グリーンレポートNo.511(2012年1月号) 視 点 加工・業務用野菜の周年供給 加工用野菜の 周年供給に取り組むねらいとは ∼実需者が望むのは原料の安定供給∼ 2) 。店頭での生鮮野菜の輸入品比率は低いため、輸入 加工・業務用野菜はなぜ輸入品が多いのか 野菜のほとんどは外食、中食、食品製造業者への加工・ 業務用向けとして消費されていると考えられる。 農林水産省が2008年 6 月∼ 7 月に実施した「加工・業 加工・業務用野菜で輸入野菜が利用される比率が高い 務用野菜の取り扱いに関する意識・意向調査」 (図− 1 ) によれば、食品製造業者、外食産業が国産野菜の使用を のは、原料の価格差だけでなく、国産の加工・業務用原 増やすために産地に求める条件は、①中・長期的に安定 料の調達が短期・中長期的にも安定していないことが大 した価格で取引できること②年間を通して安定的に供給 きな理由と考えられる。 されること③中・長期的に安定した取扱量が確保できる 国産の加工・業務用野菜をどのように安定供給するか こと、の 3 点が上位を占めており、 「外国産との価格差 が縮小されること」よりも優先順位が高くなっている。 実際、全農に対しても国内の食品製造業者や加工業者 一方、2010年のわが国への野菜輸入量は約249万tにの から国産の加工・業務用野菜の安定調達を望む声は少な ぼっており、依然として高い水準で推移している(図− 0 くない。 20 40 60 80 70.4 中・長期的に安定した価格で取引できること 100% 3.6 23.6 0.9 0.3 1.2 64.7 年間を通して安定的に供給されること 27.2 4.8 2.7 0.6 58.0 中・長期的に安定した取扱量が確保できること 32.0 6.6 0.9 0.3 2.1 43.5 外国産との価格差が縮小されること 26.9 14.5 7.9 5.1 2.1 加工・業務用に適した品質・規格 (品種、大きさ、 外観、水分など) の野菜が供給されること 33.8 26.6 16.3 19.0 2.4 1.8 加工・業務用の生産・出荷について、産地側に 指導者がいること 22.4 26.6 29.3 12.1 7.3 2.4 加工・業務用の生産・出荷について、定期的に 勉強会・研修会などを実施していること 15.4 29.6 33.5 13.9 5.1 2.4 産地を紹介してくれる仲介業者 (流通業者など) がいること 12.4 28.4 31.4 16.6 9.1 2.1 国内で一次加工処理 (皮むき、芯抜き、 カット など) されて供給されること 13.0 12.7 17.8 26.6 27.8 2.1 重視する やや重視 する どちらとも いえない あまり重視 しない 図−1 国産野菜の使用割合を増やすうえで国内産地に求める条件意識調査(外食産業) 2 重視しない 無回答 資料:農林水産省より作成 グリーンレポートNo.511(2012年1月号) 350 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 300 北海道地区 輸入数量 ︵万t︶ 250 200 中部・東北地区 150 東海地区【貯蔵】 関西・東海地区 100 九州地区【貯蔵含】 九州地区 50 図−3 産地リレーのイメージ(寒玉キャベツ) 2010年 2009年 2008年 図−2 野菜輸入数量の推移 2007年 2006年 2005年 2004年 2003年 2002年 2001年 0 ぎ、にんじん、鹿児島県:たまねぎの 5 県で展開してい る。 資料:財務省貿易統計 特に宮崎県、鹿児島県では、県内に加工・業務用野菜 食品製造業者や食品加工業者は工場を稼働させるため プロジェクトを設置し、全農と農研機構が共同で開発し に、日々使用する青果物原料を日々安定的に確保し、安 * 」を活用 た「営農計画策定支援システム(Z−BFM) 定した品質と価格により調達していく必要がある。 して労働生産性ならびに経済性評価を行う予定である。 * 「営農計画策定支援システム(Z−BFM) 」については本誌№498 こうした食品製造業者や食品加工業者に対しては、国 (2010年12月号)を参照していただきたい。 内の産地から中・長期的に安定した数量を供給する必要 がある。 今後の取り組みに向けて また、国産野菜を安定供給するためには、産地によっ て栽培できる時期や気象条件が異なることから、各産地 国産の加工・業務用野菜の安定供給を望む実需者の声 が連携して周年リレーで供給していく必要がある(図− は引き続き根強く、国も加工・業務用野菜について輸入 3) 。 から国産への切り替えを促進するために、さまざまな施 産地単独では周年供給が厳しい場合が多いので、全農 策を推し進めている。JAグループも野菜の販売にあたっ が販売先との窓口となり、品目ごとに各産地と契約取引 ては、これまでの市場流通を柱にしつつも、加工・業務 を行い、販売先の要望に応えつつある(写真−1 ) 。さら 用野菜の拡大についての取り組みを早急に進めなければ には、同一時期に複数の産地と契約取引を行うことで、 ならない時期にさしかかっている。 天候不順などがあった場合の出荷減リスクを相互補完 現在、食品製造会社、青果加工業者、外食チェーンな し、また販売先に近い地域での生産振興による流通コス どを対象とし、全農が窓口となった加工・業務用野菜の トの軽減などにも取り組んでいる。 営業・販売拡大を進める一方、販売先への年間安定供給 を行うため、各県と生産振興に関する協議を進めている。 生産と販売のマッチングの取り組み 【全農 園芸農産部 東日本園芸農産事業所】 全農は、平成23年度から、生産と販売のマッチング の取り組みを実施している。重点品目として、たまねぎ、 キャベツ、長ねぎ、にんじん、ばれいしょの 5 品目を設 定し、新たな産地づくりを実施している。現在、栽培試 験( 品 種 比 較 ) 、 契約農場モデル実 証試験を秋田県: キ ャ ベ ツ、 山 形 県:キャベツ、静 岡県: たまねぎ、 宮崎県:たまねぎ (写真− 2 ) 、長ね 写真−2 契約農場モデル実証試験のたまねぎ全自動移植機作業の様子 (宮崎県) 写真−1 全農が契約取引を結んでいるキャベツ産地 3
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