無菌培養を活用したザゼンソウ種子からの効率的な実生養成 - 滋賀県

無 菌 培養 を 活用 し た ザゼ ン ソウ 種 子か ら の効 率 的な 実 生養 成
[ 要 約 ] ザゼ ン ソ ウ は、 採 種 後に 低 温 処 理を 行 い 、 水苔 に 播 種し 日 陰 で管 理 する と 次
年 度 に 2 0% 程 度 以 上 、次 々 年 度 に 90 % 程 度 以 上 の 種 子 が 発 芽 し 幼 苗 が 得 ら れ る 。ま た 、
無 菌 播 種 で は 約 4 ケ 月 で 50 % 程 度 発 芽 し 、 育 苗 期 間 が 短 縮 で き る 。
農 業 試験 場 ・先 端 技 術開 発 部・ 生 物工 学 担当
[ 実 施 期 間 ] 平 成 12 年 度 ∼ 16年 度
[ 部 会] 農 産
[予 算 区分 ] 県単
[ 分野 ] 革新 的 技術
[成 果 分類 ] 普及
[背 景 ・ね ら い]
ザ ゼ ン ソウ は サ ト イモ 科 の 多 年草 で 、 山 の湿 地 帯 など に 群 生し 、 早春 に 開 花す る 。
今 津 町 の ザ ゼ ン ソ ウ 群 生 地 は 国 内 の 南 限 と さ れ 、良 好 な 景 観 を 形 成 し て い る こ と か ら 、
環 境 省の 特 定植 物 群 落指 定 地や 滋 賀県 の 緑地 環 境保 全 地域 に 指定 さ れて い る。
今 津 町 では 、 ザ ゼ ンソ ウ を 活 用し た 地 域 活性 化 の 取り 組 み を進 め てい る が 、近 年 個 体
数が 減 少 して お り 、 種苗 の 増 殖 が望 ま れ て いる 。 こ のた め 、 組織 培 養を 活 用 した 種 苗 の
大 量 増殖 法 を開 発 し た。
し か し 、自 生 地 の 回復 が 目 的 であ り 、 遺 伝的 多 様 性を 保 持 する 観 点か ら 大 量の ク ロ ー
ン 苗 は活 用 でき な い 。
そ こで 、 種子 を 用 いた 増 殖法 を 開発 す る。
[成 果 の内 容 ・特 徴 ]
①
7月 後 半 に 採 種 し 、 10℃ 暗 黒 条 件 で 1 ヶ 月 以 上 の 低 温 処 理 を 行 い 、 種 子 の へ そ を 下
向 き に 播 種 す る ( 写 真 1 )。
②
用 土 は水 苔 単 用 また は 腐 葉 土と 水 苔 混 合用 土 と し、 秋 に 播種 し 日陰 で 管 理す る と 、
次 年 度 に は 2 0% 程 度 以 上 、次 々 年 度 に は 90% 程 度 以 上 の 種 子 が 発 芽 し 幼 苗 が 得 ら れ る 。
田 土 に 播 種 す る と 発 芽 率 は 半 減 す る ( 表 1 )。
③
水 苔 に 播 種 し 、 無 施 肥 条 件 で 管 理 す る と 、 次 々 年 度 に は 展 開 葉 2 ∼ 3 枚 、 草 丈 約 20
cm 程 度 の 幼 苗 が 得 ら れ る ( 表 2 )。
④
低 温 処 理 を 行 っ た 種 子 を ア ン チ ホ ル ミ ン で 15 分 間 殺 菌 し た 後 、 無 菌 播 種 し 、 20∼ 25
℃ で 管 理 す る と 発 芽 ま で の 期 間 が 短 縮 で き る 。 4 ヶ 月 後 に は 、 BA 0.1 pp m + NA A 0 .5
p pm を 添 加 し た M S 培 地 で は 約 50% 程 度 、 植 物 生 長 調 節 剤 無 添 加 の M S 培 地 で は 40 %
程 度 の 種 子 が 発 芽 す る ( 表 3 )。 葉 の 展 開 後 、水 苔 等 に 移 植 し 育 苗 期 間 が 短 縮 で き る 。
[成 果 の活 用 面・ 留 意 点]
①
ザ ゼ ンソ ウ な ど の稀 少 植 物 を保 全 地 域 内で 採 種 する 場 合 には 、 管理 者 と 事前 に 協 議
す る。
②
ザ ゼ ンソ ウ は 高 温や 乾 燥 に 非常 に 弱 い ので 、 栽 培に あ た って は 遮光 と 水 管理 に 配 慮
す る。
[具 体 的 デー タ ]
表 1 .播 種 条 件と 発 芽
管理 場 所
日陰
種子 数
水苔
24
9( 37.5%)
21( 91.7% )
23
16
4( 17.0%)
2)
N.D.
20(87.0%)
7(43.7%)
25
0( 0.0%)
水 苔 +腐 葉 土
田土
日な た
1)
用土
水苔
発 芽数 ( 発 芽率 % )
平成 15年4月
平 成 16年6月
N.D.
注 1) 平 成 14年 7月 下 旬に 採 種 し、 10℃ で低 温 処 理を 行 い 、同 年 10月 上 旬 に播 種 し た。
注 2) N.D.; デ ー タ無 し
表 2 .種 子 か ら得 ら れ た幼 苗 の生 育 状 況
1)
用土
種子数
水苔
田土
36
16
発 芽 種子 数
1)
0∼ 5
27
7
草 丈 ( cm)
6∼ 10
11∼ 15
16∼ 20
3
3
0
0
1
4
7
0
21∼ 25
26∼ 30
9
0
5
0
注 ) 平成 14年 7月 下旬 に 採 種し 、 10℃で 低 温 処理 を 行 い、 同 年 10月 上 旬に 播 種 した 。
平成 16年 7月 調査 。
表3
無菌 播 種 条件 と 発 芽
低温処理
植 物 生長 調 節 剤添 加 量
無
有
BA0.1ppm+NAA0.5ppm
BA1.0ppm+NAA1.0ppm
無添加
BA0.1ppm+NAA0.5ppm
BA1.0ppm+NAA1.0ppm
無添加
発芽 率 ( %)
0
0
0
53
20
40
注 )基 本 培地 は M S+ し ょ 糖30g/l+ ゲルライト 3.5g/l ( pH5.8)
と し 、 7月 下 旬 に 採 種 し 、 直 後 ま た は 10℃ で 1 ヶ 月 の 低 温
処 理 後に 置 床し 、置床 4ヶ 月 後に 調 査 した 。
写 真 1 . ザ ゼン ソ ウ 種 子 の 発 芽
[そ の 他 ]
・研 究 課 題名
大 課 題名 : バ イオ テ ク ノロ ジ ー ・IT等 を 活用 し た 革新 的 技 術の 開 発
中 課 題名 : バ イオ テ ク ノロ ジ ーを 利 用 した 育 種 改良 技 術 の開 発 :
・研 究 担 当者 名
・そ の 他 特記 事 項
森 真 理( H13∼ 16 )、 大 谷 博実 ( H12∼ 13 )、 北 村 治滋 ( H14∼ 16)
平成 12年度 要 請 課題 ( 湖 西地 域 農 業改 良 普 及セ ン タ ー)