保険法上の症状固定(治ゆ)は、被災された方本人の感
覚ではなく、医学的経験則に基づいて所轄労働基準監督署長が判断することに
なります。つまり、たとえば、本人がまだ痛み等を訴えていたとしても、これ
以上医療効果が期待できないと判断したときは症状固定(治ゆ)とされ、その
認定後は、療養補償給付(または療養給付)の支給は行われず、症状固定(治
ゆ)後に身体に残された欠損や機能障害、神経症状などが一定の障害等級に該
当したときは、障害補償給付(または障害給付)が支給されることになります。
例えば、次のような状態に至ったときは「症状固定」(治ゆ)と判断される
こととなります。
① 切創の創面が治ゆした場合または骨折で骨ゆ合したような場合で、たとえ
疼痛などの症状が残っていても、その症状が安定した状態になり、その後
の療養の効果が医学上期待できなくなったとき
② 骨ゆ合後の機能回復療法として理学療法を行っている場合に、治療時には
運動障害がある程度改善されるものの、数日経過すると、元の状態に戻る
という経過が一定期間にわたってみられるとき
③ 頭部外傷が治ったあとでも、中枢神経症状として外傷性てんかんが残る場
合があり、治療によってそのてんかん発作を完全に抑制できない場合であ
っても、その症状が安定し、その後の療養の効果が医学上期待できなくな
ったとき
④ 外傷性頭蓋内出血に対する治療後に片麻痺の状態が残っても、その症状が
安定し、その後の療養の効果が医学上期待できなくなったとき
⑤ 腰部捻挫による腰痛症の急性症状は消退したものの、疼痛などの慢性症状
が持続している場合であっても、その症状が安定し、その後の療養の効果
が医学上期待できなくなったとき