1 号 ゴウ - 小須戸中学校

<校長室だより>
新潟市立小須戸中学校
金山光宏
平成26年5月1日(木)第1号
行不由径
行くに小道によらず
<論語>
※ 小須戸中学校体育館に書額が掲げられています。
全 校 朝 会 (5 月 1 日 )の 話
突 然 で す が 、 皆 さ ん は 「寄 席 」に 行 っ た こ と が あ り ま す か ? 寄 席 と い う の は 、 落 語
家や漫才師が興業を行う場所のことです。
今年の2月に東京に出かける機会があり、新宿で半日ほど自由な時間ができたの
で、ふとした思いつきで「末廣亭」という寄席に行ってみました。毎年、元旦のテ
はなしか
にぎにぎ
レビ番組では、その末廣亭の前から、お笑いや噺 家といった芸人達が、 賑々 し
ことほ
く初春を 寿 ぐ生中継が見られます。皆さんの中にも知らないうちに、末廣亭前の
風景を見ている人もきっと多いはずです。
運良く、昼公演の入場が始まったばかりの時間帯に到着でき、比較的、座りたい
場 所 に 座 れ そ う で し た 。以 前 、学 生 時 代 に 落 語 研 究 会 に 入 っ て い た と い う 同 僚 か ら 、
「寄席に行ったら、遠慮などせずに前列の中央に座るのが絶対にいい」と聞いてい
たので、それを思い出し、前列の中央に進み出ました。しかしながら、既に、先客
が何人か座っていて、やはり、落語好きな人たちはそこから座り始めるんだな、と
残念に思いながら、5人ほど左にずれた座席に座りました。
前座といわれる若い噺家が私の目の前に座り、客席にむけて語り始めます。自分
の 高 座 名 ( 落 語 家 と し て の 名 前 ) の 由 縁 を 語 り な が ら 、「 枕 」 と い っ て 、 客 の 反 応
......
をみるたわいもない話をし始めます。そしてやおら本題に入っていきます。
その日の演目は、寿限無。皆さんの中にも、知っている人が多いかと思います。
「寿限無寿限無後光のすり切れ・・・」と続く、長い名前が登場するあの有名な話
です。噺家が自分の名前を「枕」にした理由が分かります。
しばらく、その話に聞き入っていると、少し妙なことに気付きました。私の隣に
座っている人が、話の途中途中に、大きな笑い声を上げるのです。皆さんは、落語
を 聞 い て い る の だ か ら 、笑 う の は 当 た り 前 と 思 う か も し れ ま せ ん が 、そ の 笑 い 声 は 、
腹の底から出る野太い声で、しかも短い。まるで、寿限無という話の「合いの手」
のように、ここぞというポイントでどっと笑い声を入れるのです。後で分かったの
ですが、この人はこの寄席の常連さんだったのです。
若い噺家は、その常連さんの笑い声に背中を押されるかのように、グングンと尻
上がりで調子が上向いていくのが分かります。噺家の調子が上がれば、聞き手の反
応もさらによくなります。寄席の会場中が高揚し、一体感が増すわけです。
私は、噺家でもないし、落語もできません。でも、これと似たような思いになっ
たことがあります。正しくは、この寄席のような「一体感を求めていた」というの
が正解かもしれません。
それは「授業」です。
社会や理科にみられるようなるような身近な出来事を提示したり、英語や保健体
育にみられるようなウオーミングアップで皆さんの心や体をほぐしたりすること
は、まさしく落語の枕にあたるかもしれません。また、美術や音楽のように、美し
いものは美しい、楽しいものは楽しいなどと、それぞれ自分なりの感じ方で感じな
が ら も 、そ の 感 じ 受 け 取 っ た 思 い を 表 現 で き る よ う に な り た い と い う 皆 さ ん の 姿 は 、
噺家がなぜ語るのかと根っこは同じようにも感じます。
授業は、先生と生徒の双方向の関わりの中で作られていきます。そして、生徒同
士の関わりによって、さらに一体感が増していきます。授業は決して授業をする先
生の一人舞台でもなければ、決まり切った展開があるわけでもないのです。授業は
そこに居合わせた先生と生徒が互いの持ち味をもって作り上げ、まったく同じもの
を二度と再現できないものなのです。
どの教科の先生方も、皆さんの知りたいという気持ちに火を付けたいと思ってい
るし、やってみたい、作ってみたい、できるようになりたいという皆さんの思いを
引き出したいと思っています。そして、皆さんの疑問や表現したい思い、到達した
い姿にむけて、そこに居合わせたすべての者が互いにかかわり合いながら一体とな
って進んでいくのが授業なのです。授業の主体は間違いなく皆さんなのです。
皆さんの学校生活の多くを占めるのは授業時間です。授業時間が充実すれば、当
然、皆さんの学校生活も充実していきます。
駆け足で過ぎ去った4月でした。ここで少し立ち止まって、一緒に考えてみまし
ょ う 。そ し て 、今 年 の 授 業 は 、こ れ ま で 以 上 に「 共 に 創 っ て い く 授 業 に し よ う 」と 、
皆で確認し合いたいと思います。
素直で、伸びやかな小須戸中の皆さんであれば、きっと実現できるはずです。心
から大きな期待をしています。
感謝、ありがとうございました。
4月26日に行われました授業参観・PTA総会等への多数のご参加、あり
が と う ご ざ い ま し た 。 全 体 で 、 優 に 100 名 を 超 え る 保 護 者 の 皆 さ ま か ら お 越 し
いただきました。子どもたちの健やかな成長を願い、ともに歩んでいけますよ
うお願い申し上げます。